物流とECの一体化で付加価値を創出する企業たちの挑戦
今や「商品を売る」ことは、単に販売の場での競争にとどまらない。各企業が生産部門や物流部門と密接に連携し、いかに付加価値を高めるかが重要となっているのだ。価格競争に巻き込まれるのではなく、独自の強みで顧客に価値を届けるには、製品の企画から生産、そして物流のすべてを一体化させ、真の競争力を築く必要がある。こうした動きは、消費者の信頼を集め、企業の成長を支える原動力ともなり得る。水郷のとりやさん須田さんやリンクス小橋さん、流通サービス長谷川さんの3人の対話からそれを紐解く。
顧客への「鮮度と品質」を追求:水郷のとりやさんの一貫姿勢
「私たちは、鶏肉の鮮度と品質に徹底的にこだわっています」と語るのは、須田商店の須田さん。
「水郷のとりやさん」では、生産から出荷までを一貫して管理するために新たな工場を建設し、鶏肉の処理、真空パック、箱詰め、そして出荷までのプロセスを効率化している。須田さんは続けている。
「こうした体制は、顧客の注文にすぐ応えられるだけでなく、ECとの連携を強化し、より高い顧客満足度を提供するための重要なステップです。直接出荷することで、物流も安定し、お客様に鮮度と品質を届けられるようになりました。」
こうして、須田商店は生産と物流の一体化により、顧客にとっての付加価値をさらに高めている。
48時間以内の供給で旬を提供する:ZARAの迅速な物流戦略
一方で、ファッション業界で独自の地位を確立するZARAの成功のカギについて、リンクスの小橋さんはこう語る。
「ZARAは、ファッションの旬を逃さないように空輸を活用し、スペイン本社から48時間以内に世界中の店舗へ商品を届けています。この迅速な供給体制があるからこそ、トレンドを押さえた商品をタイムリーに店頭へ並べることができるんです。」
さらに、小橋さんはZARAのビジネスモデルについて触れる。
「ZARAは製造小売業(SPA)モデルを採用しており、生産から販売までを一貫管理することで、リードタイムの短縮と在庫リスクの低減を実現しています。また、ほとんど値下げをせず定価で販売することで、高い利益率を維持しているんです。」
つまり、ZARAの物流戦略は、スピードを重視し、顧客が求めるタイミングで商品を届けるという付加価値を創出しているのだ。
ニーズに応じた柔軟な物流体制:オルビスのAGV活用で生産性向上
物流の最適化において、オルビスと流通サービスが共同で進めた改革について、流通サービスの長谷川さんは次のように語る。
「オルビスの基礎化粧品はサンプルが多く、従来のAGV(無人搬送車)で棚ごと移動するだけでは効率が上がりませんでした。そこで、AGVを1オーダー単位で管理できるようにカスタマイズしたんです。」
長谷川さんは、この取り組みによる成果についても語りました。
「これにより、作業者が持たない・待たない・歩かない・考えさせないという『4つのない』を実現しました。処理能力は1時間あたり1,800件から2,400件へ増加し、作業者数も27%削減されています。」
このように、オルビスは顧客ニーズに合わせた柔軟な物流対応で、生産性と顧客満足度を同時に向上させている。
企業ごとの視点から見ても、物流とECの一体化は、それぞれの強みを生かして付加価値を生み出す重要な戦略となっている。水郷のとりやさんが「鮮度」、ZARAが「旬」、オルビスが「効率化」を追求することで、それぞれの顧客に独自の価値を提供しているのである。
今日はこの辺で。