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セブン銀行が再定義する“銀行”の役目 変貌したATMの役目と未来

 正直、その視点があったのかと驚かされた。先日、ネクストリテールラボフォーラムで、セブン銀行の清水健さんの話を聞く機会があった。正直、セブン銀行を従来の銀行と同じ位置付けで、僕は考えていた。けれど、ATMをテコにして、それこそコンビニという強みも発揮して、銀行という価値を再定義するものだったからだ。

セブンイレブンのおまけではない

 そもそも、セブン銀行は「セブンイレブン」の付加価値を高めるために、という意味合いが強かったように思う。物を買うだけではなく、地域のインフラとして成長したからこそ言える強み。創業から20年経過し、ずっとそのまま、生き残っていくのだろうと思った。

 でも、セブン銀行の視点は、セブンイレブンを補完する存在ではなく、それ自体が必要とされて、逆にセブンイレブンのほうが、おまけになるくらいの逆の発想だった。

 そもそも2022年度の実績で、同社自身は連結で1596億円。国内ATMは約1000億円、海外事業では約300億円。その他、リテールや法人事業が約200億円。最近、カードと電子マネーに関しての企業を子会社化して、会社自体は2025年までで2500億円を目指している。

 彼らが意図しているのは、プラスコネクトという考え方。要するに、ATMの進化で「現金のプラットフォーム」と位置付けている。

・ATMの持つポテンシャル

 え?ATM?そう思う人もいるだろう。実際、年々、スマホ決済の浸透なども後押ししてその台数は減少に転じている。ところが、その減少に対して全体でのシェア数を伸ばしているのが実は、セブン銀行なのだ。

 ATMの取引件数は推計値ではあるけど、70億件まで減少している中で、彼らは10億回。ここでも15%のシェアを握っている。何が寄与しているのか。それでいうと、わかりやすいのは、PayPayなどへのチャージ受付である。今年で2億5000万件にも及ぶ予定だ。

 そんな中、セブン銀行が改めて打ち出したのは、ATMの“再定義”である。

 僕は清水さんの話を聞いて、ATMは今後多くの人にとっての“デバイス”になっていくのだと思った。僕らが「何かの目的を果たす」ためにiPhoneを“デバイス”として使う。これは音楽を聞こうとして、ウォークマンを聞くのとはわけが違う。だから、セブン銀行も言うなれば、現金を引き出すだけのATMではない存在感を示し、それをあらゆる拠点で果たしていく。

 当然ながら、「現金」をキーにしてはいるけど、更にスマホなどを使って、情報の出し入れをできるようにしていく。実は地道にATMの機会も進化しており、現在、普及しているのも4代目。かなり多岐にわたる利用が可能な“デバイス”となっている。

・無人の口座開設窓口

 それこそ、iPhoneと同様に、プログラムをその時代に合わせて、アップデートしていくことになるから、利用機会が増える。最近では、マイナンバーカードや免許証を使って、本人確認ができるようになった。そうすると、今度は、口座の開設などまでATMひとつで可能となっていくわけだ。

 具体的には、所定の箇所におくと、そのチップを読み取るように機能している。その一方で、正面のカメラでその人の顔を読みとるのである。そうすれば、カードの情報と目の前の人とが一致していることが確認できる。だから、承認が可能となって、もう窓口いらずである。

 また、マイナンバーカードに情報が入っている。なので、必要時に、必要な情報をある程度、表示できるから、手間も軽減できる。何かの申込の際に、入力するものが多いものでも、それらを補完して使えば、利便性も大きく向上する。

 何が大きいかというと、下手すると銀行での業務すら無くなるということ。今まで、銀行は窓口で、こうした事務にコストを清水さん曰く、一兆円ほどかけている。確かに語弊を恐れず言えば、銀行員の給料はそれなり。なので、人件費のかかる割合を軽減していく過程で、彼らを銀行側が必要として取り入れる可能性が出てくるわけだ。

・従来の銀行の枠組みとは違う視点

 そうなった時に、各々の銀行が存在する意義をどこで発揮するべきか。そこが重要になってくるはずだ。逆に、セブン銀行は、それらの口座開設の受け皿になるだけでも、存在価値があるということになる。

 つまり、セブン銀行の考え方はこれまでの銀行とは違う。自らの銀行口座が増えることだけではなく、他の銀行の課題を含めて、自らのATMが果たせる役割を考えている。

 それだけではない。よく、金融機関などは「届出が出されている住所が今の住所と一致しているか」をハガキで確認することが多い。ただそれも、住所が変わっていれば届かないのだ。

 その一方で、現金を出し入れをするユーザーは現状では多い。だから、その頻繁に利用しているATMの強みを活かして、そこでそれらを確認するのだ。

 それらは、近くのセブンイレブンとセットで考えられるのが強い。他の銀行がそれをやろうにも、場所が確保できない。この考え方が見事だなと思う理由は、全国張り巡らされているセブンイレブンをフックにしているから。iPhoneの例と同様に、普及率の高さがプラスに働く。そのATMが“デバイス”たりうるという所以である。

・行政から民間の業務まであらゆる窓口に

 しかも、マイナンバーカードを対応させ、行政との連携も密になった。例えば、給付金の支払いもATMで行える。以前、自治体が誤入金をして、ニュースになったのは記憶に新しい。ATMで個々人を特定して、自分で引き出せるような形にすれば、生産性も高く、ミスも生まれにくい。

 おわかりいただけるだろうか。

 繰り返しになるが、セブンイレブンという“敷地”があるから、多くの人が身近に使える“デバイス”として機能する。“デバイス”として使えるなら、何ができるだろう。そこに差別化要因があるから、他の銀行がやろうとしても到底できることではない。すると、逆説的になるけど、寧ろセブンイレブンに依存しないことにもなる。いずれ、普及の台数が増えるほど、コストは抑えられ、利用拠点はセブンイレブンに限らなくなる。

 会社の利益率は現状、一時期より減少傾向にある。投資の期間に入っているからだ。2024年の春には顔認証の進化系をつい先日、発表したばかりだ。“顔パス”で、現金の出し入れも可能となっていくのである。

・今、銀行の役目とは?

 そうすると、必要な機能を関連会社で開発するほど、デジタルの力は強くなる。

 昨今、デジタルで決済が可能となったことで、それをカードや銀行に紐付けして、経済圏を作り上げる構想がある。だからこそ、僕は思うのだ。今、銀行は「単体で」その存在意義をどうやって説明するべきかと。

 例えば、三井住友銀行はTポイントとVポイントを融合させて、更に、Oliveというサービスを提供している。確かに、長年培ってきた信頼すべき金融における顧客のと関係性と築き上げてきた信用は揺るぎない。そこをフックにするのもよくわかる。

 そのそれぞれの銀行のコアな部分がどこにあるのかが問われるだろう。

 その中で、セブン銀行は、ATMを強みに、かつ場所という資産をフックに、他の銀行にすらできない“窓口”を作ろうとした視点は、なるほど彼ららしい強みである。銀行の飛躍という文脈でこのような視点があるとは思わなかった。それだけに、非常に興味深く受け止めた次第だ。

 今日はこの辺で。

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