Amazonプライム感謝祭で成果を上げるために—セール準備から普段の施策までの本質的アプローチ
「Amazonプライム感謝祭」は一年に一度の大型セールとして、多くの消費者と売り手が注目するイベント。セールというと特別な日だから、いつもと違う試みをして、高い売上を作ろうと考えがち。しかし、Amazonにおいては当てはまりそうにない。ある程度の対策は必要。だが、成功の鍵は日常の施策にある。そう語ったのが、インサイトアイズ代表取締役 榊洋三郎さん。セール後の今、その言葉の真意を確認して、売上向上に備えよう。
1. セール前の準備:検索順位と商品ページの最適化
Amazonでの売上を上げるためには、セールに向けた準備段階からの工夫が必要である。榊さんの説明によれば、セール前の期間における商品ページの最適化と検索順位の向上が極めて重要である。
そもそも、榊さんは理論派。主にAmazonを軸に運用代行やコンサルタントを行っている。敢えていうなら、商品独自のポテンシャルを引き出すのがうまい。Amazon内での高い成果は、本質的に解き明かす商品分析がなせる技ゆえである。
参考記事:Amazon 広告活用する前に おさえておきたい大鉄則
・A10Algorithmとは?
そんな彼にセールに対しての備えはどうあるべき?そう僕がたずねると、見せてくれたのは「A10 Algorithm」というものである。
それは、検索エンジンのアルゴリズムのバージョンのこと。要するに「何が検索結果として上に来るのか」。そのルールのようなものだ。Amazonにとって「どの商品」を「どの順番」で表示すべきかの判断はここに基づく。これが極めて重要なのだ。
それを見ると、Organic Sales、Conversion Rate、180Day Salesが全体でのウェイトが高い。
セール前になると、榊さんのもとにも、「セールで売上をあげたい」という人が来るとか。しかし、結局、これらの検索順位で上に来ているものの方が、セールでも力を発揮しやすい。そう説くのである。
そう思うと、セールで大事なのはなんだろう。言うなれば、競合が同じキーワードで広告を出して影響を受けても、売上に左右されないポジション取りをしておく。そこに尽きるだろう。第一、それが広告におけるコストパフォーマンスにも直結している。実は、広告に出しても、Amazonでは、そのアルゴリズムでのパフォーマンスが良いものが優遇される。
・検索順位の上位のものが広告でも優遇?
つまり、特定のキーワードで広告を出しても、商品によって提示される価格が違う。
それは、Amazonで「関連性」と「入札額(ワンクリック幾らまで払う)」を加味して、提示されるから。言い換えれば、(同じキーワードでも)商品によって「あなたは100円」「あなたは30円」という具合に異なるのである。
この「関連性」というのは、検索順位結果に直結している。考えるべきポイントは下記となる。
・キーワード最適化と関連性の向上
検索順位を上げるためには、消費者が検索するキーワードと商品の関連性が評価されるよう、商品ページ内にキーワードを適切に配置する必要がある。
例えば「スマホケース」というキーワードがあったとしよう。そこで、検索結果に表示されやすくするためには、まず、商品ページ内のタイトルや説明文にそれらのキーワードを含めるのが効果的である。
・コンバージョン率とパフォーマンスの向上
そして、Amazonのアルゴリズムは、クリック率やコンバージョン率などのパフォーマンス指標を重視する。高いコンバージョン率は、消費者がその商品に満足している証であり、結果的に検索順位の向上に繋がる。
さらに、榊さんは「セール前にコンバージョンを積んでおくことで、検索順位を引き上げ、売上を支えることができる」と述べている。要するに、普段からの積み重ねが必要不可欠であることを示唆している。
だから、高いお金を出した企業に対して、いい場所を提供するのではない。その商品を求めるお客様に正しくリーチさせる。そのことにAmazonは重きを置いている。この部分が、セールにおいても同じく重要だ。
お客様がその商品と正しく接点をもたらせているか。そして、その接点に基づき、お客様がその価値を認識して、購入へと至っているか。シンプルにそれだけである。180Day Salesの結果が指標の中にあることが何よりもそれを示す証拠である。
2. セール中の柔軟な対応:リアルタイムでの施策調整の重要性
ゆえに、セール当日も需要の変動に合わせて柔軟に施策を調整することが求められる。だから「Amazonでは、ただの値下げ競争に巻き込まれるのではない。消費者が求める価値を提供することが重要」と榊さん。ここに対しての“メンテナンス”を行うことがセールにおいても大切だということになる。
以下のポイントが挙げられる。
・広告の最適化と調整
セール中は需要の急激な増加や競合の動きに応じて、広告費用や配信の調整をしていく。
広告の出稿に関しては、クリック率やコンバージョン率の高いキーワードに予算を集中させ、セール期間中に最も効果的な広告展開を行う。そうすることで、消費者の目に留まりやすくなる。
また、リアルタイムのデータを活用して広告戦略を調整し、効果の低い広告は予算を減らすなど、効率的に運用することが重要である。
・値下げと付加価値の提供
セール中の値引き競争は、利益を削りやすい。それに対して、消費者にとっての「価値」を提供できれば価格競争に巻き込まれることを避けられる。
榊さんは「Amazonでは、商品に独自の価値を持たせ、他社とは異なる付加価値を示すことで消費者を惹きつけることが可能」と述べている。
例えば、他社が10%オフで販売している場合でも、自社の商品に品質や機能面での違いをしっかりと伝えること。それより少ない割引であっても顧客にとって選ばれる理由を示すことができれば、価格競争でのリスクヘッジができるのである。
