受賞 BEAMSの Heg.さんが魅せたバランス感覚 STAFF OF THE YEAR 2022
さっぱりとして、飾らない雰囲気。何気なく接客のその様子を見ていて、確かに、Heg.さんのそれは際立っていたように思う。Heg.さんは、『STAFF OF THE YEAR 2022』において、グランプリを受賞したスタッフの中のスタッフである。
STAFF OF THE YEAR 2022とは?
『STAFF OF THE YEAR 2022』はオンライン接客の技術を競い、”令和のカリスマ店員”を決めるイベントと謳う。僕は、東京都内の会場で、ファイナリストとなったスタッフたちの接客を見ていた。
それを真剣にみつめていたのは、アンミカさん、橋本和恵さん、秋山恵倭子さん、大草直子さんといったファション関連の大御所たち。彼ら審査委員が、全国8万人の中から、勝ち抜いた16名のスタッフの中から、ベストオブベストを選んだというわけである。
接客の重要性が向上
そもそも、このようなイベントが行われる背景には、お店にとって今まで以上に、接客の重要性が高まっているからなのである。コロナ禍となり、外出自粛が余儀なくされる中で、ライブ配信を通して、いかにリアルと変わらぬ楽しく、そのシーンを作り出せるかが、キーファクターになっているからである。
同イベントを主催するバニッシュスタンダードはそのような時代の中で、自ら「STAFF START」というサービスを提供して、その重要性を説く。彼らの注目すべきところは、スタッフ一人一人の頑張りを、インセンティブとして反映できる仕組みを実装して、彼ら、彼女たちの士気を向上させたところにあると思う。
事実、これらが功を奏して、2021年1月から2021年12月の間に「STAFF START」で作成されたコンテンツを経由した流通総額は、1,380億円を達成したのである。まさにこのイベントは、そういう主役たちの才能を讃える場である。
接客はエンタメである
舞台上ではお笑い芸人で、相席スタートの山﨑ケイさん、スパイクの松浦志穂さん、小川暖奈さんがお客に扮して来店。スタッフは、ハンガーにかけられた洋服を素材にして、お客様が意図する洋服を導き出して、提案するというものである。(その他、いろいろな審査があったが、僕が伺ったのはこの審査であった。)
それぞれのファイナリストは勝ち残っただけあって、ノリが良かったり、話題が豊富であったり、気品が漂っていたり、個々に違った魅力を持っていて、そこには学びもあった。
「今日は雨でしたけど、、、」といった入店時の気遣いなど、人それぞれ、心を開く術は異なる。そこから、自然にお客様の好みやその着用するときのシチュエーションを上手に引き出すわけだ。それをヒントに然るべき洋服を手際よく、提案していく場面。人と人とが徐々に心を開いていく様は、見応えがあって、エンタメのようだ。
接客のレベル向上と環境の変化
審査委員のアンミカさんは、2年連続で務めている事から、間近で見て、レベルアップしていると讃えてみせた。また、そのファイナリストに男性がいることを指摘し、これからの時代にとって必要かつ、大事な変化と語った。接客をめぐる環境の変化を実感し、開かれた未来に思いを馳せたのである。受け身で商品を売れるのを待つのではなく、お客様との関係を構築する中で、顧客体験を深めて、購入されていくことの大切さを説いたのである。
さて、グランプリを受賞したHeg.さんは、「ビームス」恵比寿に勤めており、実は「STAFF START」経由でも651万円を売り上げている実力者である。それで、冒頭の「さっぱりとして、飾らない雰囲気」という言葉にたどり着くのであり、クールでキュートである。
僕は彼女においては手際の良さが印象に残っている。限られた時間で、必要な情報をコンパクトに聞き出し、あっという間にトップスから靴に至るまでコーディネートを指南し、会話に無駄がないと思った。
要は、何のために、スタッフが存在するのか。そのことを彼女なりに理解しているからこそのことではないか。そう僕は受け止めた。それによって、彼女のお客様と自分とのバランス感覚が冴え渡る。これであれば、イライラさせず、目的を果たせる。そつがなく、写真の通り、動きがあるけど大袈裟ではない。その受賞もうなづけるクオリティの高いものであった。
多くの心が動くスタート地点はスタッフにある
本当に、お客様の気持ちを掴まずしてニーズは見えてこないし、とはいえ、世間話していると、なかなか、その要望に応えるところまでいかない。つまり、その両者の距離感の難しさを感じるとともに、だからこそ、そこを上手に乗り越えてみせる、各自の個性が際立つ、魅力あふれた場であったと思う。
接客は店やブランドの未来を担う大事な才能であり、伸ばすべき価値である。以前、僕は、これからファッションブランドは芸能事務所のようになっていくのではないかと説明した。スタッフに発破をかけ、己の価値に気づかせる。お店は、スタッフにとって羽ばたける場所であり、会社は羽ばたくための行動を後押しするきっかけ作りをすることが大事だ。
接客への意識が高まった事で、ファッションそのもののフェーズが変わったように思う。リアルネットの垣根を超えて、お客様とスタッフが真につながり、今までより一層、多くの人の心が動くきっかけが生まれれば、と思う。
『STAFF OF THE YEAR 』はそこに寄与するイベントであり、業界の発展とともに、多くのスタッフのモチベーションを上げる契機となることを、切に祈りたい。それが、きっとスタッフにとっても、お店にとっても、企業として経営にもプラスに働くはずだから。
今日はこの辺で。