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“安さで競わない” 通販物流とは 専門家と語り合うホンネ

「安い物流会社ないですかね?」通販企業では、案外聞かれるフレーズである。ただ、安さだけで物流を判断するなんて、自ら通販の価値を下げている気がする。先日、僕は通販の個性を物流に生かすべきだという説明をした。例としてオルビス通販の現場に潜入し、記事も作成した。今回は、その問題提起に対して、物流の専門家に応えてもらうべく「あるべき 通販物流とは 」をテーマに語ってもらった。

真に必要な 通販物流とは

 今回、ご協力いただいた“チームメイト”はマガシーク株式会社 フルフィルメント本部 本部長 北川 誠さん、株式会社リンクス 代表取締役 小橋 重信さん、株式会社AMS 取締役 古田俊雄さん、そしてオルビスの物流を担う株式会社流通サービス 未来EC推進Team プロデューサー 長谷川雅之さんである。長谷川さんに至っては、その現場をこの御三方に案内してもらい、僕としては三人にそこでの感想も含めて、先ほどの件について話してもらおうと考えたのだ。

 また、マガシーク北川さんに来てもらった理由は、同社が岐阜のジーエフという物流会社と強い連携を示して、生産性を高めた話を聞いたからだ。オープンブックというやり方を導入、要は物流の原価まで開示しているほどの信頼関係が構築されている。基礎化粧品のオルビスとジャンルは違えど、物流を味方につけて通販の価値を上げている企業だから、聞いてみたかった。

 さて、専門家3人が見学した、オルビス通販と物流の様子は、少しだけ下の動画でまとめている。その中身は、この記事にもある通り、既存のAGVでは棚移動させる用途が多い中、オーダーごとにAGVを稼働させて、一台ずつ一人分の商品を集めてくる仕様に変えているというもの。

 これはオルビス通販が「1受注に対し平均8〜10点のピックが必要」という基礎化粧品ブランド故の特徴や商品が小さいという特性を反映して、物流サイドが考慮したものである。実に、処理能力は導入前1800件/時に対し、導入後は2400件/時と約30%の大幅増となり、結果、ブランド価値の向上に寄与した格好だ。

参考記事:流通サービス 入魂 オルビス 通販で生きる 唯一無二の AGV

ロボット革命の先の変化球

流通サービスとオルビス

 早速、見学を終えて、リンクス小橋さんは「ここ数年で、物流にはロボットのようなものが色々出てきている。それでも革新的で満足していた部分もあったと思う。ただ。このオルビス倉庫での『AGV』は、それに加えて“ひねり技”があって、独創的だ」と表現した。

 僕も知らなかったのだが、物流のロボットには大きく分けて二タイプあるようで一つは『GTP(Goods to person)』と言う。物流センターで貨物をピッキングする作業者や棚入れする場所まで、荷物を運んでくるタイプのロボットである。

 もう一つは『AMR』と言う。ロボット自体が走行中の人や障害物などを避けて、付属のタブレットなどの指示に従って、自由自在に工場内を移動して「人と協働する」タイプである。

 小橋さん曰く、この現場で見たものが、このどちらでもないから“ひねり技”と表現したようだ。

参考(小橋さんへの過去の取材記事):ZARA を世界一へ導う 戦略 高い 利益率 の秘訣

 また、AMSの古田さんは「ここの(導入した)部分は、業務フローで言えば、それまでの間で、そのシステムが既に確立されているもの。それをもう一度、作り替えたというところに凄みがあって、それをやってくれるパートナーさんが凄いんだろうな」と裏方の機材を提供する企業の協力体制に注目した。

参考(古田さんへの過去の取材記事):小売店 の デジタルシフト その前に “在庫”で生産性を高めよ

通販物流とは 縁の下の力持ち の存在が大きい

 これに対し流通サービスの長谷川さんは「(このAGVを提案してくれた)椿本チエインさんは、長年付き合いがあったので、言いたいことが言い合える関係性。そこにたまたま『中国にこういうAGVがある』と紹介されて、AGVを作っている会社もそういうチャレンジに乗りたいといってくれた」と説明した。

 すると、小橋さんはそれ自体が珍しいとして「ロボットだから、これくらいはできるでしょと高を括って、既存にあるロボットを導入しても、全く動いていなくて使い物にならないという企業も少なくない」と漏らした。