3. セール後の振り返り:データ活用による施策改善と持続的成長
そして、「広告を出すときには、その広告がどれだけ利益をもたらしたかを知る必要がある」ということ。広告にどれだけお金を使い、それに見合った効果が出ているのかを確認するのが大切である。
話が少し逸れるが、それを見ていくための指標(数字)には大きく2つある。
(1).Amazon ACoS(エイコス):広告の費用対効果
広告に使ったお金に対して、どれだけの売上があったかを示す。
計算式:ACoS = 広告費 ÷ 広告での売上 × 100
例:広告費が50ドルで、広告によって得た売上が100ドルだったとすると、ACoSは50%。
数字が低いほど「少ない広告費で多くの売上があった」と評価できるわけだ。
(2).Amazon TACoS(タコス):広告費と全体の売上のバランス
「広告に使ったお金が全体の売上の何パーセントか」を示す。
計算式:TACoS = 広告費 ÷ 全体の売上 × 100
この数字が高いほど「広告経由での売上が大きい」とわかる。
以上を踏まえて・・・
まずは、ACoSで広告の効果を評価する。当然、ACoSが低ければ広告がうまくいっていることになる。だが、直接の売上が少なくても意味があることがある。ここが言い続けている通り、Amazonは広告も含めて、検索順位を上げていくことに価値があるからだ。
それこそが、広告のもう一つの効果である。広告によって商品と消費者の相性が露見して、検索結果で上位に表示されやすくなると、広告以外からも売上が増えることがある。こうして、広告によって最終的に全体の売上が増えることをもたらせれば、その施策に意味があるというわけだ。
なので、Amazonプライム感謝祭の終了後は、個別と全体の施策とでデータを分析。次回以降のセールや日常の施策に活かす。
・日常施策の見直しと成長戦略の構築
改めて、肝となる検索キーワード選定で大事なのは何か。これは榊さんの理論の原点となる。根本的には、どのようなキーワードがいいのか。それを調査するためにリストを用意して、それをもとに検討する。
そして、自分たちの商品がそれぞれのキーワードに対してどの程度相性が良いのか、仮説を立て始める。それによって、あるキーワードで検索されやすいとわかった。その場合、そのキーワードに対して明確なニーズが存在することを意味するわけだから、深掘りの必要性が出る。
しかし、自分の商品の露出はあるものの評価が低い。もしくはコンバージョンが低い。そういう場合だって考えられなくはない。ただ、それも恐るるなかれ。他により魅力的なオファーが存在している可能性が考えられるだけだ。
・競合は自分を理解するための存在
そこで、競合がどこにいるのか。なぜ売れているのかをレビューなどを通じて探り、思考を深めていく。
その過程で、お客様が求めている要素を自社が提供できているのに評価されていない。その場合は、「伝わっていない」可能性があると考えるのである。それであれば、LP(ランディングページ)の内容を改善することを検討すればいい。
一方で、もし自社が強みを持っていないとすれば、その中でどのように競争するかを考える。同じものを出して競合を追いかけても意味がない。
そこで、自社の強みを際立たせて「異質化」を図る。
例えば、競合が「安価で数が多いストラップ」を売りにしている場合、自社の「金属製で長持ちする」特性をアピールする。また、ボディスクラブであれば、「合成成分不使用でヘッドスクラブとしても使える」といった軸を変える。そうすることで、コンバージョン率が向上することもある。つまり、立ち位置が明確になることで、戦略がより強固なものになっていく。
広告を出すのは、そういう理解の上で、それを可視化するために活用するだけのことだ。
4. Amazonと他のプラットフォームの違い—使い分けの重要性
そして、これらを踏まえ、榊さんは、Amazonと他のプラットフォーム(特に楽天)の違いについても言及している。これも実に本質的。
楽天は店舗に焦点を当てている。だから、顧客との接点を築きやすい特徴がある。それゆえ、売り手がセールを契機に、新規を獲得。その後で、顧客と徹底的にコミュニケーションを図り、そこで利益を取りにいく。
ところが、AmazonはCRM的な取り組みが難しい。それは商品に焦点を当てているからだ。それはここまでの説明で十分分かるだろう。二兎を追うものは一途を得ず。そこに全てのリソースを集中させているから、上記の施策が通用して、商品単位での立ち位置を明確にするからだ。
そのために商品の価値と独自性が特に重要となる。
そうなると、単なる値下げではなく、消費者に選ばれる理由を明確に示すこと。そちらのほうが求められるのである。だから、セールにおける位置付けが異なることがわかるだろうか。
Amazonと楽天の特性を理解し、プラットフォームの強みを活かした販売戦略を練る。それこそ成功への鍵である。
5.Amazonプライム感謝祭を成功させるための本質的な取り組み
以上から、Amazon大感謝祭での成功は、短期的な施策だけでは実現できない。普段からの施策の積み重ねがセール時に成果を引き出す。何度も書いたがそれだけ大事。
セールだから特別なことをするのでもない。日頃から、検索順位を高め、消費者に選ばれるための商品価値を訴求すること。それが、セールと普段に関係なく最も重要である。
結果的にセール時期は、人が多く集まる。なので、その精度を確認するのには最適だ。セール後のデータ分析と改善を怠らず、日常施策にも注力する。
思うに、お金を使い、過剰な安さ訴求や力技での広告施策でも、意味をなさない。それが、Amazonプライム感謝祭における鉄則なのだ。セール対策でありながら、セール対策ではない。このようなアプローチが榊さんが強調する「Amazonプライム感謝祭で売上を上げるための成功法則」と言えるのである。
今日はこの辺で。