1. HOME
  2. News
  3. リアル店舗
  4. 小売DX学
  5. カメイドクロック 亀戸に新たな時を刻む 商業施設が地元と一体化する意味

カメイドクロック 亀戸に新たな時を刻む 商業施設が地元と一体化する意味

 何気なく、店舗の方々と話をして、気付かされたことがある。それは、元々都心に旗艦店を構えていた某店のコメント。それがコロナ禍でなかなか来店が叶わない状況がある中で、クローズしてしまった今、郊外で価値を育てることと、人が集まる商業施設の意味合いを思ったと。カメイドクロックが存在する意味はそこにあるのかもしれない。2022年4月28日にオープンする商業施設である。都心から離れていることもあり、野村不動産の会見での言葉もそれを感じたし、そこに今を感じつつ館内を歩いたのだ。

“カメイドクロック”で目覚める亀戸

1.サンストリート亀戸の跡地

 野村不動産主催の会見で、あっそうだったのかと思った。元々、ここはサンストリート亀戸と呼ばれていた場所。その場所は、当初、2012年までの予定だったのが、延長されるほど、その存在は、地元住民に慕われた。クローズドは予定されていただけに、人気ゆえに後ろ倒しで実行され、それに代わるものをと築いたのが、このカメイドクロック。新しい商空間創造の襷を受け取ったのは、野村不動産である。

 「何故、クロックなのか?」と思ったのも束の間、彼らは、この地が時計で有名なセイコーインスツル精工舎跡地であったのだ。その地で新しい「時を刻む」わけで、それこそがまちづくり連絡会も巻き込みながら、地元一体型の商業施設だ。サンストリート亀戸が持っていた、地元と一体となる商圏の形成はそのままに、街づくりの一環としてこの場所が形成され、地域行事もここで開催する他、eスポーツなどの要素も取り入れ、亀戸の新しいコミュニティが生まれることを意図している。

2.場所を起点にコミュニティを作る

 ちなみにeスポーツを楽しむ空間「カメスポ」と呼んでいてこの地を通して交流がうまれる場所を提供するとともに「カメイドタートルズ」という亀戸を基点としたスポーツチームを結成。競技人口1億人とも言われるその土壌へ亀戸の代表として戦いを挑む。

 また「カメラボ」というセミナーや展示などができる自由な開放的な空間を用意するとともに、その横では「カメテレ」というYouTube番組などを作成するためのスタジオも併設して、単にショッピングだけではない価値を地域と一丸となって作り上げる。つまりコンテンツを生み出す場所として、それが存在するところに価値があるわけだ。

3.秀逸なヤマト運輸の着眼点

 正直、僕個人としてはこの「information」コーナーに感銘を受けた。見るべきポイントは、それをヤマト運輸が運営しているという事だ。

 言っておくが、ヤマト運輸のインフォメーションではない。この施設全体のインフォメーションカウンターをヤマト運輸が運営しているから意味がある。少し視点を変えるだけで全く違った見え方をするもので、勿論、ヤマト運輸だから、ここの場所で段ボールを購入して、その中身に館内で買ったものを詰めて出荷できるなどもメリットがあるが、言いたいのはそこではない。

 「施設全体のinformation」なのだから、ヤマト運輸に関係なく、近隣の人たちのありとあらゆる相談を持ちかけられることのほうだ。ヤマト運輸にとってはそんな情報は黙っていても手に入らない。地元住民が抱える悩みであり、細かなニーズを知るきっかけが得られるのはメリットが多い。しかもこれであれば、通常業務の延長線上で汲み取ることができるから非常に効率がいい。

 野村不動産のアイデアなのか、ヤマトのアイデアなのか、どちらにしても素晴らしい。

 インフォーメーションを目的にしたら、悩みに答えて完結してしまう。インフォメーションにしてインフォメーション以外の価値を見出したという着眼点に拍手を送りたい。声が集まるほどに、それ自体がまた新たな価値を生む。運送業自体は率先して自分から声がけして意見を聞ける業態ではないからこそ、思わぬ親和性があったものだと驚いた次第である。

リアルの価値を地元と一緒に

1.サンリオの店がもたらすエンタメ性

©️2022 SANRIO CO., LTD.

