ネット発キャラクターが世界を変える時代―「おしゅしだよ」と「MOLANG(モラン)」が示す新たな潮流

近年、SNSや動画配信サービスなどインターネットを起点に生まれたキャラクターが、世界的な注目を集めるケースが増えている。テレビアニメや大手出版社発の“王道”な登場経路とは異なり、個人のイラストや小さなコミュニティから始まって、一気にグローバルへ飛躍する―そんな“ネット発”キャラが新たなトレンドになりつつあるのだ。その背景には、クリエイターとファンをダイレクトにつなぐSNSの普及や、オンラインでの販売・プロモーションのしやすさなどが挙げられる。
タクト・コミュニケーションズは、まさにこの「ネット系キャラクター」に力を入れている。
同社が版権を管理する「おしゅしだよ」と「MOLANG(モラン)」は、その筆頭格といえる存在。寿司ネタが動き回る脱力系漫画と、ふんわりかわいいウサギのキャラクター――一見するとまったく異なる世界観を持つ二つの作品だが、いずれもSNS発信で火がつき、いまや国境を越えて愛されている。今回は、この二つのキャラクターを通して見えてくる“ネット発キャラ”の可能性と、その時代性を探りたい。
1. タクト・コミュニケーションズが紡ぐ、ネット系キャラクターの新潮流
「おしゅしだよ」も「MOLANG」も、SNSを舞台に話題を集めた。
両者からは、現在のカルチャーシーンにおける“ネット発”の存在感がいかに大きいかがうかがえる。タクト・コミュニケーションズはこれまでにも数多くのキャラクターグッズやライセンスビジネスを手掛けてきたが、ここ数年のトレンドとして、オンラインで自然発生的に支持を得たキャラのパワーに注目しているのだ。
それは単にグッズ展開をするだけでなく、SNSや配信サービスを活用して世界観を広げ、ファンとの双方向的なコミュニケーションを重視するからこそ可能になる新時代のキャラクター戦略といえるだろう。
彼らが繰り広げるゆるくてクスッと笑える日常は、SNSとの相性も抜群。グッズ展開を担うタクト・コミュニケーションズと共に、書籍化や各種コラボ企画、さらには「ミイラ展」など意外性あるコラボレーションも実現してきた。
2. 寿司ネタが織りなすシュールな笑い――「おしゅしだよ」
2-1. Twitter発の脱力系四コマ

2013年9月、イラストレーター“やばいちゃん”がTwitterで連載を開始した四コマ漫画「おしゅしだよ」は、寿司ネタをモチーフにしたキャラクターたちが繰り広げる日常を描いている。初期は自宅のコピー用紙の裏に描いた漫画が友人間でシェアされていた程度だったが、その緩さやブラックジョークがじわじわと話題を呼び、あっという間にフォロワー数を伸ばした。
2-2. 主人公は“まぐろの赤身”!?
主人公は、まぐろの赤身の寿司を模した男の子「おしゅし」。のんきで図々しく、ちょっとだらしない一面を持つが、そこが妙に愛嬌を感じさせる。しかも、作中で自らブラックジョークを連発するというギャップが、クスッと笑えるシュールな魅力を生み出している。女性ファンの支持が厚い一方で、ユーモアを好む男性層にも受けが良い。
2-3. グッズとコラボが広げる世界
タクト・コミュニケーションズが版権管理を行うことで、書籍やグッズ、さらには意外性のあるコラボレーションも続々と展開されている。
例えば、展示企画として「ミイラ展」とのコラボグッズが登場したり、配信サービス「ツイキャス」にキャラクタースタンプが導入されたりと、ネット文化との親和性を存分に生かして活動範囲を拡大している。
“食べ物を粗末にしない”というやばいちゃんの理念や、キャラたちがどこか人の孤独に寄り添うような温かさも、ファンを増やし続ける理由の一つとなっている。
3. 韓国生まれ、フランス育ちのウサギ――「MOLANG(モラン)」
3-1. 2010年の落書きが世界へ
「MOLANG(モラン)」は、韓国のイラストレーターHye-Ji Yoon(ユン・ヘジ)が2010年に生み出したキャラクターだ。
もともとは何気ない落書きから生まれたが、SNSで話題になり、フランスのアニメーションスタジオMillimagesによってアニメ化されたことで世界的にブレイク。現在は190以上の国と地域で放送・配信され、300話を超えるエピソードを展開するまでに至っている。
3-2. ふんわり愛らしい“食べるの大好き”ウサギ
MOLANGは丸みを帯びたウサギの姿をしており、“食べることと甘いものが大好き”というシンプルでわかりやすいキャラクター設定が魅力的。
見ているだけで癒されるビジュアルと、のんびり穏やかな性格は、国籍や年齢、性別を問わず幅広い層に受け入れられている。2022年には日本でも絵本が2冊同時発売されるなど、国内ファンが増加中だ。
3-3. 社会貢献や情報発信にも積極的
MOLANGは、SNSを通じてCOVID-19感染予防の呼びかけを行ったり、イギリスのNHS(国民保健サービス)と協力して啓発活動をしたりと、社会的なメッセージを発信する点でも注目されている。
SNSというプラットフォームを活用し、世界中のファンとリアルタイムでつながることで、ただのキャラクターにとどまらない“癒やし”や“優しさ”を届ける存在へと成長したのだ。
4. ネット発のキャラクターがもたらす時代の潮流
「おしゅしだよ」も「MOLANG」も、個人のクリエイターの手によってSNSやネット上で生まれ、そこから一気に知名度を拡大していったという共通点がある。テレビアニメや出版社の大型プロジェクトが王道なのは変わらないが、ネット上の口コミやファンコミュニティが“原動力”となり、小さなキャラが一気に世界へ羽ばたくケースが増えているのは時代を象徴しているといえるだろう。
さらに、企業側もネット発キャラの力を見逃さず、グッズ化やコラボ企画など多角的な事業展開を仕掛けることで、キャラクターの可能性はますます広がっている。
特にタクト・コミュニケーションズのように、版権管理やマーケティング、さらに海外ライセンスの取り扱いにも強みを持つ企業が存在することで、クリエイター個人では実現しにくいグローバルなスケールアップをサポートしている点は大きい。
おわりに
「小さくとも可能性のあるキャラに光があたり、一度注目されれば、その世界観がどこまでも広がっていく」。これはまさに今の時代を象徴する光景だろう。
ネットというインフラは、才能あるクリエイターと好奇心旺盛なファンをダイレクトにつなぎ、その後ろ盾として企業がグローバル展開を後押しする。そんな相乗効果によって、「おしゅしだよ」や「MOLANG(モラン)」のようなキャラクターが、国境を越えて愛される存在になっているのだ。
テレビアニメでの知名度向上や大手出版社との連携も、キャラクタービジネスの大きな軸であることに変わりはない。しかし、ネットで芽吹き、ファンの熱量によって自走しはじめる“キャラクターの成長物語”は、今や大きな波となってカルチャーシーンを席巻している。「小さなキャラ」と侮れないそのパワーは、今後も新たな形で生まれ、世界に向けて羽ばたいていくに違いない。
今日はこの辺で。