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THE SUIT COMPANY スーツの威信をかけた変革の 新業態 TSC SQUARE

 リアルの店も在庫を考慮していくと、ネットとどう融合させていくか、ということが急務であることに気付かされる。若干、彼らの主張とは違うかもしれないが、それを「 THE SUIT COMPANY 」が提供する 新業態 のショップ「TSC SQUARE」の記者会見で僕は思った。新宿、新宿三丁目などの駅に近く、人通りの多いこのお店で彼らはスーツ業態の維持のため革新を謳い、10月1日に船出したのだ。

スーツを維持する為の変革

 このお店の誕生はコロナ禍がきっかけになっているのは間違いない。多くの企業がテレワークを行い、冠婚葬祭などでのスーツ利用の機会が激減して、スーツそのものの存在意義が変わってきている。コロナ前の2018年度と比べて、2020年度は約37%減で、ここを埋めるものとしてDXの推進と成長分野の注力を掲げたというのである。

 まず初めに「DX推進」の中身は何かといえば、これまでのビジネスモデルの見直しである。これまでは来店して商品を選択し、そこで採寸をする。その後、受け取りにまた来店してもらう、というのが定番であった。ただ、コロナ禍ではそれは合致しない。そこへの打開策として注目したのがネット通販。

 売上がコロナ禍で好調に推移している事も後押しして、このお店では思い切って、最初からネット通販をベースにすることにした。勿論、店内にスーツが並んでいるがそれと合わせて、店内のサイネージがあってここで通販サイトの商品を店で選ぶことができる。店内では試着し採寸を行えるからその後、倉庫から通販サイトで登録された情報に基づき、自宅に配達するという流れである。つまり、お店をショールーミング的な役割の色彩を強くしているのが特徴である。デジタルサイネージは「デジラボ試着室」と呼んで、それで利用したイメージを連想してもらい、どんな商品が存在するかと在庫状況はそこで把握できるようにしている。

 僕はこの記者会見でも「サイネージなども重要だが、そもそものそもそものネット通販とリアルのお客様データの紐付けを現場で徹底させることが急務であり、その両方が行き交う配慮はしているのか」という質問をさせていただいた。ポイントなどを使って相互に利用し合える機会を作ってそれを促していきたいというところにとどまったのは少し気になるところだ。

 次にこの店が意図しているのは「成長分野」へのアプローチである。具体的には「オーダー」や「レディス」などを挙げていた。昨今、スーツに対しての価値観が変化し「オーダースーツ」の需要が増加しているのだそうだ。

 言われて初めて気がついたがずっと長く使い続ける姿勢は、SDGsの文脈にも通じている。かつ個人的に大きいと思うのは、オーダースーツによりお客様との関係が近づく点であって、その後のリピート需要が見込まれるからだ。その意味でこのシフトは意義がきっとある。

 同様に「成長分野」として挙げたレディスは多様化する女性の働き方を受けてのことだろうと思う。このようにしてスーツでもあらゆるニーズを意識して、カジュアルも取り入れながら、ミックスされた空間を作っていくのがお店の主たる役割になりそうだ。

 下記のロゴを見てもわかる通り、一つのお店のなかで4つのブランドを訴求し、多様化する商品の購入シーンに応えようというわけである。

 従来の「THE SUIT COMPANY」、女性向けのスーツを楽しむ「WHITE THE SUIT COMPANY」、素材や縫製にこだわり、オリジナルを楽しむ大人のためのブランド「UNIVERSAL LANGUAGE」、きめ細やかな接客を念頭に置いて個々にあったオーダースーツを展開する「UNIVERSAL LANGUAGE MEASURE’S」の4つ。

在庫リスクを軽減するのに貢献するOMO

 ただ僕が注目したのは、冒頭話した通り「在庫」である。青山商事などがこういったOMOに積極的な姿勢を見せているのはその意味で歓迎したい。かつてこの場所は1ブランドで使っていたフロアであって、その時と比べれば幾つかのブランドの集合体であるから、ブランドごとの商品数は減少しているけど、それは理にかなっていると思っている。

