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“やずや” のやり方 西野氏 高橋氏 (1) オペレーター の質問力

やずやのやり方1

 これからの時代はお客様といかに長く関係性を築くかという部分が成長の鍵だと思っている。その点、お客様の定着と継続性が高い「やずや」西野博道さん(やずやグループ未来館 取締役社長 )の話は、その本質を突いていて、今回、その深掘りをしたいなと思い、今回、DMCの高橋貞光さんを交えて、対談を行っている。

———こんにちは。これまで西野さんと話をしていて、概論として「小さな実感」を通じて、商品の信頼を高めていき、1〜2年程度に経過すると、お客様が会社の信頼へと変わっているのですが、「会社の信頼へと変わるコミュニケーションのあり方」が僕は気になったんです。

———西野さんに現場で何を行われているのか、気になるので、コールセンターに詳しい方をご紹介いただきたいということで、今回、DMCの高橋貞光さんに参加いただくことになりました。今日はよろしくお願いします。

通心販売で心を通わせる

高橋貞光さん(以下、高橋さん) よろしくお願いします。もう私が西野社長の考え方をここまで実践してきたので、色々それにはお答えできると思います。まず、私がやずやさんの考え方を知ったときに心に残っているのは、通信販売の信が心(「通心販売」)なんですね。心が通じ合うということが通信販売です。

 お客様って商品だけの繋がりであると、健康食品の場合、飲み忘れなどで商品が余るわけですよ。余ってしまった段階で、お客様の解約の方に入っていくんです。

 そこで大事なのは商品だけの繋がりじゃダメで、それだと長続きしないんです。一番大事なのはお客様が実感されることって何かというと商品プラス会社のサービス力。それは物とかではなくて、情報とか、自分のことを大切にしてくれるんだよねと。そういう思いが他所の会社よりも「どう違うのか」という風に差別化ができるか。ここができるのは、実はコールセンターしかないんですよね。

 よく例え話でするんですけど、美容室にいくと、そこで行われる商品(行われること)って同じじゃないですか。カットであったりシャンプーであったり、リンスであったり。

 お客様って行きつけになると、あまり変わらない。その都度、変わるもんじゃない。何がそこに行かせるのか。それは担当の方とのコミュニケーションとかが一番の要因ですよね。

 だから、商品は「手段であり物」なのだから、どれだけの付加価値のあるものにするかは、会社全体をあげてのサービス力ということでしかない。

実はね、は相手が信頼してくれている証

 先ほど、話した「心が通じ合う」ということにおいて、特に電話というのは顔が見えないですよね。顔が見えない相手の方がどれだけ思っていただけているのかを図る指標は、お客様から「いやー実はね」という言葉を引き出せるかどうかなんです。

 事務的な会話になってしまうなら「実はね」とはならないわけです。例えば、(やめるときも)「商品が余ってしまいました」とか「余っているからしばらく止めるわね」とかって言葉になるわけです。けど、そこで私たちの方が「何か不手際ございましたでしょうか」。そんな一言をつけるんです。

 そうすると「いやいや、そうじゃないですよ」となるわけです。何かの事情があるのかも知れないですけど、あまり多くのことは言えない。でもお客様に信頼いただけていたら「実はね」という言葉をいただけるわけですよね。

 でも、通常の会社さんの場合、解約をするという電話がかかってきたら、コミュニケーターの人には「とにかく解約を引き留めなさい」と。とにかく「解約につながらないように持って行きなさい」とノルマ的にいう会社すらいるわけです。

 そうなってくるとお客様はどう思うようになるかというと、「本心からとにかくやめたい」という事ですよね。それと、もう一つ先にあるのが、お客様ってそこで一旦離れたとしても、他の商品とかいろんなことをやってきたときに、また戻ってくる時があるんです。

 戻ろうとすると「やめにくい会社」だと戻ってきづらいんですよね。親身になっていろいろ聞いてくれる。そして、やめる時も「今回は〜でしたけど、いつでもご連絡ください」と、やめやすい会社の方が戻りやすいんですよね。要は、そういったことができるのはコールセンターしかない。

——今の多くの会社はやめにくい会社になっているというわけですね?

高橋さん  はい。しかも無理やり引き留めてしまって、気の弱いお客様だと、「じゃあもう一回取るわね」みたいな話になるわけでしょ。

 その結果、どうなるかというと家族の人が大激怒ですよ。やめるって言ったじゃない。「そんな会社なの?私が電話してあげる」と家族の人から電話がくるんですよね。

実は恋愛のようなお客様との関係性

———確かに。そこは大きな間違いですよね。

西野博道さん(以下、西野さん)  お客さんがやめたいと意思表示すると、お役に立てずに申し訳ございませんとさっと引く。ある意味、お客様の方が引き留めて欲しかったのかも知れないけど、サッといくくらい潔くいくことが大事ですよね。あら引き留めてくれないの?みたいな。笑。

