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「スタッフ」により最大化され、「EC」で証明されたアテニアの化粧品 従来とは違うコスメ戦略に学ぶ 

 かつてほど、規模や、資本力がものを言う時代ではない。例えば、化粧品では、大手企業がそのブランド力を高め、その認知を背景に、大きくマーケットを取りに行く。それが、常識だったけれど、それだけではないのだ。COSME Week【東京】2024で、説明していたアテニアの化粧品の姿勢には、気づきが多い。ECをフックに、長いものに巻かれることなく、自分たちの目の行き届く中で、自分たちなりに成果につなげるものである。

従来とは異なる枠組みで見出す企業価値

1.この時代に活きたアテニアの姿勢

 何も、大手ブランドのやり方を否定しているわけでもない。ビジネスの構造が違うというわけで、それらのやり方は、今の時代においては、特に、その裾野は大きく伸ばせる。アテニア 事業戦略本部 本部長 春田 康児さんの話を聞いて、それを痛感した。

 そもそもアテニアはファンケルグループ。化粧品、健食、ファッションと展開を進めているが、9割の売上を占めるのが化粧品。貫く姿勢は、大手ブランドの品質を「手の届く価格で」提供することである。ただ、ここで言っているのは、何も「安く売れば良い」というわけではない。

 ここが最初のポイントだ。

2.ビジネスモデルを変えることでそれより安価に

 要するに、ビジネスモデルを変えることで、それらと同じ品質を手の届く価格で提供できないかを模索した。ブランドが有名たる所以を作り出しているのが巨額の広告費用であり、それを最大化する為に、卸先を広く拡大している。

 お客様は、周りが使っている安心感もあるし、そのブランド価値に魅せられた部分もある。結果、その提供される価値に見合った対価として、その価格を支払っているのである。これはこれでいいではないか。

 ただ一方で、アテニアはその品質をベンチマークしながら、同等もしくは、それ以上の価値のものを製造するよう心がけ、お客様に提供する。それができる理由は、研究から製造、そして販売までを一手に引き受け、構造的に中間マージンが生まれないようにしているからだ。

 その代わり、仕上がるその化粧品の品質には第三者機関を使って、消費者にブラインドテストをおこなう。そこで品質を担保した上で、広告投資を抑える。あとは例えば、直営店舗などで実感と共に伝えながら、地道にその対価に見合った価値をお客様に訴求し、理解のもと、裾野を広げてきたわけである。

 ただ、このビジネスモデルが今の潮流と相性が良く、ECの動きを通して、それらが最大化されたのは、彼らの話を聞く限り、事実である。

2.ECを味方につけて築いた最大化

 彼らが、外部EC(楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazon)に進出したのは、2019年。日は浅いけれど、2023年のモールでの実績(見込み)は2019年対比で7倍。その着眼点は見事に的中した。思うに、それは、それ以前に自社でECをやって、自分たちの姿勢を確立できていた部分が奏功している。それを示す春田さんの言葉が印象的だ。

 「昨年、1000万円の売上が1050万円になったとか、ROASが700%であるとか、そういう数字だけを信用することはしていません。誰に対してどの商品が売れているのか、その部分を追求しています」

 確かに数字で踊らされてしまう部分は多い。でも、彼らは外的要因に左右されない、自分たち自身の在るべき姿を捉えようとする。確かな思想と姿勢ゆえに、なしえる数字なのだ。

 自分たちのお客様が誰であるのか。そして、それに相応しい商品がどんな商品であり、そのための施策として何が必要か。また、どんなブランディングが必要なのか。そうやって、自分たちの価値を一体で見て、マーケティングを徹底してきた。

 売上、ROASも大事だけど、その部分を追い続けて、数字を考慮したことで、それは外部ECでも成果を出すに至った。売り先は異なりながら、追うべき本質は変わらなかったことは大きい。

3.大手にはないやり方ができる時代

 二つ目のポイントは、アテニアのこれまでの事業の仕組みによって、その功績がもたられた部分があるということ。要するに、流通構造が極めて大事だということだ。もしも彼らがメーカーでありながら、従来の企業のように問屋を経由して、商品を販売していたら、どうだったろう。

 おそらく、外部ECは成功しなかった。

 彼らは自らそれらの外部ECに出店(出品)している。しかし、もし卸をしていたなら、彼らの卸先の店舗が外部ECで販売することになる。すると、1個の売上に対しての彼らの粗利は低くなる。

 逆に言えば、この辺が、大手ブランドが入って来ずらい、差別化要因となって、長所となる。まさにこれこそが、今の潮流。たとえ、巨大な資本力がなくとも、マーケティングを重視し、お客様を的確に把握し、そのサイズでアプローチすることで、躍進できるのである。

 しかも、彼らが強調するのは、自社ECと外部ECとの間で、お客様の重複がわずか3%。要するに、棲み分けはできており、新規顧客の獲得に成功できたわけである。つまり、仕組みによって、その姿勢は貫かれ、本質的にお客様との距離感は、維持されたのだ。

