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コロナ禍 は“ふるさと納税”に何をもたらしたのか?

 通販サイト店長の方々と話していると最近「 ふるさと納税 」が伸びているようだと皆が口にするものだから、僕は、その真相を確かめてみたくなった。確かに コロナ禍 でネット通販の業績は聞くが、「 ふるさと納税 」に言及している人は少ない。そこで、株式会社さとふる取締役 兼 COO 青木大介さんに、その実態を聞かせてもらうことにしたのだ。

コロナ禍 ふるさと納税 成長の度合い

 ふるさと納税は、応援したい自治体に寄付ができる仕組みで、その寄付金は税金の還付・控除が受けられる。(控除の上限額の範囲内で)寄付すると、2,000円を超える部分について税金が控除されるわけだ。多くはネットを活用して、通販のようにやり取りするので、コロナ禍の巣ごもり需要もあって追い風なはずである。

 昨年までの振り返りをしてみると、これについて、総務省が発表しており、それによれば、ふるさと納税の寄付額は2018年度で5,127億円、2019年度で4,875億円。下記の図を見ればわかりやすいと思う。

出典:令和2年8月5日 総務省『ふるさと納税に関する現況調査結果』

 ちなみに、一昨年が少し減少に転じているのは、国が新基準を通知し、過度な返礼品の見直しを求めた事による影響。この頃、返礼品を強調して寄付金の募集をエスカレートさせ、自治体によってはそのやり方に、その節度を欠いた部分もなくはなくて、それが世間を騒がせたのは記憶に新しい。

 そして、右肩上がりは、この制度の特性上、寄付者にも税金控除と地方の返礼品が受け取れることもあることから、毎年同じ時期になると継続して注文するお客様も多いので、継続性が高くなりがちで、それが寄与している部分もありそうだ。

4月の申し込み数が3倍の事業者も

 それではコロナ禍にあって2020年度はどうなのか?

青木さんによれば「ふるさと納税」の寄付額は6,000億円を突破するのではないかと推測している。それは、自らの業績に照らし合わせた上で語ったもので、勢いは実感しているようだ。2019年度が4,875億円であるから、もし6,000億円だとすると、その成長の幅は大きい。

 余談にはなるが、返礼品が伴う寄付の場合、この金額の3割程度は自治体から生産者に支払われているから、約2000億円くらいは売買が発生している可能性があると考えられ、これが地域の事業者を相当救う要因になったのは事実で間違いない。

 例えば、山香(やまこう)という企業では沖縄県で地場産品の卸売や、オリジナル商品の製造等を行っているが、土産物店で販売する観光客向けの商品が多く、観光客が激減したことで、在庫を多く抱える事となった。そこで、ふるさと納税やネット通販が会社を支える事となり、「さとふる」を通じた返礼品の申し込み数は前年と比べ、4月は約3倍に増えたというのだ。

後発でふるさと納税を開始した企業との差は?

 では今回取材した「さとふる」の伸びはどうなのだろう。4月〜11月期で考えると昨年対比で1.5倍程度だという。12月も過去最高の数字だが、何より緊急事態宣言発令の4〜6月期での成長が顕著。特に4月は前年同月比 1.8倍以上、増加したようだ。

 実はもう一つ聞いてみたことがあって、それはZホールディングスの決算発表でのこんな発言を聞いて思ったことである。「弊社はふるさと納税を始めて日が浅いが、長い企業ほどその成果はあったものと思われる」。要は一日の長ということだが、「では、長くやっている企業がどの部分において、差別化できているから成果に繋げられているのだろう」と僕は思ったのだ。

垂直型のビジネスモデルで着実に成長

 すると、青木さんは思いがけず創業時からこだわり続けている点に触れて話してくれて、僕が「さとふる」に最初に興味を抱くきっかけを思い出した。

さとふる青木さん
さとふる青木さん

 それは配送業者との連携である。生産者が、受注から出荷までの手間をかけることなく、生産へ打ち込めるように「さとふる」は直接、配送業者に依頼を出している。すると、生産者は極論、生産物をその受注分だけ家の前に用意していれば、あとはそれを運んでもらえるので、誰でもこのふるさと納税にトライできるのだ。僕が青木さんと出会った当初、これを自ら図で書き記して説明してくれたのが懐かしいし、その熱意に打たれたのも事実だ。

 「当初、ふるさと納税は、わかりづらかった部分がありました。また、特産品の事業者も、寄付が入った後、全部自分で受注の管理とか、配送の管理とか問い合わせが入ったらそれも対応しなければならない。それら参加者全員のハードルを下げたいというのがあったのです」と話す今の彼の言葉でもよくわかる。

 以前からここに向き合い、仕組みから考えてやっただけに、そこに至るまでの試行錯誤で得られた知見こそが後発組にはない強みとなっている。それが生産者の数を増やしラインナップに繋がり、利用者の更なる注文の機会を触発して、結果を出している。なるほど。ふるさと納税の実態は「こうなのか」と。

これからの「ふるさと納税」は?

 最後に、成長しているマーケット故に色々な企業が参入してきていて、過去は良いとして、未来はどう見据えているのか、気になった。すると、そこは同社らしく垂直型のビジネスモデルの徹底を口にしたのである。

 つまり物流環境、インフラへの投資である。ふるさと納税に多い食品系においては新鮮な状態で届け、かつ日にち指定などを徹底したいところだし、比較的コストもかかりやすいから、それも軽減させたい。でも、冷蔵冷凍は割高で配送業者が複数に渡る事で、サービスが混在し、生産性が高いとは言えない。

 そこで、注文の多い首都圏に各地からチャーター便で集めて、保管した上で効率を考え出荷をしていくことを思案している。上は運用している倉庫の写真であり、まだ始めたばかりだが、2020年11月末までに約3万個を出荷済だという。

 そしてこの取り組みは思わぬ副産物も作ってくれて、それ自体が生産者に歓迎されたのである。実は、生産物を1箇所にまとめて、伝票を貼り、それをまた保管するという「荷出し」に関わる工程が、思う以上に、生産者に負担をかけていたのだ。

荷出し

 だから、この倉庫業務をさとふるが担うことは、それが削減されたことで、大いに生産者側の負担軽減につながって、まわりまわって、彼らがいう“参加しやすい”ふるさと納税はここにも具現化されることになりそうだ。

 いずれにせよ「ふるさと納税」はこれまでの成長をフックにして、そのインフラも盤石なものへと変わり、ビジネスとしても進化している。生産者にも注文者にも利便性の高いものへと成長して、また先ほどの制度の特性も鑑みれば、継続する度合いも大きいので、アフターコロナにおいても、必ずや成長はまだ見込めるだろう。

 できることなら、ふるさと納税が、地方経済の発展、いやそれどころか、ニッポンの底力を今こそ、発揮するきっかけにしたいものである。ものづくりと生産者を心から応援したい一人として切に祈る。

 今日はこの辺で。

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