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視点を変えて生まれ変わる 文具も、地図も、手紙も形を変えてアートである

 商品の視点を変えて、従来とは違った用途を引き出す。簡単なようで難しい。でも、その知恵を活かして、一気に脚光を浴びる企業がいる。数々のその知恵に触れながら、文具はアートだな。そう思った。筆記具という次元で考えるのではなく、充実感をもたらすエンタメグッズへ導びくことで、商機が生まれた。その意味で「文具女子博」の価値観がもたらした功績は大きい。ここに並ぶ商品の多くは、その変化球で、女子に夢を抱かせるのである。

文具女子博 はメーカーの知恵に溢れている

1.スパイスを効かせた呉竹の目線

 例えば、呉竹という会社をご存じだろうか。書道具のメーカーであり、老舗だ。

 書道から派生して墨汁やインクという生業に至っている。けれど、その王道のちょっとしたスパイスを加えたのが「ラメの素」。感覚としては、料理でいうところの“調味料”である。既存のインクに、その商品を混ぜ合わせると、そのインクがラメを含んで、煌びやかになる。

 なぜ、そもそもこういう発想が生まれているのか。これには昨今、ガラスペンの流行が背景にある。インクというのは万年筆で使う場合が一般的。でも、ガラスペンの登場で、インクの使える幅が広がったのだ。

2.ガラスペンがインクの環境すら変えた

 つまり、万年筆はインクがサラサラでなければならない。それはペン先が繊細だから。でも、ガラスペンはペン先から出るインクが出てくる穴が少し大きめに設計されている。言い換えれば、ガラスペンを使ってインクの利用の幅が広がったというわけである。「書く」から「描く」になったと言おうか。

 絵画的でもある。だから、インクにラメを入れようという発想が生まれる。これが万年筆では難しいのは、ペン先が繊細で、詰まってしまってかけない事態が起こるからだ。ところが、このガラスペンであれば、それを可能にするのである。老舗の変化球は、今までにない世代の人たちを虜にする。

 つまり、描く楽しさを演出しているところにヒットの理由がある。

3.文具を使ったエンタメ

 それは、文具としてのエンタメ性と言えよう。この日、「FooRow」というブランドに出会って、それを痛感するわけだ。彼らは、シーリングワックスの販売をしている。シーリングワックス?

 恐らく皆さんも見たことがあるはずだ。古くから欧米で、手紙の封筒や文書に封印を施す立体感のあるスタンプのようなもの。それをシーリングワックスと呼んでいる。

 つまり、このブランドではそれを自ら自宅で作ろうという提案で、スターターキットを用意していた。そこにはピルというカラフルな素材と、メルトポット、スプーンなどが入っていて、その一式で作れてしまう。

 ピルをメルトポットで溶かして、その溶けたものを大理石の上に垂らす。

4.垂らして刻印してその作業が楽しい

 すると、ピルは柔らかくなっているので、上からスタンプを押すわけである。また、そのスタンプに柄が刻印されていれば、シーリングワックスの表面がその柄になって、洒落た雰囲気になる。

 大理石の上でそれをやることで、すぐに冷却され、固まるのが早いので、そのまま、剥がして、封筒の封印する部分に貼り付けるだけ。オリジナリティある格式高い手紙に変わるというわけだ。

 一度、このスターターキットを買えば、この刻印の柄を変えるだけで、永遠に使い回すことができる。ピルの色合いも様々なので、それだけバリエーションも豊富である。何より作るのが楽しい。文具をただ、消耗品として考えるのではなく、付加価値をつけるベクトルで勝負をしているのだ。昨今、手間暇をかけることを避ける傾向があるから、逆に特別な相手には、これらの途中経過が、思いやりとして伝わる。絆の深さを示すアイテムになるわけである。

 つまり、大事なのは実用性できる分ける時代じゃないということ。それが文具であっても。そこを追ったところに「文具女子博」の存在意義があるわけだ。

異業種から文具で可能性に挑む

1.既存の価値の視点を変えて文具を活用

 そうすると、人は価値観でそこに集まってくるから、文具という縦割りが消える。だから、同じ価値観を持ち込んで、異業種から文具が出てくるという事件も起こるわけだ。ここがある意味、新時代である。

 だから、意外だったのが、ゼンリンという会社がそこにいたことである。思わず「地図の会社ですよね?」と立ち止まってしまった。「なぜ、ここに?」そう問いかけたが、同社の企画担当の上條 睦さんの言葉を聞いて、答えに納得である。

