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日本酒には“物語”がある。知らずして嗜むべからず 茨城「磯蔵酒造」へ潜入

 日本酒は飲むだろうか?飲んでいたとしても、それらを通り一辺倒で、受け止めていないだろうか。実はそこには“物語”があって、それを知った上で嗜むべき。勉強熱心な店舗さんたちとともに、今日は、茨城県にある磯蔵酒造にやってきた。酒蔵といっても日本全国には、まだ1000箇所は存在すると言われる。中でも、茨城県は日本酒の酒蔵が多い都市である。彼らはそこに誇りを持って、日本酒の奥深さを、現場の息吹と共に教えてくれたのだ。

存在感が薄れるから語られるべきその奥深さ

1.お酒自体を語る意義

 とはいえ、徐々にその存在感は薄れつつあって、それは大手の飲み物が売れるようになり、小さな酒蔵のものが苦戦している。その実態にを背景に、磯蔵酒造では、元ある酒蔵などを活かしなつつ、体感型の施設を作り出したのだ。2023年5月のことである。

 この日、やってきたのは、その施設であり、酒蔵も見せてもらいながら、日本酒にまつわるストーリーを聞き、その味わいに酔った。

 そもそも、日本酒というとお米でつくっているというのは常識。今は有名な産地のお米を取り寄せてお酒をつくるのが一般的なのである。それゆえに、有名な産地の有名なお米を使っていることが、お酒が売れる理由の一つになる。しかし、そうなるのはお酒自体を説明できる人がいないからだと説く。だから、彼ら自身がこだわっているのは、そうしたお酒の説明になぞらえ、地元の価値を見出すこと。

2.茨城は日本酒と相性がいい

 幸いにして、茨城は、お水、お米、麹菌(麹を作るカビ)、酵母菌(酒を発酵させるカビ)が全て採れる。ゆえに、彼らは誰がどうやって作ったかわかるものだけを作っている。例えば、米に限って言えば茨城県笠間市で作ったものだ。そして、顔が見えることの意味は、喧喧諤諤、意見を交わすことができることにあるという。

 例えば、農家の生産過程で、「今年はもっと水を増やした方がいい」などの意見もしていく。つまり、自分たち自身で、お酒の質を向上できる。それができれば、長い目で見てそれが愛される味づくりを追求できる。

 本来であれば、「地域で飲まれるものこそ地酒」である。それで、地元で事業をしていたのだけど、その数も減少傾向。今は少しずつ、県外や国外にも裾野を少し始めた。では、地元のお酒を親しむ人が減ったことにはどんな原因があるというのだろう。それは、ずばり、「お酒屋さん」が減少したことに伴う。お酒屋さん?

3.町のお酒屋さんの役目も担う

 お酒屋さんの果たす役割が大きいのは、どこか。なかなか県外では手に入らない、そう言って、自分達のお酒を勧めてくれる。そして、「これはサンマの塩焼きにからめると、うまいよ」などと指南する。つまり、そのお酒自体の価値と、そして、利用シーンにふさわしいお酒を提案してくれるから、お酒の価値を知り、また、ファンとなって、継続的に購入する環境が生まれるわけである。

 勿論、手軽にコンビニで買うこともできる。けれど、地酒然り、その過程をこういう酒蔵の近くで丁寧に説明することの大切さを思うが故に、この施設を建設し、それに代わる役割を果たすことの意義を、説くわけである。

4.地元の価値を日本酒になぞらえて

 そうすると、改めて見えてくる世界もある。実はこの地元の笠間市は、窯元がある陶芸の産地なのである。つまり、それら陶芸をお酒を“美味しく”飲む要素にして、提案することが可能となる。

 さて、体験型にする意図はわかった。ではこの施設は、それをどのような構成で見せているのだあろう。実は、冒頭、書いた通り、古い建物と新しい建物の両方でできている。

 要するに、新しい建物の方は、もとからあったお米を貯蔵するための蔵を改装したもの。これらは、そういう陶芸に触れるお土産屋として、または、実際にそれらの酒に触れつつ、その物語に浸る飲食スペースとして用意した。つまり、ただ、見て、購入するだけではなく、来てくれた人同士が、お酒についての“物語”を話し合えるコミュニケーションの場所へと変えたわけなのだ。

お米と酒の深き“物語”

1.「吟醸酒」「大吟醸」の意図するものは?

 ではその“物語”はいかなるものか。その一部分だけ、ここに記しておこう。

 日本酒を考える上で押さえておきたいのは、精米。要するに、お米を削ることを意味するが、大抵、僕らが口にするのは精米をしている。玄米の方が栄養があるのに、そうしていないのはその方がふっくらと美味しいお米が食べられるから。

 では、お酒はどうかというと、生臭いなどの問題もあり、さらに削る。それで、極論、2割ほど削れば、美味しい日本酒が生まれるという。この先が好みの分かれるところで、よく言われる「吟醸酒」や「大吟醸」などの呼び名に繋がっていくわけだ。

 実はこれらの言葉はそれらのお米を何%削ったかで示す言葉。だから、4割で削れば「吟醸酒」、5割以上削れば「大吟醸」と呼ぶのである。そうすると、削った方が、いいお酒なのではないかと思い込んでしまうけど、実は、そうとは限らない。

2.自分との相性は価格やスペックでは見えない

 削った度合いによって「苦味」「渋味」「酸味」が変わってくる。だから人によって好みが本来分かれるはずなのである。確かに、削り落とした「大吟醸」はそれらがないので、飲みやすい。とはいえ「苦味」「渋味」「酸味」もお酒の美味しさと考える人だっているわけで、だとすれば、吟醸酒などでもいいわけである。それを強調するのだ。

 なぜか、その価格が美味しさに直結すると考えがちだからだ。けれど、実は価格やスペックではその真実は推し量れないというのが、日本酒の奥深さ。それぞれの好みに応じて、日本酒を嗜むべきであり、そういう部分で“物語”は大事なのである。

3.地元の価値は日本酒の美味しさに根付く

 それで現場に行くと、大きな井戸を見せられた。これもまた、日本酒の物語を語る上で大事なことで、水が澄んでいる。この場所がある笠間市稲田という場所は秘境であり、その理由はそこで採れる石にある。御影石といって、日本の代表的な建築物にも使われている由緒ある石が日本で一番採れる場所。

 御影石には濾過作用があって、ここから出てきたお水はお酒作りに最適だというわけなのである。この場所、そして製法、そこで働く人たちの思いに“物語”はあり、それを語らずして、日本酒を理解したとはいえない。

 お分かりいただけただろうか。

 効率化が叫ばれる世の中で、画一的に商品を案内される時代ではある。けれど、逆にここに込められた“物語”に目を向けることで、僕らは“スルー”して見逃した、豊かな体験があるのかもしれない。それを堪能せずに、口にするのはあまりに勿体ない。際立つ、地元の陶芸で愉しむ、日本酒の楽しいひとときは、格別でしばし至福の時。

 天晴れ、笠間市稲田の地、日本酒の魂よ。

 今日はこの辺で。

 

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