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映画 すみっコぐらし で魅せた 短編キャラクターアニメ制作のプロの実力

 キャラクター系の映画としては異例のヒットである。 映画 の「 すみっコぐらし 」は興行収入10億円を記録して、多くの人を映画館で大人の心をも動かした。感動できるだけの理由があって、キャラクターを活かす番組制作力によるところが大きいと僕は考えた。手がけたのは、短編キャラクターアニメ制作のプロフェッショナル、ファンワークス。その舞台裏を追うことにしたのだ。

すみっコぐらし 映画 ヒットの裏には

1.映画への挑戦はハードルが高いのでは?の声も

 タイトルは「映画 すみっコぐらし 飛び出す絵本とひみつのコ」という。「すみっコぐらし」は、これまで、キャラクターの版権販売管理を数々手掛けてきたサンエックスが生んだキャラクター。実は日本人の「すみっこが好き」という気持ちがテーマになっている。

 遡ること今から7年前、キャラクターグッズとして展開がスタートして以降、多くのファンに恵まれ、最近では、人気キャラクターランキングでも常に上位にある“定番キャラクター”として、浸透している。とはいえ、映画の挑戦はハードルが高いのではないかと思われた。

©2019日本すみっコぐらし協会映画部

 しかし、アスミック・エースにより配給されたこの映画は、予想を上回る90万人の観客動員数で興行収入10億円を突破した(12月20日時点)。

 作品の内容は誰もが一度は触れたことのある、お馴染みの絵本のストーリーがベースにあって、わかりやすく、テンポよく物語は進行していくので、引き込まれ、大人も楽しめる仕上がりになっている。

2.キャラのヒットとアニメの長さが関係ないから気づけた大事なこと

 そんな中にあって、僕はこの映画のアニメーション制作を手掛けたファンワークス代表取締役 高山晃さんに話を伺った。多くを感動させたあの表現力こそが、ヒットに起因していると考えたからだ。

ファンワークス代表取締役 高山 晃さん

 すると、作品を振り返り、茶目っ気たっぷりにこう話してくれて、その言葉がちょっと気になった。それは「アニメの尺の長さと、キャラクターのヒットというのはあまり関係ないなと思っているんですよね」というものである。ごく個人的見解で恐縮だが、今回の大ヒットはこの一言に集約されると言って良いと僕は思っている。

 「尺の長さ」??どういうことか。

 少し話が逸れるが、今回の映画につながる話として「やわらか戦車」というキャラクターの話をさせて欲しい。実は、このキャラこそが1分程度のごく短い動画の中で登場して、話題を集めたものだったわけで、この「尺の長さ」に関する話に直結する事だからだ。

 彼は今から14年前、当時、ファンワークスはこの「やわらか戦車」というキャラクターのプロデュースをしており、その時に、今話してくれたように「キャラにとって尺の長さがそのヒットと特段、関係がない」ということを実感したという。

 当時、「やわらか戦車」作者のラレコさんがよく話していたのが『いかに一度聞いて忘れない「メロディ」を作れるか』という事。そして、キャラクターの特徴はその「メロディ」に「忘れられないキャラクター」を添えてみるというものであった。

 その「忘れられないキャラクター」としてラレコさんが編み出したコンセプトが「硬いはずの戦車が柔らかい」というもので、要はそれを1分程度にまとめたわけである。

3.アニメの制作に対しての考え方が変化する

 これが2話公開された段階でYahoo!トピックスに掲載され、100社以上の問い合わせを受けた。2分で100社以上の問い合わせなど、なんて経済効率がいいのかと。

 だから同社は、今では、キャラクターのアニメ化の相談を受ける際「アニメの尺は短くていいんじゃないですか」と制作会社にあるまじき発言をして驚かせることだってあるくらいになった。短くなければならないというわけではなく、単純に「費用対効果と経済サイズ」の問題と高山さんは言っていて、それももっともなのである。

 言われてみれば、誰だって最初から予算を持っていないのだから、その少ない予算の範疇で制作費を抑えて、その中で極力表現に拘ったものを数多く出せば良い。それを長いスパンでやり続ける方が、確実に、結果は出ると話す。すごく本質的な考え方である。