 お客さんとのやり取りの中で「やめさせない方法に持っていこう」としたくなる心理はあるだろうけど、嫌になったら一旦、離れた方がいいと思っていますし、逆に空白がいいんですよね。

——-そのほうが真に心に通じるというわけですね。

高橋さん 通信販売というのを恋愛に例えればわかりやすいですよね。

 相手が別れたいと言っているのに、引き留めても絶対引き止められないですよ。それよりも別れていろいろ経験して、やっぱりあなたが良かったとなった方が、よっぽど受け入れやすいじゃないですか。

 間違った会社さんって、引き止めてもやめられて、それで1ヶ月もしないうちにまたDMとかを送ってしまうんですよね。これってストーカーですからね(苦笑)。だから、余計に嫌われちゃう。

 お客様にとって本当の意味で「何がいいのか」というと、やっぱり居心地の良さじゃないかと思うんです。居心地良さって商品だけではなく、情報、サービスとか、自分のことを思ってくれるというようなお客様との間にリレーションを図れるという基本になりますよね。

西野さん 会う時にはいつも新鮮。そうですよね。ちょうどいい関係とか距離感というか。べたっとくっつきすぎない。遠距離恋愛で、週末婚みたいな関係の方が長く続くんじゃないですかね?笑。

——-なるほど。会う時にはいつも新鮮。今ってくっつくか、離れるかはっきりしてますね。笑。

高橋さん 「くっついたら離さないぞ」くらいの人は多いけど、お客様にとって居心地はあんまりよくないと思うんですよね。

オペレーターが力を発揮する環境づくり

高橋さん それで「居心地の良さをどうするべきなのか」と考えた先に、このコールセンターは何をするべきなのかということにつながっていく。それは無理に引き止めない事ですよね。コールセンターを運営する会社として気をつけなきゃいけないのはオペレーターの人がそういう判断をしやすいようしてあげなきゃいけないんですよね。

——-自然とそう考えに至るような環境づくりも大事ってことですね。

高橋さん そう。だから、ノルマがあるとか、数字的な要素があるというのは絶対ダメですね。

 例えば、制限時間を設けたりするわけですよね。「お客様から電話があったときには何分以内にしてください」とか「1ヶ月に何件以上、とってください」とか。数値的なものがあると、絶対にオペレーターの人は集中できませんよね。

西野さん だから「やずやの場合はお客さんが切りたいと言うまでは、こちらから切ってはいけない」と言っていました。

——確かに、何かで決められたものではないですよね。そのそれぞれによって最適な時間であったりするものが異なるはずです。

高橋さん その根底にあるのは何かというとですね、オペレーターの方はパートタイムで働かれてることが多いんですよね。

 そのときに、何の根拠もなく、パートの方はここまで、これ以上は社員さんに聞いてくださいとか、という風にして、本来はオペレーターさんの方がベテランなのに、新人さんの社員に質問をするわけですよ。でも、新人の社員なんてこたえきれないですよね?

 それよりはオペレーターの方とは基本的な内容で、お客様が喜んであげられることだったら、これだけの範囲なら、あなたに権限を与えますよとしてあげた方が、オペレーターの方が自分の判断でお客様としていくことが可能になっていくんです。

手上げ対応は少ない方がいい

 コールセンターの担当としてやってみてわかったことなんですけど、それまで変な社内ルールなどがあったりすると、手上げ対応と言って、社員さんに質問しなきゃいけない手上げ対応が一日何件と発生するわけです。

 ところがオペレーターの方に「(勿論、誰でもかれでもというわけではないですが)こういう場合にはこういう会話ができるとか、こういう風なお客様対応ができるというようなオペレーターの方々には、いくらの範囲であなた方の好きに判断してください」というようなことをやっていくと、手上げ対応というのがなくなっていくんですよね。

 それで、何がいいかって、手上げ対応がなくなるということは、お客様をお待たせすることがないんですよね。お待たせしたり、たらい回しにしたり、少々お待ちください、代わりますみたいなことがなくなっていくんですよね。

——裁量権を与えることで、自然とそういうことをしなくなるんですね。

高橋さん お客様って絶対、クレームできた場合、2次クレーム3次クレームになることのが大きいんですよね。そこが対応がしてあげられるという会社の姿勢なんですよね。

確かに、クレームになる程、全て承認を得るみたいな感じになりがちですものね。

高橋さん その結果、お待たせさせられるのはお客さんなんですよね。決して、そんなことはあってならない事です。

——それほど、お客様とコールセンターのやり取りは重要だと言う事ですね。

西野さん 通販ってお客さんと対面しないですよね。コールセンターが唯一の対面であり、お客さんとデートしているみたいな感覚なんですよね、電話で。DMは私、文通だと思っているんです。

