1. HOME
  2. News
  3. リアル店舗
  4. 店談
  5. マレーシアで掘り当てたネット通販の新たな可能性 シナブル 小林社長を直撃

マレーシアで掘り当てたネット通販の新たな可能性 シナブル 小林社長を直撃

 マレーシアと聞いて、皆さんは何を浮かべるだろう。そんな異国の地で日本の力が生きている。と言っても日本企業が進出しているわけではなく、現地法人として、現地の人が日本の知見を活かして、現地の小売業を生まれ変わらせている。それを“掘り当てた”のが日本でシナブルを経営している小林裕紀さん。その海外での活動に着目することで、小売業に必要なのは何かを改めて考えてみようと思う。

当初からあった世界に通用すべき「eコマース」のシステム構想

 これを語る上では、小林さんの経歴を踏まえた方がわかりやすい。彼は、もともと2000年代前半、コマース21の社長として、まだ黎明期のネット通販の現場にいた。コマース21は、自社Eコマースを展開するのに必要なリソースを提供するシステムベンダーの企業であった。

 それこそ、Amazonすら日本に上陸しておらず、マーケットプレイス(モール)という発想もない中で、それを進めていたのだから、その頃の苦労は絶えなかった。でも、彼はその後、ネット通販のマーケットの拡大とともに、それを黒字化させたのである。

 その後、紆余曲折あり、コマース21はヤフーの傘下になるなどして、彼はそこから外れ、今、シナブルの代表取締役を務めている。そこでの知見を活かして、Eコマースに特化させたMA(マーケティングオートメーション)に関するサービスを手掛けて、独自の地位を手に入れるに至る。

 ただ、以前から小林さんと話をしていると、優れたEコマースのシステムは、言語や場所の垣根を超えて、世界に通用するはずだという信念を持っており、度々、海外の話が出てくるのである。

マレーシアの現地の人が日本の知見を生かして躍進

 彼が紹介してくれた会社はbridziaで、日本企業ではない。この会社は今から約10年ほど前から携わっている。彼はあくまで出資者として、アドバイスなどを行なっている。その助言は、小林さんは今のシナブル然り、自社Eコマースにまつわる知見を取り入れたもので、理にかなっている。

 以前は、アウトソーシングも行い、Eコマースのシステム、マーケティング、配送のマネジメントをやっていた。だが、密着したやり取りから、システムを構築し、徐々に自社Eコマース向けのプラットフォーマーとしての存在感を見せてきた。

 今のbridziaは上記の図の通り。

 基本的には、Eコマースのシステム自体は、世界のEコマースプラットフォーム「Magento」がベースである。そこで、彼らはモバイル・アプリケーションを実装できる仕組みを提供して、「Magento」と連携。そこからオフラインのキャンペーンなどを行い、店としての価値の最大化を狙う。

 また、ソーシャルコマースが盛んなのも、マレーシアならではの特徴。ゆえにFacebookやインスタグラムのライブ配信を通して、メッセンジャーで買える仕組みを実装。

 加えて、それらを束ねるべく、一元管理の仕組みを取り入れた。各種バラバラに存在するEコマースモールなどの受注管理などをこれで一手に統合。

 つまり、それらを小売全体を一体で捉えて、運用できるように設計している。

地元と密着するショッピングモール

 ちなみに、日本人が海外に進出するというよりは、現地の法人。運営も全て、マレーシアにいる現地の人により成り立っている。つまり、徹底したローカライズを貫いている。

 まず、マレーシアは多くのショッピングモールが点在している。

 週末になれば、住民はそこに通い、ショッピングを行う。どこの国もそうだが、リアルにあるお店が軸となっている。その中にあってbridziaが着目したのは、リアルの店舗がEコマースにおけるサポートを強化することでその価値を最大化することだ。

 ちなみに、それらのショッピングモールは、地元で支持されているチェーン店舗も多く集う。「ケイトスペード」などの名だたるブランドもそこに出店していて、活況に沸いている。

 だからEコマースのツールをマレーシアに持ち込むと言っても、Eコマースを盛り上げるというよりはリアルの最大化だ。来店してくれるお客様の満足度を高めるため。それを充実させるために、bridziaはそこに出店しているブランドやお店に、サービスを提案するわけだ。

