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ハヤカワ五味 が迫る “やずや”とは 【2】 通販 で大事な顧客との関係性

 ハヤカワ五味さんが 起業家 として、第二の 起業 へチャレンジしている。シンデレラバストで話題を集めた「feast」から6年あまり、今度は女性の生理の悩みに対して応えるブランド「illuminate」を始めた。彼女がこのブランドにおいて大事にしようと考えているのは、「継続してお客様に買っていただく為の工夫」。そこで、実現したのが、健康食品で数多くのリピーターを生み出したやずやの西野博道さんとの対談である。商品を買ってくれる顧客との関係性について本家に迫る。

ハヤカワ五味さん、西野博道さん
ハヤカワ五味さん:(株)ウツワ 代表取締役。大学時代に起業。バストの小さな女性向けブランド 「feast」創設し、今も新ブランド「illuminate」展開
ハヤカワ五味さん、西野博道さん
西野博道さんやずやグループ(株)未来館 取締役社長。やずやの番頭として15年間仕え、第一線で牽引し、『やずやのすべてを知る男』と言われている。

やずや 通販 お客様のニーズに応える鉄壁のコールセンター

1.コールセンターの子は、赤ちゃんになればいい

 ハヤカワ五味さんは新しいブランド「illuminate」で意識したいのはお客様との関係性なのである。それは生理のサプリを発売するものの、彼女にとってはそこを入り口にして、女性全般の“健康”に対しての悩みに応えるブランドを構築したいという想いがあるからだ。

 それで、「やずや」にたどり着く。お客様と無理なく自然につながり続けるそのノウハウを自分のブランドにも取り入れて、成長を考えているからである。

 やずや で欠かせないのがお客様との「コミュニケーション」。第一に、それぞれのお客様と家族のような関係性を築くコツ。第二に、それでいて、それを属人化させる事なく、標準化を為し得たワケ。その核心に焦点を当てる。

やずや代表的商品
やずや:通販企業のパイオニア。約25年前、「養生青汁」を皮切りに、「熟成やずやの香醋」など健康食品でヒット続出、顧客の継続率の高さに定評がある。

ハヤカワ五味さんここまで色々話してきましたが、やずやさんにとって、コミュニケーションが大事なのがよくわかりました。

ハヤカワさん
ハヤカワさんは自分の事業に置き換えて、西野さんに質問していて、すごく現実的である。

ハヤカワ五味さん:その中身について聞きたいと思っていて。例えばですが、どんなに優れたコールセンターの方であっても、お客様の方では、胸の内にある悩みの本当の部分を「最近、こういうことに悩んでいて・・」という風に頼りづらいという人もいると思うんです。でも、やずやさんは、そこすらも乗り越えて、結構、頼られる存在になっている印象があるんですけど、そこってどういうコミュニケーションで、信頼を築けてきたんですか?

西野博道さん:変にお客様扱いしないってことですね。お客さんからしてみたら、場合によっては、コールセンターの子って、下手すれば、孫くらいかもしれないんですよね。でも、私は新入社員にいうのは赤ちゃんになったらいいいよ」っていうんですよね。

ハヤカワ五味さん:赤ちゃんですか???

西野博道さん:赤ちゃんって何もできない。親に頼っているけど、周りの人を絶対に不幸にしないですよね。それを知ったかぶりするからダメなんです。お客さんを、お母さんと思って、一緒に関係性を築いて行ったら、頑張らなくていい。「知っているんです」ではなく失敗しても謝るとか、そういう素直さが大事です。

2.財布ではなく、に対して売っている

西野博道さん:前回、「健康のプロとして」と言った事と一見すると矛盾するかもしれないんですけど、そうじゃないんです。コールセンターの子自身が専門家になるという事じゃなく専門的知識のある人に、誰よりもそのお客さんのことを考えて、聞いて教えてくれる、そんな感じです。

西野博道さん
西野博道さん

西野博道さん:そういう人には、お客さんも話しやすい。いかにもコールセンターってところもあるでしょ?

