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既成概念を打破する行動 NEW ENERGY 世の中を変えよ

 アートとは主張だ。固定概念を打破し、表現することで、開かれた世界は、また、人々に新しい気づきと、価値をもたらす。それを可能にしているのは、多様性が謳われるこの時代である「NEW ENERGY」というイベントで、そこに込められた表現者の想いに触れ、それを痛感した。商売という部分に絡んで、いかにしてその主張が生まれているのかをぜひ、ここから感じ取ってほしいと思う。

「死」を彩る大胆発想

1.悲しいイメージとはもうおさらば GRAVETOKYO

 まず最初に、既成概念打破とはまさにこいういことをいうのだろうか。ずばり・・・

 僕らが抱く「死」のイメージとはいかに。

 その多くが「悲しく避けたい」そう思うからこそ、それが正解なのかと問う。「かわいい」という概念に「死」を結びつける大胆発想で、プロデュースするのが「GRAVETOKYO」。

 その代表である、布施美佳子さんが提案するのは「人生の披露宴という名の生前葬」である。

 もともと、同ブランドでは「棺桶・骨壺・遺影」などの葬儀用品を扱い、アトリエでは入棺体験ワークショップを開催している。

 布施さんはこう語る。例えば、この場所は、ファッションのイベントです。華やかにそれを着飾るように、死を演出しようよと。僕が見に行った「NEW ENERGY」では、斬新なデザインの棺桶や骨壷などが並び、どれもあざやかで煌びやかである。

2.人生の引退試合を

 なるほど。彼女の話を聞いて思った。人生の引退試合のようなものかもしれない。

 先日、とあるスポーツ選手の引退試合を見に行ったが、本人が体が動くうちにベストなパフォーマンスを見せて、節目をつけていて、感動した。勿論、多くの観客に囲まれて、その周りの人たちにも幸せな時間を提供できているとすれば、全く同じことではないか。

 実際、布施さん自身も先日、生前葬をして、自ら手がけたその棺桶の中に入った。そして、送り出す過程で、色々な人の言葉を耳にして、心が動いたという。そうやって自分は思われていたのかと、その機会で初めて自分を見つめなおせたというのである。

 もともと、この話は村田ますみさんという終活をテーマにビジネスを構築する方に教わったものだ。以前、ハウスボートクラブという会社を経営していて、散骨をビジネスにしていたのである。

 散骨という手段としてよりも、死の演出としての可能性に刺激を受けた。通り一辺倒な「死」の捉え方。そこに多様性を持ち込む。ある意味、布施さんの生前葬の発想とその捉え方は近いと思った。寧ろ、精一杯生きてきた人生の集大成。付加価値のあるものとして、その故人に花を添えるというわけである。

塩は一つの味ではない

1.四季折々味が異なる塩を体感せよ

 続いては、塩である。

 塩?「知っているよ?」と思われがち。だが、スーパーマーケットに並ぶ塩が全てではない。塩は“生きている”のだ。「za you zen(ザユウゼン)」というブランドによって、塩をもってして伝えられるメッセージは、自然の価値である。その塩の味は、ある意味、自然の恵みがもたらす奇跡なのだ。

 自然は“生きている”わけであり、タイミングによって違った顔つきを見せる。だから、それに伴って塩もまた変わる。そこにどれだけ気づけるだろうか。スタッフは言う。「塩は四季によって味が違います」と。

 なるほど。梅雨の時は雨が降るので、森の“ダシ”が増えて、比較的濃い味わいになるというのだ。それを際立たせるのは、このブランドの塩の産地、山口県である。その昔、長州藩はこの地域の森を手厚く育てたという。だからこそ、そういう自然の恵みがその質に反映されやすいという特徴がある。

 つまり、上記に記した価値を活かせるだけの豊かな自然に恵まれているのだ。

2.人間の手が加わり、自然の価値が倍化する

 そこで採取されたものは、熟練の職人の手が加わる。もし放置してしまうと、その価値が半減する。なぜならいくつもの層に分かれてしまうからだ。職人は15時間、その塩の素を混ぜ続けて初めて、ミネラルが全体に行き渡るのである。

