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CRMの醍醐味は数値化にあり 顧客との関係をどうKPI設定するか

 デジタルを推進するほど、人間的で本質的な結びつきが大事になって、CRMが脚光を浴びる。ただ、何を数値目標に設定するかが案外、わかっていない。だから、「DMGCサロン2022」で、やずやで第一線を走り、今CRM研究家として活躍する西野博道さんの話を聞いた。それで思ったのは、何をKPI設定するかでCRMは全く別の方向へと向かうという事実であった。

イメージできないCRMの未来像

1.成果が見えづらく時間がかかる?

 CRMに関してよく言われることがある。それは成果が見えにくく、時間がかかるということ。そして、もう一つは、扱う範囲が広すぎて、イメージがしづらいということだ。だけど、それは数字で捉えていないからで、指標とすべき数値がわからないから、起こる。そう西野さんは説く。

 では、その指標の在り方は?というと、シンプルに「稼働顧客を増やす」。それを考える上で、「稼働顧客」の内訳を見てみる。大きく分けて3つしかない。

  • 1.新規顧客
  • 2.既存顧客
  • 3.離脱顧客(からの復活)

 稼働顧客を活かし、顧客価値を高めるマーケティングは、これらの「顧客維持率」を数字でみていくのである。「顧客維持率」というのは「一年以上、継続してくれた人の数」である。

2.顧客はすくすく“育つ”

 西野さん曰く、顧客は成長していくと話していて、まるで赤ん坊が成人していくようだと例えるわけだ。だから、その人間でいうところの“年齢”=購入の回数でアプローチを変えていく必要があって、当然、それらごとにその顧客維持率(数値)を見るわけである。

  • F1-F2顧客 初回顧客、よちよち顧客
  • F3-F6顧客 コツコツ顧客
  • F7-F14顧客 優良顧客
  • F15以上顧客 ゴールド顧客
  • ※Fは購入回数

 それぞれの年毎に、それぞれの数の推移を追いかける。そうすれば、それぞれのお客さまへのマーケティングが奏功しているかがわかる。

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3.何故に離脱顧客が生まれるか

 「稼働顧客」は新たにその時に獲得した「新規顧客」と今まで買ってくれている「既存顧客」と一旦離脱したけど、復活した「離脱顧客」である。「離脱顧客」に対してもアプローチをして、そこで復活させれば、稼働顧客となるから、このデータと接触も大事である。これらを相対的に、状況に合わせてどうアプローチするかを思案することで、より実態を伴った施策へと変わってくる。

 ちなみに、離脱顧客が生まれる理由を考えると、CRMの本質が見えてくる。離脱顧客が生まれる最大の理由が、年間LTVを安易に向上させようとすることにある。「年間LTV」は年間通して、商品に支払ってくれた金額。つまり、事業者が目先の売上を追い過ぎてしまうと、年間LTVをあげようとしがちなのである。

  • 1.購入回数を増やそうとする
  • 2.累計購入金額を増やそうとする
  • 3.最終購買日を近くする

 これをやるほど、一旦は金額が上がる。けど、その分、離脱が増える。ここは見えづらくて、売上が上がっている裏側で離脱が生まれ、その離脱ゆえに、売上が落ちた時に、あれ?という風になる。ここで売り上げを安定させるために必要なのは、顧客維持率を向上させるマーケティングだというわけである。

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顧客維持率を高めるKPIとは

1.顧客の成長具合で切り分け、その数値を分析

 「顧客維持率」を向上させるマーケティングとは要は「離脱させない」ということだ。その各々の(購入回数のお客様ごと)マーケティングの精度を確認するために、接客のあり方を見直し、その検証をしかるべき数値で割り出すことが大事なのだ。

 もし、それが順当にいっていれば、F1-2顧客はF3-F6へと向上して、より稼働顧客がすくすく成長していく。この大前提を踏まえて、西野さんが編み出したのが「顧客BS」と「ゴールド顧客育成マップ」という2つの指標。つまり、その曖昧になりがちな接客の検証をしかるべき数値で割り出し、KPIの設定を行って、成果につなげるのである。

