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やずや 西野博道氏 ハヤカワ五味氏 語る 通販 CRM の“未来”

西野さんとハヤカワさん

 昨今、SNSの浸透により、自己表現がしやすくなって、小さくとも世の中に動きを起こし、誰でも小売ができる時代である。そこで大事なのは共感だが、その共感を集めて支持を得た人たちの行く末が気になって、二人を引き合わせた。SNSなどでインフルエンサーとなりブランドも展開する経営者ハヤカワ五味さんと、やずやの大番頭、西野博道さん。二人の対談を通して 通販 そして CRM の 未来 を考えてみたい。

この二人の遭遇は 通販 や CRM の 未来 に繋がる

 きっかけはハヤカワ五味さん。彼女が進めるビジネスで、やずやに深い関心を抱いていて、西野さんの話を伺ってみたい。そうお願いされた事に端を発する。ハヤカワさんは、自己表現がしやすい今の時代の特性を生かし、多くの共感を集めて、学生時代に起業し、商品を手掛けてブランドを営み、6年に及ぶ。

 一方、西野さんは、やずやで、商品で繋がったお客様と、親子に勝るとも劣らない、長きに渡る関係性を築き上げ、会社を成長へと導いた一人。

 二人は、世代もやり方も違えど、ファンやお客様との間で、共通の価値観を形成して、深い関係を築く姿勢においては共通点がある。二人の対話は、きっと今後、通販に化学反応を起こす。そう考え、対談を企画した次第だ。二人の具体的なやりとりは、15000字に及ぶ対談で見てもらうとして、ここでは、その対談で、僕が感じた事を書きたいと思う。

やずや マジックで、皆、リピーターとなる

 「やずや」は元々、仕入れ商品で通販を始めたが「養生青汁」という商品をきっかけに、オリジナル商品を開発するようになった。ただ、それを起点に通販で、同じお客様に継続的に商品を買ってもらうビジネスモデルを推進、それを背景に成長した。1988年には6000万円だった売上は、2008年には400億円以上にまで伸びた。

 思うに、創業者 矢頭宣男さんの存在は大きく、「親子に勝るお客様との関係性」の土台を築いたのが、この人である。まだパソコンも浸透しない時代において、お客様から送り届けられたその葉書は、社員の誰であっても何秒以内に取り出せるように仕組み化して、商品力はさることながら、徹底して、お客様との関係構築に重きを置いて、一大成長を遂げたのである。彼らが長年貫く「おもてなし」の原点でもある。

西野博道さんがもたらす CRM の真髄

西野博道さん
西野博道さん

 西野博道さんはどんな存在かというと、これをシステム化させた人で、コンピューターにありがちな効率化ではなく、矢頭宣男さんのこうした考え方をコンピューターに落とし込もうと考えてきたところに意義がある。今は、やずやグループ株式会社未来館 取締役社長である。

 その昔、西野さんは自ら会社を経営し、コンピューターそのものを売っていたが、思いがけず、やずやの創業者矢頭宣男さんと出会った。そして、コンピューターを売り込む過程で、西野さんだけがやずやの社内に泊まり込んで、一緒に社員と生活をしてまで、その考え方を自らにたたき込み、コンピュータに反映しようとするその姿勢が一目置かれる事となり、彼はやずやの一員となる。

 以来、西野さんは変貌した。彼自身も話しているが、自身が「矢頭宣男」になり、矢頭さんと同じタバコを吸い、同じネクタイをしめたというほどで、なり切る事で、自分の体にそのイズムを染み込ませた。属人化しがちなやずやのカスタマーサービスを、コンピューターによって“標準化”させる事ができたのは、その意識が為せる技。いわば、100億企業への足掛かりを作った人と言っていい。「やずやの全てを知る男」と呼ばれる所以である。

ハヤカワさんが、今、やずやに関心を抱く理由

ハヤカワさん
ハヤカワさん

 一方で、ハヤカワさんは、今、女性の生理用のサプリを発売し始めていて、これが健康と結びついている。女性は実は20代でも子宮頸癌などの危険性もあって、日頃から健康を意識するべきだと彼女は考えていて、その為の「エントリー」として、このサプリを手掛けたわけだ。

 生理は女性にとっての日常であり、この商品をきっかけに、日頃商品を触れ合う中で健康への意識を高めて、かつ、女性として最大の充実感を味って欲しいと、そう思ってこの商品を手掛けている。

 やずやが健康を通して、特に年配の人たちに健康の意義を唱え、やってきたわけだが、偶然にも、彼女は彼女なりに、今の時代に、近しい事を若い世代で、やろうとしているから、この二人の遭遇には意味があると思ったのだ。

