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サンリオ “先駆け”60年の歴史 かわいいの功績

 今でこそ、街中で“かわいい”キャラクターグッズを目にすることはある。創業当初とその歴史を思えばそれがどれだけ画期的であったろうと思う。時代の中で正しいと信念を貫き、やり抜いたからこそ、今があるのだ。サンリオ展へ僕はやってきて、僕は痛感したのだ。“サンリオ”という会社はその信念ゆえに時代の常識にとらわれず、殻を破り続けて、先駆けきたという事に。

商品にこだわり商品だけにこだわらず

1.それまでキャラクターグッズなど存在しなかった

 少しだけ話が逸れるが、日本でキャラクターグッズというと何を浮かべるだろうか。

 代表的なのは「サンリオ」や「ディズニー」。

 しかし、その背景は全く異なり、僕はそれをこの「サンリオ展」で痛感した。当時「ファンシー」と呼ばれて、時代を謳歌するに至ったキャラクターの存在。それが日本に定着したのは、サンリオの並ならぬ情熱と行動力に裏付けられている。

2.会社をテコに作品を出すたび挑戦する「ディズニー」

 まず「ディズニー」の背景について触れるとすれば、そのこだわりは「アニメーション」や「映画」に向けられている。ウォルトディズニーは会社を経営しながらそこで資金を集めて、得た利益をそれらの制作にまわして、作品を作り続ける事で、その表現の幅を広げてきた。だから、初期の作品は何かしら、一作ごとに新しいチャレンジが盛り込まれている。

 その舵取りの難しさは前例がないから、それも至難の業で評価に値する。ミッキーマウスの「蒸気船ウィリー」でアニメの面白さを伝え、世を席巻した。その後も、抜かりなく「白雪姫」で人を感動させるクオリティに仕上げた。当時、アニメは笑いを誘うものしかない中で、感動させる内容を持ち込み、それが映画に匹敵する価値を示したわけである。その情熱は尋常ではない。

 だから、その熱狂ぶりにそれらのイラストが描かれたキャラクターグッズは飛ぶように売れる。結果、それが、ライセンスを見出すに至る。

3.商品に付加価値をつける中で出てきたキャラクター

 対して、サンリオのこだわりは「商品」に向けられている。深く人々に伝わるようにと、商品の裏側にある“かわいい”価値観の醸成に力を注いできた。ここへ来て初めて気付かされた事だ。

 元々サンリオという会社は、グッズ制作の「山梨シルクセンター」という会社とグリーティングカードを手掛ける「サンリオグリーティング」という会社が一つになって産声をあげた。前者はポップで親しみやすさ、後者は美しい画力で勝負。それらを相互に補完するデザイン性の高さが売りで、このサンリオが誕生した。それが、商品重視につながる理由も、うなづけるではないか。

 まさに、そこで商品重視という軸も、サンリオ独自のやり方であって、当時としては画期的。僕が感銘を受けたのは「実用品以外を目指す」という姿勢である。

実用品以外でサンリオは商品価値をどう作ったのか

1.世の中で評価されるのはまず実用品

 そもそも、世の中の商品で代表的なものは実用品である。対価に見合った価値訴求がしやすいからである。

 現に、僕がメーカーなどとも接していて思うのは「売れるかどうか」。商売をしようとすればするほど、「実用品」を作る事になる。それ自体、何らおかしなことはない。世の中のニーズを顕在化させて、そこに目がけて商品製作をして、販売する方が確実に売れるからだ。

 逆にいうと、実用品ではないものは漠然としている。だから、お客様自体も手に取りづらいわけである。売ろうとしてもそれがなかなかそれが叶わなかった可能性は極めて高い。多くは避けて通るだろう。

 だが、ここがサンリオが他とは違う点である。しかも彼らが提供しようとしていたのは、商品というより商品がもたらす価値観と言った方が彼らの想いに近いと思う。商品であって商品ではない。

2.必需品でなくても心に訴えかける商品は購入に至る

 業界紙のライター時代、新米記者の僕がサンリオの創業者 辻信太郎さんにこんなことを聞いたことがある。

 「この会社を何故、作ったのか」と。

 その答えの言葉は今も残っている。「子供の時に、幼稚園(だったと思う)でプレゼントをする習慣があった。そこでの光景が忘れられない。貰う側は勿論、喜ぶよね?」と視線を僕に向けるとこう語った。

 「でもね、渡す方も皆、嬉しそうだった。僕はこの間に入りたいと思った」と。

 この言葉に象徴されていると思う。どうすれば人の心に胸打つ商品を作れるだろう。その一点に集約されるのではないか。彼らの(当時の)企業理念である「Small Gift Big Smile」に行き着くのも自然だ。実用性があるかどうかではない。より喜んでもらえる、心に響く商品作りをしていくことに照準を定めるわけである。

 そこでサンリオはその行き着いた先に「カワイイ」という考え方があったのだ。しかも、それは小手先では伝わらない。それもわかっているから全身全霊で、メッセージ性を持った「カワイイ」にこだわることになったのだろう。

