JR東日本 千趣会 品川駅 小さな店に込められた大志
これまで当たり前だとされていた使い方も変化を余儀なくされていて、特に、僕は、これからの駅の活用に関心を持っている。今、まさに 千趣会 と JR東日本 が連携して、 JR東日本 品川駅 にポップアップショップを展開していることに着目して、千趣会にその意図を伺ったのである。
JR東日本 千趣会 品川駅 で見せた挑戦
1.小さなお店には色々な構想が詰まっている
そのショップは『Disney Fantasy Shop by BELLE MAISON』と言う。千趣会の通販「BELLE MAISON」でのディズニー商品を集め、その数は110型に及び、店のスペースは10坪。駅の一角の小さなお店といった風であるが、僕はこの場所に、駅や小売の未来を感じるのである。
2.業務資本提携の背景
そもそも未来を感じる理由は、JR東日本と千趣会の業務資本提携にある。遡ること、昨年9月に交わされた。リアルとネットの融合を念頭に置いていることは明白だからだ。
こう話すと今は千趣会の取締役でJR東日本出身の佐野太さんはうなづいた。そして「これからを考えると、お客様の会員化が肝になってくる」と話すのである。今まで、JR東日本は駅など、不特定多数のお客様を待ちの姿勢で受け入れていた。だが、これからは特定のお客様に対して適切にアプローチしていくことも大事。そのためには、会員としてお客様と深くつながっていくことが重要だと説明するのだ。
そう考えるとリアルだけでは限界がある。だから、ネット企業の力を取り入れながら、リアル、ネット相互に行き来する。顧客満足度を高めていく必要があるのはそれ所以である。
世の中が変わって、女性も変わった
1.なぜ千趣会なの?
でも、JR東日本の提携するパートナーがなぜ千趣会であったのだろう。佐野さんはエキュートを例に話してくれた。この理由を聞いて僕は時代の流れを感じた。エキュートはJR東日本が2005年に誕生させた。今回の千趣会の連携と同様に、まず意識しているのは女性であったわけだ。
ところがその女性像は異なっている。
当時は女性がビジネスの第一線で当たり前に活躍する時代。まず想起させたのはバリバリのキャリアウーマンである。彼女達が立ち寄る商業施設からイメージを膨らませた。だから、高級感のあるブランドを揃えていったのである。
ところがここ数年で、様子が少し変わってきた。共働きが当たり前になった。ワーキングママであるとか、子供を連れて会社に行くというようなことが増えてきたのだ。
千趣会はまさに、出産とか育児をフックに顧客を開拓している。また、何より自ら商品を作ることで、お客様のニーズに応えている。だから、千趣会が業務資本提携をするのは自然な流れ。今の社会情勢を映すものだと書いたのである。
2.千趣会 のセンスが光る 品川駅
実際に、僕はこのお店にも訪問して、現場のスタッフにも話を聞いた。すると、彼女達は口を揃えて、平日日中でもレジの前に列ができるほど盛り上がっていると話す。実は、それも細かく計算されていることがわかる。
まず、お客様に「何でこのお店を知ったのか」を確認した。すると、山手線の社内告知で見たという人がいたのだ。つまり、JR東日本の強みがまず集客に裏付けられている。
ただ、集客だけでは売上には至らない。そこで商品がお客様の気持ちを掴むか。この点、佐野さんが話していた通りであった。子連れのお客様はもちろん、ママからの支持が厚い「anello」のリュックを背負った女性の姿が見られる。共働きであろう女性の姿がちらほら見られたのは本当であった。
そこでその層に強い千趣会の商品力がキラリ光る。下の写真を見ていただきたい。売れている商品について、店舗スタッフの方に聞くと、洗濯ネットでありながら、ポーチにもなるランドリーネットを挙げてくれた。まさに、主婦が好みそうな機能性のある企画力の高い商品で、かつ値頃感もある。
3.ディズニーの底力も売上を後押し
そして極め付けは、ディズニーであるということ。駅というロケーションで、ディズニーの存在はアイキャチとして最適。多くの人が足を止めるきっかけづくりとなる。そして、僕は現場で話を聞いてハッとさせられた。
聞けば、Tシャツなども非常によく売れている。しかし、子供と母親、それぞれキャラクターを変えて揃って購入することも多い。ディズニーには様々なキャラクターがいる。それぞれのお客様にとって、買い物内容がカスタマイズされやすいのである。つまり、その商品を通して、お店のエンタメ性が高まっているのである。
複数のタイプの商品をセットで買っていく。だから客単価も総じて上昇する。また、気持ちを盛り上げる商品づくりの姿勢はエプロン一つにしても見られる。下の写真の通り、シンデレラのモチーフなどは女児の変身願望も相まって、熱狂させる。
そして、持ち帰りができないお客様にも配慮。商品横でQRコードを使い案内し、読み取るとJREモールの「BELLE MAISON」へと遷移する。その他、『ディズニーツイステッドワンダーランド』では発売予定の商品の実物を見せた。特徴を示しながら、JREモールの「BELLE MAISON」で予約注文できるようにしているのだ。人気もさることながら、下の動画の通り、商品力がその購買意欲を後押しする。
JR東日本 千趣会 品川駅 から始まる革新
1.売上はトップクラス
結果、店頭での初日の売上は、同区画としてはトップクラス。彼らがこのお店で想定していた金額の2倍以上の売上を記録することになった。ターゲット設定にはじまり、時代背景を考慮した品揃えと企画力、JR東日本ならではのプッシュ。それは、特に新規顧客の獲得面で成果を出して、この連携に一定の道筋を示した格好だ。
それはまた、次なるステージも意識している。ここでの購入者は「JREポイント」が活用できるので、そこでアプローチを濃くして、顧客満足度を高める戦略もまた一歩前進したわけだ。ちなみに、このお店での「JREポイント」利用者は3割程度にものぼり、こうした企画を展開するほど、利用機会も確実に増えるだろう。
2.ユーザーと今まで以上にちゃんと向き合う
最初に話題に上げた通り、駅は不特定多数を相手に商売をするフェーズから、特定ユーザーに寄り添って、何がサービスとして提供できるかの新たなフェーズに来ているし、それで駅のあり方は大きく変わるだろう。
千趣会もまた、これまで、どうしてもカタログやネット通販では、衝動買いも生まれづらい。広告などの施策で受け身になりがち。それが、リアルきっかけで、通販に導くことも可能になってくるわけだ。その後、買ったお客様をリアルとネットの相互でアプローチして、より関係性を深めることもできる。
しかも思ったのは、直営店の出店などハード面に投資することなく、駅を利用し小さなスペースを有効活用するのは効率が良い。それで、自らの価値を訴求できるとすれば、リアルへの戦略を打ち出しやすくなる。
如何だろう。これまでのJR東日本のイメージは変貌した。また、千趣会のイメージもまた、そうかもしれない。少し違った歩みを見せていることに気づいていただけただろうか。この10坪には、駅と小売の未来があるといった意味を。通販を通販だけと捉えたり、駅を単純に乗り降りするだけの場所と考えるのはもう時代遅れなのかもしれない。
今日はこの辺で。
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- (C)Disney. Based on the “Winnie the Pooh” works by A.A. Milne and E.H. Shepard.