 古田さんが気になって「それは何故なのですかね?」と更に尋ねると「それは『ロボット』=『業務が早くなる』ということだけで入れている。ちゃんと業務設計をしていない。そもそもどういう目的かというのを理解した上で使わないと、いくらロボットと言っても“魔法の杖”ではないだから、うまくいかないのだと思う」と答えた。

通販物流とは チャレンジでもある

 ただ、話を聞いていて、まだこれらの機械は実証されていない部分もあり、どうしてもそこには企業側のチャレンジが必要なのかもと思ったのは事実である。というのも、上で書いた『AMR』にしてもどれだけの実績が出るのか、世界でも実績がないのだという。

 マガシーク北川さんはだから、改めて「ロボットの業務が何にでも通用するなんてことは絶対にない。だから自分たちの業務を知り尽くして、これだったら、こういう風に、と色々なパターンに合わせて現状に対応しつつ、それをこういう風にして変えたら良くなるだろうと未来を見据えることがすごく大事」と述べ、業務を知り尽くしていることの重要性を説いた。

 つまり、物流側がオルビスの業務を知り尽くしていて、長谷川さんの言葉を借りれば、オルビス自体も最近社長が変わって、チャレンジ精神に溢れているからそれを後押しし、先ほどの関連会社の長い付き合いとそこから生まれる協力関係が、この行動と結果を導き出したのだと言える。

通販の業務を知り尽くして 通販物流の本質がある

 また、AMS古田さんは違う視点でこうも話している。「本来、物流の倉庫の外にある業務が物流業務の生産性に非常に影響を及ぼす。現状、物流会社はそこまで入れこめない。だから投資もできず、そこまでチャレンジできない」と投資がしづらい今の業界の課題を指し示しつつ、この案件はそこを乗り越えていることに評価を示した。

 その投資と実現性の意味では「マガシーク」も通販と物流の関係性がうまくいっている。その転換期はいつだったのだろう。それについて問われると、自らの場合を振り返り、北川さんはこう応えた。

「以前は岐阜に物流を任せていたが、こっちに移ってきた時が転換期。その時からはマガシークが自分で借りて倉庫内での仕組みも、マテリアルハンドリングも全部、自分たちでやろうということになった。関東に来たことによって自分たちの部署がそこに常設されるようになって全てが変わった」と。

 また「常駐するようになって自分たちで色々やってみたのがよかった。ピッキングや出荷など全部自分たちでやってみると自然と『これ変えましょうよ』という具合に変化していった」とその心境の変化を述べた。

 語弊があるかもしれないが「本当の意味」で両者は理解しあえていなかったのが、移転を契機に自分で体験することで、自ら投資する意味を実感して、その荷主側の変化が、物流の現場の変化を促していったというわけだ。

物流に広く委ねつつも、深く関係性を持つ

 「マガシークの場合、ファッションなので撮影や採寸から始めるのだが、自分たちで物流会社の方々に、システムを提供しておきながら、実際、自分たちでやってみると、なにこれ?みたいなことはあった」と正直な話を吐露(苦笑)。それ以降はスクラッチでやるようになって、一気に生産性がよくなったという。やっぱり通販企業は物流の現実感を理解し切れないという側面もあるから、なおのこと、お互いが知り合うことを意識することは大事なのではないか。

 AMS古田さんは「マガシークさんはその物流会社に委託している範囲が大きくて、そこから自ら入り込んで率先して改善した。だからこそ、対通販においては、物流会社が自ら手を施すよりも、中身が改善されたということだろう」と指摘すると、北川さんもうなづいた。そして、「マガシーク側でお金を出しているし、それが自分たちの利益に直結するので、できるのだと思う」と付け加えた。

目先の判断で生産性を失わないように

 通販企業はその生産性を追うあまり、コンペなどを行い、すぐに物流会社を変えてしまうこともあるし、それ以前に、売上に夢中で、物流に対しての理解が及ばない場合もなくはない。それは目先の話を追うから生まれる現象であって、長く関係性を築き、お互いを知り尽くすことの意味もあるように思う。

 今一度、これからを想うなら立ち止まって考えてみよう。古田さんの話にもあったように、物流における生産性を高める要素は、むしろ物流の倉庫の外にあり、鍵を握っているのは通販企業の中身である。通販企業が今こそ、長い関係性を見据えて、物流会社にその中身をオープンにして歩み寄り、現実に即した環境を整えることの大事さを思う。それが、思い切ったチャレンジを生むし、投資ができる根拠となって、業績にプラスに働く。だから、通販の個性を物流に生かすべきだというのを、僕は信じているのだ。

 今日はこの辺で。

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