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CRMで難しいKPI設定 やずや式経営を今の通販企業に “分析診断システムMIRAI”で紐解く やずや理論vol.6

 やずやの理論は人間性を尊重したものでありつつ、それを属人的にさせなかった。だから、年商470億円まで成長できたのだと思う。そこでは当時、コンピューターを効果的に使って、その理論の最大化を測ったわけだが、経営的な指標はどうだったのだろう。何をKPIに設定してここまでの成長を遂げられたのか。「分析診断システムMIRAI」というサービスを手掛かりにその真髄を紐解こう。

今こそ通販は長期的展望に立って、先を見据える時代

1.足元を見据える「分析診断システム」

 「分析診断システムMIRAI」というのはやずやの大番頭 西野博道さんが、最近の人向けに手がけるサービスである。しかし、僕はそれを別にサービス紹介ではなく、やずやの経営術を学ぶ為の素材として、取り上げたい(すみません、西野さん)。それを使えば、彼らの理論が経営とどう結びついているのか。そこが見えてきそうに思うから、通販企業にとっての然るべきKPIの設定の一助になればと思うのだ。

 「分析診断システムってなんですか」??それについて西野さんはユーモアたっぷりに「人間ドッグのようなものです」と話してくれた。

 「人間ドッグは今、痛いところを治すわけではありませんよね。このままでは肝臓を悪くしますよ、という具合にその先を見据えて、今の生活改善を促すものです」と。

2.稼働顧客を重んじる上で大事な指標

 この点、結論から言ってしまって恐縮だが、西野さんがやずやで成功を掴んできた理論は稼働顧客を重んじることにある。

関連記事:LTVとは?その計算式と陥りがちな罠 定期購入 ならではの本質的理解 やずや理論vol.2

 例えば、売上が減少している傾向にあるお店の多くは、その長期的展望の視野がない。だから今買ってくれている稼働顧客に盛んに売り込む。目先の売上を追うからだ。でも、実は「その段階ですでに通販企業の根っこである稼働顧客が大きく減少しているということに気づいていないんですよね」と西野さん。

 購入回数が多いお客様や、最近まで買ってくれていたお客様にダイレクトメールを送ったり、盛んに値引きキャンペーンを案内してしまったり。売上が落ちている店舗が陥りがちなことはそれで、さらに買ってもらおうとするから、かえって離脱を招いている。

3.年商からその企業に必要なことを洗い出す

 では、長期的視点に立って、何をすべきか。年商(一年単位)で見ることが大事で下記の方程式で示されることを理解する。

年商=稼働顧客数×年間LTV

 先ほどの例に挙げた「買ってくれていたお客様にDMを送ること」などは、この「年間LTV」に重きを置いているから生まれる発想で、要は単価を上げようとしている。

「そんなことをするくらいなら、稼働顧客数を重視した方がいいのです」と西野さん。稼働顧客数なら、お客様との向き合い方で改善できるもの。純粋にその数を減らさないようにすればよく、はるかに現実的である。

4.顧客維持率の重要さ

 あわせて「顧客維持率」を見ていきたい。要は「今回買ってくれた顧客が、来年も買ってくれる割合」である。この顧客維持率を、この後で説明する「稼働顧客」の推移と合わせて、毎日監視することで、通販企業の未来設計ができてくる。

 ちなみに「顧客維持率」だが、どのくらいが理想なのか。ネット通販企業は大抵10%程度しかないが、西野さんが意図するのは70%。その理由は3年後の残ったお客様の数を見れば一目瞭然。10%の場合、獲得したお客様はほぼ残っていないからである。

関連記事:やずや “定期購入”で急成長 高い リピート率 のその理由 顧客維持率に着目せよ やずや理論vol.1

稼働顧客と非稼働顧客を深掘りすると未来が見えてくる

1.稼働顧客をさらに因数分解していく

 では「顧客維持率」をどうやって高めたらよいのか。ここで必要な数字を可視化するにあたり、抑えておきたいのが下記の図である。

まず一年単位で考えれば、通販のお客様は「非稼働顧客」「稼働顧客」の2つでしかない。

2.稼働顧客の構成要素は3つ

 では、通販企業の“未来”はその「非稼働顧客」「稼働顧客」の構成要素を分析することで導き出される。そうはいっても難しくはなく「稼働顧客」の構成要素は実は3つしかない

  • a)「新規の獲得」
  • b)「既存の維持」
  • c)「離脱の復活」

 だから、その戦略も下記しかないことがわかるだろう。

  • (1)新規顧客を集客するマーケティング
  • (2)既存顧客を維持させるマーケティング
  • (3)離脱顧客を復活させるマーケティング

3.非稼働顧客は2つしかない

 一方、「非稼働顧客」の構成要素は下記となる。

  • d)前年の「稼働顧客数」
  • f)前年の「離脱顧客数」

 だから、今年の「非稼働顧客」で「d)前年の稼働顧客数」の数が多く、今年の「稼働顧客」で「b)既存の維持」が少なければ(2)既存客を維持させるマーケティングに課題があるというわけである。面白いように今がわかる。これこそが西野さんのいう「人間ドッグ」の真意だろう。