 リアルなエンタメとしての場が近隣にあるというのは重要な要素でその役目を担うのは「Sanrio カメイドクロック店」である。少し話が逸れるかもしれないが、サンリオの言葉で印象的なのは「必需品ではない」という事。正直、その商品自体が「あってもなくてもいい」ものではあるのだけど、心に訴えかけるものとして色々な角度からファンを楽しませて、逆に「その人にとって笑顔をもたらすかけがえのないもの」としている。

 だから、お店に行くなり「今、これが脚光を集めているんですよ」と元気いっぱい弾む声でデータサイエンス部の進藤美穂さんが手に取ったのは、ウエハース。中にキャラクターカードが入っているのだ。

 商品そのものとしての価値はありつつ、こうやって友達と会話が生まれるような視点で商品作りがされているのがこのお店のエンタメ性を高めているわけだ。この商業施設に関係して考えると、それが住むところの身近にあるというのは、商店街における駄菓子屋のような存在に近く、賑わう様子が目に浮かぶ。

2.必需品ではない価値を店で補完する

 例えば、これは「推し活」用のグッズで、記憶を辿れば彼らはいち早く、そのグッズ化に取り組んでいた。アイドルのライブなどではお馴染みなうちわ。そこに彼らがどうアレンジしたかというと、大事なうちわだから、キャラクターをモチーフにしたそのカバーを作ったというわけである。彼らの商品は、いつも多くの人にとっての楽しむ姿がいつも並走している。

 カバー自体それぞれにキャラクターだけではなく「カラー」を意識していて、それはアイドルに限らず、推しのイメージカラーにそれが寄り添えるようにと配慮されていて、ツボを押さえている。

 「随分、アナログですね」と思わず僕が言うと「最近復活したんです」とデータサイエンス部の山口あすかさんに案内されたのが「げたばこゲーム」である。下駄箱が設置されていてくじ引きをして番号を取り出し、その番号の下駄箱を開けると、中からグッズが出てくる。その商品をいかに楽しませるかの「演出」を忘れない。

 このお店もそうだし、サンリオピューロランドもそうだが、そこにまつわるそれぞれの体験が商品と紐づくことで、本来持つそのキャラクターのポテンシャルを引き上げる。よりグッズが愛着を持ってもらえるような工夫は、この店に来たいと思える理由となる。先ほど、駄菓子屋を例にとったけど、やや立派な建物だけど、この亀戸の地に、駄菓子屋のような笑顔と楽しさをサンリオはしっかり今にもたらしてくれている。

3.試着を通してお客様との距離を縮める

 改めてリアルの存在の大きさを痛感させられたのが、「aimerfeel(エメフィール)」という下着やランジェリーを扱う専門店である。メディアとはいえ興味津々に女性下着のところを見ていると、いかにも怪しげな人を見る眼差しを感じたような気がしたので、スタッフの方に話しかけた。ち、違うんだと。(何がだ(苦笑))。

 興味を持った理由は、僕はこの店舗名を見て、真っ先にこのショップのネット通販サイトで張り切る玉山順さんの顔を思い浮かべたからだ。知る人ぞ知るネット通販の名店で、「楽天市場」のSHOP OF THE YEARインナー・下着・ナイトウェア ジャンル賞を8度受賞するなど、優良店舗の常連なのである。

 その売上が好調だというのはよく耳にしていたが、その一方で、このお店でそのスタッフに話を聞いたら、「全国に130店舗以上、あるんですよ!」と話して、リアル店がそこまで勢いがあるのかと驚いた次第だ。強調していたのは「こういう下着などはやっぱりサイズ感が重要だ」ということ。

 頻繁に足を運んで、自分に見合ったものを購入してくれるお客様ほど、リピーターになる率は高いから、リアルの存在の大きさを実感しているとのことだった。どちらがどうというわけではなく、リアルもネットもそうやってお客様を大事にするエメフィールの姿勢が、一番の付加価値であって、そこがお客様に支持されていることに気付かされたわけだ。

4.アルペンって今こんな会社なの?

 その他でも色々気になる店舗はあって「スポーツデポ」というお店。広いフロア面積を活用して、様々なスポーツグッズを並べているのだが、僕が驚いたのはこのお店を運営しているのはアルペンだということだ。

 アルペンというと、スキーウェアのイメージが強い。しかし、昨今、こういう形で小売店を運営していて、ミズノやニューバランスなどといった様々なブランドの商品を、野球、バスケット、テニスという具合に競技ごとに分けて販売しているのである。

 実際、スタッフに話を聞くと、「本当にそのブランドが好きであれば、そのブランドのお店に行くこともあるけど、どうしても品揃えが限定的になります」と。なるほど。スポーツをやるのに必要なアイテム全般を探す際には、広く捉えて、自分に合ったものをセレクトできる、このようなスタイルも同時に求められているのだ。

 彼らが考えるその裾野が広がっていて、メーカーとしての強みもあるので、合わせてオリジナルブランドの『TIGORA』を展開して、このお店自体の価値を自らの事業の新しい可能性に活かしている。スキーウェアのイメージから完全に脱却を図って、新たな形で成長をしていたのである。

