楽天 の店舗が声高らかに「 楽天市場出店者 友の会 」設立
僕は今、とある記者会見にいる。この会見は 楽天 に関してのものでありながら、その席上、マイクを握って語ったのは楽天株式会社の人間ではない。「楽天市場出店者 友の会」に関する記者会見と銘打ったこの記者会見は、楽天の出店店舗が自らお金を集めて、開催したものだった。「 楽天市場出店者 友の会 」(まだ設立準備中)は、楽天店舗が自ら呼びかけあい、自発的に生まれたもの。
楽天市場出店者 友の会 とは何か?
楽天市場出店者 友の会 の主力メンバーは、DIY FACTORY ONLINE SHOP(大阪) 山田 岳人さん、新潟の日本酒と甘酒 越後銘門酒会(新潟) 原 和正さん、森水木のラン屋さん(熊本) 宮川 将人さん、SILVER BULLET(東京) 高木 孝さんら12名。この会見には彼らが揃って、マイクを握ったのであった。
1.自分達の意見も主張するべき時
彼らが会見で口にしたのは、「我々の仲間には家族でやっている零細企業も少なくない。連日、メディアで述べられている、楽天への報道が、自分たちの家族やお店のスタッフに心配を与えている。僕らはその状況に対して、何とか打破したい」ということ。つまり、経営者としての切実な想いであった。
だから誰から言われるわけでもなく、出店店舗同士は「これはちゃんと話をしたほうがいいよね?」という声のもと、山田さんらが集まり、楽天の会長兼社長三木谷浩史さんとの対話の場も設定したと説明している。
彼らは、三木谷さんとの面談で「今の楽天には店舗が不在な側面もある」と正直に言及し「本来、楽天市場と店舗とが共に対等な立場で議論するべきで、私たちの声にも耳を傾け、行動に示して欲しい」と迫ったという。
彼らはその対話の頻度を増加させることを求める一方でこの「楽天市場出店者 友の会」を立ち上げ、自分達が参加店舗の声を吸い上げて、様々な提案をしていき、健全な発展に努めるべきであるとした。
そして、具体的には、この会が主導して、楽天幹部とのコミュニケーションを強化すること、地方所在の参加店舗の連携強化、地方創生活動への参画、更に、店舗に向けた勉強会の実施も宣言した。
2.送料込みラインについても賛成
思えば、公正取引委員会が楽天に対して「送料込みライン」で緊急停止命令をしたのは、つい先日のこと。これについても、彼らは「楽天自身も自ら、他のプラットフォームと戦わなければいけない以上、お客様への分かりやすさは必要」に対しては、一定の理解を示し、賛成の意を明らかにした。
一方で、昨今のコロナウイルスの件で物流面での悩みを明かし、現場での作業が多い物流ではリモートコントロールにも限界があり、現に学校が休みとなった事で出社できないなどの問題も発生していることを伝えた。
そのために「送料込みライン」の開始時期の延期やサポートできる支援プログラムを用意できないか、と具体的な提案を添えて説明したそうだ。
彼らは、参加店舗数の目標を聞かれると、数には拘らないとしながらも、5000店舗程度の加盟は実現させたいとしている。この内訳は主に楽天のRネーションズという、店舗同士で教え合うコミュニティを念頭に、楽天市場での成長意欲の高い店舗から、呼び掛けていくとした。
3.変わる為には決断が伴い、そこには賛否が生まれる
僕はいつも言っていることだけど、別に楽天を味方するつもりも、店舗を味方するつもりもない。が、公平に物事が判断されるべきだとは思うのだ。
楽天も企業であり、成長しなければ、市場からそっぽを向かれてしまう中で、まさに自分達の成長を考えつつ、店舗との向き合い方を考えなければならない。大きくなればなるほど、今までと同じではなく、また、その効率化を図る中でルールは増えて、メリットの提供の仕方は異なる。そこで大事なのは楽天としての意思表示であり、その中で店は判断が迫られる時がくるのは事実だ。
楽天は「送料込みライン」に始まったことではなく、楽天ペイなど、様々な施策を打ち出してきている。そこにもちろん異論反論が出たのは事実だけど、それでも、今回記者会見に臨んだ会社のように、ここまでついてきて良かったと思っている店もあると事実なのだ。
4.互いの議論を可視化する中で、真実が浮かび上がる
思うに、「送料込みライン」にしても、今回の公正取引委員会の動きは確かに熟慮しなければならないが、そこに必ずしも本当に現場の声が考慮されているのかといえば、そうとは考え難い。
突然それが取りやめとなったとして、既に店舗がそれに備えた価格の調整や現場への指示出しをしている中で、それは混乱を招かないだろうか。だから、対話が必要なのだと思うし、お互いのメリットを考え、落とし所を探ることこそ大事なのだと思う。まして、今においては新型コロナウイルスで行動が制限されている中で、それが現場の不安を助長している。
また、今回のきっかけを作っている楽天ユニオンの行動と勇気は否定されるべきではないし、話の内容にも一理あるのかもしれない。
けれど、それが全ての人にとって正解かと言われれば、それはない。だから、問題はその一方の意見だけが世間に取り沙汰されてはならないということなのだ。
少なからず、一般の人には両方の議論を並べてみて、判断するための土台は必要なのであって、まさに今回のような楽天の出店店舗が、意を決して立ち上がったことの意味は大きいと思う。日本のECの未来において。
僕は彼らが正解というつもりはないが、言えることがあるとすれば、彼らの意見にも目を向けようということだ。家族同然の自らのスタッフを想い、店舗同士が、立ち上がった自分達の意見を決して無視してはならない。僕はそう思うのだ。
今日はこの辺で。