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関連店舗でDXを“トライアル” リテールAIの巧みな視点と変貌する小売店

 小売とデジタル。そういうと、大抵がECを思い浮かべがち。だけど、一方で、小売店というリアルの現場を最大化させるデジタルもある。それを実感させてくれるのが、リテールAIという会社の“トライアル”なサービスの数々なのである。リテールテックJAPANでの彼らの説明が僕の目に留まった。

リテールAIのショッピング未来絵図

 リテールAIは実は、トライアルホールディングスの関連会社。トライアルHDというのは福岡に拠点を構えるショップ「トライアル」を運営している。つまり、リテールAIは関連会社がリアルなお店を持っているから、そこで活かしたデジタルの価値を最大化させるのである。確かにデジタル企業が単体でDXをやるのは難しい。試験的にできることは他のデジタル企業にはない大きな差別化要因だ。

 そこで実績が出たものは「トライアル」以外のショップにもオープンに展開していく。リテールAIが存在するのは、そこでそのデジタルの仕組みを切り取って外販する為。だから、逆に自らの店舗という強みを活かして、盛んに投資をしても、長い目で見れば、ここで回収できる。デジタル企業にはないチャレンジがいつもここでは見ることができ、やればやるほど、会社の成長に寄与できる。

顔認証で買い物がドラスティックに変わる

 では具体的にそれを見ていく。まずは「顔認証」システム。言葉上では大体想像がつくだろう。けれど、その実機を前にするとその可能性がいかに大きいかを痛感させられる。案内してくれたスタッフがカメラの前に立つと、ほんの数秒で(マスクをつけているのに)認証して、レジで会計ができるようになった。

 ピッと商品のバーコードをかざすと、そこには明細が出てくる。ちなみに、その顔のインプットとトライアルのIDとが紐づいている。だから、トライアルのアカウントで登録されているクレジットカードがあれば、そこで決済が完了できるのだ。

 想像してみてほしい。お店に財布も何も持たずにふらりと入って、ビールが飲みたくなったから顔を見せて、ピッ。それで会計が済んでしまう世界を。これぞ“顔パス”である。利用者にとっても便利だが、店員のリソースがかからないのも大きい。

 また、今何気なく「ビール」と書いたが、実はここがみそである。そのIDは先ほど触れた通り、その人の個人情報と紐づいている。だから、お酒を買うのに相応しい年齢かを即座に判断できるのだ。店員が目視をして、その判断をしていたことからすれば、精度が上がっている。

 もはや、自分自身の顔が全ての証明書になる。SFを思わせる時代の変貌ぶりだ。

値下げを学習して生産性を上げる

 リテールAIは、そういう風にして、リアルの場面で生じる何気ない行動を、立ち止まってデジタルで改善していく。例えば、値下げにまつわる現場での課題。これも、AIが解決へと導く。生鮮食品などは時間の経過とともに、値下げをするけど、その都度、スタッフが上からシールを貼ってまわる。以前もこの課題に関しては寺岡精工で触れた通りだ。

 さて、リテールAIの場合は、どう対処するのだろう。上にカメラが設置されているそうで、それを通して傾向を自動で学習する。要は、そのカメラで「お弁当の減り具合」を記憶しており、AIはその写真を元に「どの程度減ったときに、どれだけ割引すればいいのか」を割り出すわけだ。

 すると、適切なタイミングにその値段にできる。だから、商品横にデジタルサイネージを設置して、該当商品の値引きの表示をタイムリーに表示する。同社が秀逸なのは、それが仕組み化できている点だ。つまり、カメラで撮影しているから、そこで現場の作業を改善しつつ、学習もしているわけである。だから、やればやるほど、その精度が高くなって、店の生産性が向上するのである。

 これは、人の勘で値下げをしていた時代とは大きく異なる。

五感で訴え商品の購買意欲を創出

 改めて、リアルのお店はデジタルリソースを手に入れることで、より五感に訴えかけるものになっていくのだろう。そうなると、店内の空きスペースも重要。彼らの提案によれば、デジタルサイネージを設置しておくのだという。複数のサイネージは店舗のスタッフのボタンひとつで、タイムセールや焼きたてのパンの告知をするわけだが、それを店内一斉に行い、それを強く印象付ける。

 これまでなら、店内アナウンスをするだけだ。だが、ディスプレイを使って、お客様の五感に訴えかけることで、その場で行動を起こさせるだけではなく、それらの商品に関する情報をインプットしやすくなることに着目している。

 つまり、果たしてその施策でお客様がその商品を買いやすくなったのか。それをデータとして収集し、通常の売り上げと比べるのである。こういう風にして実店舗を持つ強みをフックに、さまざまな視点でデータ化していく。デジタルな施策とデジタルなデータ収集をセットで考え、企業に提案していく。

物を売るだけでなく人を特定する場所へ

 最近、ECでもサイト内の表現力が上がることで、その行動に違いが生まれやすくなって、それがパーソナライズに繋がるというトレンドがある。

関連記事:高まるECの表現力 それを活かしたコミュニケーション力が鍵 “くらしきぬ” リニューアルの奮闘日記

 ある意味、リアルもそれに近くなっているのかもしれない。ただ売るだけの場所ではなく、人を「特定する」場所へと変わっていく。

 ECなどにおいてはそのページに“足跡”がつくから、それでデータを集積している。それと同様にリアルでも、その行動や購買から、どれだけ店内の施策が奏功するのかをデータで捉えて検証していくフェーズに来ている。リアルだから、曖昧でいいわけではない。

 あわせて、デジタルを実装して、顧客体験そのものも変えていく。それは、顔認証然り、僕らの存在自身が、デバイスであり証明書となる時代であり、考えもしなかった買い物体験が、もうそこまで来ているのである。

 今日はこの辺で。

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