2.顧客BSを考える上で

 顧客BSというのは、先ほどのF1-F2 F3-F6とその購入回数と顧客の成長度合いだけを切り出して、各々のマーケティングの精度を確認する数値である。簡単に説明すると、「そのお客様はどれだけ会社にお金をもたらすか?」という話である。

 そこで「稼働顧客」の購入データを一年単位でA期間、 B期間 、C期間と分けて考えてみる(期間下の数字は月)。先ほどから話している通り「稼働顧客」は

  • ・前年も稼働顧客だった稼働顧客(グリーン)
  • ・前年は離脱顧客だった稼働顧客(グレー)
  • ・その年に新しく稼働顧客になった人(イエロー)

・・・しかいない。

(図1)

 この図の赤で書いた「顧客3」は期間を追う毎に、F1からF6まで向上している。これがいわば、すくすく育った状態である。

 ではこの図で「期間C」を終えた時点(時点3)で、「前年稼働顧客」の顧客維持率は何%だろう。

3.顧客維持率の出し方

 そうすると、「期間B」で前年稼働顧客だった稼働顧客(グリーン)は、顧客1,顧客3,顧客6,顧客8,顧客9,顧客11の7名がいる。「期間C」では前年稼働顧客だった稼働顧客(グリーン)が顧客1,顧客3,顧客6,顧客8,顧客11の5名が残っている。この二つの期間で出した顧客維持率は、5/7(7名に対して5名だから)=71.4%ということになるわけだ。

 これをF1など細かく分けてチェックをしていく。例えば、上記で「前年稼働顧客でF1顧客」の顧客維持率は、どうだろう。「期間B」では顧客8,顧客10,顧客11の3名が「F1顧客」。「期間C」では顧客8,顧客11の2名が「F2顧客」となり、顧客維持している。F1顧客の顧客維持率は、2/3=66.7%、となる。

 ちなみに、お客様によっては同じ期間内で、F2にまで成長するお客様がいる。上記で言えば、顧客13がそれに相当する。要は、今年新規獲得顧客の再購買である。そういう今年新規獲得顧客数の再購買率を、F2転換率と呼んでいる。上記で言えば、1/4=25.0%ということになる。

 これを踏まえて「顧客BS」について触れていこう。BSは「貸借対照表」のことである。

顧客BSで顧客価値を可視化する

1.稼働顧客と顧客維持率の数字をまず活用

 通常の貸借対照表であれば「現金および固定資産」と「負債」とのバランスシートである。ただ、顧客BSは顧客資産と事業リスクとのバランスシート。この「顧客資産」とは、新規顧客獲得をしないで向こう5年得られる「顧客価値」である。

 「顧客価値」は今の稼働顧客数と顧客維持率、年間LTVによって導き出すことができる。ここがCRMの実績を未来の数字と照らし合わせて判断する要素となる。

 ここではまず「F一」から「F五」の顧客維持率で仮の数字を出した。F1からF15までやるとキリがないので、大きく5つにわけている。例えば、F一はF1、F二はF2だけど、F三はF3-6、F四は7-12、F五はF12以降という具合に、企業の規模感に合わせて、5つに振り分ける。(創業まもなければ、F15などあるわけがないから)。

 その想定で「顧客BS」を考えよう。

(図2)

 まずF一、F二という具合に購入回数ごとに「顧客維持率」を出す。それに(現在)の稼働顧客数をかけて、その各々のフェーズの顧客のポテンシャルを診断するのである。F一顧客なら、顧客維持率は18.80%。それに対してF一顧客の(現在)の数が58,428名。そこで一年後のF一顧客で「稼働顧客数」を出すのである。

(一年後:稼働顧客数)58428名×18.80%=10984名

2.それに基づき、売上の価値に換算する

 ここに「年間LTV」を掛け合わせる。「年間LTV」とは一年間通して、お客様が買ってくれた金額である。

 上の「顧客BS」では「F一顧客」の場合、年間LTVが15,463円。一年後の「F一顧客」の「稼働顧客数」に基づいて一年後の「売上」を出すわけだ。

(一年後:F一顧客売上)15,463円×10,984名=169,852,767円

 つまり、F一顧客がそのままのモチベーションであれば「そのお客様はどれだけ会社にお金をもたらすか?」である。2、3、4年目も同じモチベーションであれば、その時のF一顧客は5年後、どれだけお金を残すのか。

