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没個性じゃやっていけません? 通販 の いま むかし これから

 最近、価値の定義って難しいなと思っていて、何が人にとっての価値になるのか、案外その答えは難しい。そんな中で、ネット通販の方々は、自分のお店の個性をどう見つけ育てているのかを知りたくなったので、「てるくにでんき」堂園さんと「クアトロガッツ」の中辻さんに投げかけてみた。名付けて「没個性じゃやっていけません? 通販 の いま むかし これから」です。始まり始まり。

堂園秀隆さん
照国電機株式会社 代表取締役 照明器具の専門店 「てるくにでんき」を運営。
中辻大也さん
クアトロガッツの代表。企画、営業、販売から革の仕入れまで全てを担当。

通販 にいま むかし もなく大事なことは一緒

(石郷)堂園さんと話していて、忘れられないエピソードが創業時期の話です。何をしたらいいかわからないというのをいっていて、最初の頃、Tシャツの岸本屋さんに結構気づきをもらったという話でしたよね?

(堂園さん)そうそう。僕が始めた時って1996年だったんですけど、雑誌でも新聞でも「インターネットを始めよう」というメッセージをよく目にしていたのです。また、一方で、ちょうどその時、うちの会社は業績が良くない時期で、なんとか売り上げを上げなきゃいけなくて、それで、販路を広げようと思っていましたが、どうしたらいいのか、と。

 よくビジネスは「人」「もの」「金」っていうじゃないですか。でも、「もの」も「金」もないので、そしたら自分という「人」で勝負するしかないと。それで、ネットだったら一人でできそうだと始めたのが始まりなんですよね。

 ところが、まずお客さんにどういう人がいて、どういうものを売ったらいいか、なんてわからなかったというのが実態です。ネットで品物を並べてやっていたのですけど、全く進展がなく、問い合わせも一件もない中で、専門誌を見ていたのです。

岸本屋が教えてくれたこと

 その中で「岸本屋」さんを見つけたのです。「岸本屋」は白のTシャツをメインに売っていたんです。正直言って、このサイトが存在することを私もその専門誌で初めて知った次第でして、でも、思ったんですよね。「なんで白のTシャツ一本で売っているのかな」と。「もっと色々売ればいいのに」と。

 それでネットで「岸本屋」を見にいったら、もうすごい手作りのサイトですよね。私が見ても素人が作ったとわかるようなサイトでした。でもその当時、岸本屋さんは、月商でTシャツの単価で100万円以上売っていたと知って、すごくびっくりしたんです。

 「何でこの人は白のTシャツひとつで売れるんだろうな」とその時、凄く心に残ったんです。それで、勇気を振り絞って、この「岸本屋」に質問のメールを送ったんですよね。そしたら、すぐに返事をくれて。それが岸本栄司さんでした。

 そしたら、岸本さんがこう言うんですよね「堂園さんのお店のHPを見たんですけど、失礼な話何を売りたいのか、よくわからない」と。

(石郷)それで、岸本さんは何を堂園さんに伝えてくれようとしていたのですか

(堂園さん)要は、「専門性がないと、中小企業は売れないよ」と言われたんです。実は、その時からそのことを岸本さんはわかっていたんですよね。だからそういうTシャツ一本のサイトでやっていたのだと。

 それで、私も自分のサイトは確かに色々なものを並べているけど、その中で専門性を持てるものは何だろうと考えました。それで初めて、「照明器具の専門店」を作ろうということになって、サイトを作り直したんですよね。

専門性がそのお店の存在理由を作る

(石郷)すごい本質的ですね。

(堂園さん)はい。そしたら、状況は本当に変わったんです。九州の長崎のお客さんから、問い合わせが来て、シャンデリアが一個売れたんですよね。それが強烈な体験でしたね。中小、いや零細企業が長崎の方に照明器具を売ることができたんだというのは、本当に勇気を持たせてくれました。それで、自信を持って、専門に特化していったということなんですよね。

 そこからネット通販にのめり込んでいきました。新生活が始まる春先だったこともあり、注文がドカンと来るようになって今に至るんですよね。

(石郷)なるほど。ちなみに、専門性を貫いたことで見えてきたことってありますか。

(堂園さん)うちの特殊な要素としては関東近県であれば、行けるんですよね。それでお客さんに直接、専門性を持って話にいけたというのが大きかったですよね。

 例えば、「何でうちを選んでくれたのか」とか「競合店とは何が違う」のかというような話を聞くことができました。それと、自分たちがいいと思っているものがお客さんにとってはよくなかったりするわけです。カタログの端にあるような商品こそ、実は私たちが求めていた商品なんだということだったりするんですよね。

 そこで自分たちの形を作っていけたというのが大きいです。それで、お客さんのところに行って写真を撮って、実例集を作ったというわけです。それも他にはなかったですから、それを作れたのも大きかったですよね。

 インテリアって口に出すのが難しいから、写真を見て、これと同じように作って欲しいというお客さんがそこから増えてきて、モールでは型番検索して物が売れるのだけど、自社サイトではそういう形で売れました。

(石郷)すごいな、自社サイトで売れている要素は今に通じますね。

(堂園さん)先日も創業20年近くの焼肉屋さんから連絡が来て、照明器具一式変えたいんだけど、どこに相談したらいいかわからないので、おたくだったら全部、答えてくれるという話だったんで、問い合わせしたんだって話なんですよね。

