生成AIを使えば「1人ユニコーン」も可能な恐るべき時代の到来ーデジタルと共創して発明を
完全に、時代の転換期を迎えており、1人でユニコーン企業が作れる時代が到来する。ユニコーン企業とは、企業評価額が10億ドル(約1000億円)を超える新興企業を指す。え?そう思う人がいるだろう。トランスコスモス・デジタル・テクノロジー代表取締役 所年雄さんの話で、それは否定できないと思った。キーとなるのは、生成AIの活用である。しかも、それが多くの人にとって身近に感じられる理由。それは、個性の拡張なのであり、個々の価値を今こそ、多様に生かすということを礎にしているからだ。
・1人ユニコーンの誕生-AIが変えるビジネスモデル
大前提となっているのは、「AIは仕事を奪うのではなく、仕事を創り出す」ということ。ただ、案外、僕らはなぜ、生成AIが仕事を「創り出す」のか、わからない人もいるだろう。しかも、僕らにそれが夢を持たせてくれるのは、個性の拡張という部分に直結しているからなのだ。
そう。誰にとっても他人事ではない。
従来は、10人以上のチームが必要だった業務。それもAI技術を活用することで「1人で」効率的にこなすことができる。効率面の話じゃないか。そう思う人もいるだろう。それだと、恐らく生成AIの本質を見誤る。
所さんがその可能性を強く感じたのは、ソフトバンクが主催する「SoftBank World 2024」での宮川 潤一社長のプレゼンテーションがきっかけだ。それで、僕もこの取材の後で見て、納得した。
まさに、宮川さんは「個人の個性の拡張」を主張していた。つまり、効率面だけではなく、個々人の持つ可能性をさらに倍加させて、新たな発想を生み出す土壌となることを示唆したのだ。
ゆえに、それを聞きながら、所さんは「1人ユニコーン企業」が夢ではないことを、着想した。
・人間はそこに対して、何を備えればいいのか?
実にわかりやすい説明で、下記の写真の通り。
今までの業務というのは、1人が社内で色々な業務に携わって、それをこなしていた。それをタスクと考えれば、下記の通り、いくつかのタスクは、AIに置き換えられる。それによって、事業計画の策定、市場分析の中における様々なタスクがAIに替わって、人間がやるべきはタスク1だけとなる。
いうまでもなく、その当人が関わるタスクは、大幅に削減される。これが何を意味するかというと、他の事業領域にも他の事業領域にも着手できる。この通りだ。
(SoftBank World 2024 ソフトバンク宮川社長の講演より)
ここで大事なのは、その作業に関わる本人の知見である。つまり、本人の持つ能力は、それ以外の部分にも発揮されることになる。それ以外の部分で携わった業務の分だけ、新しい業務をこなせることになる。それこそが、仕事を創り出す素地となるわけだ。
これは僕が先日取材で書いた記事だけど、ファッションと生成AIの話である。素材や方向性などを指示出しして、リアルな洋服を生み出す。あるいは、リアルなものからデジタル上での表現を作り出し、架空の女性に来てもらって、ファッションショーが可能となる。
関連記事:生成AIが切り開くファッションの未来 – パルコとトップクリエイターが語る革命の最前線
奪われるのではなく、仕事を創り出す
おわかりいただけるだろうか。ファッションの話で言えば、今までデザイナーとして関わっていた知見は、生成AIへの指示に活かされる。つまり、生成AIで発揮されるのは蓄積されたそれぞれの学びなのである。その学びが、色々な業務へと渡り、才能が覚醒することになると言って良い。
だから、仕事が奪われるわけではなく、新しい価値をもって、仕事を創り出すのだ。それが生成AIの真骨頂という着地点になる。
敢えて、他の例を挙げたけど、宮川さんの「個人の個性の拡張」という意味がわかるだろう。
だから、所さんもまた、自身が関わってきたコールセンターという業務で、AIへと置き換えられることを直感したのだろうと思う。それで、これを通して、自分たちの環境を変えていこうと、社内に発破をかけるわけである。
だから、話が戻ってきて、「ヒト1人の生産性」が高くなれば、世の中が変わる。会社単位で見て、大人数のチームを必要としていたことを、1人でできる。要するに、それは「創造し続けられる」ことに繋がる。だから、冒頭、書いた通り、「1人ユニコーン」の誕生だって夢ではない。所さんは、そう語るのである。
・AIエージェントが変えるビジネスの形
ここで、所さんが1人ユニコーンを作る上で核となると主張するのが、「AIによるパーソナルエージェント(AIエージェント)」の存在だ。
AIエージェントとは何?
