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接客 とは何か お客様の不安を取り除く知恵と工夫と思い遣り ビームス Heg.ちゃんに学ぶ

 それは、仲良くなることでも、商品を売り込むことでもない。接客において、大事なのは、もっと別のところにある。あえて言うなら、お客様の不安を取り除く、ということに集約されるのかもしれない。それを、ビームスの販売員、Heg.ちゃんから教わった気がする。

ビームスの接客は何が違ったのか

1.真に接客の価値を想い、積み上げてきた

 この日、僕は、ビームスの事務所にいて、彼女からその接客のなんたるかを取材することにした。そのきっかけは、先日、行われた「スタッフ・オブ・ザ・イヤー」というイベントであり、彼女はそこで最優秀賞を受賞したのである。

 ただ最優秀だからと言って、取材したのではない。僕が見たところ、レベルの高い戦いの中でも、彼女の接客は抜きん出ていたからなのだ。僕が見たのは4分のロープレだけだったけれど、それを思った。そのわずかな時間でお客様のニーズに、過不足なく応えていたのである。

 これには、彼女の努力もあるだろう。けれど、会社自体もスタッフの接客を重んじて、ちゃんとやるべきことを仕組み化できているからだと思ったわけだ。それで、僕はこの取材前に、かつてビームスのEC部門の責任者で現在は同社DX推進室の室長である矢嶋正明さんに、そう言って讃えた。すると、実はデジタルと接客の関わりは、2016年の公式サイトのリニューアルに始まると矢嶋さん。5年以上かけて、このレベルまでブラッシュアップしてきたということを理解した。

2.Heg.ちゃんのお客さま目線の中身

 ビームスはこれまでその接客の意味をずっとどこよりも考えてきた。だから、それをちゃんとデジタルでも発揮できる環境をと考え、2021年の組織改編では販売組織を束ねるカスタマーエンゲージメント本部直下に、EC部門と店舗部門を並列で組み入れている。

  そういった環境の中で、早くから頭角を表していたのは、このHeg. ちゃんだった。

 不思議な話、彼女はそもそも、オンラインストアが苦手であった。だから、どんな情報があれば、そこに苦手意識を持たずに、買ってもらえるかというのを突き詰めて、行動をしたのである。これが、今回の話の「みそ」だけど、そのデジタルでの不安材料は、リアルの場面に置き換えて、想像力を働かせて改善を図ったところに、彼女のトップを取る所以があると思った。

 ビームスが大事にしてきた接客の文化は、デジタルを通して、また一段とその価値が高まったのである。

2.オンラインによりよりビームスの接客の奥深さがわかる

 大変失礼ながら、Heg.ちゃんはクールでサバサバしているキャラで、怖い人なのかなと思って、恐る恐る話しかけたくらいである。(単純に、僕がビビりなのもあるが)。だが、まるで逆であった。相手のことを深く、考えているから不必要なことを削ぎ落としているに過ぎない。サバサバは彼女なりの人への想いの裏返し。それは、彼女がよく口にする「お客さま目線」という言葉にも直結する。

 よく耳にする「お客さま目線」という言葉。だけど、彼女の意図しているところはもっと深い。だから、そこに学びがある。

 もともと、彼女が入社したのは2017年4月。まさに、ビームスが公式サイトをリニューアルし、店舗スタッフによる「ブログ」「フォトログ」「スタイリング」によってデジタル接客をスタートした半年後だった。

 その時に、彼女が最初に着任したのは東京・二子玉川の店舗である。元々顧客の多い店舗で、ブログなど、ウェブで投稿をするうち、「いつも見ています」と言われるようになった。そこで、お客様の顔をイメージできるようになったのが大きいと彼女は振り返る。

 また、ビームス社内では「接客勉強会」などが開催されて、各店舗をリアル接客のプロフェッショナルであるサービスマスターと呼ばれる人がまわり、店頭で接客についての教育を受けることができる。だから、彼女もそれを取り入れながら、接客の基礎固めをおこなった。これが接客のベースとなっていることがまず大きいことを窺わせた。

3.Heg.ちゃんの何が違ったのか

 ただ、そこから先の彼女の変化が他とは違っていたのだ。まさに、彼女は、デジタルの絡むところで接客の知見を取り入れながら、自分らしさを確立していく。2017年秋から2018年の春にかけて、そこに注力し始め、そして、2018年の時には、デジタルの接客において社内トップの成績を残すまでになった。

 ここで「お客様目線」という彼女の言葉が「みそ」である。Heg.ちゃんはその言葉から少し踏み込んで「自分の目線で、自分の投稿を見たことがありますか」。そう、熱っぽく語り出す。

 例えば、ビームスには「フォトログ」というコンテンツがある。そこでは、スタッフが自ら、一枚の写真で商品を紹介するものだ。これを例に説明するその内容が本質をついていた。

 そもそも、ビームスのオンラインストアには、同じく商品のイメージを伝える場所として、スタイリングというコーナーも存在する。彼女は、消費者の心理を踏まえて、その使い分けを上手に取り入れている。

フォトログとスタイリングの使い分け

1.ただ商品が置かれる写真では伝わらない

 この「フォトログ」の投稿でオーソドックスなスタイルは、店頭に商品を置いた写真だ。確かに写真単体で見ると、こうすることで色味やバリエーションをお客様が確認できるメリットがある。ただ、、、

