“マーケティングオートメーション(MA)” EC特化のシナブルの仕組みは何故やりやすい?
例えば小売店でもリアルの場合、お客様との関係が寸断されがち。シナブルが着目したのはECサイト上の行動履歴から、適切な情報を抽出して、自分たちのアクションに活かすということ。そうすれば、寸断されずに関係性が築ける。それこそが、 マーケティングオートメーション ( MA )である。データは無数にあるからECに必要なそれとアプローチを意識しているのが彼らの特徴である。
顧客を知り、そのアプローチを自動化する
1.マーケティングオートメーション “MA” の意義
思うに、これからは顧客との関係維持が大事になる。これまではリアルの小売店然り、売り上げたその商品単位でその価値を測っていた。しかし、それでは継続に繋がらず、店としても安定した土台を作れない。
ただ、今やネットが台頭して、それがネット上、あるいはリアルも含めて、顧客単位でその行動を追える。だから、対顧客で必要なアプローチをして関係維持に寄与することで、店は未来をもっと現実的に描けるようになったのだ。
今回、そこで注目したのがマーケティングオートメーション (略して MA)である。
小売という文脈でそれを考えたいから シナブル 代表取締役 小林裕紀さんに話を聞いた。シナブルの特徴は、EC特化型という点にある。
2.何故EC特化型なのか?
シナブルは小林さんと同社のエンジニアが15年以上、ネット通販の業界にいて、その知見をもとにそれに特化する MA ツールを開発している。
そのMAツールは世界10か国、70を超えるサイトで利用されるまでに至った。アカウント数にして3000万超、月間PV数3億を超えている。つまり、特化型にすることで、一見すると難しいMAを小売業に関わる人に、身近なものにしてきた人。だから聞く相手として相応しい。
「以前であれば広告を使い、資本の論理で物量でものを言わせることが多かった。けれど、これからは自分たちが向き合うべき顧客の気持ちを向上させる必要があります。そして、それはきちんとケアして、継続していくことこそが大事」と小林さん。
3.人それぞれの身の丈に合わせて誰でも対応できる
そもそも「MA(マーケティングオートメーション)ツール」とは何か。MAとは、「シナリオ」に従いお客様との関係構築を、効率よく自動化していくものである。その「シナリオ」というのは、ステップメールなど、メール配信に関する機能を通して行うもので、関係構築の自動化である。
だから「オートメーション」なのである。
彼らが世界で受け入れられている要因にもつながるのだろうが、とにかくわかりやすい。MAというと、上記の通り「シナリオ」の設計から始まるから、人によっては難しい印象を抱くのである。
その点、小林さんは、そんなことはないと強調する。本来、MAは小さなことの積み重ねにすぎない。誰にとっても身の丈に合わせて対応できるので、簡単なはずと。
ただ、それを導くツールを彼らなりに追求した結果、EC特化型にすることで、必要なデータを必要なだけチョイスして、そのシナリオを設計しやすくしたことに価値がある。
3.閲覧履歴を活用するだけでも開封率が50% UP
それをわかりやすく説明するために、一つ例を挙げる。
よく一度通販サイトに訪れたお客様を購入へと導くやり方に「カゴ落ちメール」がある。「カゴ落ちメール」とは、カゴに入れたままのお客様にメールでそれを伝え、購入を促す仕組みである。しかし、なかなかそれが実績を伴わないことが多いのだ。
それも、小林さんにしてみれば、「MAツールを使えば解決できるのに」と漏らす。
MAツールであれば、お客様の閲覧情報と連携させて、その興味をもとにお客様にアクションを起こしていくことができる。その方が自然であり、効果は高まる。
4.カゴ落ちメールを送るよりも現実的
その効果はいかほどか。例えば・・・
行動履歴に基づき、こんなふうに条件設定をして、アクションをしていく。
お客様がECサイトに、前日に同じ商品を2回以上閲覧しているけれど、このお客様は「カートに入れていなかった」という状況があったとする。その状況に対して、MAツールはその「商品」自体とその商品に相応しい「レコメンド」をピックするわけである。つまり、行動に対して必要なデータを引き出してくれるというわけ。
その上で、「あなたのお勧めの商品はこちらです」とメールを送るのである。この部分がアクションである。シナブル調べで、その時の開封率は凡そ50%を超える。「カゴ落ちメール」を送るよりもはるかに現実的だと思えないだろうか。
下の図を見て欲しい。一斉メールよりもアクションに紐づいたメールの方がはるかに、その後の反応は良いし、お客様との関係も深くなる。
誰でもやれて効果を実感できてこそ、士気は高まる
1.シナリオは身の丈に合わせて作れる
おわかりいただけたか。「シナリオ」というのは、そういう取り組みを積み重ねなのである。結果、それらは繋がっていく。これをEC特化にする理由はそれらの積み重ねで混乱してしまうユーザーが多いからだ。つまり、ECにとって必要なアプローチは何か。そこから逆算して、必要なデータは何か。
企業によっては、頭でっかちにMAの導入費用で1000万円、投資して「シナリオ」を作って、本格的にやるところもある。しかし、そんなことをするまでもない。
小林さんのいう通り「できることからコツコツと」である。シナブルでは30万円〜60万円の費用さえ負担すれば、やってくれる。僕が今、店がやれることとして挙げる所以は、ここにある。
2.直感ベースでできるから楽しい
設定にあたっては、シナブルの社員が、最初の部分を請負ってしまう。だから店の担当者がやるときには、何も特段の知識も必要なく、使い方の指導までしてくれる。
そこから、オンラインショップの担当者に託され、その人の直感ベースでシナリオが組める。ゆえに、上記の通り、身の丈にあったMAが実現できるというわけである。
一つ一つを組み合わせて、総合的にお客様にアプローチする。そうすれば、例えば、冒頭に話した「カゴ落ちメール」のように、単発で何か仕掛けをするよりは、お客様の趣味嗜好に紐付いて、自然に効果を実感できる。これは店員にとっても楽しい。だから世界に広がったのだ。
3.掛け算的にできることが増える?
小林さんの話を聞いて面白いのはこの言葉だ。
「MAは足し算ではなく掛け算的にできることが増えていく」。
例えば、今、5つの機能ができているとしよう。そこに別の機能を一つ付け足しせば、「合計6個の機能ができる」というのではない。できることの幅は7にも8にも、12にもなるという事。一つの機能追加でもたらされる変化の膨らみは非常に大きい。
だからいつしか、総合的なアプローチができているというわけだ。通常のメールの2〜3倍の開封率となり、訪問率も2〜3倍となるのは、そうした所以なのである。
4.UIのおかげで担当者の新たな着想を呼び起こす
そして、先ほど、直感的と書いた。まるでiPhoneのように、自然に触るうちに、いろいろできてしまう。だから、最近では、ショップの担当者の方から「これができるなら、これもできそうですよね」などという提案も少なくない。利用者に自然とアイデアを生み出すのは優れたUIだからこそ、為せる技。
そう思うと、今無理なく成長できる要素は、ここにあるような気がしてならない。ちなみに、下記はワインのECサイトでの実例である。
もしも必要最小限のコストと時間で、これだけのチャレンジできるのなら、やる価値もありそうだ。自分たちなりにできる身近な変革として、MAに取り組むことは意味がある。購買データだけの時代ではない。その顧客を意識して、顧客関係構築を行わなかったら、その企業の行く末が見えてこない。何かに依存して、自転車操業し続ける企業になってしまうのはあまりに悲しい。自らが盤石な顧客との関係構築に努めるべきなのだ。
今日はこの辺で。