アウトレット を新作と混在させない ECサイト の工夫

多様化する世の中において、これが正解というものはない。最近、リアル店と ECサイト を融合させる話がよく聞かれるけど、例えば アウトレット と新作の両方を持つブランドはそれらを一つのサイトに融合させることは正解なのだろうか。僕が面白いなと思ったのは、AMSの古田さんから聞いた話で、アウトレットを持つブランドの取り組み。プロパーのお客様との上手な使い分けで、価値を最大化している例であった。
アウトレット と通常 ECサイト 統合すべき?
当たり前の話だが、アウトレットとプロパーではお客様は異なる。普通の発想からいけば、その両方のサイトを分けて運用する方が良く、それはお客様の視点に立てば、そのほうが効果を最大化できると考えられるのが自然だろう。ただ、その運用側の視点にたてばどうか。サイトが二つ存在している以上最大化できているとは言い難い。
当然ながら、販促面や業務効率化を考えれば、やはり一つのサイトに統合する方がいいわけである。それに、今やSNSなどの台頭により、必ずしもその流入経路は様々で、お客様にとってのスタートラインがブランドサイトのトップ画面からとは限らないから、一つでも良いように思う。どちらがいいのだろう。
何気なくAMSの古田さんに聞くと「それはブランドが置かれている状況によりけりですね。ただ、それも一歩間違えれば大惨事です」と教えてくれた。
つまり「それぞれの戦略が明確に分かれていて、その差別化要因がきちんと同一サイト内で出せるか」が肝なのである。要は、プロパーとアウトレットのそれぞれの戦略の違いが定まっていない中で、統合したところでかえって両方のユーザーが入り混じり、混乱をきたすだけ。その場合は間違いなく、大惨事で、両方の売り上げは間違いなく低下する。
アウトレット と 統合して上手に運用するブランド
その点、彼が言うには「統合したファッションブランドもありましたね」と。では何が違うのか。
そのサイトでいえば、プロパーとアウトレットが統合されて「一つのドメイン」で運用されている。何が大きく違かったかと言えば、ズバリ、このブランドのアウトレットは統合前から、既に確立されていたということなのだ。例えば、タイムセールなどもリアルの店舗と同様の仕掛けをしていて、ウェブ上でも1時間おきにタイムセールが行われて、それはちゃんと在庫の連動もしていたという徹底具合である。つまり、それ自体でも成立するだけの強い個性と施策があったわけである。
アウトレットもある程度、育ってその個性を発揮していたからこそ、どういう風にサイト内で差別化すればいいかも見えてくるし、流入経路もそれだけ大きく異なる。何をお客様に対してアピールすればいいかも、わかっていたからこそ、この決断ができたのだと言える。
アウトレット商品を表示させない工夫
この土台があった上で、それらを統合したときに、サイト側でシステム上、AMSなりの工夫が垣間見られ、なるほど、と納得した。つまり、プロパーのユーザーがその戦略に乗って、このサイトに流入してきた時には全く違う“部屋”が用意されている。要は、既に「プロパー」と「アウトレット」のページが分けられているだけでなく、例えば、新作を求めて入ってきたユーザーには、カテゴリーで何かを選んで検索したとしても、その表示にはアウトレット商品が入らないように裏側で構築しているのである。
「普通にこのブランドを訪れる人は新作が見たくて入って来るので、アウトレットを探すモチベーションにはない」と古田さん。だからこそ表示する必要すらなく、これらはそうしたアウトレットとプロパーの戦略が全く違う上で、流入経路が異なることを前提に、サイト内のUI,UXの向上に努めているのである。
なので、冒頭、書いた通りだが統合するのは必ずしも正解ではない。それは、明確にその両方の戦略を築き上げないうちは、別々のサイトの方が明らかに運用がしやすいからだ。しかし、その戦略が整うとともに、今度はサイト側を運用する視点に立っての工夫が必要になってくる。上記に記した、適切なタイミングにおける転換で、運用側の業務効率が改善されて、会社としての利益率が上がっていくというわけである。
販売サイト一つにしても様々なブランドの特性を考えると、戦略も見せ方も大きく異なるので、その適切なタイミングは異なる。ブランドごと、そのフェーズごと、置かれている状況に応じて、その時の最適化を考えるべきだろう。そこに、そのブランドとしての進化があって、そこに伴うシステム化が必要なのである。リアルと同様、常に、その進化の歩みは止めてはならないのだ。
今日はこの辺で。