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商品には色々な視点があって然るべき その切り口にものづくりの新たな姿勢「ててて商談会」

 商品には色々な視点があって然るべき。商品自体の個性はさることながら、商品に至るまでの考え方、全てがお客様の関心となりうる。そんな時代だからこそ、今回も「ててて商談会」にやってきた。ここでは、多くのものづくりの精神に触れられる。話を聞きながら、お客様やファンにとっての充実感や満足感とは何か。それを考えてみた。

・インクルーシブデザインがもたらす価値

 僕が今回、話を聞いて一番、気づきを得たのはこちらだ。「IKOU」というブランド。それはインクルーシブデザインを意図したアパレルや雑貨や椅子などのブランドだ。

 インクルーシブデザインとは何か。運営元のHaluという会社はこう話す。「従来のデザインのプロセスでは脚光を浴びなかったニーズに応えるものを指します。私たちの場合は『障がい児』という部分に焦点を当てた商品を手掛けています」と。

 例えば、脳性麻痺の症状で言えば、何かを触ろうとしたりもできないので、常に介護が必要。すると、不自由な分、洋服を「選ぶ」ことになる。

・誰にも等しく快適に過ごせるための商品作り

 彼女がそこに課題感を持っているとすれば、対応した洋服がまだ少ない。彼女はアパレル業界出身ということもあり、プランニングして、ニーズに合わせて、作ったのだ。

 それらの商品は、そ障がい児が抱える課題を共通軸で捉えて、必要なニーズに商品で応えている。このパンツもそうで、障がい児は体が細い子が多い。なのでずり落ちてくることが多い。お腹周りを緩やかに作りながらも、さらにギュッと絞れるような仕様にしているのだ。

 どんな人にも、等しく、快適で心地よい瞬間が存在する。障がいを持っている人々だって、幸せでありたい。まず、本来、人として得られる快適さを手にできる環境を。それで、障がいを持つ人は、救われる。「生まれてきてよかった」と。

・障がい児向けであることが長く使われる理由となる

 着脱が難しければ、このようにボタンをつけた。それだけではなく、素材としても柔らかく、着心地を重視した。利便性を考慮し、母への配慮と、障がい児の快適さと両面からサポートする。それが、このブランドにおける服の姿勢なのだ。

 こういう話をすると大抵が「『障がい者向け』の商品ね」そういうに違いない。でも、それは違っている。何も、それは障がい児だけでなくてもいいからだ。

 僕が思い浮かべたのは、昨今のファストファッションのブーム。2回ほど、着用して捨てていく現状が地球には優しくない。

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 その意味で、彼らの商品は、その逆をいく。どういうことか。

・等しく同じ目線で生きることにもなる

 ここまで作り込まれていれば、長く使うことを前提となる。それに、障がいの有無に関わらず、子供は皆、一様に手がかかる。その仕様は障がい児以外の子供を抱える親にとって、負担の軽減にもなる。快適な素材を用いているので、自然と物持ちが良くなる。

 何が大きいかって、社会課題に向き合い、障がい児の商品を通して、その解決へと導いているという現実だ。それは、障がい児が存在する意義にもつながる。そして、心身ともにオープンな気持ちで、外に出られたら。そう同社さんは願うのである。

 最終的には、彼女は障がいのない人とある人が対等に、同じ目線でその立場を尊重する世の中を思い描く。今のジェンダーレスの動きと同様に、彼らの存在を踏まえて、社会で対等に仕事が生まれることを、祈りたい。商品がそのスタート地点とするならば、とても踏み出した一歩は大きい。

・現代人は疲れている

 その他のものづくり企業も見てみることにしよう。共通して、「体を養う、癒す」というような視点が多く見られた。皆、疲れているのだろうか(笑)。例えば、こちらは「RELIEFWEAR」というブランド。「身につける養生」というテーマで展開している。

 TANDEN PANTSは、デスクワークなどが多い女性に向けた商材。骨盤を安定させつつ、お腹を締め付けないパンツである。実は、「ヘソ下三寸(約9cm)に体の芯がある」。そう言われていて、ここを中心に腰と下腹を安定させることで、体のバランスが良くなる。自然とその姿勢になることを狙いにしているのだ。

