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日本企業の力はこの程度では終わらない IPを世界に轟かせ企業価値を底上げする NKT3 林 哲煥さん

 日本はゼロから一を生み出すことには長けている。けれど、1から100にしていくのは苦手で、その証拠は、時価総額ランキングをみればわかる。日本の名だたる大企業が束でかかっても、海外の企業一社にかなわない。僕が知り合ったNKT3のファウンダーにしてCEOの林 哲煥さんと話していて、それを痛感した。そして、その原因は、日本独特の閉鎖的な風習にあるからこそ、林さんは自らの強みを活かして、そこを打破しようと考えている。

一人の人間としてできること

 そもそも、彼のこれまでの経歴を見てみると、元々、ゲーム会社にいた。そこで彼は何をしたかというと、自ら韓国出身であることを強みに、その開発力をグローバルに提案して、最大化してきたわけである。ある意味、他の社員とは違った動きをしていたことで、彼独自のネットワークが築かれることによって、その強みに磨きがかかったわけだ。

 それこそ、全身全霊でそのゲーム会社の価値向上に努めてきた。けれど、最初から決めていることがあった。それが、55歳を境目に、そこからは一人の人間として、会社の枠組みにとらわれることなく、自由に自分らしく、ビジネスをしていこうということだった。

 まさに、NKT3という会社を立ち上げたのは、そういうことであって、そこで彼は思う。自分の強みは、自ら切り開いて、つながってきたネットワークにある。そのつながりによって過去と違う形で課題解決できることがあるのではないか。そう考えるようになって今の動きにつながる。

真価を発揮していない日本のIP

 彼が着目したのがIP(知的所有権)である。わかりやすく言えば、アニメ、漫画などのコンテンツに関わることである。それまで、ゲーム会社にいたから、基本的には、それらのコンテンツを「受け入れる」側の立場であった。ただ、そこで知見を得たことで、気付かされたのは、日本のコンテンツが素晴らしいのに、その価値を生かしきれていないということであった。

  そして、冒頭の話になる。ゼロから1は生み出しているのに、1から100にできていない。だから、日本は遅れをとっていると。

 そこで、ライセンスを「受けいれる側」ではなく、その逆、ライセンスアウトする側に立つことで役に立てるのではないかと考えるようになった。

 そもそも、日本のコンテンツに関わる企業において、どことは言わないが、ディズニーを凌駕している企業はあるだろうか。そういうことなのである。日本のアニメなどの制作力は極めて高い。そうでありながら、それが、生み出して終わりではない。それを100にも、1000にもしていってこそ、それらの価値を生み出した意味がある。なのに、そこで立ち止まっているのである。

 そこにはある種、閉鎖的な日本の文化があるからではないかと、林さんも暗にそれを明らかにする。例えば、大手のコンテンツ企業においても、国内外問わず、問い合わせをしても、結果、実らないことが少なくない。

企業のトップにダイレクトに価値を伝える

 そもそも問い合わせをしたところで、トップまでその話がいくことない。色々な思惑が交錯して、結局、面倒になり、安全牌を取って、途中で止まってしまう。そのようなことが少なくない。

 その点、幸いにして、林さんにはトップとのつながりがある。余計な吟味を重ねることなく、必要な価値をそのまま、ダイレクトにトップに話をする。そうすることで、かえって、話がまとまる。確かに、色々な人間が介在し、さまざまな見解を途中に挟むほど、ことの本質がぶれてしまう。その方が適切なこともある。今まで得てきた信用の賜物だ。

 結果、彼は数多く、海外の企業ともやりとりをしてきた知見を、今度は別の形で活かす。単身でそういうライセンス元(コンテンツホルダー)側の人と交渉をして、そのコンテンツを海外に持ち込んでいく。

 彼は元々、ゲーム会社にいたこともあり、海外のゲーム会社とも接点がある。だから、そのライセンス元になりかわって、それらのゲーム会社に、日本の有力コンテンツとのコラボを、持ちかけるわけである。

海外のゲーム企業も、日本の権利元もウィンウィン

 これは聞けば聞くほど、よくできている。海外のゲーム企業は、例えば、スマホのゲーム然り、継続的な利用が必要とされている。ただ同じものを配信しただけではユーザーに飽きが来るから、そこでコラボ企画が必要となるわけである。

 そこに、林さんは日本のコンテンツを持ち込むから歓迎される。それができなかったのは、これまで両者にあった言語や文化、考え方の壁があるから。林さんはその点を踏まえて、どういう段取りで、どういう趣旨で提案すればいいかがわかっている。だから、その間に入って、その両者の連携が実る機会が増加する。

 いうまでもなく、ライセンス元は基本、自らの権利を提供することに終始する。どちらかと言えば、大元のコンテンツであるアニメなどの価値を向上させて、それを再現できるクオリティは何かをライセンスの中で考えることが主である。だから、どうしてもやや複雑になりがちな海外企業との交渉は手薄になる。

 また、海外のゲーム企業においても、日本のコンテンツマーケットに対してその扉を開けづらかった。まずは接点がないのと、閉鎖的とも言える日本の環境で、ちゃんと向き合った議論ができなかったわけだ。

 この両者の懸念材料が、海外進出の機会損失となっていたから、それを打破する役目を林さんが買って出たことがどれだけ大きいかがお分かりいただけるだろう。そこに門戸を開いた。

日本のIPが世界に羽ばたき、1から100へ

 日本のコンテンツ力は極めて高い。だから、結果、一度、実れば、億単位のビジネスになるので、企業にとってはものすごく大きい。

 実際、林さんの働きかけで情勢は変わった。日本のコンテンツは、それが海外のゲームでコラボされるたび、その反響は大きく、巨額の富を生むことになる。何より大きいのは、現地にも収益を生み出しつつ、コンテンツの裾野を世界に広げることができるということだ。

 そして、強力なコンテンツはボーダレスな中を泳いで、さらに強力に進化していく。だから、自ずと、最初は自ら交渉をかけていた林さんの状況も変わる。「うちもやってもらえないか」という声が殺到するわけで、自らのネットワークは更に広がる。

 ことほど左様に、日本の可能性は限定的なところで発揮されているに過ぎない。日本は真剣に世界を一つにして、彼のような声を受け入れてでも、その価値を最大化していくべき時に来ている。

 そして彼の人生にも学びがあると思います。

 彼が心機一転、それまでの人生で培ってきたものは、そのまま一つの会社で使いこなしていたら、この広がりはなかった。一人一人の人生の積み重ねが、一企業という枠組みにとらわれず活用される。それでこれだけの発展を見るなら、活かすのが筋であろう。そして、それを最大化させる世の中であることが重要だ。日本よ、型にとらわれず世界に羽ばたこう。

 今日はこの辺で。

 

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