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顧客体験の向上に店が打ち込める理由 スクロール360の変容に時代背景と変わるべき店の実態を思う

 世の中のインフラが、社会情勢によって、どう変わっているのか。今一度、店舗側もそこを理解しないといけないのは、その部分を味方につけないと、生き残っていけないからである。何が一体どう変わっているのか。先日、スクロール360の専務取締役 高山隆司さんが、店舗・EC DXPO東京’24【夏】で話していたのは、その点の深掘りだったので、僕の見解を交えて、シェアしたい。

世の中が変わるとインフラも変わる

 昨今、よく耳にする「2024年問題」。それも言葉だけが一人歩きしている。法改正により、労働時間が960時間に制限される。働く時間が減少するから、配達できない荷物が増える。ただ、その表面上のことばかり語っても仕方がないのだ。ことの本質を見据える必要があって、それに伴って起こることは何か。そちらが大事で、そこには店はどう備えるべきかが考えるべき筋である。

 そして、それらは、これから深刻度を増していく。なぜなら、残業時間は累積で計算されるからだ。各社、始まったばかりで、まだその水準に累積で計算されるに至っていないだけのこと。各社、制度が各々一年、経過し始めると、配達できないという話が出てくる。

 配送に関わる大手企業においてはこの対応は済ませていて、混乱は起きない。ただ、中小企業はここへの備えができていないから、新たな期を迎える前に、その時間数を超えそうになって慌てふためくのが目に見えている。

 だから、彼は声を大にして語るわけである。スクロール360は、スクロール(元のムトウ)という通販会社を起点に生まれたインフラの会社だ。スクロールは800万部発行されるカタログを、52週間、発行して通販を行なっており、業界では老舗。そこでの知見を取り入れ、物流だけではなく、受注管理も含めて、その名の通り、360度支援するのがスクロール360なのである。

皆でフォローしていかないと皺寄せがくる

 その彼らをもってして語るのは、皆でこの問題を考えなければいけないということ。そのためには、そもそも、そのような労働時間の減少によって、現場で起こりうることは何かということが大事。

 考えられるのは、ドライバーが枯渇して、残業ができなくなる。だから、値上げがある。その上、荷物の引き取り時間が早くなって、今までは集荷が5時だったのが、3時に、、、ということになる。言うまでもなく、これまで荷主側は想定していた出荷数を賄えなくなっていくことになるから、売上にかかわる。

 さらに、総量の規制も入って「御社は500個までしか受け付けられません」ということが起こりうる。それがいざ起きたときに、不平を言ったところで、仕方がない。世の中全体が変わっているからだ。

 つまり、そこに対しては、出荷に伴い、ドライバーがどんな仕事をしているのか。そこを考える必要があるのだ。それは店舗においてもだ。

現場を理解するとやるべきことが見えてくる

 現場を知ることで、何を対策することが、結果、自分たちにとってコストを抑えて、無駄がなくなるのか。それを理解することで、諸々に備えていくことができるようになる。

 では、そもそも、通常、荷主側が梱包をした後、物流センターで何が起きているのか。そこから目を向けていくことにしよう。

 実は、その梱包されたものは、ドライバーがハンディーターミナルでそこに貼り付けられたバーコードを読み込んでいる。その際に、彼らは、それらがどのサイズに相当するか、目分量で確認し、登録をしていく。そこから中継センターに運び、届ける方面別で仕分けをしていく。ここで、ようやく配送キャリアが路線で、トラックが走り出していくわけである。

 考えてみてほしい。これらの作業が控えているから、後ろの労働時間に制限が生まれた場合、こちらの諸々のスケジュールが早めなくてはいけなくなる。集荷時間を早めにするというのは、そういうことから生まれているのである。ここへの対処というのは、荷主サイドではどうすることもできない。

役割分担に変化が生まれる

 それゆえ、物流センター側の変化が求められるようになって、最初の話に戻ってくる。実は、昨今、インフラのほうが変容していて、具体的に言えば、分業の中身が変化している。

 例えば、スクロール360に関連する倉庫ではこうなる。まず最初に、バーコードリーダーがあり、お客様に送る納品明細書のバーコードを読み込ませる。その後で、商品も一品一品梱包時に、バーコードを通していくことで、全部正しければ、送り状が出てくる。

 ただ、そこで、彼らは、その入れた段ボールも元からサイズごとに作られ、各々にバーコードがついている。だから、同じくそれを、それを読み取れば、そのお客様の受注内容と箱のサイズが全てが紐づく。