 すでに、ネット通販には着手している企業も少なくはない。ただ、リアルはリアル、EコマースはEコマースと切り離されて、その価値を生かしきれていない。だから、いかにそこで彼らの仕組みを適応させることで、その価値を底上げできるか。そこを小林さんはわかっているのだろう。

 そこでそれをどう活かすかという部分でローカライズという要素が出てくる。

あえて完全に任せることで必要な価値が見えてくる

 そうすると、見えてくるものがある。マレーシアにはAmazonはない。けれど、Ladazaなど、マーケットプレイス型の店舗には出店、出品しているお店、メーカーも少なくないわけだ。だから、彼らはそことの連携ができるものを提供すれば良い。

 だから、こちらを見てほしいが、取引先はこのようになる。

 guardianはドラックストアチェーン。SUNWAYはショッピングモール。その他、COACHなど。ただその先のお客様はマレーシアということになる。

 リアルとネットの他の店舗の在庫の連動を行い、自社Eコマースの知見を持ち込む。アプリを使い発信し、ソーシャルコマースも行う。

 そうすれば、バラバラになっていたそのブランドや小売店の真価が発揮される。要するに、着目したのはまず、オムニチャネルの徹底。そこの価値を高めつつ、徐々にその顧客管理という視点に広げていく。

 小林さんは自社ECでの経験もあり、そこを土台にオムニチャネルの大事さもわかっている。だから、リソースとして何を提供すれば良いかが理解していて、これまで培ってきた知見は活かされる。一方で、シナブルでやっているMAツール「EC Intelligence」も有効活用できるわけだ。

ようやくbridziaの価値が現地に浸透する

 それをわかった上で、口を出さない。あくまで、マレーシアでの小売店の最大化の為に、現地の人たちに委ねる。なるほど。改めて自らその会社に出資して、投資したのは、その点のバランスを考えてのことだ。

 現地のお店にとっては、それは発見となる。リアルとネットを掛け合わせることで生まれる、まだ手をつけられていない切り口。そこから、売り上げを作ることができるのだから。

 コロナ禍ではこれらのリアルのお店が殆ど、休店に追い込まれた。だからこそ、一気に彼らへの注目度が上がった。現地法人が現地で抱える問題を、日本で培ったものをローカライズさせる。そうすることで、その需要が一気に増したというわけだ。

 リアルとネットの融合が、単純にどちらかの売り上げを上げるものではない。それは今では日本でもお馴染みだ。つまり、両方を一体で見ることでの価値は、一過性で得られるものとは違う。だから、このコロナ禍でそれらのサービスを取り入れて、気づく。もはやこれらは、コロナ対策ではない。未来の小売店にとって必要なツールなのだと。

bridziaもまた進化して実態に伴う

 思えば、小売というのは様々なリソースが必要となる。だからこそ、投資が必要だ。正直言えば、「2020年に入ってようやく黒字になった」と小林さん。それでいうと、リアルのお店の価値をデジタルを使って、最大化させる「クイックアンドデリバリー」のサービスも提供されている。

 「クイックアンドデリバリー」はデジタルで購入したものを店員がピックアップして、駐車場まで届けるサービスである。まさに、アメリカなどではこのサービスによって、ウォルマートが躍進した。アナログの小売店から、デジタルの加入者を増やすことで、幅を広げ、一躍、デジタル企業の仲間入りをしたのだ。

 日本で取り組めていないジャンルも、求められる。それには先ほど、書いた通り、投資が必要で、だから、赤字が続いたというわけだ。しかし、それらは小林さんにとってやる意義があった。自らのこれまで培ってきたことの上にそれが成り立つからだ。つまり、これまでの価値も尊重された上で、投資が生かされている。そういうわけである。

 このようにして、bridziaはローカライズさせることで、日本以外の国で、Eコマースの価値を用いて、現地の信頼を集めたわけである。

現地に即した信頼を得る企業へと成長

 だから、bridziaは現地法人として存在している。対話をするのも現地の人。当然、クライアントも現地の企業として身近に感じて、現地のために尽くそうとする、その姿勢に信用が得られる。

