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マジで命懸け!ガーナへの想いチョコからアパレルへ MAAHA チョコ 田口愛の挑戦はまだ続く

 以前、会ってからもう2年が経つなんて、信じられない。先日、「MAAHA CHOCOLATE」を手がける田口愛さんに会った。彼女は20代にして、ガーナに工場を建て、現地に住む農家の人たちと、日本の消費者の架け橋となったミラクルガール。その地域の貧困などのあらゆる課題にも応える姿勢だから、チョコを起点に、その価値に共感する企業とのコラボにも意欲的。僕は、元々は、そのガーナに向き合う姿勢に心動かされ、記事にしたわけだが、この日、思いがけず、千趣会の発表会で、彼女と再会を果たした。そして、その進化を実感して、2年の時の重さを感じたのである。

・派生して広がるガーナへの想い

 千趣会の発表は「ベルメゾン」ブランドで、「MAAHA CHOCOLATE(マーハチョコレート)」とのコラボファッションを手がけ、合わせて、ポップアップストアも行うというもの。遡ること、2年前、彼女はまだ大学生で、本当に右も左も分からない様子だったが、その一歩は今を見れば、間違いなく、進化した事がわかる。

 彼女の行動の起点は、子供の頃の話にある。祖父とのかけがえのない思い出として、チョコがあった。大事な時にはいつもチョコをくれて、いつしか彼女にとっての元気の源になった。だから、彼女自身、勝負事の前には必ず、食べるようになって、チョコに助けられてきた。だからこそ、彼女はその感謝の意味を込めて、ガーナへと単身で飛び立ったのである。

 出国直前に親に報告をして、有無を言わさず、行動するその行動力(笑)。その辺に彼女らしさの片鱗が見られる。

 それが、このMAAHA CHOCOLATEの誕生に繋がる。驚くなかれ、お礼を言おうにも、ガーナの農家の人たちは、自分の手がけたカカオがチョコレートになることを知らなかったのである。え?愕然とする彼女。そこには、ただひたすら「お金に変えるためだけに」それを栽培している実態が広がっていたのだ。彼女はそれを機に、ガーナの人たちに出来上がったチョコを見せることで、自分たちの仕事の意味を感じてもらおうと強い決意を抱く。

・広がるガーナへの想い

 とはいえ、何をしたら良いのかわからない。無我夢中で日本とガーナを行き来しながら、日本の人たちに、そこで作られたカカオをベースに、チョコレートを作るワークショップなどを行う。そういう行動を通して、その実態を伝えようと考えるに至る。

 ところが、その前に立ちはだかったのが、コロナ禍。それによってガーナにいく事が許されなくなった。僕が、出会った頃はまさにその時。溌剌と、その想いを語っていたが、実は、正直言えば、どうすれば良いのかと、思い悩んでいた時期だと振り返る。

 その時も語っていたが、何もできない中、日本にいた彼女は、大きな行動に打って出る。それが、クラウドファンディングだ。「現地の人に、チョコレートを見せたい!」その最初の思いから着想して、世の中に訴えかけたのは「チョコレート工場を作りたい!」というメッセージであった。

 誰よりもその実態を知る彼女の言葉は、リアリティを持って、日本人の心にも問題意識を芽生えさせた。そして、不可能かと思われた、工場を建てるための費用は、それによって集めてしまって、息を吹き返すように、快進撃は続く。

・完成度が向上し道が開ける

 工場が完成したのは昨年だというから彼女の取り組みは現在進行形である。そしてそれを契機に、製品化としてまた一歩、彼女は階段を上がる。日本での工場とも連携を果たすのだ。正直、出会った頃の商品は手作り感たっぷりであった。左が2年前、僕が購入して撮影した商品。右が今である。

 ガーナの工場でチョコレートを作るところまでは実現できる。どうやって作るの?と僕が聞くと、鮮やかに説明が始まった。写真の通り、カカオは皮を剥ぎ(工場では機械を使うが)、出てきたものがチョコの原材料となる。

 よくチョコレートで「カカオー%」と書かれているのは、これが何%入っているかを示しているのである。石臼でそれを細かく、砕いていくと65%くらいはカカオ本来の油が含まれていて、油が滲み出てきて、ドロドロの状態になるのである。それをサトウキビから出る砂糖と掛け合わせることで、チョコの原型ができる。ガーナではそれをバナナにつけるなどして、喜ばれているとか。

 先ほど触れた連携する日本の工場には、そのドロドロになったチョコを製造過程に乗せるわけだ。かくして、その商品の中身とパッケージも含めて、完成度の高い状態で仕上がることになった。当然、作る事ができる数量には限りがある。だから、彼女は、ネット通販によって受注することでコントロールした。それがブレイクして、なかなか手に入らない逸品として話題を集めることになる。

・商品を手にしてお客様も意識する

 なるほどなと思ったのは、その商品力である。実際、当初は彼女は思いが先行していたから、消費者にとっての美味しいを理解しきれていなかった。実際にお客様と触れ合い、そこでの感想を集めることで、それを味へと反映していった。つまり、先ほど、書いた通りだが、カカオをどの程度入れる事が、自分たちのお客様にとって美味しいに相当するのかを、そこで学ぶことになるのである。

