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新たなものづくりの幕開け ~GiftShow2020

 商品は時代を写す鏡である。2月5日〜7日に開催された「第89回東京インターナショナル ギフト・ショー」(以下「 ギフト・ショー2020 春 」)へ潜入した。89回目を迎え、約3000社が出展するパーソナル ギフトと生活雑貨の見本市である。

デジタルとアナログが融合して、新たなものづくりが生まれた

 何気ないアナログ商品もデジタルと融合することで、これまでにはない、利便性の高い価値を生み出すこともある。「CA-TON」という商品を扱うブースで、渡辺凛さんが紹介してくれたのを聞いて思った。父親の発案が生かされているのだそうだ。

 「CA-TON」は蓋を開けずにスマホのアプリで中身を確認できる収納ボックスである。3つの要素が組み合わさっていて、まずは収納ボックス、そしてそのボックスに貼り付けるタグ(シール)、そしてアプリである。アナログとデジタル混在しているが、これでワンセットである。

 皆さんの周りで、こんなことはないか。自分の家で何かを箱に収納しておいたのだけど、色々詰め込みすぎて「どの箱に何を入れたか」忘れてしまった。そういう時は大抵、一個一個箱をひっくり返しているうちに、部屋が散らかる惨事が待っている。

タグで収納ボックスの中身が瞬時にわかる

 「CA-TON」はそれが一瞬で解決するもので、そのカラクリはそのタグにあると思った。下の写真の右がそのタグである。

 タグは見た目はネームシールのようだが、普通のシールではない。ここに何か文字を書いてみてほしい(僕は「145」と書いた)。そして、専用のアプリを開いて、収納ボックスに収納物を入れた状態で、収納物の上にこのタグを置いて撮影して、それをアプリ上で登録。そこまで行けば、その収納ボックスにこのタグを貼り付けるだけで良い。

 あとは、中身を確認したい時に、この専用アプリを開き、アプリ内の写真でこの文字のタグを読み取ると、アプリがその文字を認識して、準備段階でそのタグと一緒に撮影した収納ボックスの写真が自動的に出てくる。つまり「タグを読み取るだけで、開けることなく、すぐに中身が判明する」というわけである。ではそれを改めて動画で見てみることにしよう。

時短が必要な企業の現場でも貢献しそう

 見た目は名前シールのようなタグなのに、アプリを介して、瞬時に、中身を教えてくれるこの発想は、アナログとデジタルの強みを程よく調和させて、これまでになかった価値を提供していて、クリエイティブだと思った。ものづくりの現場にもデジタルが入って、日本の匠も新たな時代の到来なのである。

日常が変われば雑貨も変わる

 その他では、日常が変化し、持ち歩くものが変わると、そこに付随して商品も変わっていく。株式会社グルマンディーズの商品を見ながら感じたことだ。

さて、この写真を見て欲しい。

 こちらは、スマホの背面に貼り付けて使うもの。一見すると表面が丸く缶バッヂのような形状になっていて、この表面を手で引っ張ると少し立ち上がって取っ手のようになる。すると、この写真のようなくぼみができるわけで、電話の際このくぼみ部分に指を入れれば、滑ることなく落下を防止して話せるというわけだ。

 これに近い商品で、リングタイプのものを思い浮かべる人もいるだろうが、敢えて、この商品がこういう風な仕様にしているのは、表面が平らだから背面を下にしておいても、バランスよく机に置ける利便性を追求したからなのだ。

 また最近では、外で音楽だけでなく、動画を見る機会が増えて、ワイヤレスイヤホンの出番が増えた。そこで脚光を浴びているのはAirPodの保護ケースである。AirPodは小さく精密機械であるがゆえ、これらの需要が増えていて、そのニーズをキャラクターグッズの需要とかけあわせたのである。

ピンクがインパクト大「POP`s CANDY CLUB」

 キャラクター関係でいえば、「モンチッチ」を扱う株式会社セキグチのブースのインパクトが際立っていた。モンチッチの友達「チムたん」の展示は強めのピンク一色に塗り固められており、これこそがイチオシの「POP`s CANDY CLUB」なのである。

 最近のトレンドを反映したデザインで、アーティスティックである。このぬいぐるみの販売にあわせて、東京・原宿の「ALTA」3階にあるカフェ「テラスカフェ」では、この同シリーズとコラボを展開する。

 「チムたん」をイメージしたフードやデザートの提供はもちろん、新進気鋭のクリエイターがハンドメイドで製作したグッズ、このカフェだけの限定商品の販売を行う。王道のキャラとクリエイターによる化学反応にも期待がかかる。