 つまり、お店はフィッティングや肌触りなど、リアルに必要な要素に特化させているわけだ。論点が変わってしまうかもしれないけど、要はもうお店はかつてのように商品を全て陳列する必要はないのである。それは「THE SUIT COMPANY」のように全国に複数店舗を持つところは尚更である。(今はまだこの1店舗だけではあるけれど、増やしていく意向も明らかにしている)。

 それこそがDXの最大のメリットの一つだからだ。裏側で全店舗の在庫を繋ぎ、倉庫を含めて在庫が連動していれば、それを見るだけでお客様に提供できるかは分かるのである。店内で稼働しないものがあれば、わざわざ陳列してそれを揃えているだけ無駄なのである。また同時に「そのお店になくて、他の店舗では実は存在していた」などの機会損失をなくせる。店の利益率は勿論、お客様も欲しいものが手に入る確率を高くなる意味でプラスである。

 その意味で、デジタルサイネージが存在したり、スタッフがタブレットでこれに近い案内ができるのはプラスに作用するだろうと僕は思う。デジタルサイネージはわかりやすい要素ではあるけど、無理にそれを使う必要はなく、最小限の在庫を店で抱えて、それをデジタルサイネージと合わせ技で使えば、店にない分をこれが補完しているという意味で重要になる。

ブランドが複合的に存在することの利点

 もう一つ、メリットがあると思っている。それは年齢や環境と共に価値観が変わり、服も変わっていくからで、このお店のように複数のブランドを抱えているのは、仮にどこかのブランドを離脱したとしても、それをカバーできるブランドがあるのは大きい。リスクヘッジになりやすく、最終的により個々のお客様へのカスタマイズ色の強い「UNIVERSAL LANGUAGE MEASURE’S」にたどり着けるように戦略を組み立てればなお良いだろう。スタッフはそうやってお客様単位で一対一で向き合えるような環境づくりをしていけば、より経営基盤すら盤石になっていく。

 僕自身、これを機にスーツを「UNIVERSAL LANGUAGE MEASURE’S」で新調してみたが、この店の奥には専用カウンターへ連れられ、店長の前田功太さん直々に案内してくれた。今回の動きに関しては「4つのブランドがありながらも必要なものだけ適切に絞られているから、お客様と向き合えるカウンターも用意できて、その事はこのお店の価値向上に寄与していると思います」と話してくれて、OMOによる店舗のメリットを口にした。

 いざカウンターで向き合い話していると「僕は実家がブティックをやっていて、それで洋服に興味を持ち、それを仕事にするようになって今に至ります」という具合に前田さんの人となりも見えてくる。これぞリアルのメリットでネットでは構築できない最大の強みである。

 ネット通販に知見のあるTSC 営業部 副部長の関 昌稔さんによれば「スタッフもお店にとっての大事な価値なので、ネットでの売り上げとリアルの売り上げを切り離さず、リアルでもネットに繋げたスタッフさんの成果は反映していく」と話していて、ネットリアルの垣根を超えて真にお客様とスタッフが繋がり、それが根付いて会社の成長へとつなげていく姿勢を感じた。

 そして、前田さんの丁寧な説明は続く。いろいろな話を織り交ぜながら、素材から一つ一つ、ボタン、裏地、ポケットの角度まで細かく指南してくれて、それは自分の価値観やスタイルを尊重するものだから、価値が底上げされているようで心地が良いものである。

 約1ヶ月半後、僕のスーツは出来上がってくるそうで、今から楽しみである。

 これでおわかりいただけたと思うが、若干、まだ手探りの形ではあるのせよ、リアルにおける課題を解決しつつ、リアル自体のポテンシャルをネットの力を通じて引き上げようという「THE SUIT COMPANY」の動きは今後、スーツのビジネスをしっかり守っていこうという気概を感じるものであった。

 彼らにとってコロナ禍は確かにダメージの大きいものだったのかもしれないが、リアルが否定されたわけでもなくネットが優れているわけでもなく、今問われているのは彼らが守り続けた価値を今にふさわしくどう進化させていけるか。スーツの威信をかけた新たなスタートが始まったのである。

 今日はこの辺で。

 

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