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Fitting Roomに人生の答えを探し求める「ソージュ」ネットショップにしてアート展をする理由

 D2Cなんて言葉で説明しちゃいけない。割と「SOÉJU(ソージュ)」というショップについては、そのような言われ方もするけど、いや、違う。そんなことを思った。と同時に、先駆けてビジネスを起こせるのは、常識にとらわれないアート的な発想に起点にありそうだ、とも。彼らがショップ運営とは一見関係のない、アート展「The Fitting Room」を開催したのは、実は、彼らに必要なことだったのだ。僕はその場所に来て感じた。そこには店として、メーカーとしての本質があるようにも思える。

・そもそも「ソージュ」も異彩だった

 先に話しておくと、「ソージュ」は最初から異彩を放っていた。通常、アパレルブランドというと、ブランドのカラーがあり、そこに基づき、専用のデザイナーがあてがわれ、商品を手掛けて、プロモーションをかけて、それを売り込む。

 だから、そのデザインにファンが生まれて、商品が売れていく。しかし、彼ら自身に、ブランドとしての自身にブランドとしての明確なカラーがあるかといえば、ないのかもしれない。けれど、カラーを提示する代わりに「コーディネイト」という価値観を伝えた。それにより、お客様に共感を促し、触発したのである。ここが新しい。

 つまり、30代以降の女性は、結婚、昇進など、多くの人にとって節目であることに着目。衣装が様変わりするからこそ、そこへの不安がある。今まで着用していた服装とは違うテイストが求められる時に、そっと優しく、スタイリストを用意して、コーディネイト提案をしたのだ。

・感性を重んじながらも手堅く

 そして、作る商品は、そこにあわせていったのである。感覚的でありながら、コーディネイトで売れていくから、単価は高く、また、バリエーションが増えすぎず、在庫過多になりづらい。見事な設計だ。

 例えば、それをメディアとして発信すれば、その価値観に共感する人が集まる。そして、不安が伴えば、代官山のお店などでフィッティングをするわけである。その拠点はあくまでフィッティング。商品を購入するのは、ネットである。

 彼らはメーカーであり、顧客とダイレクトにつながって、商品を作っている。だから、D2Cに他ならないのだけど、それとは違う気がしているのだ。もう、その商品の作り方の過程を見ていると、何か他の会社のトレンドに乗っかった風でもない。純粋に、従来の枠にとらわれない“発明”として、世に受け入れられたのだと僕は受け止めたし、だから、関心を抱いた。

・アートは人の心を動かす“発明”

 まさに同じく、“発明”といえるのも、僕はアートだと思っている。だから運営元のモデラート代表取締役 市原明日香さんと出会った時のことを思い出した。

 勿論、ビジネスはお金を稼がないと、成立しない。けれど、それはお金を稼ぐために、ビジネスをしているのではない。人が何かしら心を動かされて、お金を稼いでいるのにすぎない。それがビジネスになっているという方が、彼女の事業に関しては言い当てていて、正しい。

 心を動かす。それに近いのはまさにアートである。そして、入口からもう「???」であった。

 場所は、銀座のポーラミュージアム アネックス。ハンガーにかけられた謎の“衣装カバー”??。

 衣装カバーを横目に、奥は、フィッティングルームのようにカーテンで覆い隠されている。

 何気なく、フェイスカバーが置かれていて、まさにその場所を連想させる。男性に馴染みがないが、女性の場合、化粧などがつかないように、フェイスカバーを使う場面が多い。

 その本当のフェイスカバーの素材に対して印字がなされている。「なんだろう?」そう思ってみていると、それが、このアート展の案内になっているのであり、思わずニヤリとしてしまった。

 どう考えても、予算のかけ方がおかしい(笑)。

・フィッティングルームを通して見える自分の姿

 更に奥へと足を進めると、3つのフィッティングルームがある。

 カーテンを開けた向こうはそれぞれ違った表現があり、強烈な個性を放っている。不思議な形状の鏡。あるいは、鏡にたどり着くまで何枚も様々な柄のカーテンが敷き詰められていたり。どれも、独特な表現で、人によってはキョトンってするだろうな(失礼!)と。

  この3つのフィッティングルームの隣の部屋(4つ目のフィッティングルーム?)にはムービーが映し出されていた。15分ほどだろうか。メンズ、レディース、学生といった、それぞれのフィッティングルームでのシーンを再現していて、それも実に風情のある表情を浮かべるわけだ。「そうか。僕らはこの場所(=フィッティングルーム)でこんな表情で、鏡を見つめていたのか」と思った。そこにその人の人生を垣間見えるわけである。

 例えば、女子高生がやってきて、体を投げ出すように座る。

 衣装を手に取ると、パッと頭の中の絵とそこにある現実とが、入れ替わり立ち替わり、映し出されるのだ。そして何事もなかったかのように、帰っていき、日常へと戻るのである。

 伝わるだろうか。この空間ならではの空気感。映像を手掛けたのは林響太朗さんで、歌手「緑黄色社会」などのミュージック・ビデオを手掛けている著名な方。映像にかける同店の本気度がうかがえる。僕は思った。「人は『フィッティングルーム』に何かしらの答えを探しに来ている」ことを。

・コーディネートは人それぞれ異なる個性を映し出す

 逆にいうと、それぞれがそれぞれに生きればいい。自分らしさを、フィッティングルームで探して、自分を見つけて、意気揚々と、街を歩けばいい。それは、ある意味、「ソージュ」の事業の姿勢とも合致しているようにも思えて、心に染み入る。

 案内してくれた小門 那緒さんの話を聞いていて、なるほどと思った。代官山のサロンでも、ポップアップストアでも、「決して売り込まない」のだそうだ。「売れ」と言われないものだから、最初はスタッフが皆、困惑する。そう言って彼女は笑う。

 でも「もしも来店してくれた人の“自分探し”」であれば、服を売り込む必要もない。また、逆に、自分を見つけられれば、服を自然とそのコーディネートで買っていく。つまり、それぞれの人生、価値観を尊重して、アシストする。それだけのことだろう。

・顧客との距離を縮めるための自己表現が求められる

 最初は、正直、呆気に取られたアート展ではある。けれど、なぜか、終わった後の僕の中では納得感が強かった。

 僕が知る限り、ネットショップでアート展をやっているというのは、そう多くない(というか、ない)。でも、不思議と彼らの姿勢が見えてきた。ともに歩んでいきたいと思えるお客様の心理も見えてきた。

 誰もが予想できることをやっては、人は驚かないし、その提案者側と長く、一緒に歩んでいこうと思わない。期待を込めて、市原さんと話して、共感して、しばしば気づきを得ながら、僕が取材もしてしまう理由がなんだか分かった気がする。

 だからこそ、これからはこういう動きがあってもいいのかなとも思った。

 それは、これまで以上に、顧客接点が大事な時代だからだ。自らの姿勢を、経営者やブランドが指し示すことは、お客様との関係構築の上でも大事になる。またその上で大事な、ブレないこだわりは何なのかをブランド側も再度、考えるきっかけになる。

 賛否分かれるところもあるだろうが、先ほど話した通り。僕らの日常は誰かしらにより、生み出されたもの。アートと事業とは本来、近い関係にありそう。生み出す物なんだ。だからこそ、いつかこの跳んだ発想が、長い目で見れば、プラスに働く投資であること。それを証明するだけの躍進をすることを期待したい。

 今日はこの辺で。

 

 

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