5.斬新な修理を商いにする視点

 その他にも、新しい切り口だと思ったのは「時計宝石修理研究所」というお店。要は、修理を専門に扱うお店なのである。スタッフ曰く、スタートはジュエリーの小売をやっていたのだけど、そこに関しての修理をするうちに、その修理という視点を派生させて、時計など幅広いジャンルで、修理を請け負うことで、生業にしているわけである。

 僕自身が思ったのは「プライスレス」の大事さ。例えば、自分の親が大事にしていた時計はその人にとっての代えがたいものであり、その一方で「使いたくても動かない」ということはある話だ。だからこそ、それを修理し、「再生」し続けることで、その思い出と商品はずっと代々語り継ぐことができる。それは高いお金を出して高級で何かしらの付加価値を持った時計とは違った意味合いを持っていて、そこをビジネスにしているのが秀逸だ。

 できない修理がないように、その為の部品を調達するほど、修理を完結させることに徹底している。なぜならその時計やアクセのメーカーですら部品がなくなっていて、それらの修理を受け付けていないからだ。だから、彼らのこの取り組みが活きてきて、そうやって丁寧にそのニーズに応えていくことで結果、その信頼は深まる要素となる。僕は純粋に、リピートに繋がると思っていて、その感動は想像以上に大きい。一人のお客様が複数の商品の修理をこのお店に依頼することになって、長いスパンでつながり合う関係性ができそうに思う。

地域に根付く商業施設の必要性

1.路面店だけでなく商業施設

 最後に、僕はこの中で「コトモノマルシェ」というお店の話を聞いて、改めて考えさせられたのであるけど、彼らは一品物のハンドメイド商品を扱っている。それはアクセサリーに始まり、花を装飾品など幅が広いのだけど、それらは一品物だから、その場で見て楽しむことでその価値を実感していると。

 その中にあって、正直に話してくれたのは、彼らの旗艦店が原宿にあって、このコロナ禍の影響でクローズしてしまったということであった。ひと目見て分かるが、本当に様々な作家と繋がって、実にバリエーション豊富に、色々な手作りのアクセサリーがずらりと勢揃いして、置かれていることは圧巻である。

 その価値はリアルでこそ、一品一品、その違いを確認しながら、購入を決意していくその過程を楽しむものである。だからこそ、リアルの意味合いを思うけど、それが今のコロナ禍では彼らが誇る路面店に来てもらえるに至らないところに、歯痒さを感じるわけである。

 そこが冒頭の話にも繋がるのだけど、こういう商業施設が、町の商店街として再定義されて、まとめて誰かが集まる場所を作り出せたらどうだろう。身近に商店街さながらに、集まる場所があれば、路面店で成し得ない集客を各地方でもたらすことができる。現に僕はこのお店の価値をここで素敵に思えた。このお店もそんな部分に期待している様子だった。

2商業施設が地域密着であること

 今回、野村不動産が中心となって「カメイドクロック」という商業施設を建設したのは、そんな新しい時代の流れで、今こそ「商業施設として何ができるか」を考える契機となったのではないか。

 ヒントは地域密着型で、先ほど触れた通り。商業施設を運営する側が、ただトレンドファッションのブランドを扱い、それらのブランドで集客を担うという従来のスタイルではなく、eスポーツ然り、放送局しかり、積極的に地元住民の必要なインフラを一緒に担って、場所としての価値を最大化させることにあるのではないかと思う。

 図らずもコロナ禍により地元で物事を済ませようという考え方が定着していて、だからそういう形にならざるを得ないと考えがちだけど、僕が思うに、そういう問題ではない。

 何かといえば、人々の気持ちの多様化である。

 大きくなくとも、個々に価値観を持ち、その価値観の中で深掘りして、その関係性を深める時代になってきているということ。それはSNSからトレンドが生まれることでも明白だ。つまり、リアルでも大量に人を集めて売り捌くという時代はなりを潜めて、もしかしたら、商業施設も地域密着型で、価値観を醸成して、コミュニティを生み出す土台として売り出し、それが小売にも価値をもたらす時代がやってくるのかもしれない。僕はそう思うのである。

 今日はこの辺で。

関連記事

145はマガジンは「ヒットの生まれ方と育て方を考えるメディア」。キャラクターなどのコンテンツ関連と新しい小売りの最新情報、商品開発の実態を追うメディアです。
詳しくはこちら
小売のDXについて理解を深めるコーナー
キャラクターのライセンスについて理解を深めるコーナー
製造に関する理解を深めるコーナー

最近の記事