ハヤカワ五味さん:確かに、そうですね。自動音声かな、的な

西野博道さん:ああいうのって関係性が作りづらい。喋りづらいですよね。だから、敢えて言うなら、沈黙を恐れない。喋らない。

ハヤカワ五味さん:うー、そこは心が痛い(笑)。話に余白がないってことですよね。

西野博道さん:そう。余白を無理に埋めようとすると、結局、相槌だけで、会話を終わらせる事になって、少しも相手の胸の内を話していなかったりします。本当はそこが一番大事なのに。

ハヤカワ五味さん:スピード感も年代によって違いますものね。なるほどな、「に対して売っているのか」「財布に対して売っているのか?」の違いなのかもしれないですね。この差は確かに大きいですね〜。

3.健康の三大定義

西野博道さん:ただ、やずやでは、人との関係づくりをしながらも、健康の定義っていうのを用いて、総合的にアプローチをします。そうやって、このジャンルにおける信頼感を築いていく。「健康の定義」というのは、身体的社会的精神的健康の大きく分けて3つある。

  • 身体的健康は、食事、サプリメント、睡眠、運動
  • 社会的健康は、自分は一人じゃない、孤独じゃないという要素
  • 精神的健康は、嬉しいとか、喜んでくれている、感情的なもの

そういう3つに対してメッセージを送りながら、飲み方とかではなく、睡眠とか運動を含めての関係性で、抑えるべきは抑えて、関係構築をしていく。

ハヤカワ五味さん:ある意味、やずやの商品を買うことによって身体的な部分だけではないということまで関わって健康自体でのサブスクリプションということなんですね?

西野博道さん:そうですね、お客さんにとっては「健康」と言った時にパッと浮かぶのが、やずやだと。そういう健康のカテゴリーの代表的なところにいっています。

ハヤカワ五味さん:そこ、本当に自分自身も一番目指したいところで、結構、お母さん世代とか歳を重ねていくと、こういうブランドとか会社なら、参考になるな、と想起できるものがあるんです。でも、20代とか出産前くらいの世代だとこのブランドならというのが想起されない。そこの部分でもう少し快適になりたいな、過ごしたいなと思ったところで、思い浮かべられるブランドになりたいなと思っています。

標準化の舞台裏

2-1.手作業でやっていたことをやめてしまうからダメ

 西野博道さんは元々やずやに入る前に、コンピュータの会社を経営していて、コンピューターを売っていた。ただ、彼はやずやの創業者に出会って、おそらく大事なのは、コンピューターそのものではなく、その考え方をコンピューターにすることだということを学んだのだと思う。1988年には6000万円だった年商が、2008年には450億円にまで成長したのはその標準化が為せる技である。

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やずやの年商は1988年で0.6億円で、2007年には470億円まで伸びた

ハヤカワ五味さん:最初、数百位人レベルであれば、個人レベルでやってもいいんでしょう。けれど、多分、私の会社の商品で求められているのは、多くの人に同じ体験をしてもらい、しかもそれが今の時代、ツールに即したもので、若年層ターゲットにしているものができるか、という点なのかなと思っているんです。

西野博道さん:そうですね、通販って、年商1億〜3億円の頃って、アナログでやっているんだけど、だんだん売り上げが増えてくると、今まで手作業でアナログでやっていたことがやれなくなるんですよね。

西野博道さん:その時どうするかってことなんですよね。そこで多くの会社がそれ自体をやめるんです。昔は一通一通、手書きで書いていたのに、やめてしまうからダメなんです。

2.お客さん側から見て同じことをやっているよう

西野博道さん:今までアナログでやっていたことをやめるんではなくて、やっていたことをいかに、お客さん側から見て、同じことをやっているように、システム化するってことなんですよね。

ハヤカワ五味さん:私が衝撃を受けたのは「ドモホルンリンクル」が「稲勝 栞(ハヤカワさんの本名)様」って直筆で書いてある冊子が着いてくるわけですよ。それがバランスの良いシステム感なんだろうなと。

西野博道さん:例えば、文章を書いたものを色々予めコピーで作っておいて、名前が入ってない。けれど、それを書いた同じ人が後から名前だけ埋めれば、パッと見たときに全部、その人に向けて書いてあるかのように見える、とか。工夫次第で、変わらぬ雰囲気でできることはきっとあるんです。

例えば、再春館製薬さんはスタッフさんだけで1000人いるんですけど、コールセンターで電話を受けている人がいまだに1/3くらいの人がキーボードを使っていないと言われています。

ハヤカワ五味さん:え???

