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元 千趣会 中山茂 氏に学ぶ カタログ通販とECの違い と DX 推進のヒント

  DX 推進や 通販サイト への注力はコロナ禍で、よく聞く言葉だが難しい。リアルなど他事業での成功体験にとらわれるからだ。だから僕はシナブル 代表取締役 小林裕紀さん、曽川雅史さんを交えて、元千趣会執行役員で中山茂マーケティングデザインの中山茂さんから話を聞かせてもらうことにした。興味深かったのは カタログ通販とECの違い である。似ているようで全く異なるのだ。

大手こそ 通販サイト 構築が難しい理由

1.過去の成功体験が邪魔をする

 中山さんは千趣会時代、カタログ通販の老舗にいながら、ネット通販の環境を構築した張本人で、他の事業がありながらネット通販に挑戦する事の難しさに向き合い、売上を伸ばした人なので、今、必要な意見を持っていると思ったのだ。

 彼の話を聞いていて、千趣会の例で言えば、単純に販売手法を「カタログ」から「ネット」に変えただけ、と考えてしまうことで間違いが生じると感じた。語弊を恐れず書くとすれば、もしそれで済むのであれば、もっと現時点で、千趣会は最先端を行っているはずで、好業績を取れて良いはずだと思う。昨今、千趣会がここ数年を見て、そこまで伸びているとは言えない現状を見るに、いくらカタログ通販の名手であっても、その転換がいかに難しいかを思い知らされるのである。

2.年4回の商品生産体制がネット通販に必ずしもプラスではない

 恐らくカタログ時代のベースに頼り過ぎなんだろうと思う。千趣会では、カタログは年4回、発行され、7万品番はあるだろうその商品の8割近くは自社で生産しているのだそうだ。当然、その商品の生産はカタログ発行のタイミングに合わせて行われることになり、無理もない。それはカタログの数が何千万部でもあるので、注文が来る以上、そこで在庫は抱えないといけない。

 ただ、年4回しか主な新商品は出さないというサイクルができて、そこにネット通販が合わせようとすると、無理が生じてくる。ネット通販の強みを生かして、生産性の高いビジネスモデルを追求している企業には、いくら千趣会のブランドバリューを持ってしても、到底敵わない、ということになる。

 例えて言うなら、毎週、新しいタイプの商品を少量作成して、顧客の動向を見据えながら、売れなかったらすぐに対処して、ブラッシュアップするなどといった「ネット通販ならではのやり方」は、会社として他で大きな在庫を抱えている以上、やりづらくなる。

 だから、単純に、カタログ通販をネット通販に置き換えても解決できないように、リアルでの販売もネット通販に「置き換えた」ところで、考える以上の成果は出せないというわけなのである。

今の消費者に合わせ、仕様を変えていく

1.カタログ通販をそのままECに置き換えられない理由

 デジタルはデジタルで時代が進化しており、今の消費者のスピード感とか商品の捉え方、情報収集などに対して、店舗が今までやってきた「姿勢」で取り組んだところで、通用するかというと、そうではないのだ。

 今回の取材で、シナブルに同席してもらった理由は、例えば中山さんがいう様な単なる「置き換え」ではない本質を、今の時代でデジタルに生かすとしたらどうあるべきなのか、という実践的な答えを導き出したいと思ったからだ。

2.理論と本質をシステムといかに融合させるか

 この中山さんの話を聞いて、シナブル小林さんは、大きくうなづいて、企業が何かを変えなきゃいけないとなったときに、個々の企業ごとに、手段もアプローチの仕方も違うはずだし、また、置かれている状況によってもそれは変わってくるはずだと話した。

 彼が意図するのは、「自分たちのシステム(彼らで言えば、「EC Intelligence」というMAツール)は、そこで、いかに適切なタイミングで、良い形で変化させていけるかにある」としていて、それがシナリオ設計だったり、お客様の行動を可視化することだったり、あるいは、お客様が探している商品をタイムリーに見つけることなんだ、と話していて納得した。

 ここが中山さんの話すところと一致してくるのだが、やっぱり向き合うべきは「人」であるということなのだ。ここで、中山さんに「人」を理解すると言うのはどういうことなのかを聞くと、こう答えてくれた。

 「もっとお客様をイメージして、そのお客様にとってどういう表現がいいのか、そのお客様がネット上ではどこにいるのか、そして次にまた買ってもらいたいと思う心に残る要素はなんなのか、そうやって深掘りしていかないといけないということです」と。

自らも顧客の気持ちを掴み、相応しいアプローチを

1.売上を見るのではなく解決される要因に目を向ける

 昨今で言えば、「売上数字」が評価になりすぎていて、裏に隠れている「その商品で解決される要因」や「その商品のおかげで楽しい」というお客様の気持ちに対しては、案外、無頓着である。

