アウトレットと新作を混在させないECサイト構築 その舞台裏で見えた大事なこと
リアル店とECサイトを融合させる話はよく耳にする。だが、アウトレットと新作の両方を持つブランドが一つのサイトに融合することは正解なのか。答えはYesでありNO。アウトレットを持つブランドの取り組みで、プロパーのお客様との上手な使い分けをしている事例を聞いた。AMSの古田俊雄さんから聞いた話である。良例を見ることで、相応しい選択肢を選んでもらえたらと思う。
アウトレット と通常 ECサイト 統合すべき?
1.一歩間違えれば大惨事
当たり前の話だが、アウトレットとプロパー(新作)ではお客様は異なる。普通の発想からいけば、その両方のサイトを分けて運用する方が良く、それはお客様の視点に立てば、そのほうが効果を最大化できると考えられるのが自然だろう。ただ、その運用側の視点にたてばどうか。サイトが二つ存在している以上最大化できているとは言い難い。
当然ながら、販促面や業務効率化を考えれば、やはり一つのサイトに統合する方がいいわけである。それに、今やSNSなどの台頭により、必ずしもその流入経路は様々で、お客様にとってのスタートラインがブランドサイトのトップ画面からとは限らないから、一つでも良いように思う。どちらがいいのだろう。
何気なくAMSの古田さんに聞くと「それはブランドが置かれている状況によりけりですね。ただ、それも一歩間違えれば大惨事です」と教えてくれた。
つまり「それぞれの戦略が明確に分かれていて、その差別化要因がきちんと同一サイト内で出せるか」が肝なのである。要は、プロパーとアウトレットのそれぞれの戦略の違いが定まっていない中で、統合したところでかえって両方のユーザーが入り混じり、混乱をきたすだけ。その場合は間違いなく、大惨事で、両方の売り上げは間違いなく低下する。
2.アウトレット と 統合して上手に運用するブランド
しかし、「統合したファッションブランドもありましたね」とニッコリ。
そのサイトでいえば、プロパー(新作)とアウトレットがECサイト上、統合されて「一つのドメイン」で運用されている。何が大きく違かったか。ズバリそれはこのブランドの「アウトレット」は統合前から既に確立されていたということにある。
例えば、タイムセールなどもリアルの店舗と同様の仕掛けをしていた。だから、ウェブ上でも1時間おきにタイムセールが行われて、それはちゃんと在庫の連動もしていた。そのくらい徹底されていたわけで、つまりそれ自体でも成立するだけの強い個性と施策があったわけだ。
アウトレットもある程度、育ってその個性を発揮していた。だからこそ、どういう風にサイト内で差別化すればいいかも見えてくる。流入経路だってそれだけ大きく異なるわけだ。要は、何をお客様に対してアピールすればいいかも、わかっていた。それ故、この決断ができたのだと言える。
アウトレット商品を表示させない工夫
1.統合までの舞台裏
では、それらを統合したときに、どのような工夫があったのだろう。
サイト側でもシステム上、AMSなりの工夫をしたことがよくわかる。既に「プロパー(新作)」と「アウトレット」のページが分けられている。それだけでなく、例えば、新作を求めて入ってきたユーザーには、カテゴリーで何かを選んで検索したとしても、その表示にはアウトレット商品が入らないように裏側で構築しているのである。
当然、それは仮にプロパー(新作)のユーザーが戦略に乗って、このサイトに流入してきた時には、全く違う“部屋”が用意されている。それでいて、その中身も異なるから、違和感なくショッピングを楽しめる。
「普通にこのブランドを訪れる人は新作が見たくて入って来ます。だから、アウトレットを探すモチベーションにはありません」。だからこそアウトレットの商品を表示する必要すらない。
これらはそうしたアウトレットとプロパーの戦略が全く違う上で、流入経路が異なる。そのことを前提に、サイト内のUI、UXの向上に努めていて、だから奏功するわけだ。
2.どちらが正解ではない
冒頭、書いた通り、統合するのは必ずしも正解ではない。
それは、明確にその両方の戦略を築き上げないうちは、別々のサイトの方が明らかに運用がしやすいからだ。最初のうちはそのほうがいいだろう。しかし、その戦略が整うと、今度はもっと俯瞰的に企業にとっての効率化を追う。つまり、サイトを「運用」するという視点に立って、工夫が必要になってくる。
つまり、上記に記したブランドは、適切なタイミングにおける転換。すでに戦略は異なっているから、それを踏まえたサイト設計をしている。だから、運用側の業務効率が改善されて、会社としての利益率が上がっていくというわけである。
これは「プロパー」と「アウトレット」でのことだけど、ある意味、リアルとネットでも同じことだ。
ECサイト一つにしても様々なブランドの特性を考えると、戦略も見せ方も大きく異なる。そうすると、その適切なタイミングは異なるわけである。ブランドごと、そのフェーズごと、置かれている状況に応じて、その時の最適化を考えるべきだろう。そして何よりお客様に合わせた入口と戦略を立てることの意味である。
そこに、そのブランドとしての進化があって、そこに伴うシステム化が必要なのである。
今日はこの辺で。