ハヤカワ五味さん:手で書いたものがシステム化されていて、例えば、特に化粧品なので、顔のこの辺がとか、キーボードで打ちにくいものがあるので、予め顔のシートがあって、それをデジタル化しているんです。

3.大事にしてきたものをアップデートしていく

西野博道さん:普通なら、切り捨ててどんどんやらなくなりますよね。そうすると、お客さんから見て、どんどん距離ができてくる。

ハヤカワ五味さん:実際、今まで大事にしてきたものをいかに継続的に負担なくやっていけるか、クオリティを上げていくか、なんですよね。切り捨てていくのではなく、アップデートしていくってことなんですよね。

西野博道さん:システムが入る事で、お客さんから見た時に、より深まる関係にならなきゃいけない。だから、やずやでも、お客さんが書いた手紙とか画面上に見ることができます。勿論、こちらから出したお手紙とかも画面上で見れます。

ハヤカワ五味さん:あっ、画面上にそれが出ているからわかるってことなんですね。「この前、届いたあれ」とか「赤っぽいあれですよね?」とか「あのキャンペーンが〜」みたいな過去、お客さんが受け取ったものもそのまま見れるって事ですか?

4.『あれ』と『これ』でやりとりできる親子のような関係性

西野博道さん:そうそう。お年寄りって『あれ』とか『それ』とかが多いんですから(笑)。そうは言っても「やずやさんからきた『あれ』」とか言われてもわからないんですよね。でも、これがあれば、あれとこれで通じる関係性になるんです

ハヤカワ五味さん:それもう、、親子みたいですね。うちは、親子でも難しいかも(笑)。そっかぁ。本来、CRMをやると属人的になりがちなんだけど、コンピュータがフォローしているというか誰でも回せるようにしていると。

しかも、CS担当の方の立場からすると、一日何十人と違った接客するけど、お客様の立場からすれば、自分だけのことだけしか知らないから、そこのすり合わせが手前でできているというのは、めちゃくちゃ重要ですね。

でも、、、そこまでやるのは、私にはできないなと思っちゃう。

びっくりや感動をシステム化する

1.目指す山は大きくとも、本質は何ら変わらない

西野博道さん:いやいや。でも、最初はガチガチのシステムなんていらなくて、紙やエクセルベースで考えて、大事なのは何かをしっかり貫いてやって、それの本質をずらさずに、システム化していくということなんですよ。

ハヤカワ五味さん:その本質って何ですか?

西野博道さん:そうですね、、コミュニケーションなので、相手を思う心ですよ。どうしたらお客さんがびっくりするかなとかですね。

そう言えば、20年前に、こんな事がありました。お客さんの来た葉書とかをスキャナーで読んで、コールセンターの子が使うパソコンで、画面上に出すっていうことを一番最初にやったんです。その頃ってスキャナーが一台、1000万円していたんですよね。

ハヤカワ五味さん:!!!!

