マムズタッチ 日本上陸 渋谷に一号店 韓国の「熱さ」と「あたたかさ」と「したたかさ」に学ぶ。
韓国の勢いは、なぜ、ここまであるのだろう。そんな思いで、僕は「マムズタッチ」というお店にやってきた。何のお店かというと、バーガーショップ。韓国でナンバーワンまで上り詰め、今やグローバル展開を推し進めている勢いのあるブランドであり飲食店の一つ。それが、東京・渋谷の一等地に、一号店を構えることになった。この空気を感じることで、その韓国の勢いを紐解こうと思い、一足早く、オープンする前に、この場所にうかがったわけである。
マムズタッチとは?
「マムズタッチ」とは、どんな店舗なのか。度肝をぬくハンバーガーの厚みが売りで、ただ、それはインパクトで勝負するだけではない。味へのこだわりを伝えるきっかけとしてそれがあって、真意は手作り感。そのネーミングからもわかることで、だから「マムズタッチ」。
つまり、母親が真心込めて作る料理のよう。注文を受けてから一つ、一つ、作り上げる。これが韓国でブレイクしており、その理由を聞くたび、その美味しさにおいては誰にも負けないとスタッフ誰もが口にする。
でも、意地悪な言い方をすれば、いいものを作っただけでは、ナンバーワンにならない。それで、スタッフの方に、聞いてみた。最初は小さな店舗だったでしょ?って。
韓国の一号店が1997年。最初は躓きも多かったと。でも、最初から、世界への意識は強く、PDCAを繰り返す中で、商品として日の目を見たのが、「サイバーガー」だった。2005年のことである。
韓国トップに押し上げた見た目と中身のギャップ
それは、「顎はずれバーガー」という異名を持つボリューム感でで度肝を抜いた。人々の強い関心をそこで集めるが、見た目はきっかけ。
一個一個、受注を受けてから、作る丁寧な製造工程に、口コミが広がって、その人気が定着する。見た目の派手さに対して、店舗名を裏切らない作る過程で垣間見る「母の真心」。このギャップがブレイクへと繋がり、口コミで広がることとなる。
味へのこだわりは素材から。商品名の「サイ」は(鶏の)太ももをパティとして使っていることに由来する。これが差別化要因になる理由は、通常のファーストフードではパティにバラ肉を使うことが多いから。それは同時に、タンパク質と脂肪の比率が優れていると評判となって、定着するのである。
彼らには先ほど書いた通り、当初から、世界を念頭に置いた壮大な目標があった。丁寧な製造工程を核にしながらも、スケーラビリティにも配慮し、生産性を高める仕組みづくりを心がけたわけだ。おかげで、店舗は拡大し、2021年第1四半期末の時点で、ロッテリアを抜いた。それは、韓国のバーガーショップでトップに立ったことを意味する。
スケールを意識したビジネスで、ついに日本へ
それを後押ししたのは、フランチャイズ加盟店の存在。収益性が高い仕組みが奏功して、必要な拠点に必要なだけ、店が浸透したわけである。また、SNSなどを活用して、ターゲットを絞り込んで、ブランド戦略を徹底できているからこそ、効率の良い商品販売数を実現。
廃棄率は、他の諸品フランチャイズ平均の12%に対して、2.1%という低さである。だから、その投資への回収期間は4ヶ月と出ており、他の15ヶ月よりはるかに、短いから、チャレンジする人も増えていく。
僕自身、実食したが、サイバーガーのチキンの柔らかさが印象に残った。バーガーショップにありがちな画一的な印象はそこにはない。また、味付けに韓国テイストを感じるものの、それが昨今、韓国のライフスタイルが浸透していることもあり、すんなり受け入れられた。
本格プルコギバーガーは、日本の人たちに配慮した渋谷オリジナルの味付け。驚いたのは、僕が取材した時点ではサイバーガーをはじめ、その金額を明らかにしていなかったこと。それだけ地元に密着するべく、まだ最後の最後まで、吟味を重ねている舞台裏を窺わせた。
トレンドとして惹きつけつつ、日常へ
しかも、渋谷を拠点にしたことも興味深い。韓国の味付けを大切に、個性としながらも、それが韓国ファンに留まらないように、心がけているからなのだ。韓国テイストを押すだけなら、新大久保を一号店の拠点にしたほうがわかりやすい。
けれど、彼らが意図するのは、マニア向けではない。大衆の中で、新たな潮流として「日常」に定着させる。それを念頭に置いているから、渋谷である必要があったわけだ。
確かに、僕がこのブランドを知ったのも渋谷であった。それは、昨年末のこと。長い行列ができていて、なんだろうと足を止めたのマムズタッチだった。それこそが、この日の足がかりとなった、三週間限定のポップアップである。実に、1日平均、1575名を集め、1日平均の売上は102万4000円。平均販売数は1042個を数えた。
改めて、韓国系のコンテンツは、自分たちの個性の発揮の仕方が上手である。しかも世界を視野に置くから、国ごと、その環境に合わせて、自分たちの持つものが、価値観として日常に浸透するように、効果的に、SNSなどを活用するわけだ。それが生産性を高めるとともに、消費者と触れ合い、その裾野を広げているのである。お見事、日本企業もそのやり方に学ぶところはあるだろう。
今日はこの辺で。