fracora お客がお客を引き寄せる “ライブコマース”に見た美容の未来

「あ、こっちです!」導かれて行った先に、ライブ配信をする「すーさん」と「ゴトちゃん」がいた。「誰?」そう思う人もいる(僕もそう)だろう。だが「Fracora(フラコラ)」というブランドのファンにはお馴染み。その場所は、協和という会社のオフィスの一角。一見地味な撮影現場であるが、これこそが美容商材で新たな金脈を当てた現場である。
fracora ライブコマースで見えた美容の未来
1.社内の一角、密かなる熱狂
金脈って大袈裟な。そういう人もいると思う。ただ、それだけデジタルの活用方法はまだまだ、どの企業も手探り。まだその答えがないことの裏返しである。あえて、金脈という言い方をしたのは、そういう理由からだ。
このライブ配信は、横でPCを広げたり、打ち合わせをしている真横で撮影されている。「すーさん」と「ゴトちゃん」も社員で、タレントどころか、他の業務と兼務している。必要最小限の照明に囲まれて、スマホで撮影している様子を見る限り、画期的な雰囲気はそこにはない(失礼)。

しかし、今や遅しと多くの彼らのファンが、確実にこのライブの時を待ち望んでいるのだ。
2.徐々にウェブシフトする中での挑戦
「協和」という会社は20年前、コラーゲンドリンクのヒットをきっかけに、美容における存在感を確立した。美容に関するサプリメントやアンチエイジングの美容液など、美に関する全般を扱う。
「Fracora」というのはそのブランド。メーカーとしての側面を持ちつつ、自社ECサイトも運営。通販を通してお客様との接点を重んじてきた。そもそも2年前まではテレビCMをメインに据えていたが、ウェブ広告に切り替えた。それと共に、ウェブ広告との連動を果たして、より成果を出そうという流れもあって、始めたのが「ライブ配信」である。
3.ライブコマースの使い方
「ライブ配信」と聞くと、少し前なら、中国の事例を思い浮かべるだろう。インフルエンサーがその影響力を駆使して1時間で何億というような売り上げを記録したといった具合だ。逆にいうとそれは一側面でしかなく、他の売り方もあるはず。なのに、企業側がまだ見つけきれていなかったというのが正しい。
その意味で、彼らの場合、派手さはないけど、このライブ配信で得た信用は大きい。小売店のスタッフのようにして、お客様にダイレクトに語りかける。そして、メーカーとしての側面を活かして、専門的な要素にも丁寧に答えていく。だから、信用が増すのは自然な流れであり、自らの強みを発揮する機会となった。
基本的には週2回、火曜夜・木曜午後一の配信である。告知は、プッシュ通知などを通して行い、自社ECサイト内でも配信時は、ポップアップで表示される。ライブ配信中は、その画面上で商品名と写真が簡単に紹介されている。だから、タップするとその自社ECサイトへと飛ぶ仕様になっていて、臨場感を逃さず、購入へと至るわけである。
美容とデジタルとの親和性
1.ライブ配信は美容の信用を高める
まだまだ、ライブコマースには成功の方程式が見えないけれど、少なくとも彼らの動きを見ていると、美容商材においては極めて親和性が高いことが窺えた。
考えてみれば、質問の多いジャンルだ。配信の前後で同社広報の神谷尚江さんに、最近ヒットした商品について聞くと「HITOKAN-ヒト幹細胞培養エキス原液LP」を紹介してくれた。

年齢を重ねるほど、ハリが低下し、くすみなども出てくる。そこで機能するのがヒト幹細胞培養エキス。コラーゲンやヒアルロン酸など、美容成分が数多く含まれていて実感を伴う。商品と合わせてスキンケアをすることで、食い止めようというわけだ。
このヒト幹細胞コスメを他社に先駆け、商品化に漕ぎ着けたのが同社。だから「HITOKAN」シリーズで累計65万個、販売している。
2.きめ細やかな商品ゆえのデメリット
とはいえ、ショールームへ行き、ギョとしたのは似たような形状のパッケージが多いわけだ。

「うーん、これじゃどれがいいのか。そう頭を悩ませる人がいてもおかしくないですよね?」思わず、神谷さんに伝えるわけだが、「まさにそこですよ!」と言われてハッとした。
つまり、企業としては、より多くのお客様にその効果を実感してもらえるように、バリエーション豊富に商品を用意するわけだ。それぞれにある細かな悩みに的確に応じて、成分を考慮して、実感の度合いを高めるのだから、それはそれで正しい。
3.デメリットはライブ配信でプラスに
ただ、美容液をつけるユーザーにとっては、自分の悩みが何に起因していて、何をすれば良いのかが分かりづらい。だから、専門家の声も聞き入れながら、その悩みを相談していくことで、相応しい商品が見えてくる。

そこに合致したのがライブコマースだったというわけだ。今まで培ってきたきめ細やかな対応を意識したあらゆる切り口の商品ラインナップが、なぜ存在し、お客様に受け入れられているのかを、お客様との双方向のやりとりを通して、視聴者の皆が実感できるわけである。
4.オープンになって生産性が向上
そこに加えて、今までであれば一人一人にその説明をしていた。しかし、それがオープンになれば、同じ悩みを抱えているユーザーに対して答えていることになる。だから、個々の課題解決が自動化されている。効率よく売上に繋げる要素に、ライブコマースは特に、美容商材では直結していることが証明された。会社側もその見る目が変わったといって良い。
特に、面白いのは、ライブコマース経由の売上のうち、ライブ配信中の売上は4割。つまり、残りの6割はアーカイブ経由で売り上げているのである。自社ECサイトに埋め込むことで、商品自体の訴求力も高まって、成果が倍化しているわけである。これで、どれだけ問い合わせの数を減らし、離脱を防いでいるか。それを思えば、そのライブ配信のもたらす意味を更に実感できるだろう。
5.定着も早かったライブコマース
新しいサービスというのは定着するまでそれなりの日時を要するもの。だが、相性の良さはここにも現れていて、彼らの場合、わずか半年ほどで、視聴者数は13倍。購入者は14倍という具合。
そう考えると、美容系の商材を扱う企業においては、生産性を高める要素として、ライブ配信の活用は「アリ」ということが証明された。美容商材は特に、表記面で法律の制限がある。どんなにLPで表現しようにも、いかにそれが価値あるものであるかを表現するのかはこれまで悩ましく、頭を痛めていた要素である。
だから、大袈裟ではあるけど、美容商材において、金脈を掘り当てた。そう書かせてもらった。彼らにとっては今度は、ウェブ広告へシフトしている中で、このライブコマースを連携させながら、新規顧客にどう繋げられるかを意識しているのだという。
改めて、良い商品を作る企業は数あれど、商品の魅力に関して、どこまで訴求できているだろうか。まだまだ伝えきれていない要素というのはあるのではないか。それを発掘するための要因としてデジタルはしっかり機能しているのである。
今日はこの辺で。