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商品を起点に“トレードオフ”する 生産地の雇用と使う人の心の安らぎ ボーテ デュ ラ ナチュール

 新規創出のビジネスって、必ずしも「儲かるか」「儲からないか」という基準だけではなく、社会にとって必要なものなのかどうか。それは実は、時代ごと、どんな悩みが顕在化しているかは異なるものだから、そのビジネスのありようも変わっていくものである。今回は、商品を通して、商品の受け手が救われ、作っている側も救われる、ものづくりの話である。それが「ボーテ デュ ラ ナチュール」。とあるシングルマザーが想いを込めて、立ち上げたブランドである。

シングルマザーの想いと行動力 ボーテ デュ ラ ナチュール

1.天然由来ゆえの「マルチ」なバーム

 商品自体は天然由来のマルチバーム。テーマはいうなれば「ナチュラル」「サスティナブル」「ジェンダーレス」といったところで、今の時代を象徴するメッセージがある。

 まずは男女問わず、使えるもの。そして使える場所も、髪の毛も、顔も、デリケートゾーンまで可能にしている。そういうボーダレスなものはそれだけ素材に自信がなければ成し得ない。

 ではその素材とは何か。まずは、こだわり抜いた国産のミツロウ。そして、加熱も精製もされていないオーガニックホホバオイルと、フランス産の火傷の治療薬にも使用される最高級のラベンダーのエッセンシャルオイル。この3つだけ。

 必要な素材を絞り込み、独自の配合でゆっくりと丁寧に時間をかけてバームに仕上げたというのだ。

2.働く人のストレスなど少しでも和らげるように

 そもそも、僕がこのブランドに関心を持ったのはその背景である。このブランドを立ち上げた今林恵美さんはシングルマザーだそう。6歳になる息子がいるという。離婚を機に子育て、仕事と家事を全て一人で担って、実感したことがあるという。

 それはそういう環境に置かれた時の体の変化。ストレスなどの体への負荷がかかりやすく、敏感肌、アレルギー体質に変わっていくのである。心と体が繋がっている事を証明するような話である。だから、彼女は、極力、天然由来のものに触れたいと思ったそうなのだ。

 ところが、実際、それは叶わなかった。そういう風なキャッチで謳われている商品でも化学的な原材料が数多く含まれている。それならば、自分で商品を作れないか、と一念発起したのである。

3.天然素材と心の安らぎ

 もう一つある。そうやって、自分が立ち上がる事で、雇用を生み出す事。それらの原料は主に沖縄などで採取されるから、その地元の人たちに働く機会を作るわけである。実際、先ほどのように仕事と家庭の両立で悩んだご自身とは違う悩みがこの沖縄の現地には存在していたという。

 働くのが大変、その意味が違う。沖縄では「働く仕事すら巡り会えない」ということ。だから、現地の価値に目を向け、そこを契機に、雇用を創出するというわけである。それが結果、都会に住むような先ほどのご自身の経験に近い体験をしている人に安らぎを提供すれば、両方、プラスになる。

4.トレードオフがもたらす両者の安心

 これって大事な事だと思った。勿論、儲からなくてはビジネスは成り立たない。ただ、その中身は時代によって変容している。今はそういう中身の部分も可視化できる時代だからこそ、商品価値はそこだけで生まれるものではなくなっている。

 つまり、沖縄で職に巡り会えない人も、ここを生産地とするもので商品を作れば、仕事に就ける。それが夜の時間、安心して自分の時間、家族と充実した時間を生み出していける。その生まれた商品は、都会で働く疲れた社会人たちを心身ともにケアしていく。この夢を叶える応援の意味合いも、この単価に反映されていく。

 こういうトレードオフが、結果、ビジネスとして定着することは実は大事なことなのではないかと思う。また、それこそがこれからの将来につながるビジネスではないかと思う。

 この考え方はむしろ主流となるはずのものだから、目を向けたいのだ。大量な消費が生まれ、生産コストと安さだけを追う時代ではない。儲かる、儲からないの風潮はさておき、こういう風にして、商品を起点に、互いの価値を認め合い、讃えあうこの姿勢。それは、未来に通じる大きな一歩だと思って、記事にした次第である。

 今日はこの辺で。

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