 この日、僕は「カカオテリーヌ」を購入して実食したが、確かにクオリティが格段にアップしていた。地味な気づきで恐縮だが、パッケージ然りであるけど、中のチョコの包装の取り方についてのきちんとした解説が一緒に同梱されている。そのあたりに、進化を感じるわけである。

 「なぜあなたのチョコはそれだけ売れるのですか?」。不思議そうに質問する記者の姿もあったし、確かに見た目は普通のチョコのように見える。しかし、もう説明の余地はないだろう。彼女のガーナへの思いとセットで、試行錯誤を続けて辿り着いた味わいのこのチョコだから、広がったのだ。ファンの口に合わせた味だから、毎回、リピートされるのである。

・だからベルメゾンが動いた

 おいおい、いつ、ベルメゾンの話題が出てくるんだ?そう言われてしまいそうだが、そこを抜きに、ベルメゾンのコラボレーションを語ることはありえないのだ。

 さてさて、そこでベルメゾンがチャレンジするのは、MAAHA CHOCOLATEをモチーフにした洋服、靴下、スカーフなどの服飾雑貨である。ここには、千趣会の思いも交錯する。彼らが扱う商品の中でも、アパレルは課題の多い商品だ。昨今、アパレルは、若年層を中心に、安く買ってそれをすぐに廃棄するという流れが定着しつつある。

 しかし、それによって生まれる廃棄物は地球にとって優しいとは言えない。同時に、ベルメゾンは通販会社のようなイメージかもしれないけど、自ら製造するメーカーである。自ら手がける商品を通して、それらを鮮明にし、かつ、彼女の思いになぞらえてガーナを救い、同じく地球を思う活動で自らの思いを形にしていこうという。

 この開発に携わるのは、千趣会の田村 英さん。彼曰く、「ベルメゾンの洋服は毛玉ができづらい」など、長く使われるだけの商品製作の素地がある。ずっと愛される理由があるわけだから、別に、単純に彼女のブランド名を借りて、それをデザインするのではないことを強調した。

・馴染ませることで伝えるメッセージ

 自分達の商品だからこそ、できるメッセージの伝え方がある。そう彼は思ったわけで、長く使われるべき衣類の存在を通して、ガーナの課題を顕在化させ、田口さんとともに、世界が抱える悩みに応えていこうと意気込む。

 なぜ、衣類の話がガーナに繋がるの?そう思うだろう。これは、田口さんと話していて、驚いたことなのだが、実は「現地には多くの中古服が寄付されている」。一見すると、それは、良い動きのように思えるが、実は、それで地元の繊維産業を圧迫し、職を失わせ、何より過剰なほど寄付された衣類の多くは、今、ゴミの山のようになっているというのである。本末転倒である。

 つまり、抱える課題は、チョコ以外の部分でも存在していて、だからこそ、千趣会の想いに乗ろうと考え、コラボレーションを決意したというわけなのだ。

 だから、売って終わりではないことが伝わってくる。「アディンクラ・シンボル」というのをご存じだろうか。ガーナではお馴染みの概念や格言を示すシンボルである。例えば、「調和、賢さなどを示す意味合いの紋様を、スカーフの中に入れたり、それをモチーフにしたシャツを手がけている。彼らが意識したのは、それらを自然に日常に取り込むこと。

・売って終わりではない

 奇抜になりすぎず、アクセントとして取り入れることで関心を引く。そこでは商品と一緒にポストカードを添えるわけだ。それはなぜなら、その紋様に意味があることを伝え、ガーナへの関心へと誘うためである。そして、この課題自体に目を向けさせる。

 裾野が広がるようにQRコードを入れて、そこからその紋様がダウンロードできるようにしている「これは商品化されていないのだけど、我々の意識を表す写真」。そう田村さんが紹介してくれたのは、こちら。

 MAAHAと書いてあるけど、この五人で形成される綴りは一筆書きで一つにつながっている。世界は一つであり、そしてそこに我々も共感して、できる限りのことはしたいというメッセージを込めて、作って彼女に渡したそうである。

・商品で課題解決できる未来 

 ここで大事なことはなんだろう。それは実にシンプルな話だ。一つ、長く使われる商品を作らないといけないということ。もう一つ、現地の人たちが稼げる仕事を創出していくこと。

 寄付が悪いとは言わない。ただもっと本質的に、その課題に向き合わないといけない。最初は、チョコの思い出を頼りに、ガーナ農家に感謝を述べたい。それだけだったかもしれない。でも、その一歩が工場を作るまでになった。

 でも、いざ、工場を作ってまた見える景色が変わったのだろう。もっと乗り越えなければいけない課題があると。その為には、彼女だけではできない。先に見据えるのは、企業も人も、世の中が“ひとつになって”何をするべきか。それを考えることだ。あのトップスがシンボリックに示すように。

 結局、彼女の言葉の説得力はその行動力に裏打ちされている。最初の頃のワークショップの時代など、お金がなくて、バイトを三つ、掛け持ちした。それでガーナと日本を行き来した。更に「危険は無かったのか」と聞くと「マラリアに数回、感染して死にかけた」と。一度ではなく、数回である。ワクチンがないから対処のしようがない。なのに、行き続けた。

 それでも彼女はこう言う。「私はよかった。治療できるお金があったから。でも、現地にはその治療代を払える人すらいない」と。彼女の魂を見ていると、思う。安さ勝負じゃない、商品としての大事な役目がここにはあることを。

 今日はこの辺で。

 

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