潜在的なニーズを 顕在化させる 商品作り

 対談では、最初から西野さんも、ハヤカワさんに深い関心を示して、その魅力を、彼女がインサイトを発見して、商品を手掛けているから、と評価した。インサイトとは、商品を通して、消費者すらも気づいていない潜在的なニーズに「そうなんだ!」と気づかせる事を言い、本来、商品が長く受け入れられる土台はここにあると説明したのだ。

 思えば、ハヤカワさんの生理サプリの発想もそこに近い。彼女は確かに、女性の潜在的にある悩みに着目し、自ら商品を手掛ける事で、気づいてもらい、解決できる術を、提示する事で、世の中に価値をもたらそうと、商品を生み出している。安易に「売れるから」という理由で商品を手掛けているのではない。僕もそんなクリエイティブな姿勢に魅力を感じている次第である。

ハヤカワさんが迫る 継続率 50%はなぜ生まれる

 さて、そこでハヤカワさんの投げかけた問いを見ると、そのインサイトは乗り越えている模様。ただ、そこで掴んだお客様をどう継続させて、満足感とともに長く寄り添えるか、という点で、答えを模索している。ここがやずやに関しての関心を深める理由でもある。「どうやっても、いずれ商品には飽きが来るのではないですか」という彼女の問いかけにそれが現れている。

 事実、ネット通販では顧客の維持率(1年間に継続し続ける率)が10%とも言われる。一方、西野さんが提唱する、顧客の維持率は50%。根本的に何かが違うはずだと彼女も言っていて、ここに 未来 における 通販 躍進のヒントがあるように思うのだ。

商品とコミュニケーションが一体化している

 そして、それに対する西野さんの答えから気づかされるのは、「商品がコミュニケーションと一体化」して初めて完成し、お客様の満足度を高めているという点である。

 「お客様と出会った最初の頃」の具体例として、西野さんがあげたのは「小さな実感」。「どうです?先週に比べて、寝起きは良くなりましたか?」といった具合に、なかなか、薬ではない以上、実感が得られにくいものを敢えて、コミュニケーションの中で、確認し合う。それが積み重なると、自然とお客様にも自ら行動したりして、変化が生まれると述べていて、そのお客様の変化は、この段階のコミュニケーションの功績だと言える。

 だから、初回購入のお客様は「〜〜円OFF」など、昨今のネット通販でよく見られる定期通販の手法は確かに、お客様が継続を検討する要因にはなるが、むしろ、長い目で見たら、得策ではないと警鐘を鳴らす。そのタイミングで強化すべきは、そのアプローチではなく、地味でも、この商品を買って良かったと思ってもらえる為の、サポート側の後押しなのだ。

コミュニケーションが変化し人の気持ちに寄り添う

 ハヤカワさんも対談をしながら、切切とお客様への思いとその接しかたを話す西野さんの言葉に耳にを傾けながら、気付き始める。コールセンターの人たちは、フェーズごとに、そのコミュニケーションの中身を変質させ、その時のお客様の心理にあった寄り添い方をしていて、それ故に、継続しているのだということに、である。

 それは、西野さんの言葉が示している。上記の通り、最初は「小さな実感」だとしながらも、それが積み上がってくると、商品はその人の生活と一体化して、お客様の意識が「もっともっと」と上を目指すようになるのだそう。その頃には、興味の対象が商品から会社へと移ってくるというのである。

 「そこで初めて健康に関し助言を与えていくのです」と西野さん。ここまで来ないと、複数の商品を多く見せても購入に至らない。CRMでよく一緒に使われる LTV(Life Time Value)という言葉の意味を持つのはここからで、客単価をあげるのはこのタイミングからなのだと、声を大にして語るのだ。

商品を継続させることの盲点

 まだ、ネット通販において年商10億円に満たない店が多い中で、西野さんは多くの企業にこう言う。「初期は客単価をあげようとすべきではなく、継続するお客様を受け入れるコミュニケーションの環境を整えるべきだ」と。

 やずやの商品にしても、はたからみれば、同じ商品を売っているだけのように見えるのであるが、先ほどから触れる通り、「コミュニケーションとセットで」売っている。ここがミソである。同じものを売っているように見えて、同じではない。コミュニケーション面は変化しているから、お客様の満足度は、回数に伴い、増していくことになり、故に継続する。

 そして、話が戻ってくるのだが、だから、先ほど触れたような商品作りは意味を成す。もっと人の本質的な欲求まで辿って、手掛けているということの説明は、このコミュニケーションにおいて、深く関係を築く上で、有効である。

 西野さんと話していて思うのは、人間性に着目した発言が多い事であり、それがなされる理由は、これらの対談の話でわかった。やずやは、この変化するコミュニケーション面が肝。僕らだって、知り合いから友達になり、友達から親友になるのに従い、信頼感を増していくのだから、それと同じである。真に、人間らしくあろうとする程、そのやずやにおける信頼感は増していく。