 だから、自社ECも、外部ECのどちらがいいという議論は不毛。等しく大事なのであり、彼らの姿勢が一貫してブレていないから、成立する。ツールやシステムに左右されることなく、結果を出せたのは、それまで培った強みを最大化させるべく動いたからなのである。

自分たちの可能性をECでさらに伸ばす

1.スタッフの力がデジタル上で活きる

 そして次なる展望は、この本質があるから、自社ECを軸に組み立てられる。実績を伴っているから尚更だ。実際、売上の内訳でも、自社ECとモールを見ると8:2という状況。その上で、彼らが生かしたのは何か。元からあった資産を有効活用したのである。

 ずばり会社を支えてきたスタッフなのだ。

 ここからの説明は、通販営業本部ネットCRMG 黒 可奈実さんにバトンタッチ。スタッフの活躍の仕方を披露してくれた。その商品の性質上、悩みの多き顧客のニーズに応えること。それが彼らの使命である。「商品によってどう解決できるか」。スタッフはそこの部分で研究、製造、販売までどこかしらで関わりその専門的知見がある。だからスタッフ自身が投稿し、サイト上、コンテンツ化した。それも最近、2021年の取り組みである。

 とはいえ、そのスタッフの多くにデジタルの素養があったとは言えない。実際、最初は、取り組む人の数は少なくてわずか40%。しかし、若手を中心に投稿を開始し、それに実績が伴ってくると、自然と勉強会などを通して、ベテラン社員にも広がっていく。驚く勿れ、今では、そのコンテンツ制作に関わる社員は、全体の9割にも及ぶ。

 ゆえにコンテンツ数は、年間1000件以上を数え、それだけあれば、売上にも直結する。コンテンツ経由で売り上げた金額は、4億6500万円にも及ぶわけである。つまり、彼らは自らの価値を、自らで築いた。

2.スタッフ自体も変化し、サイトがさらに活気付く

 さらに、そのデジタルの知見は常に、PVや経由購入の数などで可視化されるから、ブラッシュアップされる。すると、本質的な部分に皆が気づき出す。

 単なる商品画像ではなく、各々の言葉を添えて、アップロードされるようになる。そして、お客様の反応の高まりと共に、スタッフ自身が全面に出てくる。使用感を自ら伝えることによる説得力は、彼らの差別化要因となったわけだ。

 相手が見えれば、ユーザー数も意図する通りに推移していく。明確なターゲット設定された商品とそれを熟知し、向き合うスタッフの価値。それらが一つになっていくわけだ。

 すると、コンテンツを作り出すスタッフも、テクニックというよりは、お客様との向き合い方が重んじられ、そこに実績が伴ってくる。だから、勉強会でもお客様対応の質の向上を語る中で、デジタルの話題が増え、その素養をつけて、リアルと一体で社内に浸透していく。

 最近、よく言われることだが、スタッフの顔が見え、関係を構築するECサイトは、軒並み、飛躍を遂げている。それをお客様と数字を通して向き合い、彼ら自身が気づいたことが大きいのではないか、

3.スタッフからスターが出始める

 そして、個々のスタッフ力がついた。それは、スタッフの個性を重んじ、その個性がどれだけ売上につながるかを示すツール「STAFF START」でも成果が発揮された。その実績の大きさは、同サービスに関連して開催された「STAFF OF THE YEAR 2023」のコスメ部門で表彰されたことでも明白だ。

 余談だが、「STAFF OF THE YEAR 2023」最優秀賞 ユナイテッドアローズ仲さんの記事を下記に載せておく。これで、何が言いたいかというと、それを見てもわかる通り、本来、同イベントはどちらかといえば、アパレル系を主体としているものなのだ。それもありながら、コスメで注目を浴びたことが、どれほどの価値を持ったものかがお分かりいただけるだろう。

参考:販売員として。母として。限りあるものへの挑戦だから美しく ユナイテッドアローズ 仲 希望さん

4.自らの価値を自らで拾い上げたものを最大化するEC

 繰り返すが、自らにある価値を最大化できる手段は何か。そう考えた先に、デジタルがあった。だから、語弊を恐れず言えば「ECは物売りではない」。

 自分たちのお客様が誰であるのか。そして、それに相応しい商品がどんな商品であり、そのための施策として何が必要か。また、どんなブランディングが必要なのか。そうやって、自分たちの価値を一体で見て、マーケティングを徹底してきたことが、彼らを強くした。ECで「売ろう」とするのではなく「自分たちを知ろうとした」功績なのだ。

 売ることを通して、生まれる顧客接点により、彼らがお客様に何が求められているのか。それを考えることで見えてくるのである。ECは、いわば、企業の向き合い方の成果を表す指標である。

 そして、自らの可能性は、結果、自らの中にある。それを効率化させるのがデジタルであることにすぎない。この順序を間違えないようにしたい。さらには、その取り組む過程に意味がある。自分たちの価値がどこにあり、どう訴求するかは個々の店次第なのだ。自分を知って、お客様に正しく価値を還元しようではないか。それが今の潮流だ。進もう、自分に自信を持って。

 今日はこの辺で。

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