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アートの祭典“デザインフェスタ57”は“カオス”が“正常” クリエイターが百花繚乱 2023年春の陣

 久しぶりに“カオス”な雰囲気が戻ってきたな(これ、褒めています)。そう思わせる内容であった。デザインフェスタ57の開催で、僕は東京ビッグサイトにやってきた。紙芝居で叫んでいる人がいるかと思えば、その近くで楽器を弾いている人もいる。素敵な作品を飾っているのに、黙々と作品を描いている人もいるし、賑やかに談笑している人もいる。

アートの祭典はカオスが正常

 さて、そのカオスなイベントの正体は?というと、アートの祭典である。プロ・アマチュアを問わず、自由に表現できるリアルな場ということで、“カオス”こそが“正常”なのだ。本当に、絵っていうのは偉大で、その人の可能性を高めてくれるものでもある。

 例えば、ぽんちょすさん。この方は、そもそも絵の経験がない。でも、たぬきが好き過ぎて絵が上手くなり、表現できるようになった。

これ、見てくださいと言って見せられた写真に納得。最初の頃のイラストはお世辞にもうまいとはいえないものだった(失礼!)。

 でも、その写真を見てもらうとわかるが、繰り返すうちに上達しているのがわかるだろう。そう考えると、絵っていうのは自分の内面を示して、コミュニケーションのきっかけを作ってくれるものなのかもしれない。

人とのつながりを深めるアート

 また、ある人は同時に、友達同士の繋がりを深めてくれる存在としてアートと向き合っていて、それが「いぶくろ。」。このコンテンツは4人の作家によって構成されていて、学生時代の友達だという。いずれも、美術系の学校であったが、その後就職に伴い、バラバラになった。

 でも、この「デザフェス」の度に、それまでと同じように、その4人は集まり、アイデア出しと称して、食事会をするのだそうだ。嬉しそうにその一人、「けけこ」さんはそう語ってくれた。バラバラに作るよりは、テーマも共通にして「いぶくろ」というわけだ。

 彼女が手がけたTシャツは、「OMURAISU(ローマ字で書くと変だが)」と書かれた文字の下に、鶏の上に卵が乗っているイラストが描かれていて、ツッコミどころ満載である。

 僕が中でも興味を引いたのが、本人はいなかったけど、kapiさんの「醤油アクアリウム」ストラップ。誰もがお馴染みな弁当に付属する「醤油入れ」をアレンジしている。中に小さな造形物を作り、それと液体とを入れると、醤油入れがアクアリウムの幻想的な雰囲気になるというわけである。

 一見、消耗品で誰もがスルーしてしまいそうなアイテム。それでも、ちょっとした工夫を施すだけでも、夢を見ることができるって素敵だと思う。

表現は無限

 つまり、表現に制限など、存在しないわけである。こちらは、エネルギーをアートで表現するというもの。元々このyukoさんは音楽でも人でも、目に触れると、まず色が浮かんで見えるという。ならば、その色をアートにしてしまおうという大胆な発想で、正直、驚いた。

 だから、写真の作品は舞い降りてくるそのイメージをそのままキャンバスに映し出したもの。ペンに限らず、腕なども道具にして、色を表現するのだという。加えて一つの傾向として感じたことなのだが、夫なり家族の理解があって、活動を後押ししてくれているという実態である。このyukoさんも一児の母。

 実は元々、小さい時から絵が好き。ただ家庭環境で勉強を優先する中で、絵からは遠ざかっていた。しかし、結婚し、子供も生まれた時に自分のやりたいことを追いたくなって、今に至る。関西在住だが、子供は夫に預けてデザフェスに初めて出た。

 理解あって、できなかった夢を追う。素敵な世の中になっている。

アートはマイナスを補完する

 こちらは15年ぶりにデザフェスに出たというチャカモカさん。今まで雑貨屋などで絵を描いていたという。もともとアジアン雑貨店をやっていたけど、アトリエを構えてやっている。主にそれ以外にも仕事で、着物の「柄足し」という仕事をしているという。これがまた面白くて、シミの上に同じような柄を描いてリペアするというもののようである。「そういう仕事があるんですね!」と僕。