 ただ、本来、商品と言うよりは、その「気持ち」にお金を出しているので、サイトでも、そこを掴んだ表現にしていかないとというのが大事だとする。極論、中山さんに言わせれば、面倒くさがらずに迷ったら、モニター調査して人に聞いて、原点に帰った方がいいと説く。その位、胸の内を理解することが大事だ。

2.大事なのは動画という手段ではなく、なぜ動画なのかの方にある

 その理解の仕方とアプローチは時代とともに変化していて、最近の話での良い例は?と問うと、大都の通販サイト「DIYファクトリー」の例をあげた。彼らはコロナ禍もあって、その使い方についての動画も提供していて、巣ごもりでそういうことをやることの楽しさを伝えたのだ。ものを売って商売をしているのだけど、買うという以外に接触の機会を作ったことに価値があるとした。

 それは、動画云々ではない。お客様がどの様な行動をするのかをみているからこそ、動画を作ろうという発想になっているということが大事だというのだ。そして、彼らなりにそうやって適切なタイミングを作り出し、そこで商品を売っているから、どこでも売っているものなのだけど、ここで買ってみようかな、ということになる。

 つまり、中山さんは、この例をもとに、お客さんのやりたい事をまず提供できていて、買いやすい形で紹介できていれば、購入につながるだけでなく、最初の出会いがそれなので、次にも繋がる、というわけである。

 もしもその動画を見て、購入した人なら、また何かを作ろうとする時に、そのコンテンツにいくだろう。そうすると、それはいつしか、企業への信頼感となっていき、今のネット通販であるべき、お客様と企業との関係性につながっていくというわけなのだ。

3.同じ継続顧客でも種類は異なる

 ここが強調したい点でもあって、例えば、千趣会は単品通販で買い続けるのではなく、複数の商品を継続的に買ってもらっていて、それを今になぞらえていうなら、それが単品通販ではなく、買い続けてもらえる本質をついている事例なので、注目したいのである。

 ともすると、ここが過去の考え方に捉われていると、いざコンテンツをしっかり作るときに、「動画を作ってなんになるの?」「お金がかかるのでは?」という声に繋がりがち。でも、今、売ろうとしているそのメディアに合わせて、お客様と触れ合い、答えを出していくことが大事だという考えに戻ってくるのである。過去の功績は今とそぐわない。

関連記事:“自社EC”担当者 はブランディング 後に課題あり 押えるべき MA や CRM の本質的理解

今の消費者の気持ちに合致して通販サイトの活かし方が見える

1.会社そのものの仕組みを見直すことの大事さ

 これに対しては、シナブルの小林さんも賛同して、最近、うちのシステムを利用する人の中には、コロナ禍で自分たちも変わらなきゃいけないと言っている企業がいて、そういう企業こそ、結果を出していると話した。先ほどの話ではないが、自分が扱うネット通販という土壌で、必要な手段をとって、お客様が見えてきた結果、結果が伴っているのだろう、と続けた。

 そうなると、スタッフ側も士気が上がる。このタイプのお客さんなら、自分なりにこうしたらどうだろうと、想像力を働かせて色々な仮説と検証を繰り返すので、自然と伸びていくというのだ。

 この辺が、テクノロジーの魅力であろう。自然体でお客様の行動を把握し、それをアプローチに変えていくのは正しい。中山さんが経験則として、アンケートは難しくしてはならない。それだけでお客様は離脱するから、と話していて、敢えて「一番下のお子さんの年齢は?」としか聞かなかったそうだ。いかにして自然に、そのお客様の行動を掴むかが大事で、その手法は実は、日々進化しているのかもしれない。

 そう思うと、日々進化しているテクノロジーをうまく味方につけることで、生産性高く、大事な本質を実践できるようにも思う。

2.理論やブランド、その上で効率化させ士気をあげるシステム

 思うに、表裏一体で、理論だけでもツールだけでも、ない。店としてのブランドがベースにあって、ただそれはお客様とのやり取りを通して、必要な立ち位置がどこにあるのか確認した上でのことだ。その為にまず今、ネット通販という土壌で見えるお客様の姿を可視化する必要があってその元でしかるべきアプローチを模索するべきなのだということである。

 仮に、その企業がそれまで別の事業で成功を収めたとしても、ネット通販で見えてくるお客様の姿は違うし、伝え方もその伝える手段も異なる。だから、会社として、そのデジタルの最適化も含めて、既存事業をどう見直ししていくかまで考えていくことが、重要なのではないかという結論に至った。

 その本質に立って、一事業ではなく全体で見て、その中の最適化を考え、必要なアプローチをすれば、例えネット通販初心者であれど、結果はついてくるし、過去を未来に活かせるのではないかと思う。

 今日はこの辺で。

関連特集:【連載】 シナブル の買ってしまう「 MA 」顧客の行動を活かすシナリオ設計

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