 もし、一覧表示で見たときに「商品が置かれている画像だけが並んでいて、どう思いますか?」と。そして、こう続けるのである。

 「私なら、店頭でもし商品が気になれば、手にとって触るし、試着もします。」

 つまり、デジタルで不安を解消するというのは、自分自身が日々感じているリアルの視点でそれを補完していくということなのだ。それによって、彼女の言う“お客さま目線”を実践している。

2.スタイリングとフォトログでは求められていることが違う

 具体的にその内容を見て行くとしよう。下記は「スタイリング」に関する写真である。商品を選ぶと一緒に、そのスタイリングが掲載されるようになっている。画面上では入っていないが下にスクロールすると、先ほどの「フォトログ」も出てくる。

 彼女曰く、「スタイリング」というのは、このTシャツなら、「こういう風に着回しが効くんだな」という段階で見るのだと説明する。そこから、その「Tシャツ」自体に関心を持つようになって、調べるのが「フォトログ」だと。そこで、改めて「お客様はどういう行動をしますか?」と問いかけるのである。

 そこで先ほどの言葉に戻ってくる。「私なら、気になれば、試着します」と。

 僕がうなづくと、「私の場合は、試着すると、サイズ感とかが気になるんです。そうしたら、その段階ではその商品にフォーカスした写真が見たくなるはずなんです」。そう言って、その日、着ていた上着をHeg.ちゃんは軽く脱いでみせた。そして、こう続けた。

 「だからこうやって『フォトログ』ではそのTシャツを脱いで、そのTシャツ自体の使用感を見せてあげることを大事にしているんです」。一応、彼女の言うイメージが伝わりやすいように、僕がサイトからとってきたのが下の写真。Heg.ちゃんは確かに、このパーカーでもそれ自体の良さを伝えることに終始している。

3.お客様を知り、そこで必要なことを発信に活かした

 だから、ネットでも、リアルとは違った広がりをもたらし、さらには自分の可能性を伸ばすことができるようになるというわけだ。

 先ほど、彼女が最初に着任したのは二子玉川の店舗だと触れた。「いつも見ています」と言われるようになって、ファンができたことを書いた。だが、それより寧ろ僕は、彼女はそのふれあいを通して、別のお客さまの課題解決につなげようとした点に注目すべきだと思う。

 そうやって、お客様を思い浮かべるほど、サイト内で何を伝えればいいのかと考えるわけだ。それを反映していくほど、より多くのお客様の不安を取り除いて、安心して購入してもらえる。個々の接客で顔馴染みが増えるであるとか、自分の商品を買ってもらえる。それだけではなく、自分の発信につなげて、デジタル上での課題解決へと進化させた点が素晴らしい。

 だから、今や彼女が販売員に教える機会も増えた。ただ、そこで感じるのは指標が数字しかないので、そこの課題を解決すべきであることも示唆した。つまり、昨今、デジタル接客が重んじられるほど、そのお気に入りの数や、PV数が評価対象になる。その為に、売れる商品を優先してピックアップして、そこにタグ付けして紹介する向きもなくはない。だから、マインドだと。お客様の不安を取り除くという視点で、各々考えることの重要性を口にするわけだ。

4.テクニックではなくマインド

 彼女の言葉を借りれば「テクニックではなく、マインド」である。そう思うと、まだまだやれることがある。例えば、まだ写真が充実していない指輪などで、その力試しができると。なぜなら、ビームスのオンラインストアにおいて、指輪をコーディネイトや着用シーンで見せている画像がメインページになっていることは少ない。

 この商品に対して不安に思っているお客様がいるだろうと、自身の想像力を働かせて、撮影すれば、下手に売れ筋の商品を紹介するよりも、その人自体のマインドを鍛えることができるはずだと言うのである。

 テクニックではないお客様に伝わる本質を考えていく環境を、ビームス自体が醸成している。だから、結果を出したのだろうし、それを育む環境がこの会社にはあり、それをデジタルにも活かそうと考えた。彼女の言葉を聞く限り、その戦略が的を得ていたのは間違いないだろう。

5.リアルで築いた接客をより文化として根ざすデジタル化

 そしてHeg.ちゃんは表面的な接客ではなく、真にお客様の立場を慮る。そこにある不安を取り除く、彼女なりの“お客様目線”で、今や不得意だったオンラインストアで成果を出した。それは、随所に活きるのだ。実は、冒頭に話した「スタッフ・オブ・ザ・イヤー」の第一次審査で、ライブ配信があったが、そこが、初めてのトライだったと言う。

 それでも審査員から良いと言わしめたのはビームスに根付く接客の文化が活かされたから、というわけだ。彼女の性格もあるけど、数多くの接客を通して、多くのお客様の不安と向き合い、その解決策が頭にあったわけだ。だから、サッと、いつでもそれが導きだされる。ここさえ掴めば、何がツールとして使われようと、ブレずに強いというわけだ。

 だから、冒頭に書かせてもらった次第だ。「それは、仲良くなることでも、商品を売り込むことでもない」と。それぞれ、接客の上での大事な要素だけど、そこだけではない。もっと別のところにあるというわけだ。お客様の不安を取り除くために、自らがそのお客様の顔を浮かべて、行動に移せるそのマインドである。まだまだ接客の果たす役割は果たせていない。これからがもっと楽しみだ。それをビームスの販売員、Heg.ちゃんから教わったのである。グッジョブ、Heg.ちゃん。

 今日はこの辺で。

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