送料無料ラインの必要性 三木谷氏の考えと未来 Rakuten conference 2020
楽天 が現在、東京・高輪のグランドプリンスホテル新高輪で「楽天 カンファレンス2020 」を開催中。つい先ほど、毎年恒例、代表取締役会長 三木谷浩史さんが講演を行った。
これまでの楽天が果たした役割、振り返り
1.安心安全のショッピング
この講演で、自らのビジョンを示すことが多かった。だが、今回は全体的に過去の施策を振り返る内容がメイン。これまで果たしてきた役目は何かを振り返ったわけだ。未来の施策も、プラットフォーマーとしての立場を理解をしてもらうことが念頭にあったのではないかと思われる。
今では楽天市場に出店する店舗は5万店舗。しかし、三木谷さんがいわく、その中には様々な店舗が存在することを言及。その為に、これまで楽天が主導してその是正をしていく必要性があったと説く。
2013年において安心できるサービス構築。「不適切商品通報機能」や「二重価格表示機能」、「品質向上委員会の発足」、「銀行振込口座を楽天銀行専用口座に変更」などの取り組みを例としてあげた。
2.身を切りポイントが循環するように働きかけ
また、その一方で、品質レベルを向上させるために、SPUを設定。楽天が常に負担して、ユーザーに還元していくための取り組みをしてきた。その一方で、違反点数制度の導入などを行った。
それも違反点数制度に罰則規定がないと効果をなさないという点から実施をしたものである。実際、これをやったことにより、その違反店舗が73%減少したと話す。
三木谷さんの姿勢で印象的だったのは、そういう店舗を「敵」とあえて位置付けた事。この「楽天カンファレンス」に集まる店舗に強く訴えかけた。
「売り上げをあげたいと思う気持ちは理解できる。だが、そういう違反店舗などを是正して、かつ利用者の利便性を向上させない限りは、楽天市場全体の売上は上げられない」。そう言って、これからの施策にも理解を求めたというわけだ。
3.海外で許す某社の躍進、日本では許さず!?
その上で、三木谷さんは海外の事例をあげた。
「海外のショッピングの現状に目を向けてみましょう。すると、アメリカ市場は全体としては盛況です。でも、実態は、リアルの店舗はA社(Amazon)の伸びと比例して、衰退傾向にある。日本でもこのようなことになってはいけない。根本的に、日本はそうならないうちに、楽天である意味、まとまる機会を作り、対抗しうるだけの結果を出していかないといけない。そこでは理解ある店舗さんである皆さんの協力が必要」と語気を強めた。
押し寄せる波に戦える一丸となった強さが必要
1.送料無料ラインは将来、お店にとって利点をもたらす
この流れの中で、送料無料ライン3980円の話題についても触れたわけだ。
3980円を超える商品に関しては一律、送料を無料にするという施策。これには賛否が分かれている。
ただ、彼はその必要性を強く述べる。というのも、一見、商品単価を安く見せる。でもそこで送料分の金額を足すと、他よりも圧倒的に金額が高くなる。
そんな事例があることを指摘。「送料分でお金儲けをしようとする」。
そういう店舗の姿勢に疑問を投げかけた。信用とともに、お客様の利便性も向上することが大事だと。、これは、流通総額をあと10%上げるために必要な施策と語る。
その一方、楽天ができることとして、自ら2000億円投資する。具体的には、送料分のコストは自ら物流を手掛けることで軽減。それらに相当するのが、Rakuten Super ExpressやRakuten Super Logisticsなど。身を切る物流改革で、店に極力、寄り添うことを強調したのだ。
2.楽天との距離が少し遠く遠く
この送料無料ラインに関しては、賛否が分かれるところ。これに対抗する勢力もある。楽天が正しいというつもりも、店舗が正しいというつもりはさらさらない。どちらの肩を持つつもりも全くない。
この背景は根が深いと思う。
実際、店舗と話していると、それこそ、レジェンド店舗は三木谷さんとのエピソードを語る。彼自身が、営業に来たり、対話していた経験がある。その時は一心同体だったと思う。つまり、楽天市場の成長は、本来、店と共にあったわけだ。
その印象を抱きながら、店舗は昔ながらのやり方をしていく。その一方、楽天は視野は広く、グローバルに成長を急ぐ。決して蔑ろにしていたわけではない。でも、店舗からすれば、ECは、事業の中の一つでしかないように感じた部分もあったのではないか。
瞬く間に、経済圏を作って、先へ先へと拡大を繰り返す。気がつけば、その両者に溝ができていた。そんなことがありそうに思えていて、それが、そもそもの反省点ではないかな。そう思ったりもする。
いつだって三木谷流で議論が生まれ、賛否分かれた
1.常に新たな一手に店は付いていき今がある
ただ、だからこそここまでやれてきた。今、もし楽天の出店店舗に求められることがあるとすれば、それはやはりECコンサルと店舗の関係性の改善だろう。
売り上げではなく、粗利を含めて店舗の未来をECCが考えていくこと。楽天は店の成長なくして、自らの成長はない。広告を提案して、売り上げを上げるだけではなく、違ったアプローチが求められている。成長している自分たちのリソースをどう活用すれば、コストを抑えて、売り上げを上げられるか。
その意味では、店もまた、浸っている場合ではない。変わらなければならないのである。今、必要なのは、変化する楽天に合わせて、自分たちも然るべき変化をしていくことだろう。それは無理に、楽天との関係性で答えを出さなくてもいいだろう。極論、楽天に沿わないという選択肢もなくはないはずだ。
2.店は今のままでいいのか?変貌の時は迫る!?
繰り返すが、三木谷さんの言いたいことはわかった。けれど、ただ、その考えが正しいか、どうか。それは、今回も過去と同様、各々の店に委ねられている。
自らのビジネスを振り返り、粗利を考え、未来への継続顧客を考えたときに、どうか。
今回の送料無料ラインしかり、ビジネスとして成立しなければ、退店すればよい。対抗だけしたところで意味はない。もちろん、意見し、落とし所を探ることは重要だ。今求められているのは新しい店舗のあるべき姿だ。
それは語り尽くすほど、語らないといけないのだと思う。両者の歩み寄りが今よりもっと必要なのだと思う。
本当に時代は刻一刻と変わっている。20年前とまるで違う。今こそ、店がどう変わるか。自分たちが未来に向けて、どうあるのかを自分たち自身で考える時に来ているように思うのだ。
今日はこの辺で。