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“廃棄”させずに価値で売る くらしきぬ ものづくり愛故の サスティナブル 思考

   サスティナブル と言われる世の中だけど、大事なのは“廃棄”させない価値の生み出し方、発想の仕方である。「くらしきぬ」というブランドで、本来なら捨てられる素材を、敢えて別の付加価値をつけて、定価で売っているというが、その工夫一つ一つに愛があって心惹かれた。

廃棄 させないものづくり愛が生んだ サスティナブル

1.ダーニングで「ものを労る感覚」が広がる

 「くらしきぬ」は素材の良さを活かし、お客様目線で必要な商品を提案し続けてきた岡山発祥のブランドで、代表的な商品に「はらぱん」がある。お腹とお尻を覆うようなインナーであって、冷えやすい身体を優しく温める商材なのである。

 そこで今回の話に至る。その「はらぱん」にしても、どうしても規格外商品などが生まれるのだ。生産しても泣く泣く商品の販売を諦めてしまったものが存在するのであり、今回の企画である。

 ここで僕が思うポイントはその捨てられるはずだった規格外の「はらぱん」を「定価」で販売するという点である。

 では、どんな付加価値を彼らはつけたのか。そこで読者の皆さんに質問である。

 「ダーニング」という言葉をご存知だろうか。例えば、靴下に穴が空いてしまったということは、誰しも経験することだろう。そうした靴下や衣服など、穴あきを修繕するヨーロッパ発祥の修繕方法がダーニング。

 この規格外の「はらぱん」にダーニングに必要な「ダーニングマッシュルーム」を一緒に添えて「定価」で販売している。

 捨てられるはずだった「はらぱん」が使われるだけではなく、一緒に入れたダーニング用品で家にある靴下などの補修をする。それがまた新たな「廃棄」を防ぐことになる、というわけで、ものに対する真心が連鎖していることがわかる。

2.直接寄付ではなく一体感を感じるお店の仕掛け

 ダーニングだけではない。もう一つ、瀬戸内オリーブ基金への寄付という選択肢もある。その基金も有害産業廃棄物の事件を契機に、建築家の安藤忠雄さんらが環境保全を推進しようという基金だ。いずれも捨てられるはずだった「はらぱん」を通じて、別の“再生”を促すという内容になっている。

「寄付という形だけでなく、お客様に”楽しそう”と感じていただける提案にしたいと思いました。楽しいことしか続かないと思いますし、サスティナブルを”やらされている”という感覚にはしたくなかったんです」と広報 佐藤文子さん。また「ダーニングで補修してまた使えるようにして、ものへの愛着を一層、深めていく。新しい価値を創造できるのも、私たちお店だからできる事」と企画担当の瀬良智也さんも微笑んだ。

 たまに会社でもテーブルに穴が空いた靴下を置いて、皆でダーニングをすることもあるのだそう。こういった新しい取り組みや新商品の企画は瀬良さんが取りまとめているというが、社内スタッフは勿論、お客様からも多くのアイデアが寄せられていて、どれから始めようという状況だという。見えないところで、「くらしきぬ」のファンと信頼関係が築かれつつあるのだろう。

温かな雰囲気。(中央が佐藤文子さん)

「くらしきぬ」はいつも商品で彼らの姿勢を映し出す

1.「誤魔化さない」商品作りにお客様が共感

 改めてこの企画商品には「定価以上の価値がある」と思った。これらは商品を購入するというよりは工場や「くらしきぬ」そして自分を含めた体験価値を提供している。

 「くらしきぬ」が何故にこのような企画を立案するに至ったのか。それはメンバーが工場を訪れ、現場での廃棄用商品が置かれていたのを目にしたからである。

 日本の職人気質はこだわりの上にある。ほんの少し傷があっただけでも、そんなものはお客様に提供するべきではない、というリスペクトすべき高い意識のもとに成り立っている。けれど、現場でこのようなことが起きているのでは本末転倒ではないかと瀬良さんはいうのである。

 それは「くらしきぬ」の過去とも紐づいていて、過去の姿勢がお客様にも伝わっているから、このメッセージが届く。「くらしきぬ」の考え方は、いい素材で真に喜んでもらえる商品づくりが土台にあって、僕が瀬良さんと話していて、印象に残っている言葉が「誤魔化さない」というもの。

ものへの想いを語る瀬良智也さん

 よく通販でキャッチフレーズに「〜〜〜素材!」と書かれていても、その素材はメインではなくて、「あれ?」と思うことはなくはない。逆に言えば、多く売れるようにする為に定価を抑えて、そうせざるをえなかったという裏事情もあるのもわかっている。

 だから敢えて「誤魔化さない」。〜〜素材と書いてあれば、それをメインにふんだんに入れて作るのである。興味が惹かれたのは「冷えとり靴下」で見せた彼らの姿勢。女性などにおいては冷えに悩む人が多く靴下を重ねばきするわけで、それを意図した商品である。

 でも、実際に使っている側からすると、本当にこれまでは「いいものがない」とされていた部分もあった。それにはそれに相応しい素材選びがあるのではないかと彼らは考え、くらしきぬの場合は重ねばきの中身の素材にシルクとウールをメインに据えることにしたのだ。

2.素材に着目して真にお客様の立場で企画する

 どういうことか。まずシルクは肌に優しい繊維として有名だが、水分を吸ってくれる成分としての強みもある。ただ、ウールを当てる事で汗などの水分を発散してくれるのである。多くはコストの絡みで綿が多く、それはそれで彼らは価値として認めつつも自らは単価を上げても拘って、発散させるという意味でウールを用意した。

 シルクとウールを交互に重ねることで足から出た汗などを外に送り出すというのだ。なるほど。

モノを売らず、コトを売る大事な店の姿勢

 、、、、とまあ、少し話が逸れてしまったが、これだけの商品への想いはお客様に真に伝わり、他の靴下よりも高価なのにもかかわらず、その付加価値を感じて、購入されるに至ったわけである。彼らは商品を売りながら、お客様の充実感に重きを置いたスタイルでファンを拡大してきたわけである。

 勿論、それをアシストしてきたのはネット通販という環境であって、そこで素材に対しての彼らなりの考えを惜しむことなく説明し続けてきた結果が、これらの成果一つ一つに結びついているのだと思う。

 だからこそである。商品でありながら、価値観を理解したお客様は今回の「捨てられるはずだった商品」を「定価」で売る企画に対して、理解を示しているということなのだ。

 そして、彼らの夢はさらに続く。「よく川上から川下と言われます。その中でお店は川下と言われるお客様の近くにいます。でも、実は川上と言われる素材の生産段階でも「捨てられてしまっている」ものがあるのだと思います。それ故、我々はその部分まで価値で勝負して「捨てられてしまっている」ものを減らしていけたらと思っています」と瀬良さんが締めくくった。

 お店はものづくりの中で、今を考え、そして然るべき行動を通して、自らが主張し、お客様に気づきを与えることで、進化していく。これからお店に求められる大事な姿勢はその辺にあるのではないか。ものづくりを重んじ素材に価値を感じて商品を提供してきた彼ららしい進化のあり方に拍手を送りたい。

 今日はこの辺で。

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