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まちづくりの未来を考える 街や地域は個々の個性の“受け皿”になり得るか

 僕らが何気なく住んでいるその街は、DXとの絡みで我々にどんな価値をもたらしてくれるのだろう。この日、神奈川大学のみなとみらいエクステンションセンターにいて、シンポジウム「社会デザインとDSX」を聴講していた。

街や地域は個々の個性の受け皿になるか

1.集中から分散へ

 僕が聞いたのは、パネルディスカッション。パネリストは、立教大学名誉教授 中村さん、D4DR藤元さん、ビームス太田さん、コード・フォー・ジャパン関さん、日本総合研究所木村さん、ぴあ辻さん。モデレーターは神奈川大学准教授 中見さんである。

 僕が関心を持ったのは「集中から分散」という話である。「白黒はっきりつける」という具合に、これまでの価値というのは集中させることで、結論を出していた。けれど、昨今は、多様性を受け入れるという傾向がある。

 議論の中でも、台湾のIT大臣、オードリー・タンさんを引き合いに出しながら、話をしていたのがうなづけた。彼女自身もそうで、自らの著書でも常に「全ての人の側に立つ(take all the sides)」を提起している。

 取りこぼされた立場を見逃さずに、その視点を取り入れる。彼女はクアドラティックボーティングをよく、口にする。要は、少数の票数をいかに保護するかという視点である。

2.推し活と街?

 さて、それが街とどう関係あるのか。つまり、今までの街というのは場所に依存しすぎて画一的。だから、統一感を重んじていて、人の個性も見えづらかった。地元の人の存在も観光として受け入れるための材料となっていたに過ぎない。

 けれど、これからは住民も観光客も、バラバラで多様性のある様々な人が存在すればいい。

 そこには統一感がないように思える。しかし、その人々の個性を生かしながら、その街の熱狂へと繋げていけるはずだ。どういうことか。僕はこの話を聞いて全く関係ないかもしれないが、「推し活」を思い浮かべた。

 つまり、人にはいろんな顔がある。そのどの顔もその人自身なのである。でも、そのそれぞれの顔を引き出すには、実はきっかけが必要なのだ。僕は、先日、とあるアイドルのグッズを製造した際に、それを痛感した。

 そのアイドルを熱狂的に応援する彼らは、そのアイドルを応援するという部分で皆、共通の顔を持っている。だから、この部分においては共感の度合いも高く、熱狂も生まれやすい。でも、彼らは普段から、その顔で生活しているかといえば、そんなわけはない。それも彼らの顔である。

3.きっかけこそ個性の源

 繰り返すが、人にはいろいろな側面がある。だから、あとはきっかけ次第なのである。ここに、さきほどの街の議論が戻ってくる。

 要は、街が人々の中に潜在的に存在する“顔”を導き出すことで、活性化させられる。かつ、これがなぜ、DXと結びつくか。それはいうまでもなく、SNSなどのデジタル化により、個々を尊重して小さくとも価値あるムーブメントが起きやすくなっているからだ。

 では、どうやって街は人の個性を引き立たせる「受け皿」になり得るのか。その意味では、先ほどの“推し活”ではないが共通の概念が必要なはずだ。

 そういう街や地域という文脈では、ビームスの太田さんの話が参考になりそうだ。彼女は、ビームスデザインで地域と連携して商品を作っている。ビームスは元々、“カッコいい”ライフスタイルを提案しているから、その部分で地域にあるものをそのフィルターにかけるのである。

 ちなみに、過去、僕の取材でもビームスデザインによって生まれ変わったお店の話を取り上げた。

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 話を戻せば、太田さんも同じである。そこで「もっと技術以外にも伝えられることはあるでしょう」と対話をして引き出していく。思いがけず、当事者もその地域の魅力に気づけて、彼らはそれをデザインで反映するのである。 

4.自分たちの持つ価値を可視化する

 そうすることによって、それが新しい付加価値を生んで、地域の貢献につながるというわけだ。彼らが入ることにより、今まで自分たちの中で無意識だったものが、価値と認識される。そこを商品で可視化することで、付加価値となるわけである。僕はこの可視化の過程こそが大事だと思う。

 もしも、その部分を考えずにいると、どうだろう。価値に見合った値付けをすることなく、それが原因で事業が追い込まれたりする。そういう付加価値をつけることの大事さを彼女も説いているわけである。

 そう考えると、街という定義を先ほどの多くの人の熱狂の受け皿とできれば、その中に生まれる生産物も相対的に価値が底上げできる。要するに、街は、場所に依存することなく、価値とは何かを意識し、フィルターをかけることなのだと思う。

個々を尊重しつつ価値を生み繋がる

1.コミュニティの定義が変わる

 多様性が受け入れられ、個々を尊重する中で、共通の認識が新しい付加価値を生んで、コミュニティが生まれる。そのコミュニティは従来、言われるコミュニティとはわけが違う。より人々が自分ごと化される中で起こることだから、熱狂の度合いは大きく、その地域の事業を救うということも考えられそうである。

 ここではいろいろな議論があって、NFTというキーワードも飛び出し、これがまた、街とどういう関係を持つのかという部分もある。けれど、言葉に踊らされることなく、時代の本質を見ることこそが大事だと思う。

 デジタル化は実は、より人間的な方へと向かい、個々を尊重する流れにある。その中で、NFTはデジタル上の表現を個々の資産として認識するものだ。つまり、それは唯一無二の価値であるから、逆に、人と人とをより強固に結びつける材料になりうるのだと思う。

2.コミュニティとデジタルがつながりを深める

 これまた、話が逸れるけど、小室哲哉さんが自らの楽曲とNFT化して、特定のファンにしか、それを提供しないという試みをしていた。要は、人と人とがつながる証としてのNFTである。

 だから、ここまでの話がやはり繋がってくるように思う。

 例えば、地元の農家で稲刈りや田植えができる他、参加する権利をNFTでやりとりしたっていいだろう。そこに、地元のスポーツチームの選手が参加するなどすれば、付加価値も出る。田植えの奥深さ、人との繋がりが、街という要素を補完するわけである。

 人と人とが共通の価値観により繋がり、それをデジタルはさらに深掘りして、絆を深められる。街や地方との絡みで言えば、ビームスの話にあるように、まずはその価値がどこにあるのかを強く意識するべきである。

 そうやって、街が場所に依存することなく、価値として人の拠り所になった時に、真に新しい時代の街ができることになるのかもしれない。

 街が個々の個性を引き立たせて、人と街とが輝くその“受け皿”となることを期待したい。

 今日はこの辺で。

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