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やずや 西野博道氏 ハヤカワ五味氏 語る 通販 CRMとは?

西野さんとハヤカワさん

 昨今、SNSの浸透で自己表現がしやすく、小さくとも世の中に動きを起こせる時代である。大事なのは共感。だが、その先が僕は気になっている。そのお客様を魅了し続ける方法である。時を同じくして、実は同じ考えを持っている人がいた。SNSなどでインフルエンサーとなりブランドも展開する経営者ハヤカワ五味さんだ。そこで考えた。健康食品で数々リピーターを惹きつけてきた やずやの大番頭、西野博道さんと彼女を引き合わせる、奇跡の二人の対談を実現させたのだ。 通販 そして CRMとは 何かを考えてみたい。

世代を超え、共に今真剣に向き合う通販 CRMとは?

1.この二人の遭遇は 通販 や CRM の 未来 に繋がる

 ハヤカワ五味さんは自らが進めるビジネスで、やずやに深い関心を抱いていた。それで、西野さんの話を伺ってみたいと、僕がお願いされた事に、この企画は端を発する。ハヤカワさんは、自己表現がしやすい今の時代の特性を生かし、多くの共感を集めて、学生時代に起業。商品を手掛けてブランドを営み、6年に及ぶ。

 一方、西野さんはやずやで商品で繋がったお客様と、親子に勝るとも劣らない、長きに渡る関係性を築き上げ、会社を成長へと導いた一人。CRMといえば、西野博道 というくらいの存在である。

CRMとは
CRMとは

 二人は、世代もやり方も違えど、共通点がある。それは、ファンやお客様との間で、共通の価値観を形成して、深い関係を築く姿勢である。二人の対話は、きっと今後、通販に化学反応を起こす。そういう意味合いでも、対談を企画した次第だ。ここでは、その対談で僕が感じた事を書きたい。

2.やずや マジックはお客様を皆、リピーターにする

 「やずや」は元々、仕入れ商品で通販を始めた。そして「養生青汁」という商品をきっかけに、オリジナル商品を開発するようになった。ただ、それを起点に通販で、同じお客様に継続的に商品を買ってもらうビジネスモデルを推進。それを背景に成長したのである。1988年には6000万円だった売上は、2008年には400億円以上にまで伸びた。

 思うに、創業者 矢頭宣男さんの存在は大きい。「親子に勝るお客様との関係性」の土台を築いたのが、この人である。まだパソコンも浸透しない時代において、お客様から送り届けられたその葉書。それは、社員の誰であっても何秒以内に取り出せるように仕組み化した。そして、商品力はさることながら、徹底して、お客様との関係構築に重きを置いて、一大成長を遂げたのである。彼らが長年貫く「おもてなし」の原点でもある。

3. CRM の真髄

西野博道さん
西野博道さん

 西野博道さんはどんな存在か。これをシステム化させた人で、とはいえ、コンピューターにありがちな効率化ではない。矢頭宣男さんのこうした考え方をコンピューターに落とし込もうと考えてきたところに意義がある。今は、やずやグループ株式会社未来館 取締役社長である。

 その昔、西野さんは自ら会社を経営し、コンピューターそのものを売っていた。だが、思いがけず、やずやの創業者矢頭宣男さんと出会った。そして、コンピューターを売り込む過程で、西野さんだけがやずやの社内に泊まり込んで、一緒に社員と生活をした。そこまでして、その考え方を自らにたたき込み、コンピュータに反映しようとするその姿勢が一目置かれる事となる。彼はやずやの一員となったのだ。

 以来、西野さんは変貌した。彼自身も話しているが、自身が「矢頭宣男」になった。矢頭さんと同じタバコを吸い、同じネクタイをしめたというほど。なり切る事で、自分の体にそのイズムを染み込ませたのだ。

 属人化しがちなやずやのカスタマーサービスを、コンピューターによって“標準化”させる事ができたのは、その意識が為せる技。いわば、100億企業への足掛かりを作った人と言っていい。「やずやの全てを知る男」と呼ばれる所以である。

4.ハヤカワさんが、今、やずやに関心を抱く理由

ハヤカワさん
ハヤカワさん

 一方で、ハヤカワさんは、今、女性の生理用のサプリを発売し始めていて、これが健康と結びついている。女性は実は20代でも子宮頸癌などの危険性もある。だから、日頃から健康を意識するべきだと彼女は考えていて、その為の「エントリー」として、このサプリを手掛けたわけだ。

 さらに、生理は女性にとっての日常。この商品をきっかけに、日頃商品を触れ合う中で健康への意識を高めていきたいと願う。それは、女性として最大の充実感を味って欲しいと思う気持ちの裏返しである。そのもとに、商品を手掛けていて、だから真剣だ。

 やずやが健康を通して、特に年配の人たちに健康の意義を唱え、やってきたわけだ。それは偶然にも、彼女は彼女なりに、今の時代に、近しい事を若い世代で、やろうとしている。ゆえにこの二人の遭遇には意味があると思ったのだ。