 そのニーズをきめ細やかに吸収し、その仕組みをマレーシアの仕組みに合わせていくことは、それまで投資してきたツールが必要な形でアップデートする。良い意味で、日本のイズムが良い意味で、世界に生かされる格好となっているわけだ。

 ここからが勝負だと考えており、自社Eコマースの価値の最大化を狙う。思うに、リアルなお店がリアルである価値を最大化するのは、デジタルである。

 ただ、それはEコマースのマーケットプレイスに出店、出品していても、それは限界があるのだ。そこに出すのがダメと言っているのではない。お店やブランドに対して、その選択肢を増やすことで、彼はマレーシアの小売の発展に寄与すると話しているのである。

改めて、売り先のローケーションを多種多様にしつつも、一体で捉えることの大事さである。そこには常に、アップデートが伴う。だから、提供する側もそれをわかっていなければできない。

 日本の価値が海外で生かされ、良い意味で定着しつつある。改めて、日本で培ったことの功績はローカライズの徹底により、生かされているのが興味深い。

 今日はこの辺で。

 

関連記事

145MAGAZINEは「キャラクター」「小売」「ものづくり」の3つを扱いながらも、共通してお客様の“笑顔の理由”を考えるメディアです。
詳しくはこちら

【license】ウォルト・ディズニー 【license】サンリオ 【license】作家プロデュース 【license】漫画・アニメ・映画 【Product】アクセ・ジュエリー 【Product】アパレル 【Product】インテリア 【Product】コスメ・健康 【Product】スイーツ 【Product】ホーム・台所 【Product】文具 【Product】玩具・ガチャ 【Product】雑貨・小物 【Product】食品 【Product】飲料・酒 【Retail】CRM 【Retail】D2C 【Retail】OEM 【Retail】OMO 【Retail】ふるさと納税 【Retail】オンラインショッピングモール 【Retail】コンサルタント 【Retail】コールセンター 【Retail】サイト制作 【Retail】チャット 【Retail】フードテック 【Retail】マーケティングオートメーション(MA)・メール配信 【Retail】マーチャンダイジング(MD) 【Retail】リユース・フリマ 【Retail】レンタル 【Retail】受注管理 【Retail】広告・販売促進 【Retail】接客 【Retail】決済代行 【Retail】物流・バックヤード 【Retail】自社EC/ASPカート 【Retail】自社EC/フルスクラッチ 【Retail】越境EC カルチャー/新進気鋭デザイナー コンテンツ/スポーツブランド コンテンツ/歌手・タレント デジタル/AI デジタル/CX デジタル/IOT デジタル/NFT デジタル/Web3 デジタル/アプリ デジタル/フィンテック デジタル/製造業テック デジタル・トレンド トレンド/SDGs トレンド/ミュージック トレンド/ランキング トレンド/動画配信 トレンド/美術展 トレンド/調査・データ ファンシー/Curious George ファンシー/ミッキーマウス ブランド/コンテンツ モール/Amazon モール/au PAY マーケット モール/Yahoo!ショッピング モール/楽天ファッション モール/楽天市場 ユニクロ/ブランド リテール・トレンド 小売店/ウォルマート 接客/やずや 接客/ライブコマース 接客・販促/Instagram 接客・販促/LINE 接客・販促/TikTok 接客・販促/YouTube 業態/SPA 業態/コンビニ 業態/スーパーマーケット 業態/卸売 業態/専門店 業態/百貨店・商業施設 業態/飲食店 物流・バックヤード/日本郵便 玩具/バンダイ 経営・マネージメント(事業と事象) 自社EC/BASE 自社EC/GMOクラウドEC 自社EC/Shopify 自社EC/カラーミーショップ 自社EC/フューチャーショップ 自社EC/メイクショップ 解説/ありがとう店の舞台裏 解説/ものづくりのセオリー 解説/アーティストの感性に触れる 解説/ハロートークショー 解説/ヒーローインタビュー 解説/初心者の方、どーぞ 解説/奥深きキャラクターの背景 解説/潜入イベントレポ 解説/社長の真意 解説/視点をかえてみると? 解説/賢くなろう-商売の教科書

最近の記事