特別なストーリーも特別な相手だから

 そのストーリーはさらに続く。それがその人の生活とガッチリつながると、今度、お客様の側はそれを失うことの怖さが生まれてくるので、ますます、離れなくなる。それとともに、特別感の演出を行い、やずやとしてもそれ相応の態度を示すことになる。

 この対談の中で、こんな話も出た。北海道のお客様から、今日届くはずの商品が届かないと言われた際に、飛行機を使って、わずか4時間ほどで届けたというもの。「これぞCRM!」という“事件”なのだけど、これもまた、西野さんに言わせれば、全てのお客様にしているのではなく、「やずやなしには生活できないという優良顧客に」だから、彼らもまたそうして差し上げているのだと思った。

 フェーズにあった驚きを彼らは丁寧に微調整しながら、関係性を築いている。その特別感を得た優良顧客に対しては、それ相応のそれを上回るだけの驚きを、いかに提示できるか、ずっと追求している。それがあってこそ、より信頼感は高まる方向へと向かっていく。しかも、最初からどっぷりとお客様に付き合いすぎると、ビジネスとしても、粗利にあわないはずだが、少しずつ、付き合いを深くしていけば、それも可能である。

 そして、二人の会話に僕はハッとさせられるのである。西野さんが以前からよく言う「お客さんは神様ではない」という言葉の真意を。ふさわしい相手に、ふさわしい対応をしているだけで、実は、このお客様とやずやの両者の関係は対等なのだと。

システム化する事で忘れがちな事

 ハヤカワさんは、続けて、これを個人レベルであれば、やれるかもしれないが、やずやはそれを属人化させることなく、事業を拡大させてきた事について、言及し、その敬意を示すと、西野さんもこれにうなづいて、こんな話をした。多くの企業は儲かるほどに、アナログ時代にやっていたことをやめてしまって、結果、お客様が離れることを自ら引き起こしていると。

 ここが西野さんの真骨頂であろう。泊まり込んでまで再現した、システム化、コンピューター化の真髄ではないかと思う。つまり、万能なコンピューターではあるが、持ち主の使い方次第で、変わる。

 お客様の側からすると、何年経っても変わらず、やずやの人たちとの当たり前に“お付き合い”があって、ずっとそれは続いて、日常とともに浸透して、長きにわたる継続率を誇る。この本質を、西野さんは見逃さなかったのだ。

 やずやの“今”は、売れる為にシステムに投資をするのではなく、お客様との関係を以前と変わらずに築けるように、システム投資をしたことで、手に入れた功績なのだと思う。

ハヤカワさんと「やずや魂」を生かして 描く 通販 の 未来

 冒頭に、ハヤカワさんがなぜに、やずやに関心を抱いたのかは、書いた通りだ。彼女自身が、生理のサプリを手掛け、そこを入り口にして、女性が若いうちから、健康に対しての意識を持ってもらえるビジネスをやりたい、という想いにある。

 まさに、現代は、そういう胸の内にある理念や考え方を発信し、共感を集められる時代であり、仲間(ファン)を集めることもできて、ハヤカワさんのような時代の寵児になることだって可能である。

 確かに、そこから続々と大なり小なり、いろんな人や企業が名乗りを上げている一方で、実は、今それも転機を迎えているのではないかと思う。それが“いかにして継続させるか”という視点であり、自分のブランディングに成功したすべての人が、これから意識しなければいけないことなのではないかと思う。

インフルエンスだけではなく、そこからの継続へ

 ハヤカワさんが「さすが」だと思うのは、その時代の中でも、今のままではいけないという思いを感じていたのではないかと思うからだ。ハヤカワさんから「西野さんに会いたい」といわれた時に、もう彼女なりに、見えていたのではないか。“いかにして継続させるか”の大切さを。

 D2Cなどという言葉は取り沙汰される中で、ニューフェイスが台頭していて、けれど、その台頭するまではいいだろう。ただ、それらニューフェイスが、長きにわたり、そうやって掴んだファンや顧客をもっと継続させる為に、何をすべきか。そこが大事な時代なのではないか。

 その意味で、やずやが培ってきたノウハウは、そういう人たちに少なからず、ヒントをもたらすものになるだろう。西野さんが見事に理論を説き明かす一方で、ハヤカワさんの熱意を持って受け止めるその姿を横目で見ながら、僕はそんなことを思ったのである。それは僕自身の事業も含めて。

今日はこの辺で。お二方、ありがとうございました。

参考記事:15000字に及ぶ対談記録もあわせてどうぞ。

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