4.理論に基づき数値を洗い出す

 具体的には、「稼働顧客」は1年間で何回か買っているお客様だから、その購入回数を「新規(F1)」「定着見込み(F2)」「定着初期(F3-5回以上)」「定着後期(F6-11回以上)」「定着(F12回以上)」という風に振り分けて数字を出す。これが下の表では縦軸になる。要は稼働顧客の内訳(顧客ロイヤリティの割合)が可視化される

 続いて「本日」「前月」「3ヶ月前」「6ヶ月前」「前年」で「新規(F1)」から「定着(F12回以上)」の数を出して、横軸に入れよう。するとどの層のお客様がどれだけ増減に転じたのかが見えてくる

 縦軸と横軸で表現できるわけだ。

5.大事なのは・・・

縦軸で「新規(F1)」から「定着(F12回以上)」まで引き上げられるか

横軸で「新規(F1)」などを「離脱」させないで「維持」させるか

ということになってくる。業績が悪化していると図は下記の通りに変化する。(スライドすると2ヶ月目)

 つまり、「稼働顧客」の推移を徹底してこの図で数値に落とし込んで、それを材料に、現場にその原因を尋ねる訳である。

6.施策のチェックを数値に基づき行う

そうすると、施策であるとか、接客の仕方において、改善していかないと、その現象の連鎖が広がっていくわけで、そうならない為に手を打つ必要がある。

繰り返すが、表の中の減少する数値に目を向け、それをいかに改善していく。改善すべきは現場の行動なので、そこを丁寧に話し合う。こういうことをやっていれば「顧客維持率」が決まってくる。

「今回買ってくれた顧客が、来年も買ってくれる割合」である。

7.そのまま推移したらどうなるのか

 実際の通販の数値を元に、「このまま推移したらどうなるのか」予測を立てなければならないわけで、「顧客維持率」はそれと連動している。「分析診断システムMIRAI」はそうやってこれまでのやずやの理論に基づいて編み出した数値を、自動で出せるようにしたわけである。ここはこのシステムがないとダメなのだが、参考までにその数値を入れたものを下記に示しておこう。

やずやはお客様から企業まで常に併走者として勇気づける

1.推移した先の数値こそが未来=MIRAI

 かくしてそれぞれの購入回数ごとに「危険」「警告」「良好」が可視化されて、それは、やずやのこれまでの実績に裏付けられて、導き出されている。「危険」だとすれば、中身を細かく分析して早く改善行動に移せば、病気のように発見が遅れることはない。

 こうやって「顧客維持率」に繋がる数字を現場を含め丁寧に見ていく。するとそれは「稼働顧客数」を増やすことになり、企業が長期のスパンで経営していく数字面でのベースができていくことになる。

2. 改善できる材料は人でしかない

 そこで、稼働顧客の原点となるのは人(スタッフ)であり、接客であるから、それをもたらす社員の研修や必要なお客様へのアプローチを「やずや通販CRM基幹システム」で業務フローとして各自、ちゃんと定着できれば、この数字と業務の一体で捉えていけて、安心した成長絵図を描けるというわけである。

3.それなりの費用も長期的な視野に立てばこそ

 「長くやっていく為のやり方」があるということの意味を理解してもらえただろうか。また、それを長くやっていければ、年商100億円の企業へと一歩近づくことも決して無理ではないことも。

 一言で言うなら長期的な視点である。お客様との付き合いが単月、単年で考えるべきではなく、ずっと長く続くものであって、企業は例えば、3年間、お客様との関係性を構築するためにはどうあるべきかを考えるべき。だとすれば、の事業計画は3年先を見据え作るべきであって、3年先、お客様に何ができているのかの視点が必要である。

 銀行の融資にしても、三ヵ年計画を立てて、それを踏まえた投資が、毎年、予定通り回収できていれば、逆に融資も受けやすくなるように、企業経営において求められるのは、その長期的視点。つまり、経営に直結する視点がこの基幹システムの中にあるから、彼がこの仕組みを持って、通販企業に呼びかけるわけだ。

4.かつてはやずやで、今も志高き通販企業と並走する

 余談になるが、僕は「やずやCRM基幹システム」と「分析診断システム」の話を聞いて「やずやが長年やってきた動きに似ていますね」と西野さんに話した。やずやの商品は、主には60歳の人たちに、20年先の見えない健康を“補助”し続けるためのものであって、その場でどこかの痛みを解決するものではない。一緒に健康であり「続ける」併走者である。

 それは、ある意味、経営だって同じだ。先の見えづらい20年先の未来に向かって、ひた走る。だからこそ、その20年先の未来を見据えて、この基幹システムで、通販企業の経営の安定化を“補助”して、並走し続け、正しい道を指し示す事を、意図しているわけである。

 やずやだけではなく、通販業界を共に並走したいのだ、発展のために。通販企業は今、変革の時を迎えていて、そこで飛躍できるかは、この知見があるかないかで大きく違うことを、彼は自らの体験を持って実感しているからなのだ。さあ、今が通販企業にとっての転換期となるかどうか。

 今日はこの辺で。

関連記事:CRMの醍醐味は数値化にあり 顧客との関係をどうKPI設定するか

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