 「私たちは正確な住宅地図のみを追いかけてきました。でも、目的地にたどり着くために必要なだけ。私たちは企業として、地図がもたらす付加価値をと、考えて、たどり着いたのがこのシリーズです。」と。

 それが「街まちレトロ」という文具シリーズ。例えば、2ポケットファイルには、ゼンリンの地図データをレトロ風にアレンジしたデザインが施されている。横浜の街の象徴「ガス灯」をアイキャッチにしてムードは満点。住宅地図の硬さはそこにはなく、柄として楽しめる。同様の柄でマスキングテープなどもある。

2.新しい魅力を文具が引き出す

 それが新しい地図の魅力に気づく契機となる。実は、今回は第二弾。前回の「文具女子博」では、第一弾で長崎などを用意。その長崎のグッズを手に、語ってくれたコーポレート本部の羽田さんの言葉が響いた。「私は、長崎出身。だから、『ここにいたな』とか『ここではこんな事をしたな』とその時のことを思い出すんです」と地図は、思い出を喚起させ、自然と会話が生まれるきっかけをもたらしてくれたのである。

 でもね、僕が言いたいのは、その大元が「本物の地図」だからこそ、できるということ。

 結果、その地図の正確さが強みになり、各々の思い出に紐づく特別なアイテムへと変わったわけである。実はレトロ柄は最近のZ世代の間でブレイクしているという要因もあるようだ。そして文具という比較的、手の届きやすい商品であることで、地図の魅力が、単なる移動のための道具ではないことを、多くの人に知らしめるわけである。

3.黒板消しでスマホ画面の汚れを取る

 違った業界から文具へのアプローチする動きは他にも。学校のチョークを作り続ける日本理化学工業が、黒板消しクリーナーを紹介。これも奥が深いチャレンジなのである。この会社はもともとチョークと共に、黒板消しも地道に販売し続けている。ただ、昨今、デジタル化が進むにつれ、かつてほど、黒板が使われなくなったことを受けて、そこに着目した。エンタメ的な文具という共通の価値観だから、異業種でも全然、引き立つわけだ。

 案外、スマホの画面というのは汚れがちでしょ?と。だから、そこでそれを消すためのアイテムで黒板消しをモチーフにしたというわけだ。消す部分には、メガネクリーナーのマイクロファイバーを使っている。それゆえ、黒板消しを消す要領で、スマホの画面が綺麗になる。

 黒板消し自体も、実用性もさることながら、懐かしさという部分もあると思う。

企業価値を最大化させる文具

1.ジャポニカ学習帳を別の価値に

 遊び心の中に、企業らしさを込めることで、企業ブランディングの場にもなっている。その点、ショウワノートは自らのコンテンツの価値がわかっている。彼らといえば、ジャポニカ学習帳。ある意味、現役で活躍中。だから世代を超えて認知がある。そこで、視点を変えて、違う年齢層で出してみるわけだ。それはそのまま、懐かしグッズにもなる。

 自らの企業価値を最大化させるベクトルである。

 ではそれをどう落とし込んだのかというと、昨今のミニチュアグッズブームを掛け合わせた。音楽のかつての「ジャポニカ学習帳」そのものをモチーフにした掌サイズノート。そこに縦笛、ピアニカという音楽にまつわる定番アイテムのフィギュアをセットにした。可愛らしさとトレンドを押さえながら、企業のブランディングになっているのがさすがである。

2.ヤマトの歴史をトランプに

 企業の価値という意味では、ノリで有名なヤマトも面白い。123年の歴史を誇る彼らは、過去から現在の製品の数々や貴重な昔の製品チラシ、ポスターなどを素材にしたトランプを出していた。こちらは「文具女子博」限定だからこそ、コアなファンを育てる意識が感じられれる。遊びながらヤマトの歴史をさかのぼることができるので、愛着も増すことだろう。

 おわかりいただけただろうか。文具を消耗品と考えていたら、そこで終わりである。文具に潜むエンタメ性を発掘することで、今、企業は新たなチャレンジとともに、進化しようとしている。

 そして、この場に集まる多くの企業のその楽しませようという意識は、来場者の心を躍らせる。そこに企業同士の相乗効果も見られる。本当に、こういう視点の大事さを思う。新しい企業が出てくるのに合わせて、老舗も触発されて良い意味で、文具は活況にわいているのだから。

 彼らが手がけたこのマーケットは、今までとは違う。個々の価値観を尊重し、SNSで拾い上げられ、各々がそれぞれに楽しめるこの時代。そこで今という時代らしく、脚光を浴びているところに学びがある。

 今日はこの辺で。

 

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