 とはいえ、彼女も夢を追い、この場所に来て、際限ないアートを描く。下の写真のようなアート風のものを手がけているのは、作家にとっての感情の消化のように思えた。描いているうちに涙する時もあると語る。

 アート性の高い作品もありながら、コミカルなハンバーガーをモチーフにしたキャラも。

「半分人間なんです」という言葉に笑う。本当だ、言われてみればキャラクター名も「ハンブンバーガー」。

 このバーガー、よく見たら下半分が、口じゃない?日常の着物の仕事でお金を稼ぎながらも、アートで気持ちを整え、そしておちゃらけてキャラクターを出す。この日だけは、自分のお子さんも預けて、とことんデザフェスを楽しむというわけだ。

ここでご挨拶なんてことも

 「あれ?このイラスト、、、Twitterでフォローいただいていますよね?」思わず声をかける僕。

「いつもお世話になっております??」。ネット上では繋がっているのに、リアルでは会ったことがない。昨今ではそんなことは当たり前で、だからこそ、デザフェスでご挨拶という事もある。

 こちらはコロコロ可愛いねこのキャラ「みかんねこ」。

 一方で、当然、「はじめまして!」も多く、歩いてみればわかるが、自分の感覚で、イベントを歩き回り、その一期一会を楽しめる。そんなわけで、立ち止まる僕は、夏川ユキチさんに声をかける。キャラクターの目が座っているので、ただならぬ雰囲気。ただ、それだけ(笑)。

 ご自身は絵を描くことが好き。ただ、コロナ禍で就職難の中でアルバイトしながらでも絵を描き続ける。こういう頑張る姿を間近に感じられるのも良い。

多くが集まるからこそ、披露の場でもある

 そんなわけで、多種多様な作家の数。それが惹きつける来場者達を増やす。今回はコロナ禍での開催時の人の入りが嘘のような賑わい。聞けば立錐の余地もない。「今回は通路がぎっしり埋まるほどでした」

 疲れ切った表情でありながらも、充実感に満ちた風で話してくれたのはtanakasakiさん。「これ、見て欲しいんですよね!」そう言って出されたのが、こちら。

 彼女は「牛乳坊や」というキャラクターを手がけていて、最近はライトまで作っているという。これはまだ発売されていない段階のようだ。描くキャラクターがレトロな風合いなので、この照明の淡い色合いが確かに程よく、マッチしている。こんなふうに新しい作品を披露する場としてもここは機能している。

魚のキャラと背景に流れる奈良での渓流での経験

 「なんか、、、お魚好きなんですよね」と極めてざっくりとsakiさんから紹介されたのが、隣のブースの木溪そのみさん。二人はコラボ商品も出していて、その割にはざっくり過ぎないか?と思いつつも、こういうコラボもこの場所の魅力。

 「どうしてお魚が好きなのですか」と僕は隣のブースにいた木溪そのみさんに聞く。

 彼女は、奈良県出身で、よく小さい時、渓流釣りに連れて行ってもらったそうだ。奈良県は山と川で構成されていて、自然と触れ合うのが日常。だから、魚は好きだし、その好きな自然な風合いと共に、キャラクターに落とし込んだ。魚がかわいいということはさることながら、その情景が浮かぶ、色合い。絵からマイナスイオンが出て(いるような気がして)癒される。そのブランド名を「水草堂」という。

 ここまで、多くのクリエイターの名前を挙げたが、十人十色である。そのそれぞれに過去があり、その過去ゆえに、今があり、それが絵になっている。ここに並ぶ一つ一つは、唯一無二の個性であり、それがアートとなって人の心を潤すわけだ。多くの来場者は、多くの才能に触れたことで満たされたことだろう。まさに百花繚乱の魅力である。

 今日はこの辺で。

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