 DMは文通のような文通を送ってあげれば、1週間、いっぺんでも嬉しいですよね。コールセンターはデートですよ。コールセンターは心ゆくまで相手の話を聞いてあげる。

全体最適を理解した上での部分最適

———-わかりやすい(笑)。リアルで起こっている事がコールセンターという状況の中で、どう具現化できるかって話なんでしょうね。実際に会わなくても、デートしているにもなるし、DMに想いを込めれば文通にもなる。

高橋さん その考え方がですね、西野社長のように全部署を自分で経験されている方は全体最適を考えた、部分最適ができるんですよね。

 ところが他のところを経験されていない方は、その部署の最適化を考えるので、数値で現れるだけに集中するわけです。それがいちばんの間違いなんです。

ーー結果、先ほど話していた通り、数字を追ってしまうわけですね。

高橋さん 全体最適をした時って、他の会社さんでは、直接、お客様との会話がないから、そういう会話をするときは最優先しないといけないよねと、いうのが理解できるわけですよね。

 他の部署が逆に、お客様からいただいた会話内容というものをコールセンターが聞き取って、お便りの文章とか、同梱物とかで、こういう風な内容でお伝えしようと提案していくようにすると、うまくいくんです。だから、最上位にあるお客様から直接、ご意見いただくコールセンターの優先順位が高くなるわけですよ。

 でも、そこでコールセンターの事をご存知ない人が、販促チームを作って文章を作っても難しいんです。彼らがこれなら喜ばれると勝手に自己満足なものを作って送っても、そりゃあ通じないですよね。

質問力がお客様を変えていく

——–ここまでまとめると、お客様に居心地の良い場所を提供する為に、オペレーターには裁量権が与えられ、それによって心で通じ合うことができるようになっていく土台の部分はわかりました。では、そのやり取りの中で個々のオペレーターは共通してどんなことを意識して「会話」されているのでしょうか。

高橋さん そうですねぇ、お客様っていろんなこと話さないですよね。だから、一番大事なことは、相手のお客様への「質問力」が大事なのだと思います。質問をしてそのお客様からの返ってきた答えに、まずは共感すること。人と人とのリレーションですから、そういうところから会話が生まれるんですよね。

 ところがですね、今、ほとんどの会社さんのコールセンターを聞いていると、一方通行なんですよね、オペレーターの方から、どんどん話すだけなんです。お客様が聞いているだけなんですよね。

 会話になっていない。本来は、お客様がどんどん言うくらいじゃないといけないのに、こっちが話し続けて「まあしつこいわね」とお客さんに捉えられたら、絶対心は開かないですよね。

 やはりコールセンターの方から質問などを通して、お客様と真に「会話」をしていくようになると、先ほど話したような、お客様は「実はうちは○○でね」とか「△△なんだよね」と本音がどんどん出てくるようになるんです。

 なかなか簡単ではないですけど、お客様から指名されるんですよね、誰々さんいます?と。だから、手紙のやり取りで、個人的にやりとりされたりとかも生まれます。

 コミュニケーターさんとお客様がするんですよね。それがリレーションであり、心が通じ合うって事なんじゃないかなと。

——-いや、本当に恋人みたいじゃないですか。

西野さん デートみたい(うふふ)

ーーーそういう時間がその人の充実になるわけですね。

高橋さん だから、そういうお客様は必ず最後に「ありがとうね、今日もね」って。その言葉が必ず出ますよね。

 クレームで入ってきたお客様で、その最後には「ありがとう。あなたと話してよかった」と。これがオペレーターの皆さんも一番喜ばれる事です。

——–聞いていて思いましたが「クレームのそのお客様」も「最初の段階のお客様」と通じるところがある。相手の話をまず伺う。同じですね。

高橋さん そこで質問力が大事で、聞き上手である事が大事。

——見えてきました。最初の段階から、お客様の会話の中身がフェーズごと変わっていく理由は、お客様が変化しているからで、それを導き出しているのは、オペレーター側がいかに聞き上手になれるかという話なんですね。つまり、段階的に意図的に変えているのではなく、最初から聞き上手になれることで、その回数を追うごとに、向こうから話すようになる。だから、何をするわけでもなく、自然とその信頼度が高まるというわけなのか。(自分で言って、深くうなづく)

高橋さん (笑顔)。だから、ほとんどの場合、新規のお客様の場合、十人電話が入ってきた場合、十人同じ対応をすることって多いじゃないですか。でもそこが、お一人お一人、自分が持っているものとか、聞きたいものとか、自分が持っている不安とか期待は違うはずなんですよね。

 そこをいかに質問をすることで、お客様に聞いていただくか、ということ。そしたら、それをきちんと記憶として残しておいて、それで次の方がオペレーターの方が違う方がとったとしても、それがしっかり引き継ぎされる。それができる仕組みづくりをする事が大事なのです。

 いや、深い。色々言いたいことはあるが、前編はここまで。後編ではオペレーターを尊重する仕組みづくりが、今度はコールセンターの方々のモチベーションと比例していて、そこから更にお客様との関係性を深める行動へと繋がっていくという話を軸に展開していく。では前編、今日はこの辺で。

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