金型を活かせば 耳も口の中も すみずみキレイに汚れが取れる 松本金型の着眼点
企業には色々な歴史が存在して、思わぬ産物を産む事もある。何気なく、ユニークな歯ブラシを見かけて、その作った会社に話を聞いたのだが、「あれ?」と思ったのである。会社名を見ると、松本金型。そして過去の商品を見て、元々自動車下請けで生計を立てていた会社である事を思い出した。え?自動車下請けの会社がなぜ、歯ブラシ?と思うだろうが、それは彼らの過去を紐解くとよく分かるのだ。
松本金型の起源は車の下請け
実は、この会社が、自動車関連以外の商品を初めて作ったのは「みみごこち」という耳かきの商品であり、ここには涙無くして語れぬ過去がある。
忘れもしない。当時、話していたのは、2008年、リーマンショックの影響で、自動車関連の仕事が大幅に減少したという事である。その時、応対してくれていたのが、同社スタッフの小田原進さん。起死回生で、作った商品こそが「みみごこち」である。
彼らは金型を作っていたので、その道具でたまたま、松本社長が耳かきをして着想する。「自分達の製造品質を持ってすれば、『痛くない耳かき』を作れるはずだ」と。
大胆な発想でそれこそ失敗品の数々。でも、他の商品の仕組みに着想を得て、その独特な形状で「みみごこち」が生まれたのである。
金型を活かす商品開発
通り一辺倒に、皆が綿棒を使う中で、彼らは耳の穴の形状や、耳垢の性質に合わせて、2種類用意して、痛みなく隅々にフィットして、汚れをかき出すことに成功したわけである。実に100万本以上、売れる大ヒット。その後、小田原さん自ら、CMに出ていたらしく、大したものだ。
、、、とまあ、ここまで殆ど、新商品より、「みみごこち」の話をしてしまって恐縮である。けれど、これがこの企業の良さを示す部分だから、この姿勢が新商品の歯ブラシ「CURURIN(くるりん)」にも直結しているという意味で、僕は書かせてもらった。
そのイズムはCURURINにも直結
「CURURIN(くるりん)」でも同じなのは、金型を使えば、まるで、マジックのように今までの不都合な現実にも解決策を見出せるという点である。相変わらずだな、と思うのは、「歯ブラシ」なのにコップの写真でその良さを説明していて、異彩を放っている。
この説明の意図は、歯ブラシのヘッドがくるりと回って、隅々まで磨けるようにするということなのである。丸型のコップの場合、世に存在する歯ブラシでは到底、汚れを落とすことは難しいけど、内側の球面にフィットして、毛先が行き渡るのである。
つまり、耳の形と同様で、口の中の形は複雑だ。だから、そこに寄り添える歯ブラシを開発したというわけである。前から磨きづらい隠れた場所もケアするし、勿論、歯間などの小さな隙間にも行き届く。
何より、くるりと回転するから約180度のカーブで、曲がった箇所までちゃんと綺麗にしてくれるから、満足度が高いということになるわけである。
繰り返すけど、この会社の原点は車の下請け企業であり、そこで奮起して生まれたその着想は、金型の強みを活かして、今も進化し続けているのである。次なる発明に期待しつつ、まずはその歯ブラシを使い続けてみようと思う。
今日はこの辺で。