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機は熟した 藤田ニコルさんと挑む フリュー の カラコン 今までの知見と培った総合力を活かして

 これまでのどれが欠けてもそれは成立しなかった。今まで、フリューはネット通販を土台に、カラコンを着実に浸透させてきた。けれど、カラコンのメインターゲットである18歳から24歳には積極的とは言えなかった。それはこの時のためにあったのだろう。『U.P.D.(アプデ)』という商品をひっさげ、参入してきたのである。ただ、そこには、必然と言えるだけの土台が整うまでの順序があって、今に至る流れに僕は納得したのである。

カラコン 藤田ニコルさんと共に メインターゲットに

1.ECで着実にその下地はできていた

 そもそもコンタクトレンズの市場はどのくらいあるのだろう。それによれば、ここ数年伸びていて、約700億円。当然ながらカラコンの需要も増えている。とはいえ、フリューはまだそのメーカーとしては存在感が大きいとは言えず、それはメインターゲットとなる18歳から24歳を対象としていなかったから、という部分もありそうだ。

 しかし、逆に言えば、そのボリュームゾーンをやらずして、フリューのカラコンの事業は、ECサイトをテコに、ずっと右肩上がりの成長を続けてきた。

 それができた理由はどこにあるのか。それは、カラコンをアイメイクに相当するファッションアイテムとして、敢えて25歳以上に対し提案してきたから。この世代がECを利用しがちであるという部分も踏まえ、その考えは的中したのである。

 ただ、冒頭話した通り、このタイミングで彼らが舵を切ったのは、遂に18歳から24歳ゾーン。カラコンでは一番シェアの大きなところで、既に先行する企業がひしめくレッドオーシャンである。

 しかしながら、彼らの取り組みは少しも無謀ではない。聞けば今が必然と言えるだけの意味を兼ね備えたもので、納得した。僕はこの姿勢に学びがあると思って記事にしようと思ったわけだ。

2.今が必然だったといえる理由

 それを紐解く上では、改めて、ECサイトの成長は欠かせない。

 元々、フリューにとってカラコンは新規事業であった。ただ新しい切り口ゆえに、その答えは自分達にしかない。自ら商品開発を行うというのは自然な流れ。それで、コストを抑えたECをメインに戦略を立てた。

 堅実に成長を遂げ、的確にユーザーとの関係構築もできた。彼らが提案する新しいカラコン文化は浸透して、その裾野を広げてきた。

 ここからが変化の中身。それが、社内に変革をもたらす。近藤真由香さんは、「その甲斐あって、会社もそこに価値を見出し、より盤石な組織を敷くようになった」と。つまり、商品開発とプロモーションを一体で見て、メーカー本来のポテンシャルを活かせるだけの仕掛けができるようになったというのだ。

 最初からイメージキャラの選定から入り、商品開発をそこに寄り添わせて設計ができた。だから、レッドオーシャンでも太刀打ちできる環境を手にしたのである。社内でも、カラコンのメインターゲットとなる世代への進出は否応無しに高まっていた。

 いざそこに向けて動き出そうというその時に、藤田ニコルさんの起用が決まった。これも大きい。

3.藤田ニコルさんの存在の大きさ

 藤田ニコルさん、通称「にこるん」は25歳。ちょうど、18歳から24歳女性の多くが憧れている。

 しかも彼女とフリューの縁も深い。「プリレンジャー」の一員で、それは、フリューがトレンド発信をしていく上で、結成したユニット。彼らの姿勢を示す部隊で関わっていて、そこで繋がっていたのが大きい。

 そこに加え「にこるん」も毎日、カラコンをつけている。だから、ユーザー目線にも立てて、率直な意見も述べる。彼女は商品の発信者としても、プロデューサーとしても適任であったのである。

 願ってもない話であった。彼らにとってはこのボリュームゾーンでは新参者。その中で手にとってもらう為には、それ相応の信頼が必要。「にこるん」がいてくれることがどれだけ安心材料となったかは説明の余地はない。

 ただし、もう一点言いたいことがある。それは、ここで大事なのは「にこるん」であり、「にこるん」ではないということだ。何を言ってるの?と思われるだろう。

 つまり、もし単純に「にこるん」を起用して満足していただけなら、僕は取材しなかっただろう。この商品は、彼女を信頼しつつも、安易に彼女の影響力に頼ったものではない。そこがいかにもフリューらしいのだ。

