ピンクパンサー60周年は変貌のきっかけ GEEK WONDERS が新たなカラーを鮮明に打ち出す
良い意味で、カラーが鮮明。僕が先日、話を聞いたのは「ピンクパンサー」に関してである。国内サブライセンス権を取得した「GEEK WONDERS」は、元々、映像制作を得意とするGEEK PICTURESが肝入りで、立ち上げたキャラクター事業部署。だから面白いと思った。持ち前のクリエイティブな発想で、「ピンクパンサー」の生誕60周年を、華やかに盛りあげる。
時代に即したプロデュース
1.「GEEK WONDERS」のその成り立ち
「ピンクパンサー」はさることながら、僕が関心を持ったのはキャラクターに対する姿勢である。GEEK PICTURESは、映像コンテンツの制作を得意として、そこから派生してデジタルを活用した仕掛けも行い、その活動範囲は広い。ただ、共通して言えるのは、創造性豊かな提案を続けていること。10数年に渡り、それは支持されてきたものだ。
しかし、社長自ら「1からIPを育てたい」と口にしたのは今から四年前。そこで、今まで培ってきた知見を活かしたいと志を明らかにしたのだ。だから、そんな強い意志を語らずして「GEEK WONDERS」の部隊は語れない。
何か他とは違っていたのかもしれない。僕もその感度の高さを実感して、個々のコンテンツには、他とは違う感覚を抱いたのを思い出した。過去を遡れば「コミミちゃん」などを展示会で見かけ、取り上げていたほどである。
参考記事:コミミちゃん ら GEEK WONDERS の異彩なキャラ戦略
そうやって、肌感覚で、ゼロから始めるということがどういうことかを理解してきた。それは簡単には得られるものではない。そして、単純にライセンス業務だけやっていては決して見えることのない景色である。
2.ピンクパンサーとどう結びつくのか
さて「ピンクパンサー」についても触れよう。
遡ること1964年4月14日。「ピンクの豹」のオープニングアニメに登場したのが始まりだ。その際、同時公開された7分間の短編アニメーションが「The Pink Phink」である。そして、同作品はアカデミー最優秀短編アニメーション賞を受賞して、一躍脚光を浴びることになった。これはキャラクターとしては初の快挙。初めから「ピンクパンサー」はスターの地位を手に入れていたのだ。
そこから衰えることなく支持され、その認知度は高い。実際、それは、数字にも表れており、公式YouTubeチャンネル登録数は1930万人。
Instagramで25.6万人、TikTokで12.1万人のフォロワーを抱える。また、2021年には「A BATHING APE」ともコラボ。総柄をピンク色で塗り上げた仕様は実に、刺激的。特に感度の高いユーザーから支持されたのだった。つまり、ファッション性の高い、アート性の高い素材にもなりうる。それも大事な魅力の一つ。
歴史あるキャラクターの変わりゆく未来
1.アートワークから手を加えて
だからこそ、彼らがサブライセンス権を取得するのは適任だと僕は思った。
語弊を恐れず言えば、ライセンス窓口の多くは慎重。「挑戦は避ける」というイメージが強い。デザインひとつにしても極力、修正を加えず、適正に管理することに重きが置かれるのが常識だ。
何もそれを否定するつもりはない。なぜかと言えば、その世界観への愛が深く、それを果たすべく、版権元との深い関係性を築いている。そしてそれを踏まえた強い配慮がなせる技だから。
その一方で、「GEEK WONDERS」はどうだろう。自身がゼロからキャラクターを起こしてプロデュースしている。だから、素材をアレンジできるポテンシャルが備わっているのである。感度の高い人たちを、彼らのゼロベースで築き上げた価値で触発できるのではないか。“良い素材”があって、それを活かす“コック”がいる。
ただ、思うにピンクパンサー自体の認知度は高いが、現時点では、商品は少ない(失礼!)。だから おそらく、版権元もそういう“調理”に理解を示したのではないかと思う。「GEEK WONDERS」の熱意と、クリエイティブな知見に期待して60周年を機に、羽ばたくその瞬間が見てみたいと。
2.懐かしさと現代らしさの共存
実際、彼らはやっぱり「ピンクパンサー」の新たなアートワークを自ら手掛けて、新しいイメージを打ち出していた。そこにあるのは「懐かしさ」と「現代らしさ」の掛け合わせ。こんな感じだ。
勿論、歴代のイラストはリスペクトして、核には据える。しかし、同時に描くのは「現代東京」である。
3.何気ないところにそそる要素をちりばめる
昨今、レトロ的なイメージや“チルさ”が求められる。「チルい」というのはゆったりとしたという意味合いの言葉。レトロもそうだが、心穏やかに過ごしたいZ世代の心理を表している。
今のZ世代は独特だ。いわゆるその上の世代にはないゆとりがある。それは少子化の中で生まれたから、就職難でもないし、やりたいと思ってできることは多い。だから、ガツガツするのではなく、ゆったりと構えている。
参考記事:Z世代を知る事が、マスメディアに代わるほどの破壊力を持つ理由
だから、それを踏まえた世界観を反映した。クリエイティブを得意とする彼らの事業の素地が生きている。
今年からプレ・イヤーとして仕込みは始まっていて、Z世代が多く集まる「JOL原宿」をジャック。ピンクパンサー一色に染め上げた。既にアートワークができているから、イベントとそれらを調和させて、一体で世界観を伝える。
Z世代の特徴はSNSを効果的に使う。自己承認欲求を満たしつつ、心安らぐ世界を皆にシェアして。だから、そこでの広がりを意図して、プレゼントキャンペーン企画を絡めながら、楽しくも幸せな時間を、ここでは演出した。
4.Wのアプローチ Zと往年
来年の今頃には、ここにライセンシー商品も入り混じり、60周年に花を添える。商品企画についても、彼らがアートワークまで関わっている以上、「とことん向き合う」。確かに、決められたデザインを厳密に監修する。そんな関係性は僕は期待していない。商品企画やデザインでも挑戦する姿勢を見せてこそ「GEEK WONDERS」らしいからだ。
ただ、商品化する、なんてそんなことではなく、クリエイティブな一面をフルに発揮して、常識外な取り組みに着手してほしいのだ。キャラクター業界の既成概念を打破してほしい。
いい意味で、常識を覆すシンボリックなキャラクターとして、ピンクパンサーが元気に飛び跳ねるだろう。Z世代のシェアを起爆剤にしながら、それが話題を集めて、往年のファンの気持ちも同時に触発する。新しくて、カラーは鮮明。コロナ禍からの反動に、活況に湧く世の中の景気をさらに後押ししてほしいとを祈る次第だ。
今日はこの辺で。
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