1. HOME
  2. News
  3. 小売視点
  4. 通信販売のやり方
  5. 通販 の 誤解 定期購入 は LTV をあげる魔法ではない

通販 の 誤解 定期購入 は LTV をあげる魔法ではない

通販 の 誤解 定期購入 は LTV をあげる魔法ではない

 ネットの躍進で、通信販売( 通販 )を始める企業が増加しています。そこで、よく飛び交う言葉が「 LTV (Life Time Value)」です。要は、継続して、購入してくれることを前提していて、「お客様が、その企業で『最初に商品を購入してから買わなくなるまで』もたらされる利益のこと」を言います。ですが、最近の通販企業は「LTV」を意識しすぎているようです。これを伸ばす為に、無理やり「 定期購入 」のビジネスモデルを取り入れ、結果、うまくいかないという事も少なくありません。

定期購入 で LTV より先に 通販 企業が考えるべきこと

 これは、僕が、やずやグループ 株式会社未来館 西野博道さんに「LTV」について話を聞いて、思ったことです。西野さんは「やずや」の第一線で、その仕組みを作り、土台を作ってきた一人であり、通販の黎明期からそこに携わっています。

 さて、ここで通販の本質に立ち返って考えるべく、通販会社の売上の構造について考えてみます。まず、通販企業の年商について、ですが、単純計算で考えると、

 「年商=年間稼働顧客×年間LTV」となります。

 もう少しわかりやすく説明するなら「現役のお客様」×「年間にそのお客様が買ってくれるLTV」になります。そこでこの「年商」を例で示していうと、こうなります。

 お客様が、1年間のうちにトータルで2万円買ってくれるとして、そのお客さんが10万人いるとすれば、年商は20億円となります。

 この時点で、多くの通販企業が売上を伸ばす際に、重視するのは、この「LTV」と「CPO」です。この「CPO」というのは「一人のお客さんを獲得する宣伝費」のことを言っています。これらの指標からすると、なるべく効率よく、定期購入のお客様を新規で獲得をして、そこで獲得したお客様から、極力高いLTVを得るようにしようという発想に至ります。

LTVはそう簡単に上がらない

 ところが、その考え方が当たり前の「ルール」になると、担当者は「初回、商品を半額にして、定期購入に持ち込んで、引き上げる」という方向へと走りがちになります。流石に、企業側の都合が見え、また最近のお客さんが賢くなっていることもあり、「続けてくれない」という現象が起きます。

 続けるお客様が少ないので、稼働顧客よりむしろ、売上をあげようとLTV の方を伸ばそうとするので、徐々に「定期購入」の本質からずれていくということになります。

 考えてみれば、わかることなのですが、この「年間LTV」を例えば、2万円から4万円にすることは至難の技で、現実的に考えれば、2万円を2万1,000円にする程度が限界です。

 これで分かる通り、「LTVを上げよう」といった声はよく耳にするものの、実際、それらがあまり成果を伴わないのは当然です。

 ここでもう一度「年商」の方程式をみてみましょう。

「年商=年間稼働顧客×年間LTV」

以上を踏まえると、上の方程式のうち、LTVの方を上げるのではなく、稼働顧客を増やす方に力点をおくべきなのです

 つまり「稼働顧客」を増やすというのは、言い換えれば、獲得した顧客を「減らさなければいい」ということなのです。なので、今目の前にいるお客様との向き合い方を工夫して減らさなければ、結果的に、稼働顧客数を2倍にも3倍にも増やすことができます。

 なので、ここの記事でも書いた通り

 もし「顧客維持率」が「70%」であれば、3年目には「約5割」です。実を言えば、70%でもまだ足らなくて、目標は「90%」に置くべきだとしています。「90%」であれば5年目でも「5割」以上存在することになり、企業にとってこの差は大きいのです。

通販 で 継続顧客 に繋がる“商品作り” “あるべき店の姿勢” より引用

 新規で獲得した顧客を、5年後も5割以上の人が付き合えるようにする意味がある、と説明しているのです。

定期購入は手段であって、目的ではない

 そうなると、定期購入というのは手段に過ぎなくて、これに持ち込むことが目的になっているうちは、逆説的ですが、やればやるほど、定期購入が定着しないことになります。そこで何をするべきかについては、下記の記事でも記載していますが、

 サプリメントを提供する60歳というのは「20年後が見えない人たち」なのであり、ここで、やずやの商品が「栄養補助食品」である意味があります。20年後の元気な自分を支える為に、今日飲んだ方が良い商品なのだと説明をするのです。「ずっと飲み続けましょう」。そう言って、顧客の生活の一部になっていくのです。

通販 で 継続顧客 に繋がる“商品作り” “あるべき店の姿勢” より引用

 低コストで定期購入に持ち込む姿勢よりは、そもそもものづくりから見直しを行い、自分たちがその商品と共に、どうやったらお客様の長い人生をお供できるかのイメージを作ることを優先させた方がいいように思います。また、一緒に共にする以上、どう接することが稼働顧客を増やすことになるのかを考えることが大事です。

 西野さん曰く「本来は定期通販などはあくまで、20年後をきっちり元気にして差し上げて、そのために、商品をお届けするんだ。そんなサービスを補完するためのものです」と。「定期購入は、今から25年前、そういう意味で始まったものなのです。お客さんのためのサービスであるからこそ、売る側も経費がかからない分だけお安くしますということ」と言っています。それが原点なのです。

 だとすると、昨今見られがちな、定期通販が、自分の会社のLTVをあげるマジックみたいなものになっていることに西野さんが違和感を感じるという話には、僕は、素直にうなづけました。

  思うに、定期購入をしてもらうことが目的になった瞬間に、それはお客さんの何のために、定期にする必要があるのかという「目的」が抜けてしまって、結局、お客さんの気持ちに寄り添っていないことになるということです。それは、当然に、稼働顧客を減らすことになるというわけです。

 お客様との関係性をビジネスの軸に置いて、そこから商品作りと、購入するイメージ、長く関係性を築いていく姿勢を思い描く中でこそ、後から、LTVが上がって、企業そのものが安定してくるのではないかと思うのです。

関連記事