 ゆえに、ドライバーに荷渡した段階で、全ての問い合わせ番号に対して、サイズのデータも紐づいているので、作業が発生しない。簡単に言えばこうなるわけだ。

さらに徹底して物流センター側の変化は続く

 何が言いたいかわかるだろう。このような作業を、物流センター側が担うことで、集荷時間を切り上げなければいけない理由をなくしてしまうわけである。

 しかも、それらの送り先の方面ごと、籠車に分けて受け渡しをする。そうすれば、ドライバーが中継センターで送り先の方面別で分ける必要すら無くなる。ドライバーの残業時間が生まれないようにする努力は、物流センター側で請け負うことで、結果、店側の業務の時間を伸ばすことができる。テコの原理のようだ。

 店側は、それを踏まえて、インフラと向き合う必要が出てくる。大体、目安として1日50件の出荷を要した場合、これらの倉庫を活用した方が良いことが多い。世の中が変わっている以上、そういう情報を的確に捉えて、自分たちの業務フローを変えていかなければ、それのせいで不利な環境を被ることになる。

 ましてや、その現状に抗って、不平不満を口にしたり、逃げ回っていることでは解決しない。ことの本質を見据えて、店側がその対応を考え、ベストな判断をしていくべき。そう話す所以である。

生産性を高めて長所も伸ばす

 今はまだ2024年問題だから良い。高山さん曰く、2030年までの間に、568万人の労働人口がなくなるという。自ずと、生産性を高めていかない限りは、店も結果、粗利が減少し続けることになるのである。

 そういう現状を踏まえて、どうせ、それらのインフラを活用するなら、それを用いた店としての伸び代を考えるべきだという議論に至る。今度は、それらのインフラがもたらす付加価値に対して言及するのである。

 自ら、スクロールのグループ会社となった「AXES」という店舗の話をしてくれた。有名ブランドの多くを並行輸入してECサイトで販売している。同店自らこのスクロールの価値を見出し、自ら傘下に入ることを望んだと言う不思議な経緯を持つ会社である。

 ただそれは当たった。なにせ、2012年当時、年商10億円だった売上は、87億円にまで成長した。驚くことに、それだけ年商が伸びたのに、人員は15名から64名にしか増えていない。

店は全体の方向性の決定に終始すべし

 躍進の原因は、レビュー評価の高さに表れている。手書きメッセージ付きのカードがついているとか、押し花がついているなど、驚きのCRM対応がちらほらみられる。あるいは、「異なる商品のことについて、素材感も含めて、教えてもらえたなど、きめ細やかなカスタマーサービスで好感触を得ているのも特筆すべき。

 更に、現場に目を向けると、カメヤマローソクと組んでいるのが面白い。実は、販売時に、ローソクをつけている。実は、それがあると、バッグなどのジッパーを開けるときに、重宝するのだとか。

 つまり、これらの全てに彼らなりのオリジナリティがある。これが購入を検討している人の背中を後押しして、好循環を生むわけだ。

差別化要因が安定供給できるインフラが売上を伸ばす

 大事なのはこれらの個性を具現化させる土壌である。

 実は、店舗のスタッフは、実務的なことにはそこまで大きくタッチしていない。裏側ではスクロール360が商品の撮影して、採寸して、コピーライティングをこなす。そこまでするから、そのまま、ECサイトに掲載できて、気が付けばもう商品が売られているのである。

 手書きのメッセージは全て内職の人が既に手がけていて、文章の種類を5種類用意して、スタンバイ。しかも、同時に売り上げれば、受注データを各モールからダウンロードして、受注処理ソフトでそれをまとめて、出荷の対応をしてしまう。そこから先はまさに、上記に書いた物流の対応へと至る。

 では、店舗のスタッフが一体、何をしているのか。従来から関わるお客様が喜ぶ施策は何だろうと思いを巡らすわけだ。顧客体験のストーリーの構築と、商品の仕入れの質や、マーチャンダイジングの徹底が、AXESというお店の成功の秘訣だというわけだ。

 改めてお分かりいただけただろう。社会情勢によって、ルールが変わっている。大事なのは、それに伴い、インフラも変わっていて、今一度、店舗側もそこを理解しないといけないのは、その部分を味方につけないと、生き残れないからなのである。

 今日はこの辺で。

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