 昨今はベルト然り、そこより上で縛ってしまうことが多い。だから、逆に帯をつけて腰のあたりで縛るように設計。それで自ずと中心を意識するようにしている。 

・別府発祥、お風呂から広がる心落ち着く世界

 癒しには色々な切り口が考えられる。その代表的なものとして「お風呂」があるが、その着眼点が面白い。小説のストーリーを思い浮かべながら、湯船に浸かる。提案しているのが、「HAA」というブランドで、写真の通り。

 入浴剤を繊細な色合いの包み紙で覆う。そして、その紙には短編ストーリーが書かれている。それだけで、お風呂が特別な時間となる。

 そもそも、ブランドの発祥地は別府であり、温泉が身近にある場所。昔から「湯治」という考え方があり、お風呂との縁が深い。「湯治」とは、特定の疫病にかかっている人が、比較的、時間をかけて温泉に通い、治癒させる行為のことをいう。

 それこそがこの土地における価値。だから、お風呂がもたらす効果を信じている。それを踏まえて、着想したのがこの商品なのだ。入浴剤で地域の価値に敬意を示して、人々の癒しをもたらす。

・刺繍作家の独創性を製造技術により活きる

 また、最近の傾向として、大量生産にこだわることなく、付加価値を追い求める姿勢というのも顕著だ。こちらは「filament」というブランドである。元々は、カズマというカーテンの企画製造などを行う会社が生み出したブランド。

 元々歴史は古く、長年培ってきたテキスタイルの技術がある。ゆえに、それを通して、手刺繍の作家の表現を様々な商品に落とし込む。

 どういうことか。その製造技術の高さがあるから、刺繍での表現も印刷で可能なのだ。だから、それをモチーフにすることによって彼らなりの付加価値を示すわけである。手刺繍で作られる世界は、通常のデザインとは異なる。作家の独創的な刺繍柄が、商品に落とし込まれ、広がるのは、オリジナリティあふれる世界。

 だから、カーテンにしてもその柄で遊ぶ。遊ぶ?要するに、日光を通して、床に映し出される影絵で、その刺繍の魅力を表現する。ただ光を遮るだけではない視点。

 そこから派生してカーテン以外にもチャレンジして、バッグなども展開している。オリジナルのデザイン上に刺繍を掛け合わせて、作家が納得したその調和のとれた表現を印刷で再現している。この取り組みにより、カーテンから更に、ジャンルの幅が広がっていくのに合わせて、自らの価値の応用と、そして新たな顧客の開拓を進めていくわけだ。

・商品の製法が売りとなる

 商品づくりの面からこだわる。これも、ものづくりの魅力。儚い自然の一瞬をインテリアに。写真を見てもらいたい。「sora cube」といって、実際の草花が入っている。わざわざ農園から植物を取り寄せ、その一瞬をキューブに閉じ込めているのだ。

 農園から届いた乾燥した植物は、液状のアクリルを流し込まれて、作られる。植物の周りに生まれる気泡すら、ちゃんと抜くこだわりようだ。最後に、熱処理を行い、キューブ型にカットして「かんな」がけして、大事に育まれて作っている。自然の偉大さを思えばこその活きる職人技である。

・広がる商品の可能性

 職人技と言えば、それを応用する動きも。加藤健旗店という会社では、エプロンを手がけた。

 元々この会社自体、旗、幕、暖簾、法被・半纏、幟を中心に手掛けてきた。だからその知見を取り入れ、写真のように、それ自体がミトンになったり一工夫加えた仕様にしている。エプロンの利便性を高めるベクトルに、暖簾などの製法が活かされるというわけである。

 商品は飽和状態だからこそ、今一度、一つの切り口にとらわれないことが大事だ。技術やその土地の価値、文化などを掛け合わせながら、商品を作ることが大事なのである。だから、冒頭話した通り、商品には色々な視点があって然るべき。

 商品自体の個性はさることながら、商品に至るまでの考え方、全てがお客様の関心となりうる。充実感や満足感を満たす、新たな潮流を見つけて、ものづくりの価値を実感した次第である。

 今日はこの辺で。

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