耳ぴょん!するスヌーピーに心も跳ねる

 株式会社ナカジマコーポレーションでは、PEANUTSのぬいぐるみで、テーマはビンテージ70年代ヌイグルミ。オフホワイトカラーでレトロなテイストが逆に新鮮で洒落ている。足うらにラインが入っているのも当時を彷彿とさせるもので、歴史のあるキャラクターだからこそ出せる味わいと言える。

 気になった商品は「耳ぴょんぬいぐるみ」。足を押すと、耳がぴょんと飛び跳ねる、動きのある商品。SNSなどでその愛らしい仕草に、“共感”を集めそうな予感。

珈琲とスヌーピーを掛け合わせ日常に充実を

 ちなみに、スヌーピーと言えば、本格的なドリップドコーヒーパウダー『INIC coffee』のブースが秀逸。PEANUTSデザインの『INIC coffee』を提供し、そのキャラクターの持つハイセンスを、珈琲の持つ上品な雰囲気とうまく掛け合わせていた。

 『INIC coffee』を手がけているのは、パウダーフーズフォレスト株式会社。もともと霧状にしたコーヒー抽出液を瞬間的に乾燥する特殊な製法で実現した 「プレミアム微顆粒パウダー」にこだわっていて、その奥深さは、洗練された大人の男女に支持されているが、注目すべきは、この会社自体が消費者のシーンを重じている点にある。

 インスタントコーヒーを、こうした珈琲に変えてみるだけで、その飲む人の気持ちが変わる。珈琲に合わせて、同社としては、お菓子で一日の疲れをほぐすとか、優しい果実のパウダーで心を癒すなど、演出面でのこだわりが見え隠れする。

 だからこそ、落ち着いた「PEANUTS」が『INIC coffee』の描こうとする安らぐ生活シーンには適任だし、「PEANUTS」もまた『INIC coffee』の持つ雰囲気を取り込むことで、新たな魅力が引き出される。相性抜群である。

ブレイクの仕方もデジタルを巻き込み、多様化

 コンテンツのブレイクの仕方がデジタルの浸透と共に多様化しているのは見逃せない。スティーヴンスピルハンバーグさんが手掛ける漫画「パンダと犬」で言えばインスタグラムからのヒット。インスタの「同時に4枚写真を入れられる」仕様に着目して、一枚一枚描いて4枚目でオチがつくようにアップした、現代版「4コマ漫画」である。

 内容も老犬とパンダのやりとり。作者の実体験に基づいていて、老犬だけに本当に手が掛かる様子を漫画で再現していて、悲壮感や哀愁が漂い、感情移入の度合いも大きい。ちなみに、主人公はパンダだが、これはパンダを擬人化しているのではなく、作者(人間)がパンダ化していると作者は断言している。

 既に書籍化されており、その書籍化に携わった繋がりで、株式会社ぴあが、版権窓口となって商品化を進めている。必ずしもアニメといったマスからヒット生まれるのではなく、限られたニッチなところで、熱狂的にファンに受け入れられる現象が起こりつつある。この辺が時代の潮流といえようか。

手作りが特別感を生む「Giiton」

 デジタルで何事もやりとりされる時代だからこそ、逆に手作りのアイテムで特別感を出しているブランドがあった。それが「Giiton(ギートン)」で、あたたかさが詰まっている。

 Giitonはオリジナルのキットや雑貨、国内外の毛糸や生地などを取り揃えていて、手芸用品と雑貨のセレクトショップと謳っている。勿論、ひとつ一つの商品は大事なのだけど、その商品がもたらすシーンをどうやって演出して、素敵な価値に変えていけるかにこだわっているので、Giitonは心を掴むのだと思う。

 刺繍のキットでも、中にはグリーティングカード、封筒、刺繍糸、刺繍針がセットされている。商品としては、趣向を変えた「グリーティングカード」であって、それも説明書の通りに刺繍をすれば、手作りのグリーティングカードが作れる点に力点を置いている。自ら作ることに重きを置いているのがミソである。

 手芸などは受け取るその人も嬉しいが、作る過程で、受け取る人のことを思い浮かべて、刺繍するその最中もまた、素敵な時間であり、それを大切にしようという想いが感じられる。

 ちなみに、「Giiton」というネーミングも何か編んだり、ミシンにかけて作業する際に、聞かれる物音をモチーフにしていて、その辺からも、ものづくりとそのシーンに浮かぶ情景を大事にしていることがわかる。

 「 ギフト・ショー2020 春 」にやってきて、やっぱりどの商品を見ても、ものづくりは、そこに込められた愛とともに、お客様の元へと届き、価値を生むものなのであり、そこの根本はどんなに時代がかわろうとも普遍的なものだ。

 大事なのは手段に捉われることではなく「何を伝えたいか」から、手段を決めていくことなのではないか。

今日はこの辺で。

関連記事:真似できない 商品開発 に魂がある〜 国際雑貨エキスポ 2020

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