 これを5年後まで出していく。すると下記のようになる。

図3

 それをF二、三、四、五でもやる。そうすれればこの「5年間累計売上」が「顧客価値」(オレンジの部分)に相当する。ただ、その数字を見ただけだと「良いのかどうか」がわからない。ここで、そこを判定するべく出すのが、「年商倍率」(ピンクの部分)。つまり、図2でもある通り、この会社は年商70億円。だから、顧客価値を年商で割れば、元からの資産がどれだけ増えているかが分かる。

 ここでは、240.37%だというわけだから5年で約2.5倍に伸びるというわけだ。

 こうやって、F一からF五までそのマーケティングを検証し、「稼働顧客」を増やす努力をしていく。スタッフが各々顧客へのマーケティグをきちんと適切にできているかの判断ができるわけだ。目指すのはこの「顧客価値」を上げること。それにより、スタッフも自分の貢献度合いが可視化されるから、普段の接客に励みができる。こうやって、スタッフとお客さまが共に、成長していくということになる。

ゴールド顧客育成マップで残存率を把握する

1.同じくF一、F二を使って残った数を割り出す

 もう一つは、「ゴールド顧客育成マップ」である。これは「顧客BS」とは違った視点で、獲得したお客様の成り行きを見る指標である。新規で獲得した顧客について「どれだけ残存するか」の実力を示す。

図3

 まず「新規稼働顧客」を切り出して、それがどれだけ残るのかを計算する。それも獲得した顧客を逃さないだけの実力を持っているかを明確に示す。ここでは新規獲得顧客を仮に10,000名とさせてもらった。

 まずF一顧客はF2転換率(一年の中で再購入する人の率)があるので、その分を一旦差し引く。仮にF2転換率が68.40%であれば、6840名。

 そこで、残った3160名が(その一年で一回購入した)「F一顧客」となる。「顧客BS」に基づけば、このF一顧客は顧客維持率18.80%。だから、その人数が「F二顧客」となって、3160名の18.80%は594人である。

2.残存率を見ているのでF2転換率で流れた人も加える

 ここでは残存率を見ているから、F2転換率の人もこの数字に混ぜる。なぜなら、F2転換率により既にF2になっているお客様も、元を正せば新規獲得顧客10,000名の中の「F二顧客」だからだ。

 加えて「F一顧客」から離脱した人が「F二顧客」になることもある。これを仮にF一顧客3160名のうち離脱顧客が81.2%だとしたら、2566名。ここから仮に、復活してF二になった割合を1.5%とすれば、38名。これらを全部足すと、F二は7473名になる。

 あとは、「顧客BS」の顧客維持率を、同じくF二顧客、F三顧客、F四顧客、F五顧客へと当てはめる。ただ、「ゴールド顧客育成マップ」に書いてある通り、離脱顧客からの復活人数も加えて、それを数字に反映させれば、最終的に、新規獲得した10,000名が何名残ったかを把握できるわけである。

顧客価値を高め、顧客維持率を上げるマーケティングが要

 ここでわかることは、これらのデータに基づけば、LTVはそのCRMの指標ではないということ。売上を思うほど、顧客の単価を上げたり、回数を増やしたりしたくなるけど、それは結果、離脱を招く。それはCRMの本質からかけ離れてしまう。

 その時々のお客様との相応しい関係構築を意図して、購入回数ごと、数値化して検証していくのである。自ずと、その接客の大事さを実感することとなり、コールセンターの意義が見えてくる。各々それが実践できれば、結果、「顧客維持率」は向上して、「顧客価値」が高くなっていくのである。

 その「顧客価値」はまさに今の数字に紐づいて、未来を示すものだから、今、この時点で意図するべきは、長期的な視点に立って、今何をするべきかを各々が考えることなのである。

 人間関係同様に、距離感に応じてアプローチが変えること。そして、しかるべきマーケティングをそのそれぞれに徹底させるべきなのである。信頼を深めていけば、自ずとCRMと言えるだけの礎ができるということになるわけである。

 今日はこの辺で。

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