女性の感性を生かす商品企画力

1.0から価値を生み出してきた

 さてさて、それがどうやって『U.P.D.(アプデ)』という商品の企画へとつながるのだろうか。

 正直言えば、有名人をアイキャッチにするばかりで、他の企業のやっていることを“真似る”だけという企業も少なくない。でも、それをフリューは決して行なわない。なぜなら、ニッチな25歳以上の女性にカラコンを浸透できた事実があって、それらは彼らの商品企画力無くして語れないからで、土台がある。

 だから、その姿勢は世代が変われど、同じこと。だから、先行する他ブランドは勿論、ベンチマークしつつも、自分たちなりの新しい商材開発に臨んだのである。

2.女性の感性を形にする土壌

 ではどうやってその商品企画力が開花したのか。これまた、よくできているのだが、プリントシール機で長らく培ってきた同社の姿勢がここで生かされるのである。実はプリントシール機にしても彼らは、後発組である。しかし、何が違かったのかと言えば、そのリサーチ力である。

 大人の都合でプリントシール機を作らず、徹底的に高校生などにも対話をした。今でもグループインタビューも年100回以上は実施して、他の追随を見ない。少し話が逸れるかもしれないが、彼らの取り組みを象徴する動きとして、社内には「ガールズトレンド研究所」という部署があるくらいなのだ。

 だからこそ、プリントシール機市場で彼らは9割以上のシェアを握っていて、そうやって「0から作り出せる」土台があり、それが今回のカラコンの開発の礎にもなっている。

3.感性を形にすることがいかに難しいか

 こういう話をすると、大抵の企業が、「だったらトレンド調査の部署を作ればいい」。安易にそう考えがちであるが、それは違う。ここがプリントシール機でも、カラコンでも共通して大事な部分。そのキーワードは「可視化」である。

 言うは易く行うは難しである。カラコンで言えば、そこで活躍したのが、商品企画の福田奈緒子さんである。この言葉が深い。

 「女の子って言葉で説明できないんです」と。

 例えば、「盛れているってどういうこと?」そう聞くとしよう。

すると、「写真とかで可愛い感じ」と答えが返ってくる。

 「その可愛い感じってどんな感じ?」そう聞いてみる。すると、、、

「盛れている感じ」と。

 一緒だ。戻ってきてしまった(笑)。

 だからとって、ここで自分の感性を入れがち。だが、そこでグッと堪えてユーザーと対話して、「補正していく」ことが大事なのだという。

 「結構、勘違いしがちなのですが、自分たちはターゲットでもユーザーでもありません。よく上の世代にいるおじさんとかも、そして我々も同じですが、自分達がユーザーに該当していない。そう認識していれば、変に口出しなどしないはずなのです」

 だから、口出しをすることなくニーズを拾い上げることの大事さを説いているわけだ。

「作っていると、このほうがいいのではないかと、自分の感性で決めちゃう場合が出てくると。でも、やっぱりそこは自分の感性を入れちゃいけないんです。ユーザーではないのですから。」と。

感性を翻訳する

1.女の子は言語化できない

 では具体的に、どうやって紐解くのだろう。

 この商品ならどうだろう。まずは、藤田ニコルさん(にこるん)のことを素敵だと思っている人に、そういうイメージになれる商品であると感じてもらえる事が大事だとする。

 実際、その方向性については「にこるん」が決めてくれる。だから、それがいかにデザインに落とし込めるかであって、その上で、彼女のファンのニーズを受け止めるわけだ。実際、同社のモニター調査でも10名中、最低でも2、3人は「にこるん」ファンがいるので、その子達に「にこるん」の魅力を述べてもらうわけだ。

 すると、共通して聞かれたのは「透明感」。

 先ほどの言葉を思い出してほしい。「女の子は言語化できない」。

 透明感について聞くと、殆ど女子は擬音で説明するのである。うるうるな感じ、ぷるるんとした感じなど。

2.透明感の掘り下げ

そこで福田さんは聞くのである。

 「あなたが『うるうるしている』と感じるものが他にどんな物があるの?」と。

すると、ガラス玉であるとか白人女性の目、タピオカなど、そういう具体例が上がってくる。

 そういうものを全て、集めてきて、「その透明感を表しているものが何なのか」をデザイナーと一緒に突き止めるわけである。

 読者の皆さんも、ガラス玉になぜ透明感を抱くのかなど、考えたことがないだろう。しかし、それを写真などで突き詰めていくと、見えてくる。つまり、デザイン上でこの辺が濃くなっているから、透明感が出るのか、といった具合である。その具体的なものには、本質的な理由が備わっているのである。

 そうすることで、その子達が「透明感」と認識して、擬音で表現される一つ一つが“翻訳”されていく。それを踏まえているから、今度は自分達のコンタクトレンズでどう表現すればいいかも、見えてくるのである。