(石郷)専門性というか、自分たちはここが強いっていう要素を持っていると、それが差別化要因になって、広がっていくということなのかもしれませんね。

(堂園さん)照明なら照明、テレビならテレビ、といった具合に、その時初めて岸本さんに教えてもらって気づかされて、そこから今の部分に繋がっているわけです。よく考えれば、あの時、白のTシャツ一本でやっていたことの意味を思うんですよね。

ニッチでもビジネスになり得る時代、胸を張って

(石郷)堂園さんは、黎明期にそれで専門性の大事さに気づいたわけですが、「クワトロガッツ」の中辻さんも、専門性が高いというかニッチな商品で。小さな財布なんですよね。

(中辻さん)そうなんですよね。きっかけは奥さんなんです。奥さんが靴職人になりたいといっていて、今でいうところの貴乃花関の息子さんみたいな感じですよね。靴の学校に行っていて「自分のミシンが欲しい」と言ってきたんですよ。

 それで、中古のミシンを買いに行ったんです。そしたら、それを買ったときのおっちゃんが「あんたらが最後のお客だから、お店にある革をあげるけど、いるか?」っていわれて(笑)。それで「もらえるなら欲しいです!」と言ったんですよね。

 ミシンがあるし、軽トラック一杯に革の在庫をもらったので、じゃあ「自分たちで何か作って売ろうよ」という話になりました。イメージとしては、よく路上で売っている外国人さんみたいな感じで、自分たちが作ったものを道端で売るという感じです。

(石郷)なんでちっちゃい財布にしようと思ったんですか?

(中辻さん)元々、僕自身が財布を持たないんですよね。自分のズボンに全て入れていたんですけど、夏になるとベチャベチャになるじゃないですか。道に座れば、小銭が飛び出るみたいなことがあったので、お札と小銭が入るような小さい財布を持てたらいいなと作ったら、その出来栄えがすごく良かったんですよ。

 それで試しに売ってみたら、結構受けて、それが本当に起業の始まりになってしまったと(笑)。

ものづくり魂は本物だから、伝わる

(石郷)今はそれを自社の中で工場を構えてやっているんでしたっけ?

(中辻さん)今は自分たちで作って、自分たちで販売していますね。D2Cやっているねとか言われるんですけど、僕らとしてはこのやり方しか知らなくて(笑)。

(石郷)さっき堂園さんが言っていたと思うんですけど日本全国の人が買っていくというネットの魅力についてはどう思います?

(中辻さん)やっぱりネット通販がなければ、僕はここにいないですよね。自分たちも「ものづくり」をするところから始めていたので、いろんなイベントに出していたのです。

 けれど、リアルにお店がないから、一回ごと、お客さんと関係が途切れちゃう。それはちょっと切なかったので、お客さんとずっと繋がっていられるようにというところで、ネットを始めたんですよね。

(石郷)なるほどねぇ。そういう位置付けでネット始める方、少なくないですよね。でも、そういうリアルの付随的な要素ではなくなってきていますよね。

(中辻さん)はい。本当にそれはありますよね。ネットショップやSNSが出てきて、僕らがこれまでやってきた「自分たちの世界観を持ってそれを発信し続けて、価値を作り続ける」というのは、先程、堂園さんがいっていた「お客さんにもたらす感動体験」に近いなと思いました。

自己表現しやすい時代だからお客様とコラボしたい

(石郷)今後はどうするんですかね?

(中辻さん)今だと、そのちっちゃな財布でいろんな方とコラボをして、そこで独自性をまた出していて、その中には手塚プロダクションさんなどの大手もいます。様々なアートやカルチャーとのコラボもそうですが、使っていただく一人一人に一生の価値があるものを作っていきたいな、と。これがこれからの夢ですね。

 例えば、最近も多様性を表現したレインボーカラーの「小さいふ」というのを発売しました。そのカラーは「LGBTQ+」コミュニティの象徴でもあり、「すべての人が自分らしく生きられる」という我々のメッセージも込められたものなんです。そこに浮かび上がる沢山の英文字はすべて「LGBTQ+」をテーマとした映画のタイトルです。

(石郷)企業とのコラボから一人一人の個性に光を当て、勇気をもたらすコラボ、素敵ですね。リアルを絡めて、広がりが生まれます。本当に、それぞれの個性で頑張られていますね。お二方、ありがとうございました。

—–

 「 十人十色」というけど、人それぞれ価値はある。そして、それをビジネスに繋げられる時代だ。「てるくにでんき」の照明の専門性もそう、クワトロガッツのニッチさもそう。専門性やニッチさもそれを追求しながら、そこを好きで商売をしながら、それを求めるお客様にサービスを提供することで、十分にビジネスに成り立つ。喜んでもらえる。

 今回は、没個性じゃやっていられません、というのは、それじゃ勿体ないよねという意味で、このお二方の話を取り上げさせてもらった。いろんな要素の中で何をチョイスしていくことが誰に響くのか、またそれをどういう深掘りにすれば、その誰かの気持ちがより長く続いていくのか。その部分で、何かしらのヒントになったのではないかと思う。

 今日はこの辺で。あなたの素敵な個性、発揮できることを祈って。

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