潜在的なニーズを 顕在化させる 商品作り

1.インサイトを見つけて商品にはしてきた。けれど・・・

 対談では、最初から西野さんも、ハヤカワさんに深い関心を示した。その魅力を、彼女がインサイトを発見して、商品を手掛けているから、と評価した。インサイトとは、なんだろう。商品を通して、消費者すらも気づいていない潜在的なニーズに「そうなんだ!」と気づかせる事である。本来、商品が長く受け入れられる土台はここにあると西野さんは説明した。

 思えば、ハヤカワさんの生理サプリの発想もそこに近い。彼女は確かに、女性の潜在的にある悩みに着目。自ら商品を手掛ける事で、気づいてもらい、解決できる術を、提示する。それによって、世の中に価値をもたらそうと、商品を生み出しているわけだ。安易に「売れるから」という理由で商品を手掛けているのではない。僕もそんなクリエイティブな姿勢に魅力を感じている次第である。

2.ハヤカワさんが迫る 継続率 50%はなぜ生まれる

 さて、そこでハヤカワさんの投げかけた問いを見てみよう。その中身から察するに、そのインサイトのフェーズは乗り越えている模様である。ただ、そこで掴んだお客様をどう継続させて、満足感とともに長く寄り添えるか。その点で、答えを模索しているというのが今の彼女の状況である。ここがやずやに関しての関心を深める理由でもある。「どうやっても、いずれ商品には飽きが来るのではないですか」という彼女の問いかけにそれが現れている。

 事実、ネット通販では顧客の維持率(1年間に継続し続ける率)が10%とも言われる。一方、西野さんが提唱する、顧客の維持率は50%。根本的に何かが違うはずだ。そう彼女も言っていて、ここに 未来 における 通販 躍進のヒントがあるように思うのだ。

3.商品とコミュニケーションが一体化している

 そして、それに対する西野さんの答えによれば、最初の接触から異なる。それは「商品」がコミュニケーションと一体化して初めて完成していることが背景にある。だから「お客様と出会った最初の頃」のやるべきこととして、西野さんがあげたのは「小さな実感」である。

 例えば「どうです?先週に比べて、寝起きは良くなりましたか?」といった具合。薬ではない以上、実感が得られにくいものを敢えて、コミュニケーションの中で、確認し合う

 それが積み重なると、自然とお客様にも自ら行動したりして、変化が生まれる。そう述べていて、そのお客様の変化はこの段階のコミュニケーションの功績だと言える。

 だから、初回購入のお客様は「〜〜円OFF」などには西野さんは距離を置く。昨今のネット通販でよく見られる定期通販の手法ではある。それは確かに、お客様が継続を検討する要因にはなるだろう。しかし、むしろ、長い目で見たら、得策ではないと警鐘を鳴らすわけだ。

 そのタイミングで強化すべきはそのアプローチではないと。地味でも、この商品を買って良かったと思ってもらえる為のサポート側の後押しなのだと強調するわけである。

4.コミュニケーションが変化し人の気持ちに寄り添う

 ハヤカワさんも対談をしながら、西野さんの言葉に耳にを傾けながら、気付き始める。コールセンターの人たちは、フェーズごとに、そのコミュニケーションの中身を変質させていることを。そして、その時のお客様の心理にあった寄り添い方をしている。それ故「継続している」のだ。

 それは西野さんの言葉が示している。

 最初は「小さな実感」だとしている。そうでありつつも、それが積み上がってくると、商品は上記にもある通り、その人の生活と一体化しているのだ。そうなると、お客様の意識は「もっともっと」と上を目指すようになっていく。その頃には、興味の対象が商品から会社へと移ってくるというのである。

 「そこで初めて健康に関し助言を与えていくのです」と西野さん。

 ここまで来ないと、複数の商品を多く見せても購入に至らない。CRMでよく一緒に使われる LTV(Life Time Value)という言葉の意味を持つのはここから。客単価をあげるのはこのタイミングからなのだ。彼はそれを声を大にして語る。

商品を継続させることの盲点

1.同じものを売っているようでいて変化している

 まだ、ネット通販において年商10億円に満たない店が多い。その中で、西野さんは多くの企業にこう言う。「初期は客単価をあげようとすべきではない。継続するお客様を受け入れるコミュニケーションの環境を整えるべきだ」と。

 やずやの商品にしても、はたからみれば、同じ商品を売っているだけのように見える。だがしかし、先ほどから触れる通り、「コミュニケーションとセットで」売っている。ここがミソである。

 同じものを売っているように見えて、同じではない。コミュニケーション面は変化しているから、お客様の満足度は、回数に伴い、増していくことになり、故に継続する。

 そして、話が戻ってくる。だから、先ほど触れたような商品作りの姿勢(インサイトの話)は意味を成す。もっと人の本質的な欲求まで辿って、手掛けている。そのことの説明は、このコミュニケーションにおいて、深く関係を築く上で、有効である。広く多くの人にとって潜在的な悩みと紐づいているからだ。