西野博道さん:それだけのものだった。だけど、ほとんどのお客さんはびっくりするんですよね。お客さんが一週間前かそこらに出してくれた葉書の話をするものだから、「どうして私の葉書をあなたが持っているの?」ってね(笑)。

2.個人で接している感じが距離を縮める

西野博道さん:たまたま電話した相手がそんなことまで知っているとは思わないですよね。その会社の社員が一人ならわかるけど、そうじゃないのに、もしそんなことが起こったら驚くだろうな、と思ったから、取り入れているんですよね。

ハヤカワ五味さん:しかもそれが、個人で接している感じがするというか。

西野博道さん:普通はそういう事しないんですよね。普通は葉書の要点だけを書くんですよね。

ハヤカワ五味さん:確かに「お子さんが生まれた」とかしか書かないかもしれません。でも、要点だけだと話を広げにくいし、コミュニケーションしづらいですよね。そうか。何を一番、重きにおいているか、という話ですね。確かに、びっくりさせるために、そこまでやっている単品通販ってないですよね。

お客様の生活と会社がガッチリ結びつく

1.やってあげなきゃいけない時はやってあげる

西野博道さん:そうかもしれませんね。以前、北海道のお客さんに、こんな事を言われたことがあります。「今日の夕方、息子がアメリカに飛行機でいくからそれに間に合わせるよう注文したんだけど、まだ届かないよ」って。じゃあ、どうするんだってことになりますよね。北海道だから、絶対届かないんですよ。

それで、すぐに宅配業者に連絡して、こんな状況なんだけど、「なんとかならないんかね」と言ったら「西野さんわかりました!私が空港に持って行って飛行機に乗せます。飛行場に着いたら、別の配達員がそれを取りに伺い、お渡しします」って。だから4時間くらいで着いちゃったわけです。お客さん、それはそれは、びっくりしちゃって。

ハヤカワ五味さん:リッツ・カールトンみたいですね。リッツ・カールトンの接客がめちゃくちゃ好きで一人当たり3万くらいじゃないですか。でも、忘れ物した時なんかも車で家まで届けにきてくれるみたいな、それに近いものを感じますね。

西野博道さん:でも!!なんです。大事なのはそういうことをやってあげなきゃいけない時はやってあげるということなんですよね。ある程度、フェーズを経て、関係性を築けた中ではそのくらいまでするよ。でも、前段階では、それに相応しいアプローチをするよと。

2.商品から、会社のリレーションへ

ハヤカワ五味さん:そうですよね。そこが、やずやさんの一番大事なところかもしれない。いきなりドップリやってしまうと、ビジネスとしても、粗利にあわないはずなんですけど、少しずつ、付き合いを深くしていけば、それも可能です。お客様的にも、気がつけばべったり。ですよね?

西野博道さん:その通りです。

ハヤカワ五味さん:本当にすごいですね。これ、ここまでを整理すると、手前の最初の部分は「商品」とのリレーションみたいなところだったのが、それがだんだん会社」とか大きくなってくるという。

ハヤカワ五味さん:そうだな、私の商品で言えば、このフェーズごとにどういう体験を、というところが、つめ切れてはいないのかもしれません。ある意味、そこは感覚的に自分がやってきた部分もあるから、ロジカルに属人的ではなく再現できるのか、という感じにしていくのが肝かなと思いました。本当に、学びが多かったです。

西野博道さん:これからすごくやりようはあると思います。ただ、何に重きを置くかを見失わない事です。まだまだお若いのですし、20年後には、多くの社員を抱えてバリバリ頑張っているような、そんな気さえしますよ。

ハヤカワ五味さん:そうなれるように頑張ります。今日は本当にありがとうございました!

———-やずやの根本である「コミュニケーション」。まさに西野さんがその第一線で、そのシステム化を進めてきただけあって、締めはシステムによって、いかに人のおもてなしは進化するか、という話に至った。

思うに、他では、売るためにシステム投資するようなところが、やずやでは、今までと変わらずお客さんと関係を築くためにシステム投資する。ここにやずやの根本を見た気がする。そのお客様思いの姿勢に、長年愛されるだけ理由がある。また、ハヤカワ五味さんの動きは現在進行形なので、西野さんの話を受けて、変化もしていくだろうし、引き続き僕は注目していきたいと思う。

提言記事:やずや 西野博道氏 ハヤカワ五味氏 語る 通販 CRM の“未来”

対談の「第一回」から読んでみよう。

第一回目から読んでみよう
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