つまり、個々に分かれたタスクや業務は、個々のAIによって置き換えられる。そうすれば、個々のAI同士で連携ができるようになる。それらの個々のタスクに紐づく個々のAIが、言うなれば、AIエージェントである。だから、AIエージェントで連携すれば、特定の業務やプロジェクトを自動で遂行するAIのネットワークができる。
これまた、別ジャンルで説明するなら、自動運転の車がそうだ。所さん曰く、ロサンゼルスでは金成の割合で、それが浸透し始めている。まるで透明人間が運転しているかのように、自動でハンドルを切る自動車に乗るのは、近未来であると興奮気味に語った。
これすらも、AIエージェントが連携しあって、運転するという行動を生み出している。人間が介在する余地はもはやない。だから、僕らの働き方はAIをもって替わっていくのである。
・5年で売上を倍にしよう
その時に自分は何ができるだろうと。宮川さんが言っていたけど、仕事が奪われるとすれば、生成AIではなく、生成AIを使いこなす「人」によってであると。
例えば、マーケティング、営業、カスタマーサポート、さらにはシステム開発までも、AIエージェントが担当する。ビジネス全体を人手を介さずに運営できるようになる。
そうすれば、世の中は変わっていく。人の役目も変わっていく。
だから、所さんは言う。トランスコスモスではコールセンター業務がカナメ。でも、労働集約型の対応だった。要するに、人間の労働力への依存度が高く、お金や機械・設備よりも、人間の手による仕事量が多い産業。けれど、そこからAIエージェントによって、自動応答システムへとシフトすることが必要だろう。
タスクをAIに置き換え、自分たちの可能性をもっと別の部分に活かす。
だとすればそれは新規事業の創出となる。今ある環境で「5年で売上を倍にしよう」と言っても難しいかもしれない。けれど、そういう形で事業創出を行えば、それは決して不可能ではない。
・あらゆる企業や人の価値を最大化する
1年単位で見れば、115%成長を目指せば、いいのだ。そうすれば、5年後には5年前の売上よりも2倍になっている。一年単位で、115%成長を見込める事業を「創造」して、「育てて」いけばいい。
あなたたちの給料を伸ばす一番の方法だよと。AIは新しい事業領域を「創出する」。これを活用しない手はないのだ。
そして、所さんの言うように「1人ユニコーン」だって夢ではない。そんな言葉を引き合いに、まずは自らの可能性を伸ばそうということなのだ。
あらためて実感するのは、生成AIは便利ツールではないということ。
個々の価値観や個性に合わせて、その価値を最大化させるためのもの。だから、発明の可能性は個々の頭の中にある。十人十色であり、AIによって掘り起こされ、発揮されるべき価値は各々にある。また、AIはビジネス運営の中核を担う存在として、経営者の役割を再定義していくことになるだろう。
・日本における1人ユニコーンの可能性
最後に、日本にこそ、1人ユニコーンが生まれる可能性は高いのかもしれない。
労働人口の減少が進む中で、AIを活用して少人数で効率的にビジネスを運営するモデルなしには、日本自体が衰退の一途を辿ることになるからだ。
従来の企業運営では、規模の経済が重視されてきた。だが、AIの進化により、小規模でも高い生産性を実現できるようになりつつあり、そこで発明が生まれるべきなのだ。
特に、AIのパーソナルエージェントを効率的に利用し、ビジネスを最適化できる「プロンプトエンジニアリング」や「AI活用戦略」が鍵となる。日本の中小企業や個人事業主にとっても、「1人ユニコーン」的な着想が、新しい可能性を切り開く手段となるだろう。
少人数でありながら、巨大なビジネスを生み出すことができるAIの環境は、労働集約型の業務から解放され、人間がより創造的な仕事に集中できる環境を作り出す。真面目な話「1人ユニコーン」は出てくるだろう。その言葉に象徴される新時代が到来する前に、ご自身で、ビジネスの形を大きく変えていこうではないか。
今日はこの辺で。