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生成AIの本質は「答え」より「問い」にある──ビジネス活用の鍵は“気づき”のデザインに

 生成AIは、きっとこれからの世界経済のあり方を大きく変えていく。僕はそう信じている。だからこそ、この日、D4DR株式会社のイベントに足を運んだ。イベントのタイトルは、「AIが変えるビジネスと教育―中学生から経営者まで、実践者たちと描く未来展望」。その名の通り、AIやテクノロジーが私たちの日常にどのような変革をもたらすのか。その先にある未来に、僕は静かに目を凝らしていた。

■ エンタープライズAIは、現場の“即戦力”になる

 一番気づきを得たのは、AIとの向き合い方である。というのも、僕たちは普段、生成AIをわりと個人的に使っていることはあるだろう。だけど、本当に使いこなせているかというと疑問だ。それは、どう乗りこなせばいいかがわかっていないからである。

 せいぜい、検索の代替として。あるいは、メール文面の下書きとしてだろう。

 その意味で僕は日立製作所でAIサービス開発を担う松井豊和氏の話に強い関心を抱いた。これは「企業」が社員に生成AIを提供し、自由に使いこなせるようにするための「備え」に関する話だったのである。

 このような文脈で彼らが使っていた言葉が「エンタープライズAI」だ。一見、普通の人には馴染みのない言葉だろう。でも、その向き合い方に、AIの力を引き出すヒントが隠されてると僕は思ったのだ。

■企業でどういう活用がされるのか

 例えば、日立には、エレベーターの保守業務などがある。点検やトラブル対応の場面では、社員がすぐにAIにアクセスできるような環境が整備され始めている。その結果、従来の業務よりも大幅な工数削減が実現できる。だが、大事なのはそこだけではない。

 日立のような大企業では、多くの人が働いており、その組織特有の習慣やルールも存在する。

 だからこそ、共通化されたインフラが必要。それと“調和”しながらAIが動くことが大前提になるのだ。僕が関心を抱いたのはここなのだ。

■ LLMとRAGが支える「企業仕様」のAI

 その背景には、LLM(大規模言語モデル)RAG(Retrieval-Augmented Generation)の活用がある。

 LLMは、大量のテキストデータをもとに学習したAIで、人間の言葉を理解し、自然な文章を生成できるシステムのこと。

 イメージとしてわかりやすいのは、chatGPTの「GPT-4」などがそうだ。よくこのパラメーターが話題になるわけで、言うなればそれは人間の経験みたいなもの。複雑な言語はこの数値により言語を理解できる可能性が高くなる。

 ただ、企業で扱う場合は、それだけでは不十分で専門的内容は備えていない。

 加えて、企業内のコミュニケーションには固有の文脈や表現がある。たとえば、細かなところで言えば、社員をニックネームで呼ぶ文化や、現場でしか通じない言葉がある。

 そこにRAGの仕組みを組み合わせることで、社内ドキュメントや過去の対応履歴などの「自社特有の知識」をAIに読み込ませる。こうして初めて、その企業に本当にフィットしたAIができあがる。

 話を聞いて、なるほどと思った。つまり、個々がバラバラで使い出したところで、企業にとっては少しも課題解決には近づかないのである。

■ 生成AIは“答え”ではなく“気づき”を引き出す

 そして何より、この仕組みが生きるのは、「問題が発生したとき」だ。

 これまで社員は、膨大な過去の事例をひもとき、似たようなケースを探し、そこから原因を推察して解決していた。これが想像を絶するほど、時間を要するのはわかるだろう。

 だが、AIがそのプロセスを代行することで、解決までの時間が劇的に短縮される。ようするに、何が言いたいのか。ここで大事なのは、「AIが答えを持っているわけではない」という点だ。

 生成AIは、過去の事実と今の状況を引き合わせて、「気づき」や「道筋」を提示する。それが人間による手作業よりも、はるかに速く、そして人の負担を減らすことにつながるわけである。

 そうすると、先ほど、触れた通り、企業内における共通インフラを持っていることで、それらの解決がさらに早くなり、社内での汎用性が高くなると言うことなのだ。

■ 情報の読み込み精度が、すべてを決める

 だから、思ったのである。結局のところ、AIの精度を左右するのは「どんな情報を読み込ませているか」に尽きると。そして、それは、企業で共通のインフラを持つことで最大化されるのである。ここがエンタープライズAIの真骨頂だろう。

 ただ、これは逆説的になるけど、この話は日立のような企業の話にとどまらない。故に面白い。僕ら一人ひとりが、生成AIを使いこなすうえでも同じなのである。

 エンタープライズAIを通して、社員が持っている何を生成AIに読み込ませるか。

 それは自分のAIに対して日々、どんなプロンプト(質問)を投げ続けるかに置き換えられる。ドライな言い方をすれば、AIに何か特定の回答をを求めているうちは、AIを使いこなしているとはいえないだろう。

 AI自体は答えを持っていないのである。

 自らの問いかけや与える情報の中から、AIは精度の高い導きを指し示すだけのことなのだ。AIが人間の才能の拡張であると言われる所以である。

 ここまで読んで、「これはエンタープライズAIの話だから」と切り捨てられない現実があることに気づくだろう。むしろ僕たち個人がAIと向き合う上でも、そこに通じる本質が詰まっている。

■ 学びの核心は、「本質を見抜く視点」

 今回のセミナーを通して、僕の中でひとつ、はっきりと見えたものがある。

 繰り返しになるが──生成AIに本当に期待すべき本質は、“すぐれた答え”ではなく、“よりよい問いの発見”と“迅速な気づき”にあるということだ。

 だからこそ企業にとって重要なのは、人間の思考を拡張し、その先にある可能性を引き出すために、どんなインフラを整えるべきかという視点だ。

 そして、個人にとっては、日々問いを重ねることによって、そのAIとの対話が“個性”に近い何かを持ちはじめる──まるで人格のように

 でも、人格ではなく、大事なのは人間であり、AIに依存しない人間そのものを作り出すことである。そのとき、AIは単なるツールではなく、真の価値を発揮しはじめる。

 その気づきだけでも、僕にとっては今回のセミナーは、十分すぎるほどの収穫だった。

 今日はこの辺で。

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