 それを経ているから、反響も大きい。Twitterでは本当に「うるうるしてる」などのコメントを見かける。形にできない感性を見事、具現化したのである。これが僕が思うに真に「0から作り出せる」土台なのである。

3.本質を捉えられているから積み上がる

 先ほど、他の企業を見ると、同じものを真似して作る例も少なくないと書かせてもらった。ただ、逆に、同じものを作ってと指示を出す気持ちもわからなくもないだろう。そこまで複雑な工程を経て、初めて理解できる感覚なのだから。

 その意味では、そういう感覚への理解が会社にある事も大きいのだろう。カラコンの部署が、これまで実績を出してきたこともあるが、主に女性で構成され、その中身に関しては、あまり幹部は大きな口出しをしない。理解できないと割り切って、それを任せる会社の幹部や仕組みがあってこそ、これがサクサクと進んでいく。

 結果的に、回り回ってそれが大事なのである。先ほどのように、真似をすれば、確かに、感性のわからぬ幹部も納得しやすいし、失敗が少なく、手堅いように思える。

 でも、結局、それがうまくいかない。それをこの企業はわかっているのだ。

 うまくいかない理由、それはその過程を知らないからだ。

 福田さんの話がマトを得ている。もしも、なぜそれが再現できているかの理由がわからないと、肝心の色合いで間違えてしまうんですと。「緑だから緑にすりゃいいんでしょ?」という具合に安易に緑を使うと、全く違うイメージになる。そういう時に、「そら見たことか」と(笑)。

 感性に寄り添うことが、仕組みになっていることで、軌道修正がしやすく、実は手堅いわけである。プリントシール機で培ったこの会社の功績かもしれない。

女子の行動から戦略も

1.カラコンにとって大きな存在は、ドン・キホーテ??

 そして、最後にそのトドメは仕掛けである。

 ある意味、僕が一番、驚いたのが、仕掛けのキーワードである。それが「ドン・キホーテ」。18歳から24歳までのカラコンをつけている女子に圧倒的な影響力を持つのがあの「ドンキ」なのである。

 「彼女たちは、待ち合わせにドン・キホーテを使うくらい。そこでカラコンの新作を見ながら友達を待つ。そうやって時間を有効活用している」と。福田さんから聞いて心底、驚いた。

 彼女たちはその実物を見ながら、スマホを片手に情報をチェックしていく。そうやって判断していて、リアルとネットを軽く超えて、彼女たちの興味は真相に近づいている。

 そもそも「ドン・キホーテ」は品数が多い。また、度数の展開も豊富。かつ、実物も触れることができる。だから、それらの行動の価値が最大化されやすいわけだ。

 なるほど。ドラックストアではその面積に限りがある。だから、欲しいカラコンに効率よく巡り会えるのは、「ドン・キホーテ」一択なのだ。だから、そのドン・キホーテを照準に構えるわけである。「にこるん」のアイキャッチとともに、まずは手に取ってもらう。あとは、彼らの商品力を重ね合わせれば、購入者はリピートするという自信がある。だから、後発でもやれるというわけである。

2.かくして商品は今このタイミングで誕生した

 一つ一つ、手が込んだ作戦で、よく練られている。

 改めて思うのは、彼らが30代を対象に取り組んできた姿勢は生きているという事だ。と言うのも、カラコンをつける理屈そのものは、世代問わず実は同じなのである。

 18歳から24歳というターゲットにおいても、アイメイクの延長線上で、カラコンを使っている。ただ、明確な違いは、その利用者の幅である。そのような使い方をしている25歳以上はアーリーアダプターに該当して、まだヒエラルキーのトップのゾーンである。

 でも、18歳から24歳というターゲットにおいてはもっと一般的な層にまで当然に広がっているのだ。つまり、もはやオシャレのあり方が、30代とこの層では分断されていて、そこによれば、カラコンは前よりももっと浸透するようになっている。

 だから、これまで培ってきた商品開発の向き合い方は活かされ、女性の感性を商品に落とし込むノウハウによりそれは最大化される。オリジナリティを持って。そこまで土壌ができて、カラコンは部署としても、プロモーションから逆算して、商品を開発できるまでに成長した。

 忘れてはならない、藤田ニコルさんとの繋がりと彼女のファンを巻き込むことの意味。こういう具合に、彼らのバラバラだったパーツはここで、この商品でひとつになった。冒頭、今が必然だと話した理由はまさにここにある。物には順序があって、いよいよフリューの本領発揮が始まる。

 今日はこの辺で。

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