短尺に拘り気づいた差別化要因が すみっコぐらし の 映画 で活きる

1.漫画とキャラでは表現が違う

 おそらくこの考え方の中で、ファンワークス流が醸成されてきたように思う。そして、高山さんは「短い尺でキャラクターを動かすことは、漫画をアニメにするのとは全く違った作業なのだ」とも話していて、これも実に興味深い。

©2019日本すみっコぐらし協会映画部

 彼が意図するのはこういう事なのだ。

 漫画をアニメにする場合、「漫画のコマ」をベースに全体のストーリーを再現する事に力点が置かれている。その証拠に、漫画からのアニメ化というのは原作者がそこまで細かく関わることない。そのキャラの動きは「漫画のコマ」で保証されているから、アニメの制作全般がその制作会社に任せることができるわけである。

 ところが、これがキャラクターアニメの場合、それとは少し異なっているとするのが、ファンワークスの考え方なのであって、ここが今回の映画においても重要な点である。

 キャラクターグッズはそもそも商品化する際に、細かな監修作業をする。それはキャラクター自体に動きの保証などがないから、というわけである。だからこそ、ファンワークスはそれと似たような作業を「アニメ制作」の中でも行うのだ。

 そうやってキャラクターがその世界観を正しく表現できているかを綿密にライセンス元と逐一確認して見せるのである。ライセンス元からは、絵本風に水彩画のムラを出したいとか、アウトラインを鉛筆で描いた様に表現したいなど、時に、動画でもキャラクターグッズのような指摘を受けることがあるという。実際、アニメにおいてはかなり難題も寄せられるが、寧ろ彼らはそれを解決しつつ、キャラクターアニメのフォーマットを作ってきたわけだ。

2.かくしてキャラのアニメ化への信頼は生まれた

 ファンワークスは、アニメの王道で使う表現技法をアレンジして、そのライセンス元の納得する答えを出してきており、そこに信頼を得られていて、今に至る。だから、キャラクターのアニメ制作の表現においては「短くとも何を表現するか」に重きを置くべきであり、先程の高山さんの一連の発言に繋がっていくのである。

 これでわかってきただろうか。今回、「映画 すみっコぐらし 飛び出す絵本とひみつのコ」では一年余りを要したが、そのうちの数ヶ月はそのキャラクターの再現の打ち合わせに時間を割いている。つまり、重きを置く部分が漫画などとも違っていて、それを反映して「すみっコぐらし」を表現したから、大人をも感動させるメッセージが伝えられたということになるわけである。

3.だから、胸打つ、感動する

©2019日本すみっコぐらし協会映画部

 これで、制作にかかわったサンエックスやアスミック・エースが何故にファンワークスをパートナーに選んだのかがわかるに違いない。

 サンエックスは彼らの描くキャラクターが、世間でいうところの漫画のアニメなど、これまでの映画での表現のあり方とは違っていると悟っていたし、その「あるべき姿」を短編キャラクターアニメのプロフェッショナルであるファンワークスなら、できるだろうと託したのである。

 そして、それはファンに受け入れられ、このヒットに繋がって成功した。現に、僕も映画を拝見したが、終盤、本当に目が潤んだわけで、失礼ながらグッズから生まれたキャラクターで泣くとは思わなかった。

 でも、そのキャラクターの動きが伸びやかであり、それゆえ引き込まれ、豊かな表情一つ一つが感情移入しやすくさせて、気づけば、自分ごとでそのストーリーを受け止めていたのである。思わず「自らの人生における居場所は何だろうか」と、感慨にふけるほどであった。

 小手先のテクニックではない。キャラクターの信念とそれに応えるプロフェッショナルが織りなす、映画のクオリティがファンの心を胸打つのである。ヒットには必ずそれを裏付ける想いと情熱と理由がある。

 パンフレットを手に、ラストの感動的なシーンに浸っているうち、もう一回観に行きたくなった。もうこの作品は、キャラクターの可愛さだけを表現したのではなく、心温まる感動物語であって、すみっこなんかにいないで、ど真ん中で、胸を張っていいくらいに、素晴らしい作品に仕上がっている。

 今日はこの辺で。

(145マガジン編集室から追記情報!)

ファンワークス の高山 晃さんは、第89回東京インターナショナル「ギフト・ショー」で、2/6 10:30~11:30、「ブランディングとしてのキャラクターアニメーション」と題して、講演することが決定。

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