 要するに、その四季折々の自然がもたらす塩は、そういう人間の手により最大化されている。

 熱心なスタッフの説明に耳を傾け、その後、このブランドを調べてみて驚いた。九州通販王国においての代表的な企業「JIMOS」の商品であったのだ。継続顧客を重んじ、長きに渡り、関係性を築くその土台は、ずっと付き合えるこういう商品にあるのかと気付かされた次第である。

デザインで気づかせてくれる素材の価値

1.箔は違った用途で一段と“輝く”

 デザインは素材の価値を再発見させてくれる。

 僕が聞いたのは「箔」を扱う和信化学工業という企業。お恥ずかしい話、その社名を存じ上げなかったが、100年の歴史を誇る。それまで、お酒などのラベルに使われる箔や海外における紙幣のホログラムなどを提供している、縁の下の力持ちである。

 とはいえ、時代の進化とともに、彼らもまた、箔の価値をもっと多くの人に知ってもらいたいと、手がけたのは、アクセサリーである。箔でアクセサリーが作れるのか?と思われた人もいるだろうが、言い方を変えれば、タトゥーである。

2.老舗の全く違った挑戦

 腕や指に、それをつける。それは、フィルム状になっていて、それをカットをして指や腕などにつける。水分に浸すと、ピタッとそれが写真のように吸い付くのである。

 そういう水の要素とかけ合わせて、ブランド名は「HAQUA」という。まさに、昨今は多様性を重んじる時代である。小さな価値も拾い上げられる時代だからこそ、箔への誇りを持って、今の時代にふさわしく、その価値を知らしめようというわけである。

世界を巻き込み発信は世の中を変える

1.果物からできたスニーカー?

 やはり主張というと、SDGsの文脈に関連した商品もずいぶん増えた。その価値に気づく人が相対的に増えて、受け入れられる土壌ができたことが大きい。

 MoEaはスニーカーのブランド。ただ、りんごやパイナップルなどで廃棄されたものから作り出したというスニーカーなのだ。多くは動物革などが使われる風潮に対して、共存共栄を謳い、素材にこだわって作っている。

2.苗箱を活かしメガネを作る

 他にも、皆さんは、「苗箱」をご存じだろうか。

 種を植えるときなどに使う箱であるけど、実は、それは使い終われば、廃棄される。だから、それを素材にしてメガネのレンズを作るという発想だ。しかも、このレンズに関しては自然に戻っていくようにしている。

 上記にも書いた通りだが、必ずしも、大量な発信から文化が生まれるわけではなくなった。それにより、自らが主張をもち、それが多様性を持って受け入れられる。そういう時代だから、発信することが大事なのである。

 新しいエナジーを発信しようというこのイベントの名前の通りである。

3.既成概念を打破する行動が世界の既成概念を打破する

 最後に、何年か前に話を聞いた河野ルルさんに再会したので、その後の活動に触れたいと思う。彼女は元々、OLであったけど、旅行が好きで、お金がなくなった時、とんでもない提案をするのである。なんと、泊まったホテルで壁画を描くので、泊め続けてほしいとお願いをしたのである。

 それまでの人生で彼女は全く絵を描いたことがないのに、である。それでも、そうやって絵を描き始めたところ、それがライフワークになってしまった。

 そんな彼女は、クラウドファンディングで呼びかけをして、世界中の壁画を描いてみたいと呼びかけるのである。以前、お会いした後に、彼女はそのクラファンで集めたお金で、海外へ行ったという。なんとも奇想天外な話であるが、気付かされるのは、その行動力によって救われる人がいるのだという現実。

 そこでは女性の権利が保証されていなくて、絵を描いていても、出てくるのは男の子ばかり。遠く向こうに、女の子がみているだけだったのを、彼女は呼び寄せ、絵の楽しさを教えたのだという。

 すると、一人、また一人と彼女を囲む女の子の数が増えていったのだという。固定概念にとらわれることのない行動が、また、現地での固定概念を打破したという話なのだ。

 彼女は少しもSNSでテクニックを追ってはない。まずは行動であり、それが発信のきっかけとなった。売り込もうとする前に、自分の人生のネタ作りから始める方が先決だろう。

 今日はこの辺で。

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