商品をより感動的にする為に“かわいい”価値を育てる

1.感動的であるためにサンリオのチャレンジ

 故に彼らは何の抵抗もなく、出版に対しても挑戦していた。その理由は世界観や価値観を「伝える」のにベストだったからだろうと推測される。不思議なものだが、この時期、やなせたかしさんと出会い、彼が主張する詩集をそのまま、自ら出版事業を立ち上げて、実現させてしまうのである。

 その「詩集 愛する歌」の出版後も、彼らは季刊誌「詩とメルヘン」や「いちごえほん」も刊行して、「かわいい」の深掘りを行う。その根本的な考えを発信することを怠らなかった。

 今ならまだしも何十年前の話である。受け入れられるか分からないチャレンジングな要素であったろうと思う。これは不思議と今のネットでの文化に通じる話にもなる。だからこそ価値観には共感が生まれ、ファンが増えたのだろうとも思う。

2.マンガ雑誌はサンリオの「かわいい」への執着を感じる

 特に僕が感銘を受けたのは「リリカ」というマンガ雑誌。とことん「カワイイ」に振り切っていることがそこでわかるからだ。1976年からわずか3年ほどで終わったしまった。だが、美しい絵が描ける作家を集めて、「カワイイ」が凝縮された誌面。それは、少なからず当時のサンリオのそこへの執念を示すものだと僕は思う。

 理念こそあれど、しかし、オリジナルキャラクターはいなかったのである。逆に言えば、その黎明期を支えた内藤ルネさん、水森亜土さんなど“かわいい”世界観を持つ作家との連携。それは、サンリオが何を伝えたいかを果たすには十分すぎるほどであったと思う。

3.メーカーとしてオリジナルキャラの開発の必要性に辿り着く

 一方、サンリオはメーカーとして、商品を軸に心を動かすかという視点で考える。すると、オリジナルでキャラクターを開発して魂を吹き込む方が開発上、商品との親和性は高くなる。だから、自然にキャラクター創造への道へと舵を切るようになるわけだ。

 商品でありつつ、商品を通して価値観を伝える。そこに重きを置いたサンリオらしく、自ら手掛けるものでもその片鱗がうかがえる。彼らにとっての最初のブランドが「Love is」である。

 「愛とは」という哲学的なことをテーマに据えてデザインを書き起こしている。言うまでもなくこういう姿勢がサンリオらしいキャラクターを生み出す契機となって、また転機は訪れるのである。

4.「いちご新聞」でファンと交流を図り付加価値をつける

 ファンが増えてからもその価値観の醸成にはこだわった。

 それを顕著に示すのがサンリオ発行の「いちご新聞」だ。創業当初から現在に至るまで欠かさず毎月発行されている。今の時代でいうところのコミュニティをどこよりも先駆けて作っていたと言っていい。実用品ではない商品の価値は人の心を動かすことにある。一見すると商品自体とは直接関係のない、ファンとの交流を大切したのも彼らの姿勢を見れば必然である。

 人が集まれば、伝説も起こる。東京・田園調布には「いちごのお家」という建物が期間限定で用意された。しかし、閉店しようとした際に「クローズしないで!」という読者(それを「いちごメイト」という)の声が会社を動かし存続が決まった。そして驚くなかれ、その後28年間、この「いちごのお家」は存続し続けた。

 誌面の原稿を「サンリオ展」で見ると、時に親友のようであり、時にきょうだいのようであり、親のようでもある。だから、ファンに対して「みんな仲良く」といったような大事なメッセージが「ここぞ」という時に発信されて、それはしっかり届く。皆で作り上げてきた60年なのだと思った。

5.直筆原稿に愛と本気を感じる

 創業者の「いちごの王さま」が「いちご新聞」に寄せて書いていた原稿である。それを見るだけでもその想いは伝わってくるではないか。

 何気なく、僕らの身の回りにある雑貨店や文房具屋で、サンリオのグッズがごく当たり前に、置かれている。でも、それは数々のチャレンジゆえのことで、そこには上の「いちごの王さま」の文章然り、愛で溢れている。

 ただ単純に「カワイイ」だけでやっていたら、今はないだろう。

 人として真っ当に生きようというごく自然なメッセージを大真面目に発信し続けるその姿勢。そこに人は振り向いて、サンリオのグッズを買うようになったのである。それは、実用品を作り続けた名だたる企業にはない独自性がある。冒頭、話したように、それは当時としては型破りであり、先駆けの連続であったのだろうと思うのだ。

 信念はブレていないから強いのだろう。挑戦し続けられたのだと思うから、その意味で、これからも先駆けであり続けてほしいと願う。そして「サンリオ展」のような機会が、また百周年の時にも迎えられ、その熱意とごく真っ当な人としての愛を実感する人が多くいることを祈りたい。

 今日はこの辺で。

参考;サンリオの記事

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