 西野さんと話していて思うのは、人間性に着目した発言が多い事である。それがなされる理由は、これらの対談の話でわかった。やずやは、この変化するコミュニケーション面が肝。僕らだって、知り合いから友達になり、友達から親友になるのに従い、信頼感を増していく。だから、それと同じである。真に、人間らしくあろうとする程、そのやずやにおける信頼感は増していく。

2.特別なストーリーも特別な相手だから

 そのストーリーはさらに続く。それがその人の生活とガッチリつながると、今度、お客様の側はそれを失うことの怖さが生まれてくる。だから、ますます、離れなくなる。それとともに、特別感の演出を行い、やずやとしてもそれ相応の態度を示すことになる。

 この対談の中で、こんな話も出た。北海道のお客様から、今日届くはずの商品が届かないと言われた際に、飛行機を使って、わずか4時間ほどで届けたというもの。

 「これぞCRM!」という“事件”なのだ。けれど、これもまた、西野さんに言わせれば、全てのお客様にしているのではない。「やずやなしには生活できないという優良顧客に」だから、彼らもまたそうして差し上げているのだ。

 フェーズにあった驚きを彼らは丁寧に微調整しながら、関係性を築いている。その特別感を得た優良顧客に対しては、それ相応のそれを上回るだけの驚きを、いかに提示できるか。それをずっと追求している。それがあってこそ、より信頼感は高まる方向へと向かっていく。しかも、最初からどっぷりとお客様に付き合いすぎると、ビジネスとしても、粗利にあわないはずだが、少しずつ、付き合いを深くしていけば、それも可能である。

 そして、二人の会話に僕はハッとさせられるのである。

3.システム化する事で忘れがちな事

 西野さんが以前からよく言う「お客さんは神様ではない」という言葉の真意を。ふさわしい相手に、ふさわしい対応をしているだけで、実は、このお客様とやずやの両者の関係は対等なのだと。

 ハヤカワさんは、続けてこう言及する。これを個人レベルであれば、やれるかもしれない。だが、やずやはそれを属人化させることなく、事業を拡大させてきたと。彼女なりの敬意を示して、なぜできたのかと迫った。

 西野さんもこれにうなづいて、こんな話をした。多くの企業は儲かるほどに、アナログ時代にやっていたことをやめてしまうと。結果、お客様が離れることを自ら引き起こしているのだ。

 ここが西野さんの真骨頂であろう。泊まり込んでまで再現した、システム化、コンピューター化の真髄ではないかと思う。つまり、万能なコンピューターではあるが、持ち主の使い方次第で、変わる。

 お客様の側からすると、何年経っても変わらず、やずやの人たちとの当たり前に“お付き合い”がある。ずっとそれは続いて、日常とともに浸透して、長きにわたる継続率を誇る。

 この本質を、西野さんは見逃さなかったのだ。

 やずやの“今”は、売れる為にシステムに投資をするのではない。お客様との関係を以前と変わらずに築けるように、システム投資をしたことで、手に入れた功績なのだと思う。

ハヤカワさんと「やずや魂」を生かして 描く 通販 の 未来

1.ハヤカワ五味さんは やずや西野さん理論で 継続顧客を意識する

 冒頭に、ハヤカワさんがなぜに、やずやに関心を抱いたのかは、書いた通りだ。彼女自身が、生理のサプリを手掛け、そこを入り口にして、女性が若いうちから、健康に対しての意識を持ってもらえるビジネスをやりたい、という想いにある。

関連記事:“生理”というタブーに 商品 で物申す ハヤカワ五味 の挑戦

 まさに、現代は、そういう胸の内にある理念や考え方を発信し、共感を集められる時代。ゆえに仲間(ファン)を集めることもできて、ハヤカワさんのような時代の寵児になることだって可能である。

 確かに、そこからいろんな人や企業が脚光を浴びる一方で、実は転機を迎えているのではないか。そのフェーズで大事なのが「いかにして継続させるか」という視点。自分のブランディングに成功したすべての人が、これから意識しなければいけないことなのではないかと思う。

2.インフルエンスだけではなく、そこからの継続へ

 ハヤカワさんが「さすが」だと思うのは、それを察していることにある。その時代の中でも、今のままではいけないという思いを感じていたのではないか。ハヤカワさんから「西野さんに会いたい」といわれた時に、もう彼女なりに、見えていたのではないか。“いかにして継続させるか”の大切さを。

 その意味で、やずやが培ってきたノウハウは、そういう人たちにヒントをもたらす。西野さんが見事に理論を説き明かす一方で、ハヤカワさんの熱意を持って受け止めるその姿。僕はそれを横目で見ながら、そんなことを思ったのである。それは僕自身の事業も含めて。

今日はこの辺で。お二方、ありがとうございました。

参考記事:15000字に及ぶ対談記録もあわせてどうぞ。

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