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伝統×革新──鬼塚友紀が創る、新時代の刺繍ジュエリー yuki onizuka

伝統技術の進化が生む、新たな美のかたち

 日本の伝統工芸の一つ、「横振り刺繍」。

 かつて和装の打ち掛けや仏具に施されていたこの技法。それが、今、新たな形で現代のライフスタイルに息づいている。その中心にいるのが、「yuki onizuka」のデザイナー、鬼塚友紀さんだ。彼女は、京都で仏具や祇園祭の山鉾の修復を手がけながら培った横振り刺繍の技術を、まったく新しい形へと昇華させた。

 「いびつだけれど持ち主の想いがこもった、替えのきかない一着に触れてきた経験。それが、自分自身でも特別な一点を生み出したいという思いにつながりました」。

 そう鬼塚さんは語る。彼女が手がけるジュエリーは、伝統的な刺繍の枠を超え、立体的な構造や透け感を活かした繊細なデザインが特徴だ。その美しさは、植物の生命感や自然の動きをそのまま切り取ったかのような印象を与えるのである。

「横振り刺繍」の技が生む、唯一無二のジュエリー

 鬼塚さんが用いる「横振り刺繍」とは、何か。それは、大正時代に日本で誕生した特殊な技法。

 ミシンの針が上下に動きながら、手や足の動きに合わせて左右に揺れることで、まるで手描きのような繊細な刺繍が施される。

 「膝でブレ幅を調整しながら、針を操るんです。もともとは着物や和装品に使われていた技術です。ですが、和装の機会が減る中で、この技術を活かした新しい表現ができないかと考えました」

 鬼塚さんの発想は、単なる刺繍のアクセサリーではなく、「立体的な刺繍ジュエリー」という全く新しいジャンルを生み出すことにつながった。通常、刺繍は平面的な装飾として使われるが、彼女の作品は異なる。

 繊細な糸を何層にも重ね、透け感や揺れを活かしながら、まるで植物が風にそよぐような立体感を表現しているのだ。

仏具修復の経験が導いた、刺繍の新たな可能性

 鬼塚さんがこの世界に足を踏み入れたきっかけは、なんだろう。それは、意外なところにあった。彼女は服飾の専門学校を卒業後、京都で仏具の修復に携わっていたという。

「それは、お寺の住職さんが身につける大袈裟や、祇園祭の山鉾に掛けられるタペストリーなど。どれも、高級なものでした。職人さんの高齢化が進む中で、この技術をどう未来につなげるか。それを考えたときに、自分なりの表現で伝えたいと思ったんです」

 修復の仕事を通じて、何百年も受け継がれてきた布の美しさや、そこに込められた想いの大切さを知った鬼塚さん。その経験が、彼女のジュエリーづくりに活かされている。

ジュエリーとしての刺繍──伝統と現代の融合

「ジュエリーにするには、耐久性も大事。通常の刺繍では難しかったけれど、金属と組み合わせることで、新しい可能性が生まれました」

 特に、リングやバングルといったアクセサリーは、刺繍がズレやすく、デザインとして成立させるのが難しい。しかし、彼女は金属の補強を活かして、繊細な刺繍を美しいフォルムのままジュエリーへと仕立て上げた。

 その工夫とは裏腹に、彼女はなんとも無邪気な顔を浮かべる。

「もともと、自分が見てみたかったものを作っているだけなんです」。

 その言葉の裏には、純粋な創作への情熱と、伝統を次世代へとつなげる使命感が垣間見える。

今後の展開と挑戦──刺繍の可能性は無限大

 鬼塚さんの作品は、東京や関西を中心にポップアップショップで展開されている。インスタグラムでも制作過程を公開しているのだとか。その美しい刺繍技法は確かに、多くの人を惹きつけるに相応しい。

「刺繍はもっと自由でいいと思うんです。日常的に取り入れやすく、年齢やシーンを問わず楽しめるものにしたい」

 こうした思いから生まれた「yuki onizuka」のジュエリー。それは、伝統と現代のライフスタイルを結びつけ、新しい可能性を提示している。

新たな才能の発掘──鬼塚友紀が示す、未来への布石

 「yuki onizuka」のジュエリーは、単なる装飾品ではなく、手仕事の温かみや、伝統工芸の進化の形を体現している。それは、鬼塚さん自身の歩みと重なりながら、未来へと続く新たな道を示している。

「伝統技術は、形を変えても受け継がれていくもの。私ができることは、その可能性を広げることだと思っています」

 横振り刺繍という日本の職人技。それが、新たな価値をまとい、今ここに生まれ変わった。鬼塚友紀という才能が紡ぐ、刺繍の未来はまだ始まったばかりだ。

今日はこの辺で。

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